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温泉街の楽しみ方

2025年03月03日

寒い冬に温泉につかるのが大好きで、これまでいろいろな温泉地にでかけました。最近では宿泊客数の減少にたくさんの温泉地が悩まされていますが、そんな温泉地が新しい取り組みで大きく変化してきた様子が見られるようになってきたようです。温泉エッセイストの山崎まゆみさんが草津温泉の取り組みを紹介しています。(月刊誌プレジデント参照)「にっぽんの温泉100選」で22年連続1位となっている草津温泉は温泉街の中心にある湯畑が人気の温泉地です。草津温泉では、これまで宿泊層の多くを占めていたのは中高年層でしたが、現在は20代と30代の客層が約半数を占めるようになったというのです。ぼくも草津温泉には何度か行きましたが、湯畑の周りは若い人たちで溢れていて、テーマパークにいるような状態でした。草津に若い人を呼ぶきっかけになったのは、ある旅館経営者の「20代、30代の働いているお客様は『チェックイン時刻の遅延』と『夕食キャンセル』を希望される方が多い」という気づきにあるそうです。仕事のために丸2日間の休みが取れない若いお客様のために、仕事が済んだ遅い時間からでも1泊を楽しめるように「イチアサ(一朝)」という形態を思いついたそうです。イチアサというのは、一泊朝食付きの新しい宿泊形態です。温泉旅館の楽しみのひとつは豪華な夕食なのではないかと思いますが、イチアサでは、宿で夕食をとらないために夜の時間が自由になり、結果として、誰もいない共同湯を独占できたり、夕食は温泉街の食事処で、時間も種類も量も自由に選べることになったりで若い人たちに喜ばれたそうです。たしかに、予約サイトから草津温泉の宿をとろうとすると夕食がつかないプランがとても多く、ぼくみたいなおじさんはどうしても戸惑うことになります。イチアサの宿が増えたということのようですね。ただ一方で、草津の旅館のご主人からは「若い人たちは5人とかで夕食をとるのに街中の中華屋に入って、餃子一皿でビールを飲んで出ていくから迷惑している。」という話を聞いたこともあります。最近の外国人観光客のオーバーツーリズムの問題にも似ていますが、観光地に観光客が増えることはその地域の経済発展につながりますが、ニーズに合わせた住みわけがこれから必要になってくるのだろうと思いました。

先日、青山学院大学学長の稲積宏誠先生のお話を聞く機会がありました。青山学院大学といえば、陸上競技部の箱根駅伝での毎年の活躍や硬式野球部でも全日本大学選手権優勝、多数のドラフト指名選手などスポーツ面での活躍が注目されています。稲積学長はそういう選手たちをどう見ているのか。選手の全体練習は早朝だけとなっていて、あとは選手たちの自主練習に任されており、それが強くなるチームの特徴で、選手は自分で考えて、それを自分の言葉にして話せることが大切だと言われました。あとは「いつでも見られている感」を感じされることが大事だそうです。陸上競技部の原監督、硬式野球部の安藤監督ともに「名監督」と言われます。今年、野球のドラフト指名された学生は、「安藤監督は部員とのコミュニケーションを重視される方です。野球の技術や練習のやり方について細かく指導するというより、学生一人一人の考えを重視し、大人同士として接してくれています。」「この監督の下でなら、自分の野球を追求できると思った。」とインタビューに答えていました。「人は心底尊敬した人物から知らず知らずのうちに多くのものを学ぶ。学生でも偉い先生を心から尊敬している者は器量がどんどん大きくなる。しかし、先生を批判したり表面的に奉っているだけとなると、成長が止まる」といいます。(月刊到知 「特集師資相承」より)

このような部活動での監督と選手との関係は、最近の会社での上司と部下の関係の変化と同じように見えます。最近ではコミュニケーション能力のない人は「教える側」にはなれないといわれています。もちろんですが、良い「教える側」を求めるときは「学ぶ側」の姿勢にすべてがかかっていて、謙虚さが求められることになります。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

養育両立支援休暇 時間単位で取得が可能 短時間労働者でも 厚労省

厚生労働省は、今年4月から段階的に施行する改正育児介護休業法に関する通達を発出しました。

改正法では、今年10月以降、事業主に対し、同措置として、養育両立支援休暇の付与や、始業時刻等の変更、テレワーク等、短時間勤務制度などから2つ以上の措置を選択して講じるよう義務付けています。

通達では、柔軟な働き方を実現するための措置のうち、テレワーク等について、情報通信技術を利用しない業務も含むことを明確化しました。

養育両立支援休暇は、1年間に10日以上与え、具体的な用途を限定せずに利用できるようにする必要があります。利用例として、通常保育所に子を迎えに行く配偶者が出張で迎えができない日に、時間単位で休暇を取得し、保育所に迎えに行くケースを示しました。

1年間の起算日は事業主が任意に定められるとしました。同休暇の取得単位については、改正法で「1日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、1日未満の単位(省令により時間単位)で取得することができる」と規定している一方、省令には規定がないため、労働者の所定労働時間数に関係なく、1時間単位で取得できるとしています。ただし、業務の性質または業務の実施体制に照らして、時間単位での取得が困難な業務に従事する労働者は、労使協定により、時間単位での取得ができない者と定めることができるとしました。

失効年次有給休暇の積立を、同休暇の付与措置として講じることができる点も明確化しました。

◆ニュース

経過措置でリーフレット くるみんの新認定基準 厚労省

 厚生労働省は、「くるみん認定」の新認定基準が今年4月から適用されるのを受け、認定申請の経過措置などに関するリーフレットを作成しました。令和6年度末までに開始した行動計画については、7年度以降の計画期間を、新基準を達成しているかどうかを判断するための計画期間とみなすことができるとしました。この場合、新基準達成による認定マークが付与されます。また、9年3月末までに申請を行った場合は、計画期間の時期にかかわらず旧基準の認定を受けられるとしています。

 新たな認定基準では、育児休業等取得率などに関する要件を厳格化しました。3段階の認定のうち、たとえば「くるみん」では、男性の育休等取得率の基準を従来の「10%以上」から「30%以上」に引き上げています。

 リーフレットでは経過措置の適用例も示しました。5~8年度の4年間を計画期間とする企業において、5~6年度の男性育休対象者が25人で取得者が計4人、7~8年度の対象者が30人で取得者が計10人の場合、5~8年度全体の育休取得率は30%に満たないものの、7~8年度に限れば33%に上るため、経過措置により新基準による認定を受けられるとしています。

◆監督指導動向

代休の見直し促す 割増賃金で相談めだつ 高崎労基署

 群馬・高崎労働基準監督署は、管内事業場へ代休と休日の振替の適正な運用を呼び掛けるため、リーフレットを作成しました。割増賃金の考え方については、カレンダーを用いて視覚的に分かりやすく解説しています。同労基署の担当者は、「労働者から割増賃金の支払いに関する相談を受ける際に、代休と休日の振替を誤って運用している事業場がみられる。今一度、運用を見直してほしい」と話しています。

 カレンダーでは、法定外休日が土曜、法定休日が日曜、賃金締日が月末、週の起算日が日曜の会社を例に挙げました。日曜に出勤を求めたケースを想定しています。休日の振替の場合、休日労働に対する割増賃金は不要ですが、週の法定労働時間を超えた場合は通常の賃金の2割5分以上の割増賃金が発生するため、注意を促しました。

 休日の振替を行うに当たって必要な措置もまとめています。就業規則に振替休日の規定を置いたうえで、振替休日は4週4日の休日が確保される範囲内に与えるよう求めました。振替休日を特定したうえで、前日までに労働者への通知が必要と注意しています。


カテゴリー:所長コラム

年金改革法案とこれからの高齢者

2025年02月03日

年明けに、弊社近くの介護施設にいると思われる92歳の方から年賀状が届きました。「長い間ご無沙汰をしていました。小学校からの友達を思い出しております。春になったら会いましょう。」というようなことが書いてあります。ぼくには92歳の友達はいないし、それに名前が微妙に間違っていて、たちの悪いイタズラかと思いましたが、なんとなく間違っている名前を検索してみたところ県内の93歳の芸術家さんがヒットしました。この人に年賀状を送りたかったんだと思うと、とても大切なもののように感じて、その施設に年賀状を届けてきました。年の初めになにか良いことをしたような気持ちになりました。

日本鋼管の創業者である浅野総一郎氏は、「大抵の人は正月になると、また一つ年を取ってしまったと言い、殊に年配になると正月がくるのを恐がるが、私は年なんか忘れてしまっている。そんなことを問題にするから、早く年がよって老いぼれてしまう。この世は一生勉強していく教場であって毎年一階ずつ進んでいくのだ。年を取るのは勉強の功を積むことに他ならない。」勉強とは学問だけでなく仕事を通じて自分を磨くことで、その勉強に真剣勝負の心構えで臨むことが必要、それを積み重ねて一年に達した時、人生学の教場の一学年を卒業させてもらえる、と言葉を重ね、浅野総一郎氏はこう結んでいる。(月刊到知2024.3より)

昨年の経済財政諮問会議で「高齢者の定義を5歳延ばすことの検討」が提言されました。ようするに高齢者の定義を65歳から70歳にしてはどうかということです。さて、日本では百歳以上の高齢者が60年前と比べてどのくらい増えていると思われますか。1963年の統計で百歳以上の高齢者数は全国で153人でしたが、それが2023年には、男性1万550人、女性8万1589人で、なんと合計9万2139人になっています。60年間で約600倍に増えているんです。この数字は今後、一気に膨れ上がるといわれていて、団塊の世代が100歳になり始める2047年に50万人を突破し、2049年には65万人を超えるという予想もあります。健康寿命が延びていることもあって以前とは「高齢者」の意味が全く異なっていますが、高齢者の定義が「70歳から」になると年金制度はもちろんですが、いろいろな制度の設計に大きな影響が生じることが予想されます。

これからの通常国会で年金改革法案の提出される予定ですが、その目玉の一つが、働く高齢者の年金をカットする在職老齢年金制度の見直しです。65歳以上の高齢者は厚生年金と賃金の合計が月50万円を超えると、受け取る厚生年金が減額されますが、その基準額を2026年4月から月62万円に引き上げることで、約20万人の減額がなくなるそうです。この制度は、人手不足が強まるなかで高齢者の働く意欲をそいでいるとの指摘があるため将来的には廃止になると思われます。これから高齢者は、元気なうちは働き、働けない高齢者を助けることが当たり前になります。

80歳をとうにすぎたぼくの母ですが、高齢による両ひざの痛みですっかり外へは出歩かない生活になっていましたが、何を思ったのか両膝を手術すると言い出し、昨年末に入院しました。両膝に人工関節を入れるそうです。よほど痛かったのかとかわいそうに思う反面、年齢を考えるとずいぶん思い切ったことをするもんだと思いました。中村天風は「運命を拓く」のなかで、「活きている間に、一日一刻といえども、完全に活きることが、この貴重なる生命を与えてくれた造物主への正当な義務である。(中略)いくつになっても、いかなる場合も、自己向上を怠らないようにすること、これが自分の生命の本来の理想的な活き方なのだ。そういう気持ちを持っていると、いつまで年老いても、極めて壮健で元気よく、人並み以上の若さと溌刺さに満たされ、その生命というものは活躍してくれるのである。」といわれています。昭和の時代の考えや価値観に基づいた制度から脱して、今の時代にあった新しい生き方や仕組みを作り上げるための過渡期に日本はあるのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

「106万円の壁」撤廃 最賃引上げが背景に 社保審年金部会報告書

厚生労働省の社会保障審議会年金部会は、年金制度改革の方向性に関する報告書をまとめました。短時間労働者に関する厚生年金の加入要件から「年収106万円の壁」となっている賃金要件の撤廃を盛り込んでいます。

地域別最低賃金の引上げによって、労働時間要件である週20時間以上働いた場合に月額賃金8.8万円以上の賃金要件を上回る地域が増加している点や、就業調整を行うかどうかを判断する基準として労働者から強く意識されている点を踏まえました。

賃金要件の撤廃時期については、保険料負担が相対的に過大にならないよう地域における最賃の引上げ動向を踏まえて決定すべきとしました。さらに、障害者など最賃の減額特例対象者のうち、月額賃金8.8万円以下の短時間労働者については、本人が希望する場合に任意で加入できる仕組みとします。賃金要件の撤廃後は、50人以下の中小企業への適用拡大を進めます。その際は、十分な周知・準備期間を確保するとしました。

年金部会では、労働者の負担感を軽減できるよう、標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者が厚生年金に加入する場合に、労使の保険料負担割合を変更できる特例措置の創設についても検討しましたが、慎重・反対意見がみられたため報告書には盛り込みませんでした。今後、政府において同特例の妥当性などの検討を深める必要があるとしました。

◆ニュース

0.1%引下げを了承 7年度雇用保険料率で 労政審部会

 厚生労働省は、労使が負担する令和7年度の雇用保険料率を引き下げる方針です。6年度の保険料率である1.55%から、0.1%引き下げて1.45%とする案を労働政策審議会雇用保険部会に示し、了承されました。そのうち、使用者の料率は0.9%、労働者の料率は0.55%となります。

現行の雇用保険料率の内訳は、失業等給付充当分0.8%(労使折半)、育児休業給付充当分0.4%(同)、雇用保険二事業充当分0.35%(使用者のみ)となっています。

雇用保険部会では昨年11月以降、財政状況を踏まえて弾力的に保険料率を設定できる失業等給付充当分および育休給付充当分の7年度保険料率について検討してきました。

同年12月23日の部会で厚労省は、失業等給付充当分について、5年度決算を踏まえた直近の財政状況が引下げの基準を満たしたとして、0.1%引き下げ、0.7%とする案を提示。育休給付充当分についても、0.4%を据え置くとしました。

「67歳定年」選択可に 技術者確保へ2年延長 大和ハウス

 大和ハウス工業㈱は、豊富な経験を持つ1級建築士や1級施工管理技士を確保するため、定年年齢を65歳とするか67歳とするか選択できる制度を導入しました。すでに2022年から60歳での役職定年や収入抑制措置を廃止しているため、最長で67歳まで、報酬を維持して働くことが可能となります。

同社は23年に、65歳定年後も原則70歳まで嘱託社員として週4~5日勤務できる再雇用制度を導入しました。とくに建築士などの技術者に関しては、年齢制限を撤廃し、生涯を通じての活躍を促しています。一方、再雇用を機に報酬が半減、またはそれ以下になることから、モチベーション低下や他社への人材流出などの課題がありました。

新制度の対象は、技術系職種の大半が所属する「全国社員(転勤あり)」のコースに限定しています。現在すでに再雇用となっている社員も、来年度以降67歳を迎える者については「67歳定年」を選択して正社員に戻ることを一部認めます。よりモチベーションの高い社員に活躍してほしいとの考えから、現在週5日で勤務している者に限定しました。


カテゴリー:所長コラム

令和7年度の年金制度改正と改正育児介護休業法

2025年01月06日

昨年末のSNSへの投稿です。「ボーナスの使い道 1位所得税、2位厚生年金保険料、3位健康保険料」その他にも「天引きされている社会保険料の額が大きすぎる」と不満が続出しているようです。20年前にはボーナスの社会保険料率が1%だったことを考えると、その金額に驚くのも無理はないですね。そんな社会保険料に注目が集まる中で、2025年は5年に一度の年金制度改正の年にあたります。まず、見直しの第一の柱にあげられるのは「基礎年金の底上げ」です。厚生年金の受給者を含めたすべての人が受け取る基礎年金は、過去30年と同程度の経済状況が続く場合、年金財政悪化のために、今のままでは将来の受け取り水準が3割低下するといわれています。次に第二の柱には「働き控え」を減らすことが挙げられています。改革案ではパートの働き控えを減らすため「週20時間以上働く人は原則として厚生年金に入る」というルールに見直す方針です。また、高齢者の働き控えもあります。一定の給与所得がある高齢者について受け取る年金額を減らす「在職老齢年金制度」を縮小して、年金を満額受給できる人を増やします。現在は給与と厚生年金の合計額が月50万円を超えると、受け取る厚生年金が減らされますが、この基準額を62万円もしくは71万円に引き上げることが検討されていて、働く高齢者の就労意欲がそがれないようにします。最後に第三の柱ですが、高所得者の負担増を通じた年金財政の安定となっています。現在は厚生年金保険料の算出に用いる「標準報酬月額」の上限が月収65万円となっていますが、75万円~98万円に引き上げられる予定です。賞与を除く年収798万円以上の人の厚生年金保険料が増えることになります。

このような年金制度への大きな影響を与えているのは日本の人口動態ですが、特に生産年齢人口の減少により多方面で労働力の確保が困難となっている現状はかなり深刻です。そんな中でも労働力として頑張ってくれているのが「女性」です。総務省の労働力調査によると2024年上半期の女性の正社員数は15歳~64歳で1241万人となって、21年ぶりに非正規社員の数を上回りました。その正社員が増えている理由ですが、結婚・出産後も仕事を続ける女性が増えたことが大きいようです。最近の出産動向基本調査によると、第一子出産後も働き続ける妻は53.8%と、20年間で2倍以上に増えています。

このような女性の労働参加を支えるために、これまで法改正が繰り返し行われてきました。まず、勤労婦人福祉法が1972年(昭和47年)に制定され、初めて女性労働者への育児休業の実施等については事業主の努力義務であることが定められました。その後は、男性労働者も含めてすべての女性労働者に広く育児休業を保障するまでにはいたらなかったわけですが、大きな転機となったのは、1989年(平成元年)の「1.57ショック」といわれています。この年の合計特殊出生率は、1966年(昭和41年)「ひのえうま(丙午)」の年の1.58を下回って、戦後最低の1.57となり出生数は前年比-25.4%にまで落ち込みます。ひのえうまの年に生まれた女性は火のように激しく、夫を食い殺すという言い伝えがあり、女性の縁談には悪い条件になるとされたため、多くの夫婦が出産を避けたそうです。私は昭和42年の生まれになるので、その前の年がひのえうまの年にあたっていたわけですが、一学年上の先輩の人数がとても少なかったことだけは覚えています。この1989年が、仕事と育児の両立を推進する政策の重要性を痛感させることになって、1歳未満の子を養育する男女労働者に対して育児休業の権利を保障する「育児休業等に関する法律」が1991年に制定されるにいたりました。育児介護休業法は、幾度もの法改正を経て現在にいたっていますが、今年(令和7年)もまた改正が予定されています。 

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

意見聴取は施行前に 柔軟な働き方実現措置 育介法Q&A

厚生労働省は、2025年4月と10月の2段階で施行する改正育児介護休業法に関するQ&Aをまとめました。3歳~小学校就学前の子を養育する労働者に対する柔軟な働き方を実現するための措置について、導入要件となる過半数労働組合などへの意見聴取は施行日である2025年10月1日よりも前に行う必要があるとしました。

改正法では同措置として、始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務制度などから2つ以上を選択して講じるよう事業主に義務付けました。選択時には、過半数組合または過半数代表者から意見を聴取しなければなりません。さらに、3歳未満の子を養育する労働者への個別周知および利用意向の確認も義務付けています。

Q&Aでは、施行日の2025年10月1日時点で措置を講じることができるよう、過半数組合などの意見聴取はあらかじめ行っておくべきとしています。

労働者への個別周知・意向確認については、施行日前に実施する義務はないと明記しました。ただし、施行前に行っておくのが望ましいとしました。

事業主が措置を用意していても、労働者の職種などから利用できないことがあらかじめ想定される場合は、措置義務を果たしたことにならないと指摘しています。

◆ニュース

工期設定で協力依頼 働き方改革へ発注側に 厚労省・国交省

 厚生労働省と国土交通省は、民間建設工事の発注事業者を会員に持つ主要経済団体に対し、建設業の働き方改革の実現に向けた取組みに関する協力要請を行いました。工期設定に当たり、週休2日を確保するほか、受注者からの見積りに基づき、受注者・下請が時間外労働の上限規制を遵守できる内容となるよう、会員企業の協力を求めています。

 上限規制遵守の観点からは、猛暑日、降雨・降雪日、河川の出水期などの自然的要因における不稼働によって、作業が他の期間に集中する可能性があることへの配慮を要請。技能者や重機オペレーターが現場へ移動する時間が労働時間に該当し得る点についても注意を促しました。また、工事の前工程で工程遅延が発生するなどして受注者から工期について協議の申出があった場合には、適切に協議し、状況に応じて工期延長など必要な契約変更を実施するよう訴えています。

「交際相手の近くに」も 希望転勤制を拡充 トラスコ中山

工場用工具卸売業のトラスコ中山㈱(東京都港区)は、従業員に対して交際相手の居住地近隣への転勤を認める「ひなどり転勤制度」を新設しました。2005年から配偶者の転勤や結婚・介護などに伴う“希望転勤”は可能でしたが、対象範囲を拡大しています。これまでも結婚を控えたケースなどには準用してきたところ、線引きが分からないなどの声もあり、改めて制度化を図りました。転勤の申請に当たり、書類の提出などは特段求めません。

同社では全国転勤型の総合職に対し、ジョブ・ローテーションを通じて育成を行います。配置転換を繰り返すなか、従業員が自らの事情に沿って勤務地を選択可能とし、将来の人生設計を考えやすくするのが狙いです。

過去3年間に既存の希望転勤制度を利用した人数は、育児・介護など家庭の事情による「希望転勤制度」が67人、配偶者の転勤に伴う「おしどり転勤制度」が18人となっています。


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2024年12月23日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月28日(土)~1月5日(日)まで年末年始休業とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしますが、宜しくお願いいたします。

2025年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。


カテゴリー:お知らせ

これから日本が迎える「2040年問題」とは

2024年12月02日

日本の人口減少と少子高齢化が進行することにより、2040年に表面化する社会問題の総称を「2040年問題」といいます。2040年の日本では65歳以上の高齢者が3,929万人となり、全人口の34.8%を占めると予想されています。これは、1971年から1974年にかけて生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳を超える年が2040年です。そのため、その時期には、高齢化による高齢者人口の増加と少子化による労働人口の大幅な減少が同時に起こり、日本経済や社会保障が危機的な状況に陥るといわれています。

政府が2018年に公表している将来推計では、自己負担分を除いた費用の総額にあたる社会保障給付費は2040年度に190兆円程度に達して今年度に比べて4割程度も増加する見通しになっています。その財源は当然、国民や企業が払う税金や保険料となります。連合が公表した今年の賃上げの結果によれば、平均で5.1%となり33年ぶりの賃上げ率となっていますが、なかなかその恩恵を感じられないという人が多くいるといわれます。その理由は、日本の税制においては、給与から直接引かれてしまう税や社会保険料の額が大きいために国民の負担感が増しているということになりそうです。

社会保険料を減らす改革の一方で取り組む必要があるのは少子化対策です。この数年は、新型コロナウィルスの影響で、子どもが生まれる数である出生数が世界中で急減しているといわれています。日本は新型コロナ前から少子化が問題になっていたので、コロナにより出生数が激減したとまではいえない状況ですが、確実に減少し続けているのは間違いないようです。2015年前後までは10万人の減少に10年強を要するペースであったものが、2016年に初めて100万人を下回ってから、わずか3年後の2019年に90万人を大きく下回って86.5万人となりました。さらに、2022年には77万人にまで落ち込んでいます。昭和女子大学総長の坂東眞理子氏は、「日本の課題は少子化、人口減、労働力不足である。歴代の内閣も児童手当の増額、高校授業料の無償化、大学奨学金の増額、保育所の定員増、育児休業の充実などに取り組んできたが、効果は出なかった。出所率が日本の1.20より低い0.72の韓国も児童手当の充実、育児休業など日本同様力を入れてきたものの、出生率を上向かせることはできなかった。」「日本は効果の期待できない少子化対策に注力し続けている。少子化の最大の原因は結婚できない若者(特に若い男性)の増大なのだが、相変わらず、生まれた子供の養育負担の軽減に努めている。日本もこれからは効果の乏しい対策に力を注ぐだけでなく、人口や労働力が減る中でどうこの社会経済を維持するか考えるべきではないだろうか。」(北國新聞2024.11.4)と話されています。若い男性が結婚できていないという指摘には注目するところです。すべての人が結婚しなければいけないという話ではないですが、結婚に対する考え方が多様化していて、日本の平均年取が上がらずに結婚に躊躇する人が増えていることは事実ですし、今後も婚姻数は下がり続けることになることが危惧されます。

保育園の関係者によると、最近は20代前半の若いうちに出産、育児を済ませたいと考える女性が増えているそうです。そうするとその親の世代はまだ50代くらいなので現役で働いていることも多く、昔とちがい育児を、「おじいちゃん、おばあちゃん」に手伝ってもらえないということになるので、若い親が二人で協力して育児をしなければならず二人で育児休業がとれるのはありがたいことなんだということでした。厚労省の2024年の調査では18~25歳の約2000人のうち、男性の約9割が「仕事も育児も熱心に取り組むつもり」と回答しています。「男性も育児をするのが当たり前」との意識を職場の管理職が持って、若い世代の意識を理解する必要がありそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

フリーランス 労働者性の確認を強化 監督署に相談窓口 労基法違反は是正勧告へ

厚生労働省は、業務委託などで働く個人事業主(フリーランス)からの相談を端緒に、労働基準監督署において労働者に当たるかどうかの判断を積極的に行っていく方針です。11月のフリーランス新法施行に合わせ、全国の労基署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置しています。相談者の「申告」に基づき、委託者である企業に立入調査を実施していきます。実態から労基法上の労働者に該当すると判断し、割増賃金不払いや違法な時間外労働などの違反がみつかったときは是正勧告します。

厚労省によると、近年は働き方が多様化し、フリーランスとしての新しい働き方が拡大する一方で、実態は労働者に当たる働き方をしているにもかかわらず、労基法などによる保護が受けられていないといったケースがあります。そのため、全国の労基署に設置した窓口では、平日の8時30分~17時15分の時間帯に、自身の働き方が労働者に該当すると考えるフリーランスからの相談に広く対応します。割増賃金の不払いや違法な時間外労働のほか、「年次有給休暇が取得できない」「労災保険を使わせてもらえない」といった悩みなどを受け付けます。

労基署がこれまでに処理したフリーランス関係の申告事案では、建設業の一人親方や、宅配ドライバーなどの運転者が多かったといいます。窓口での相談を端緒として、実態が労働者となっている者の労働環境整備に努める方針で、厚労省は「フリーランスを活用している企業は、指揮監督下で働かせていないかなどをチェックしてほしい」と話しています。

◆ニュース

実態勘案し総合判断 新興企業役員の労働者性 厚労省通達

 厚生労働省は、新しい技術やビジネスモデルで急成長をめざす企業である「スタートアップ企業」について、そこで働く者への労働基準法の適用を巡る解釈に関する通達を都道府県労働局長に発出しました。スタートアップの役員であっても労基法上の労働者に該当するかどうかは、勤務場所・時間の拘束性の有無や報酬の労務対償性などを判断要素として個々の実態を勘案し、総合的に判断するとしています。

取締役などの役員は一般的には労働者に該当しないと考えられるとする一方、取締役であっても就任の経緯や取締役としての業務執行の有無、業務への対価の性質・額などを総合考慮しつつ、会社との実質的な指揮監督関係や従属関係を踏まえて労基法上の労働者と判断した裁判例があることに留意すべきとしました。

管理監督者に該当するか否かについても、実態に沿って総合的に判断すると指摘しました。

取締役などの役員兼務者や、経営者直属の組織の長、企業内でそれらと同格以上に位置付けられている全社的なプロジェクトを統括するリーダーなどについては、基本給や役付手当が地位にふさわしい待遇となっていたり、一時金の支給率などにおいて職場の一般労働者に比べて優遇措置を講じていたりする場合、「一般的には管理監督者の範囲に含めて差し支えない」としています。

年1回管理者に研修 カスハラ対応体制示す マツキヨココカラ

ドラッグストアチェーン大手の㈱マツキヨココカラ&カンパニーは、カスタマーハラスメントに対する基本方針を策定し、対応マニュアルの作成や管理者向け研修の実施など、今後の対応体制を示しました。

店長、スーパーバイザーなどの管理者全員を対象として、今年度下期中の研修実施を予定しています。先行して全従業員に向けた「クレーム・トラブル対応研修」を10月に行いました。いずれも今後は年1回開催していく予定です。

相談窓口はすでに社内に設置しており、管理者・当事者の双方から相談を受け付けています。内容によっては関連部署と連携し、会社として対応します。相談窓口やお客様相談窓口に集まる情報を中心に事例を蓄積し、クレーム・トラブルの傾向を分析。特筆して多いケースなどについては統一した対応方法を定め、社内研修や対応マニュアルを通じて教育します。対応マニュアルは店舗運営マニュアルの一部として取り扱い、随時アップデートしていきます。

カスハラ対応については、今春に労働組合からの要求があったといいます。基本方針は、厚生労働省のマニュアルとUAゼンセンのガイドラインを参考に策定しています。


カテゴリー:所長コラム



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