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生活習慣を見直す

2024年05月01日

昨年、石油元売り最大手のENEOSホールディングスは、懇親会の場で同席していた女性に酒に酔って抱きつくという不適切な行為をおこなった社長を解任しました。これで立て続けにグループの首脳3人が相次いで引責辞任するという不祥事が続いたわけですが、再発防止策として、取締役が会食時に飲酒しすぎていないか、同行者が監視するルールを新たに設けたと新聞が報道しました。日本を代表する大企業のトップが、監視付きでないとお酒が飲めないってかなり笑えませんか。そんな中、厚生労働省が初めて飲酒に関するガイドラインを2月に公表しています。やり玉に挙がっているのがアルコール度数9%のいわゆる「ストロング系酎ハイ」です。ぼくもよく飲みましたが、息子から「そんなの飲んでいるとアル中になるぞ!」とよく言われたものです。そのストロング系は、「安く酔える」を売りに2010年前後から需要が拡大してきたということですが、今年に入り飲料各社が、アルコール度数8%以上の缶酎ハイの新商品を販売しない方針を示すなど、ストロング系からの撤退の動きが活発化しているそうです。ぼくは定期的に血液検査を受けていますが、担当医からは「アルコールを何グラム飲んでいるかわかっていますか」と聞かれるようになりました。先ほどのガイドラインでは、酒量よりも純アルコール量に着目することが重要だとしています。その計算式は、お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8=純アルコール量(g)となっていて、ガイドラインによると1日20グラム以上摂取するとガンの発症リスクが生じるとされます。20グラムというのは、酒量でいえばビール中瓶1本、日本酒は1合となります。また、避けるべき飲み方としては、不安・不眠を解消するために飲むことや、アルコールハラスメントといわれるような他人に飲酒を強要することが挙げられています。厚労省によると「体への影響は年齢や体質によって異なり、ガイドラインを参考に自分に合った飲酒量を決めることが大切だ」とされます。最近では、タバコの次はお酒がターゲットになったといわれているようです。

もうひとつ厚労省から睡眠について興味深い数字が発表されています。「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると「適正な睡眠時間」と「睡眠休養感」の確保のため、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上を目安に睡眠時間を確保するよう推奨しています。また、高齢者には長時間睡眠は健康リスクだとして、「床上時間(寝床で過ごす時間)」が8時間以上にならないよう示したうえで、8時間以上の睡眠、長時間の昼寝を避けることを提案しています。ぼくも最近は、5時間くらいしか眠れないけどいいのかなと思っていましたが、それで十分に普通なんですね。また、ガイドでは睡眠で休養が取れているという「睡眠休養感」を高めることも大切だとしています。寝室にスマートフォンやタブレットを持ち込まないとか、就寝直前の夜食や飲酒は控えなさいとか、覚醒作用があるカフェイン摂取は1日400ミリグラムを超えると眠りにくくなる可能性があるからコーヒーは1日にカップ4杯までにしなさいとか。厚労省は、いつからか私たちの生活習慣の指導に力が入るようになったみたいです。

昨年、脳・心臓疾患等の疾病についての労災認定基準の一部が改正されて「脳心臓疾患の労災認定基準」では、過重労働や長時間労働の影響を重要視するようになりました。「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること。」と定義していますが、これは睡眠時間がもとになっていて「1日6時間程度の睡眠が確保できない状態」が1か月継続すると1日4時間程度の時間外労働を行った場合に相当するとされ、「おおむね80時間を超える時間外労働が想定される」としています。また「1日5時間程度の睡眠が確保できない状態」だと1日5時間程度の時間外労働を行ったこととして「おおむね100時間を超える時間外労働が想定される」としています。労災認定においては、1日4~6時間以下の睡眠時間は良くないということのようです。

脳心臓疾患は元気に働いていた人が急に倒れるという病気です。そして、労災認定を受ける人は、40代以上が8割を占めるといわれています。40歳を過ぎたら他人からどうこう言われなくても、自分にあったからだの休ませ方を知ることが大切ですね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

過労死等発生企業  再発防止対策を強化  全社的な対応へ指導  厚労省・過労死防止大綱素案

厚生労働省は、今年7月の閣議決定をめざしている新たな過労死等防止対策大綱の素案を作成しました。

素案では、国が取り組む重点対策として、時間外労働の上限規制の遵守徹底や、脳・心臓疾患または精神障害に関する労災保険支給決定が行われた企業における再発防止対策の強化、勤務間インターバル制度の周知などを掲げました。

上限規制については、4月から建設事業や自動車運転業務などでも適用が開始されたことから、労働基準監督署で遵守徹底を図ります。建設業では短い工期設定、自動車運転者では長時間の荷待ちなどが課題になっているため、施主や荷主などの取引関係者に対しても、長時間労働改善に向けた協力を呼び掛けていきます。

一方、過労死等の再発防止対策の取組みとしては、これまで行ってきた発生事業場に対する監督指導・個別指導に加えて、企業本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施します。企業本社への指導は、事業場を通じて実施します。

さらに、一定期間内に複数事案を発生させた企業に対しては、企業の本社を管轄する都道府県労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定を求め、同計画に基づく取組みを企業全体に定着させるための助言・指導(過労死等防止計画指導)を実施するとしました。

◆ニュース

職安が延長適否判断 育休給付巡り雇保則改正 厚労省

 厚生労働省は、子供を保育所に入所させる意思がないにもかかわらず、労働者が育児休業給付の受給期間を延長する目的で自治体へ入所を申し込む行為を防止するため、雇用保険法施行規則を改正し、期間延長手続きを厳格化します。施行は来年4月1日。入所申込みなどに関する労働者本人の申告内容をハローワークが確認し、延長の適否を判断します。

 子が1歳および1歳6カ月を超えた後も労働者が育児休業給付を受給するためには従来、保育所の入所を希望したにもかかわらず入所できないことが要件になっていました。その確認は原則として、市区町村が発行する入所保留通知書や入所不承諾通知書で行ってきました。

 雇保則改正により、受給を延長する要件として、「市区町村に申し込んだ内容が速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものと公共職業安定所長が認めるものであること」を追加。入所保留通知書に加え、本人が記載する申告書と、市区町村への利用申込書の写しを提出させて、申し込んだ施設が、合理的な理由なく自宅や勤務先から遠隔地の施設のみになっていないかどうかなどを確認します。

あらゆる危険に対応 中小へBCP策定ガイド 東商

東京商工会議所は中小企業向けに、自然災害や感染症、サイバー攻撃などさまざまなハザード(危険)に対応できる「オールハザード型BCP」の策定ガイドを発行しました。ハザードごとにBCPを策定するのではなく、ハザードにより生じる人員や設備などの資源への影響に着目して、経営資源ごとに復旧戦略を検討するよう勧めています。

まずは重要な事業を選定し、事業を遂行するために必要な経営資源として、決裁者やスキルを持った人員を決めておくべきとしました。何らかのハザードによってその人員を活用できなくなった場合の対策を立てておけば、想定外の災害も含めてどんなハザードが起きても対処できます。具体的には、決裁者の代行順位の設定、スキル保有者の在宅勤務などを検討しておくよう促しています。


カテゴリー:所長コラム


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