「長時間労働と過重労働」
2017年08月08日
最近は、新聞を広げるとトランプ大統領の暴言と長時間労働の摘発の話題が目につきます。これまでは労働基準監督署による労働基準法違反の摘発といえば中小企業が多かったわけですが、最近は過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)が相次いで大手企業の摘発を行っています。ABCマート、ドン・キホーテ、電通そして最近では三菱電機にHISといった超有名企業の違法な長時間労働が報道されましたね。
先日、奉行シリーズでおなじみのOBCさんと一緒に2部構成でセミナーをさせていただいたんですが、その時OBCさんのタイトルは「過重労働対策」でした。ぼくにとっては何となく違和感ありです。「長時間労働対策」と「過重労働対策」の違いってわかりますか?
これまで多くのお客様に対し、ぼくは長時間労働対策を行ってきました。内容は、まず残業をさせないようにすること。残業するときは残業申請を会社に事前に行うことを義務付けて残業をしにくくする仕組み作りをしたり、残業をしていたとしても固定残業手当や裁量労働制を導入することにより残業代が発生しないようにするとか。ようするに長時間労働をしにくい制度作りを行っていたということです。
しかし、OBCさんが話をしていた「過重労働対策」の内容は全く観点が違いました。どういうことかというと、会社の把握していない社員の長時間労働をいかになくすかということなんです。会社が望む、望まないといったことではなく、会社が知らないのに社員が残業していたということが今、大きなリスクになっていて社員の労働時間を全て把握することで会社のリスクを消すことが必要だと話をされていました。残業の問題というのは、このところ数か月の時間で全く異質なリスクに変わっていることに気づく必要がありますね。ぼくも考え方が甘かったなと反省させられました。
パナソニックが勤務時間を原則、午後8時までに改めたと新聞報道がありました。「午後8時まで」を新しい労働指針として掲げ、労働組合と合意し、2月1日から各職場での徹底を始め、これには取締役などの幹部も対象としているとのことです。すごいです。
政府も、「働き方改革実現会議」を開き、長時間労働是正に向けた議論を始めていて、残業時間の上限を月平均60時間、年間合計720時間までということになりそうな雰囲気です。対象は全業種ということみたいですが、そんなことで会社は成り立つんでしょうか・・・なんていうこと自体が間違っているのが現在の長時間労働に対する考え方です(笑)
また、働いた時間ではなく、仕事の成果で評価される脱時間給の制度も今後、導入が見込まれていて「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれています。これは、一定の要件を満たす人に労働基準法による労働時間規制を外す仕組みです。こういった制度もないとバランスがとれないのではないかとぼくは思っています。
石川県内の人手不足が深刻になっているとも新聞報道がありました。県内の有効求人倍率は1.68もあるそうです。小松市で今春にイオンモール新小松が開業するのに伴い、求人が過熱しているということが、時給を既存の小売業に比べて100円から200円高く設定しているそうですが、それでも人材確保には苦労しているようです。
また、県鉄工機電協会がまとめた昨年10~12月期の業績調査によると、「企業経営上の悩み」について、34%が人材不足を挙げていて、同協会の担当者は、「人員の確保が困難なため、残業で対応する企業が増えている」と話されたそうです。なんだかわけわからないですね。
特定社会保険労務士 末正哲朗
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