「中小企業新戦力発掘プロジェクト」
2013年11月05日
先日、お客様のところで就業規則の打ち合わせが終わった際、ふと事務所の壁に目がいきました。従業員の名簿が貼ってあったんですが、その中に「派遣社員」という文字があったので、何気なく「派遣社員入れたんですね。」と言ったところ、「それがね、アベノミクスの第二の矢なんですよ!」と社長。
そんなに大きな会社ではないのに2名の派遣社員の名前があったので、私のほうに違和感があったんでしょうね。「派遣料金高くて割に合わなくないですか?」と正直に言いました。そうしたら「それが、6カ月の間、派遣料金が無料なんです!」って返ってきました。私は「…???」。
安倍政権の成長戦略の中核として、女性の就労支援があります。なぜかというと日本では働く女性の約6割が第一子の出産を機に離職しており、20歳代後半から30歳代の女性の就業率が低い状態を改善できれば国内総生産(GDP)の押し上げにつながるといわれているからです。そのため、現在、最長1年半の育児休業を3年までとれるように企業努力を求めたり、また女性に対する教育訓練を充実させることによる復職支援を行ったりと女性の労働力の活用を拡大するために様々な政策に予算が投じられています。
そういった女性の中には豊富な経験や優れた技術を持つ人も少なくないだけに、人材の確保に悩む中小企業にとって即戦力となる可能性を秘めた人も多くいるはずです。ただ、出産により職場を長く離れてしまうと再就職をためらうこともあって、まずは再就職に向けての職場実習を中小企業で受けられるようにということで予算がつきました。
先ほどの私のお客様が利用していたのは、中小企業庁が今年4月に始めた「中小企業新戦力発掘プロジェクト」です。再就職を希望する女性に最長6ヵ月間、インターンシップ(職場体験)として中小企業で働いてもらう仕組みで、期間中は日額5,000円~7,000円を政府が助成し、受け入れする企業側に費用の負担は一切ありません。
実習時間は、週40時間、月21日が上限になっており、パートや正社員としてでも実習は可能なので受け入れ側とすればずいぶんメリットがあるのではないでしょうか。受け入れることが出来る人数は、受け入れ側企業の社員数の半数までということでかなり余裕があります。
実習期間後は正社員として採用することが条件になっているわけではありませんが、能力の高い女性を実習生として受け入れることが出来たとすれば、そのまま採用することも可能であり、その場合には紹介料も発生しません。
北信越ブロックは、仲介を派遣会社の株式会社パソナさんが行っており、担当の方にお話を伺ったところ、現在はブロックで登録85名(うち金沢70名)となっており、そのほとんどの方が実習先での継続雇用を希望しているそうです。
景気が上向きになったためか、求人しても人がこないとか、採用に自信がなく、良い人材はどうやってとるのかといった採用の悩み話はよく聞くところです。この制度は、そんな企業さんにぴったりなのではないでしょうか。簡単に言えば、自社にマッチングするかどうか6ヵ月もの試用期間があり、その6ヵ月分の人件費を国が出してくれる制度なんてなかなかない話ですよね。
私の事務所でもさっそく1名お願いしてみました。今からどんな人がくるか楽しみにしています。
特定社会保険労務士 末正哲朗
カテゴリー:労務