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睡眠時間と通勤手当

2025年08月01日

高齢者は寝すぎると、死亡リスクが1.57倍にもなるようです。厚生労働省が公表した「健康つくりのための睡眠ガイド2023」では、成人、こども、高齢者ごとに睡眠・休養についての推奨事項や参考となる情報がまとめられていて、睡眠時間や眠り方などの生活習慣が、寿命に大きな影響を与えるとされています。どれくらいの時間を寝るのが適当なのかということは誰しも気になりますね。ぼくは、高齢者というにはまだ少し早いですが、最近は5時間ほど寝れば十分になってきました。さきほどの睡眠ガイドでは、世代ごとに推奨される睡眠時間が示されています。小学生なら9~12時間、中学・高校生は8~10時間、成人は6時間以上ですが、高齢者は「床上時間が8時間以上にならないこと」とされていて、「寝すぎない」ことが推奨されています。人は加齢とともにエネルギー消費量が落ちて、睡眠は短く、浅くなっていきます。高齢者の寝すぎは死亡リスクを高めるともいわれていて、その理由は、睡眠時間が長いと睡眠の質が低下してしまい、身体を休めることにならないということだそうです。身体が休まらないので、意欲が減退し、動くのがおっくうになり、「運動不足」や「認知機能の低下」をまねき、やがて肥満や高血圧、糖尿病、心筋梗塞、ガン、うつなどの病気のリスクを高めてしまうということになるようです。

「睡眠時間」は労災認定においても重要視されていることはご存じでしょうか。脳・心臓疾患の労災認定の可能性は、「発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合」に高まります。「100時間」「80時間」の意味は、「1日6時間程度の睡眠が確保できない状態が1か月継続した場合に、おおむね80時間を超える時間外労働が想定され、1日5時間程度の睡眠が確保できない状態が1か月継続した場合としては、おおむね100時間を超える時間外労働が想定される」ということです。このように労災認定と睡眠時間は、強く結びついているわけですが、都市部の場合には、理屈上、ここに通勤時間が加算されることになります。

ぼくが初めて東京に出て驚いたのは、通勤時間帯の満員電車でした。もう乗れないだろうという状態の車両に無理やり身体をねじこみ、そのまま都心まで1時間以上も揺られて毎日通勤します。この背景には、都心と郊外の「家賃の格差」と勤務先からの「通勤定期券」の支給があります。会社員は郊外の家賃の安い物件から、通勤定期券を使って都心の会社に通うわけです。しかも、この通勤定期券を購入するための通勤手当は、非課税なので社員の給与所得とはなりません。この「無料」の通勤定期券を使って遠くに住むことのデメリットが通勤時間です。往復3時間だとすると労働時間に対して約4割にも相当するので「健康的な生活」という点においては、とても大きな負担になっていることは間違いありません。最近では、パワーカップルといわれる高収入の若い夫婦世帯が通勤定期券には目もくれず、都心のタワーマンションに住み時間を大切にするケースもでてきていますが、通勤定期券の支給は「昭和型の日本」を支えてきた要因のひとつといえるでしょう。

今年の秋に、ガソリン価格の上昇を反映してマイカー通勤手当の非課税額が11年ぶりに引き上げられるといわれています。前回は、平成28年度の税制改正により1か月あたりの非課税限度額が10万円から15万円に引き上げられましたが、今回も11年ぶりにこの非課税枠が増額される予定になっています。ただ一方で、通勤手当の非課税枠が廃止されて、全額課税対象になるという話もききます。これは2023年の税制調査会の答申で「通勤手当の課税が検討されている」という内容が報じられたためです。先日、税〇署関係の友人と飲んだとき、その友達が「通勤手当って今度、課税になるんだよね」とポロリ。参議院議員選挙の結果もあってどちらになるのかわかりませんがとても気になるところです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

SNSの対応加える 職場情報提供手引を改訂 厚労省

 厚生労働省は、企業が求職者に対して働き方などの職場情報を提供する際の留意点をまとめた「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」を改訂しました。インターネットやSNSで募集する際の開示・提供事項に関する記述を追加。いわゆる闇バイトなど犯罪実行者の募集との誤解を生じさせないよう、募集者の氏名(名称)、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を記載する必要があるとしています。

手引では、求職者に正確な情報を提供する観点から、定義があいまいな情報のほか、長期間更新されていない情報や、利用実績が明らかでない制度の情報を見直す必要があると指摘しています。

改訂版ではさらに、職業安定法において、労働者を募集する際に求人情報や自社に関する情報の的確な表示が義務付けられ、虚偽の表示または誤解を生じさせるような記載が禁止されている点を明記しました。

◆調査

職場における熱中症による死傷災害の発生状況 厚労省

 厚労省は2024年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況を公表しました。熱中症による休業4日以上の業務上疾病者数は1257人で、統計を取り始めた2005年以降最多となりました。うち死亡者数は31人となり、死亡災害の統計を開始した1989年以降、2番目に多くなりました。

 時間帯別にみると、午前中が430人、17時台が99人、18時台以降が115人でした。全体に占める割合は、順に34.2%、7.9%、9.1%。午前中や、気温が下がった17時台以降でも発生している状況がうかがえます。17時台や18時台以降での死亡者は計6人となり、「日中には重篤な症状はみられなかったにもかかわらず、作業終了後や帰宅後に体調が悪化した事案が含まれる」と分析しています。


カテゴリー:所長コラム


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