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育児と年金

2024年06月03日

厚生労働省は、労働者が育児休業給付の受給期間を延長する目的で子供を保育所に入れるつもりがないにもかかわらず、自治体へ保育所の入所を申し込む行為を防止するため、法律を改正し、令和7年4月1日から期間延長手続きを厳格化します。育児休業給付は休業開始から180日目まで賃金の67%を受けることができ、以降も子供が1歳になるまで賃金の50%を受給できる制度です。そして、保育所への入所を希望したのに落選して休業を続けることになると最長2歳まで受給することが可能になります。そもそもこの給付は育児のために離職をすることなく職場に復帰できるようにということが目的であるにもかかわらず、育児休業を取得後に退職するつもりなのに給付金の申請を行うケースがあります。事業主からすると「従業員の補充をせずに欠員のまま1年間待たされた挙句に退社されるのだからたまったものではない。」となります。政府は25年度から給付制度の拡充を予定しており、夫婦で育児休業を取ると最大28日間は給付率を手取りの実質100%に引き上げることや、2歳未満の子どもを育てる親が時短勤務をすると、毎月の給与に10%上乗せして手当を支給すると決めました。こうなると、「2歳までは毎日子どもの成長をそばで見ていたい。できれば給付金が出る2年間は育児休業をとりたい。」という気持ちになるのもわからなくはないところです。延長に必要な手続きは、落選したことを示す「保留通知書」をハローワークに提出するだけなので、あえて人気があって入所の難しい施設に申し込んで落ちる事例が相次いでいるそうです。     今後は、「速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限る」と法改正して、利用を申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく、自宅又は勤務先からの移動に相当の時間を要する施設のみとなっていないことや市区町村に対する保育利用の申込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないことの確認が行われることになりました。

次は老後の話です。内閣府が、「生活設計と年金に関する世論調査」について発表しています。老後の生活設計について、何歳まで仕事をしたいか(したか)、何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいと考えるか(していたか)を聞いたところ、「61歳以上」働きたいと答えた者が71.1%となりました。また、収入を伴う仕事をしたいと答えた者の理由は、「生活の糧を得るため」が75.2%と一番多く、「いきがい、社会参加のため」(36.9%)、「健康にいいから」(28.7%)、「時間に余裕があるから」(14.6%)と続きます。そして、老後生活においての公的年金についてですが、「全面的に公的年金に頼る」と答えた者の割合が26.3%、「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と答えた者の割合が53.8%となっていて、老後生活を公的年金に頼る者の割合は8割にもなっていて、公的年金の重要性がかなり高くなっていることがわかります。その年金に関する法改正が2025年に予定されていて、改正項目の検証が行われています。まず、国民年金の保険料納付期間が現行の40年間(20~60歳)から45年間(20~65歳)へ延長することで給付額がどれくらい上がるか試算されます。将来の給付額の減少に備えてのことです、保険料の増額に批判が集まりそうです。次に、働く高齢者の厚生年金受給額を減らす「在職老齢年金制度」の見直しです。現在は賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えると年金が減額となりますが、高齢者の就業促進に向けて制度を廃止・緩和した場合の効果が検討されることになっています。

定年後に再雇用となる労働者の賃金については、特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付の金額を考慮したうえで決められていました。しかし、令和7年4月からは高年齢雇用継続給付の支給額が減額されることになっていて、また男性については令和8年4月以降、特別支給の老齢厚生年金が支給されなくなります。定年後に引き続き働く労働者の賃金の決め方については、定年後に再雇用されたことだけを理由に、賃金を引き下げるのは難しくなりそうです。経団連は、同一労働同一賃金の観点も踏まえながら、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度への移行を進め、職務などとの整合性の取れた水準を設定する必要があると報告書をまとめています。定年後についても働きがいのある労働に見合った賃金の額を提示する必要性がますます高まりそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

同一労働同一賃金   遵守へ「報告徴収」積極化   厚労省・令和6年度運営方針

厚生労働省は令和6年度地方労働行政運営方針を策定しました。非正規雇用労働者の処遇を改善するため、同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組みを強化します。

具体的には、労基署と労働局雇用環境・均等部門が連携する枠組みを引き続き運用したうえで、パート・有期雇用労働法に基づく報告徴収を積極的に実施し、是正指導の実効性を高めていきます。

昨年3月から運用している連携の枠組みでは、労基署が定期監督などで事業場を訪問した際に、非正規雇用労働者の有無のほか、諸手当・賞与・基本給などの待遇差などを確認。その結果を踏まえ、労働局の雇用環境・均等部門が報告徴収の対象企業を選定しています。連携強化後は、違反の恐れのある企業に的を絞って報告徴収を実施できるようになったため、以前に比べて報告徴収時の是正指導件数が大幅に増加しています。

6年度は、労基署による事実確認の結果、基本給や賞与について正社員との待遇差の理由を説明できない企業に対し、文書要請を集中的に実施します。待遇差の理由について自主点検し、説明できない場合には待遇を見直すよう促していきます。一定期間後も点検・見直しに関する報告を提出しない企業については、報告徴収の対象として検討していくとしました。

◆ニュース

「在宅勤務手当」の取扱い  実費弁償分は基礎に含めず  割増賃金算定で通達

厚生労働省は、割増賃金の算定における「在宅勤務手当」の取扱いについて、都道府県労働局長に通達しました。労働者に対する在宅勤務手当が、在宅勤務に必要な通信費などの実費を弁償するものとして支給される場合は労働基準法上の賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金には算入しないとしました。

実費弁償分に当たり得る費用としては、事務用品の購入費用、通信費、電気料金、レンタルオフィスの利用料金などを挙げました。在宅勤務手当が実費弁償分として認められるためには、労働者が実際に負担した費用のうち、業務に使用した金額が特定され、その実費を精算するものであることが外形上明確な必要があるとしています。そのため、就業規則などで実費弁償分の計算方法が明示されている必要があるとしました。計算方法は、在宅勤務の実態を踏まえた合理的・客観的な計算方法でなければなりません。毎月一定額を支給し、従業員に支出がなかった場合でも返還しなくて良いような手当は、実費弁償に当たらないとしています。

半日取得も可能に 積立年休制度を大幅拡充 参天製薬

 参天製薬㈱(大阪府大阪市)は、失効する年次有給休暇を最大60日まで積み立て、家族の看護やリフレッシュ目的の旅行に使える積立年休制度を拡充しました。取得事由として新たに、女性の健康課題(月経前症候群)、不妊治療、二次健診、がん検診、人間ドック、眼科検診、介護、自己研鑽、リスキリング(学び直し)を認めます。さらに一部の事由では半日単位での取得を可能にするなど、取得要件も緩和しました。

不妊治療など健康関連の事由に関しては「ウェルネス休暇」と総称し、具体的な取得理由を上司や同僚に明らかにすることなく利用できるようにしました。これまで積立年休の取得は1日単位に限られていましたが、ウェルネス休暇や家族の看護、授業参観などについては、通常の年休と同様、半日単位での取得も認めます。

リスキリング目的の利用に関しては、1年間の取得日数の上限を20日としました。1週間以上連続で取得する場合には、厚生労働省の教育訓練制度の対象講座であることなどの要件を設けています。


カテゴリー:所長コラム


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