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これから日本が迎える「2040年問題」とは

2024年12月02日

日本の人口減少と少子高齢化が進行することにより、2040年に表面化する社会問題の総称を「2040年問題」といいます。2040年の日本では65歳以上の高齢者が3,929万人となり、全人口の34.8%を占めると予想されています。これは、1971年から1974年にかけて生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳を超える年が2040年です。そのため、その時期には、高齢化による高齢者人口の増加と少子化による労働人口の大幅な減少が同時に起こり、日本経済や社会保障が危機的な状況に陥るといわれています。

政府が2018年に公表している将来推計では、自己負担分を除いた費用の総額にあたる社会保障給付費は2040年度に190兆円程度に達して今年度に比べて4割程度も増加する見通しになっています。その財源は当然、国民や企業が払う税金や保険料となります。連合が公表した今年の賃上げの結果によれば、平均で5.1%となり33年ぶりの賃上げ率となっていますが、なかなかその恩恵を感じられないという人が多くいるといわれます。その理由は、日本の税制においては、給与から直接引かれてしまう税や社会保険料の額が大きいために国民の負担感が増しているということになりそうです。

社会保険料を減らす改革の一方で取り組む必要があるのは少子化対策です。この数年は、新型コロナウィルスの影響で、子どもが生まれる数である出生数が世界中で急減しているといわれています。日本は新型コロナ前から少子化が問題になっていたので、コロナにより出生数が激減したとまではいえない状況ですが、確実に減少し続けているのは間違いないようです。2015年前後までは10万人の減少に10年強を要するペースであったものが、2016年に初めて100万人を下回ってから、わずか3年後の2019年に90万人を大きく下回って86.5万人となりました。さらに、2022年には77万人にまで落ち込んでいます。昭和女子大学総長の坂東眞理子氏は、「日本の課題は少子化、人口減、労働力不足である。歴代の内閣も児童手当の増額、高校授業料の無償化、大学奨学金の増額、保育所の定員増、育児休業の充実などに取り組んできたが、効果は出なかった。出所率が日本の1.20より低い0.72の韓国も児童手当の充実、育児休業など日本同様力を入れてきたものの、出生率を上向かせることはできなかった。」「日本は効果の期待できない少子化対策に注力し続けている。少子化の最大の原因は結婚できない若者(特に若い男性)の増大なのだが、相変わらず、生まれた子供の養育負担の軽減に努めている。日本もこれからは効果の乏しい対策に力を注ぐだけでなく、人口や労働力が減る中でどうこの社会経済を維持するか考えるべきではないだろうか。」(北國新聞2024.11.4)と話されています。若い男性が結婚できていないという指摘には注目するところです。すべての人が結婚しなければいけないという話ではないですが、結婚に対する考え方が多様化していて、日本の平均年取が上がらずに結婚に躊躇する人が増えていることは事実ですし、今後も婚姻数は下がり続けることになることが危惧されます。

保育園の関係者によると、最近は20代前半の若いうちに出産、育児を済ませたいと考える女性が増えているそうです。そうするとその親の世代はまだ50代くらいなので現役で働いていることも多く、昔とちがい育児を、「おじいちゃん、おばあちゃん」に手伝ってもらえないということになるので、若い親が二人で協力して育児をしなければならず二人で育児休業がとれるのはありがたいことなんだということでした。厚労省の2024年の調査では18~25歳の約2000人のうち、男性の約9割が「仕事も育児も熱心に取り組むつもり」と回答しています。「男性も育児をするのが当たり前」との意識を職場の管理職が持って、若い世代の意識を理解する必要がありそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

フリーランス 労働者性の確認を強化 監督署に相談窓口 労基法違反は是正勧告へ

厚生労働省は、業務委託などで働く個人事業主(フリーランス)からの相談を端緒に、労働基準監督署において労働者に当たるかどうかの判断を積極的に行っていく方針です。11月のフリーランス新法施行に合わせ、全国の労基署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置しています。相談者の「申告」に基づき、委託者である企業に立入調査を実施していきます。実態から労基法上の労働者に該当すると判断し、割増賃金不払いや違法な時間外労働などの違反がみつかったときは是正勧告します。

厚労省によると、近年は働き方が多様化し、フリーランスとしての新しい働き方が拡大する一方で、実態は労働者に当たる働き方をしているにもかかわらず、労基法などによる保護が受けられていないといったケースがあります。そのため、全国の労基署に設置した窓口では、平日の8時30分~17時15分の時間帯に、自身の働き方が労働者に該当すると考えるフリーランスからの相談に広く対応します。割増賃金の不払いや違法な時間外労働のほか、「年次有給休暇が取得できない」「労災保険を使わせてもらえない」といった悩みなどを受け付けます。

労基署がこれまでに処理したフリーランス関係の申告事案では、建設業の一人親方や、宅配ドライバーなどの運転者が多かったといいます。窓口での相談を端緒として、実態が労働者となっている者の労働環境整備に努める方針で、厚労省は「フリーランスを活用している企業は、指揮監督下で働かせていないかなどをチェックしてほしい」と話しています。

◆ニュース

実態勘案し総合判断 新興企業役員の労働者性 厚労省通達

 厚生労働省は、新しい技術やビジネスモデルで急成長をめざす企業である「スタートアップ企業」について、そこで働く者への労働基準法の適用を巡る解釈に関する通達を都道府県労働局長に発出しました。スタートアップの役員であっても労基法上の労働者に該当するかどうかは、勤務場所・時間の拘束性の有無や報酬の労務対償性などを判断要素として個々の実態を勘案し、総合的に判断するとしています。

取締役などの役員は一般的には労働者に該当しないと考えられるとする一方、取締役であっても就任の経緯や取締役としての業務執行の有無、業務への対価の性質・額などを総合考慮しつつ、会社との実質的な指揮監督関係や従属関係を踏まえて労基法上の労働者と判断した裁判例があることに留意すべきとしました。

管理監督者に該当するか否かについても、実態に沿って総合的に判断すると指摘しました。

取締役などの役員兼務者や、経営者直属の組織の長、企業内でそれらと同格以上に位置付けられている全社的なプロジェクトを統括するリーダーなどについては、基本給や役付手当が地位にふさわしい待遇となっていたり、一時金の支給率などにおいて職場の一般労働者に比べて優遇措置を講じていたりする場合、「一般的には管理監督者の範囲に含めて差し支えない」としています。

年1回管理者に研修 カスハラ対応体制示す マツキヨココカラ

ドラッグストアチェーン大手の㈱マツキヨココカラ&カンパニーは、カスタマーハラスメントに対する基本方針を策定し、対応マニュアルの作成や管理者向け研修の実施など、今後の対応体制を示しました。

店長、スーパーバイザーなどの管理者全員を対象として、今年度下期中の研修実施を予定しています。先行して全従業員に向けた「クレーム・トラブル対応研修」を10月に行いました。いずれも今後は年1回開催していく予定です。

相談窓口はすでに社内に設置しており、管理者・当事者の双方から相談を受け付けています。内容によっては関連部署と連携し、会社として対応します。相談窓口やお客様相談窓口に集まる情報を中心に事例を蓄積し、クレーム・トラブルの傾向を分析。特筆して多いケースなどについては統一した対応方法を定め、社内研修や対応マニュアルを通じて教育します。対応マニュアルは店舗運営マニュアルの一部として取り扱い、随時アップデートしていきます。

カスハラ対応については、今春に労働組合からの要求があったといいます。基本方針は、厚生労働省のマニュアルとUAゼンセンのガイドラインを参考に策定しています。


カテゴリー:所長コラム

外国人材の確保、育成就労制度の導入へ

2024年11月01日

私が技能実習制度に初めて関わりをもつようになったのは20数年前になります。20年前は日本と中国の経済力の差は明らかだったこともあって、中国からの実習生がほとんどでした。実習生は毎日、長時間の残業をこなして、その毎月の給与のほとんどを母国にいる家族へ送金しており、自分たちは1か月を数千円で生活していたようです。そのかわり、日本で3年間頑張れば帰国後に家が建つとまで言われていたものです。その後は、中国の経済水準が向上したことで、来日する実習生は中国からベトナムへと移り変わりました。さらに最近ではミャンマーからの技能実習生が増えてきています。ミャンマーは仏教国で家族を大切にする国民性が日本人との相性も良く、一緒に働く仲間として受け入れられているようです。

そのような日本の技能実習制度ですが、国際的には批判を受けていて制度の廃止の議論が長くなされてきました。そんな中で、令和6年6月14日に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び外国人の技能実習の保護に関する法律の一部を改正する法律」が成立しました。この法改正により技能実習制度を発展的に解消して、育成就労制度が新設されることになり、これから外国人を受け入れる日本の環境が整備されることになりました。技能実習制度は日本の技術の海外移転による国際貢献が目的でしたが、育成就労制度では、人手不足の状況等を適切に把握したうえで、外国人を受け入れる対象分野ごとに受け入れる見込み人数を適切に設定することとされていています。外国人は労働力であることがはっきりしたわけです。しかし、育成就労制度において、技能実習制度の基本的な枠組みが変更されるかというと、大きく変わる点はないように思いますが、育成就労制度の特徴は外国人の人権への配慮がなされたということではないでしょうか。また、育成就労制度では、分野や業務の連続性の強化により、特定技能への移行を見据えたキャリアアップを前提にしています。原則として3年間の就労を通じて日本での永住の道も開ける特定技能に当たる水準の人材を育成するための制度とされ、受け入れの対象分野は特定技能1号の特定産業分野と基本的には一致させることになっています。また、段階的な日本語能力の習得も求められます。育成就労制度では、就労開始前、育成就労終了時および特定技能への移行時に一定の日本語能力がないと就労開始や移行ができないことになりました。次に「転籍」についてです。技能実習制度では、実習中であることを理由に「転籍」は原則としてはできませんでしたが、これが実習生の失踪の原因になっていると指摘されてきたため、育成就労制度では、一定の要件のもとで同一業務区分内での本人意向による転籍を認めることとされました。

今、世界では外国人労働者の獲得競争が起きています。そもそも超少子高齢化と生産年齢人口の減少が進んでいる国は、日本だけではないということです。日本ほどではないですが、欧米諸国も着実に高齢化率が上がってきているし、特にお隣の韓国の状況は日本以上に深刻といわれています。そして、中国でも急速な少子高齢化による労働人口の減少に対して定年年齢の段階的な引き上げを決めたところです。

自国の政情や経済不安から逃れたいという思いから日本で働くことを希望する外国人は多く、日本で永住を希望する人も少なくないと聞きます。また、この数年で実習生が日本で働くという感覚は大きく変化しました。お金を稼ぐという目的だけではなく、多くの外国人は旅行などで日本での生活を楽しむようになりました。日本の魅力は、外国人がその家族と平和で安全に暮らすことができる場所であると世界に発信していくことが将来の労働力不足を解消することにつながるのかもしれません。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

ストレスチェック 「50人未満」にも実施義務 報告までは求めず 厚労省検討案

ストレスチェック制度は、労働者の心理的な負担の程度を把握するために医師などが実施する「ストレスチェック」と、その結果の「集団分析」、分析に基づく「職場環境改善」で構成するものです。ストレスチェックは50人以上の事業場に実施義務があり、50人未満事業場については、労働者のプライバシーの保護が難しいことから努力義務となっています。集団分析と職場環境改善は、企業規模にかかわらず努力義務が課されています。

法改正後から5年以上が経過していることから、厚生労働省は今年3月に有識者検討会を設置し、見直しに向けた議論を重ねてきました。9月30日の第6回会合では厚労省が中間取りまとめの骨子案を提示。規模の小さい企業でも健診機関やEAP事業者など外部機関を活用することでプライバシーの保護が図れるなど、ストレスチェックに対応できる環境がある程度整ったとみて、実施義務の対象を50人未満に広げるのが適当としました。他方、負担軽減の観点から、労基署への報告義務を課さない方向です。

50人未満事業場については、原則としてストレスチェック実施を外部委託することが推奨されるとしました。ただし、事業者として実施方針の表明や実施計画の策定などに主体的に取り組む必要があるため、厚労省において実施体制・方法に関するマニュアルを作成し、周知徹底を図るとしています。骨子案ではさらに、企業が実施体制を整えられるよう、義務化までに十分な準備期間を設定するのが適当としました。「少なくとも数年間は必要」(厚労省労働衛生課)といいます。

◆ニュース

お祝い金禁止徹底へ 来年1月から許可条件に 職業紹介

 厚生労働省は、有料職業紹介事業など労働力需給調整機能の強化策の一環として、来年1月1日から、指針で規定されている「就職お祝い金」などの金銭等提供禁止および就職後2年間の転職勧奨禁止を職業紹介事業の許可条件に追加する方針です。違反行為が継続・反復した事業者は許可取消しの対象になります。

 来年1月以降の新規許可・有効期間の更新から順次、新たな許可条件を付していきます。

 具体的には、個々の事業者に交付する許可条件通知書において、「その紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る)に対し、就職した日から2年間、退職の勧奨を行ってはならないこと」、「求職の申込みの勧奨については、お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて求職者に金銭等を提供することによって行ってはならないこと」を記載します。

 更新月の到来前にこれらの禁止事項に違反した場合は、指導を行うとともに許可条件を付けます。

内定辞退者3年以内なら即採用 イオンリテール

イオンリテール㈱は、退職者の再雇用制度を大幅に拡充しました。従来は結婚・出産・育児・介護などのやむを得ない事情で退職した者に対象を限定していましたが、新たに転職者や内定辞退者を対象に含めます。資格等級は退職時以上とすることを基本とし、3年以内の内定辞退者から希望があった場合は、選考を経ずに採用とします。

退職者の場合は、退職前の在職期間が1年以上の正社員およびアルバイトを除くパートタイム従業員が対象。制度利用の申込みは専用ホームページで受け付けており、退職時の事前エントリーは必要としません。

再雇用時の処遇に関しては、著しくスキルが落ちているなどの例外を除き、基本給の多くを占める職能給部分を保障します。職能給は職能資格ごとにシングルレートで設定しています。


カテゴリー:所長コラム

雇用保険法の改正

2024年10月02日

令和6年度の地域別最低賃金の引上げ額の「目安」が全国一律で「50円」と決定されて、この10月からは目安どおりに引き上げられることになりました。その上昇率は5.0%で、最賃の全国加重平均は1054円となります。北海道や茨城、滋賀などの8道県が新たに1000円以上に達し、これで計16都道府県が1000円以上となります。また、引き上げ後は、東京都の1163円が最高額となり、岩手県の943円が最低額です。ちなみに、石川県は983円が予定されています。今年は、徳島県が現行の896円から過去最大の84円引き上げて980円にすると決定したことには驚かされました。これまで徳島県の最低賃金は全国で2番目の低さでしたが、徳島県の後藤田知事が審議会に対して複数回にわたって大幅な賃上げを要請していて、最終的には「徳島県の立ち位置にふさわしい最低賃金とする必要がある」という理由で980円に決定したということです。

政府は最低賃金について、「2030年代半ばまでに全国加重平均1500円」とする目標を掲げていますが、中小企業の経営環境は厳しく、コストの価格転嫁を実現できた企業とできなかった企業の二極化がみられたり、企業倒産件数が増加傾向にあったりするなど、賃上げ原資の確保が難しいケースも多くなっています。最近、ぼくが立ち会った飲食店の労基署の調査では、直近2年間の最低賃金の上昇が急激すぎて従業員の時給が追い付いておらず、アルバイトの時給が最賃賃金に届いていなかったため是正勧告を出されてしまい、事業主は頭を抱えていました。

今年の5月に雇用保険法が改正されました。この改正では、教育訓練やリ・スキリング支援の充実のための自己都合退職の場合の給付制限の緩和などが含まれていますが、やはり短時間労働者への適用拡大は影響がありそうです。これまで、週所定労働時間20時間未満の労働者は雇用保険から適用除外とされていましたが、今回、週20時間以上の者から10時間以上の者に適用拡大することとされました。雇用保険は、「自らの労働により賃金を得て生計を立てている」労働者が失業した場合の生活を守ることを目的とした制度です。そのため被保険者となる者は、失業により給与がなくなってしまうと生活できなくなるリスクを負う者に限られていて、その基準が、これまではフルタイム労働者の週所定労働時間(40時間)の半分である20時間に設定されてきたというわけです。週20時間に満たない者の賃金は、家計補助に過ぎないとされてきましたが、生計の一端を担う者にまで基準を緩和するという考え方に今回の改正で変更されました。こうなると個人的に気になるのは、社会保険への影響です。社会保険の適用となる時間の基準は、週20時間で雇用保険と同じ時間となっています。社会保険は雇用保険と異なり、所得補償を主目的とはしていないのでそのまま基準の拡大が社会保険に当てはめられることはないと思いますが、財源の確保といった点から見ると両制度とも厳しい状況にあるといえるので、拡大の方向に向かわざるをえないように思います。適用拡大は、社会保障の充実といったことからもこれから加速していくように思います。

最後にもうひとつ押さえておきたい改正点があります。昨年、岸田首相が「子ども・子育て政策」の中で、男性の育休取得率を85%にまで引き上げることと併せ、産後期間の給付金の額を休業前賃金の手取り額10割にすることを掲げていましたね。それによって令和7年4月に「出生後休業支援給付」が施行されます。出生後休業支援給付は、子の出生直後の産後休業期間に、被保険者と配偶者の両方が、つまり両親で14日以上の育児休業等を取得すると、最大28日間まで休業開始前賃金の13%相当額が支給される制度です。既存の育児休業給付(67%)とあわせて給付率は80%となり、その間は社会保険料も免除されるため休業開始前賃金の手取り100%相当額になるという仕組みです。この制度は両親で育児休業等を取得することが要件になっていますが、配偶者が専業主婦である場合など様々な事情から育児休業を取得することが出来ないときは、配偶者の取得要件は問われないことになっています。この給付の創設にあたっては、財源問題が高いハードルだといわれていましたが、こども家庭庁が社会保険料などとともに徴収する「子ども・子育て支援金」が活用されることになりました。男性の育児参加を増やして出生率を向上させることが政府の目的ですが、こうなると男性社員は子どもが生まれてからの2か月間は育児休業を絶対にとりたいと思うようになるでしょうね。 

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

最賃平均1055円 27県が引上げ目安上回る 答申結果

 厚生労働省は、全国すべての地方最低賃金審議会で令和6年度の地域別最低賃金の改定額を答申したと発表しました。47都道府県の引上げ額は50~84円で、全国加重平均額は前年度から51円上昇して1055円になります。上昇額は、「目安」創設以降で最も高く、27県で中央最低賃金審議会が示した目安額の50円を上回りました。

各地の答申結果によると、最賃水準の低い地域を中心に、目安を上回るケースがめだちました。最も引上げ額が高いのは徳島の84円。以下、岩手と愛媛が59円、島根58円、鳥取57円などと続きます。

引上げ後の最賃最高額は東京の1163円で、次いで神奈川が1162円。以下、大阪1114円、埼玉1078円、愛知1077円と続き、合わせて16都道府県で1000円を超えました。一方、最低額は秋田の951円となり、すべての地域で950円に到達。最高額に対する最低額の比率は前年度の80.2%を上回る81.8%で、10年連続で改善しました。改定後の最賃は10月1日から順次発効します。

第1号はPayPay デジタル払いの指定業者 厚労省

厚生労働省は、賃金のデジタル払いに関与できる資金移動業者として、PayPay㈱を指定しました。

賃金のデジタル払いは、各事業場で労使協定を締結し、本人の同意を得たうえで、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動によって賃金を支払うもの。昨年4月の改正労規則施行によって導入されました。厚労大臣が指定したのは同社が初めて。

デジタル払いが行える口座名は、「PayPayマネーアカウント(給与受取)」で、口座残高の受入れ上限額は20万円。上限額を超えた場合には、超過金額を、労働者が指定した銀行口座などに自動で送金します。

同社破綻時においては、保証機関である三井住友海上火災保険㈱が口座残高の全額を保証します。破綻時から6営業日以内に、労働者が指定する銀行口座などに保証額を振り込みます。

同社のデジタル払いサービスは、ソフトバンクグループ各社の従業員を対象に先行して開始します。そのほかの企業の労働者については、年内開始を見込みます。申込みは各労働者がPayPayアプリ内から行います。

◆監督指導動向

均等・均衡待遇 慶弔休暇の違反めだつ 是正指導は176件に 大阪労働局

大阪労働局は、同一労働同一賃金の遵守徹底に向けて、是正指導を強化しています。このほどまとめた令和5年度のパートタイム・有期雇用労働法に基づく是正指導件数は、1143件に上りました。4年度の501件から倍増し、なかでも均等・均衡待遇に関する指導は、約18倍となる176件実施しています。違反の多くは、慶弔休暇などの福利厚生や手当における不合理な待遇差でした。

たとえば慶弔休暇では、正社員には付与しているが、短時間・有期雇用労働者には付与していなかったり、日数を減らしていたりする会社が多くみられました。待遇差を設ける場合であっても、1週間に3日のみ勤務する短時間労働者については、まずは勤務日の振替で対応できないか検討するよう指導したケースがあるとしました。

給与面では、通勤手当などの各種手当の支給基準に不合理な待遇差を設けている企業を多数確認しました。待遇に差を付ける場合は、所定労働日数に応じて日額交通費を支給するなどの指導を行っています。

同労働局では、昨年度以上に報告徴収を積極化しています。「労基署の監督時には、必ず同一労働同一賃金の状況を確認している。法遵守の徹底に向け、丁寧に指導を行っていく」としています。


カテゴリー:所長コラム

『お客様は神様』なのか

2024年09月02日

顧問先様の社長から従業員と面談をする際にその会話を録音してもいいかと言われることがあるという話がありました。最近はスマートフォンで簡単に録音が出来るためそういう場面が多くなっていますし、ぼくは顧問先様の従業員と面談するときには必ず録音されているつもりで話すようにしています。録音する目的は、使用者からなにか法律違反やハラスメントに該当するような発言があったときに、それを証拠に会社を訴えるということなのだと思います。そのような録音は許可しないといけないのでしょうか、そもそもそういうことが認められるのでしょうか。そこで、労働基準監督官に雑談ついでに聞いてみたところ、「事業主の許可なく秘密で録音されたデータが監督署に提出されたからといって労基署が動くことはないです。民事で争うということなら別ですが、許可なく録音されたものは証拠にならないので。」という回答でした。秘密に会話を録音されることは避けられないですが、最近は、堂々と目の前にスマートフォンを置く従業員もいますので、安易に録音の許可しないほうがよいのではないかと個人的には思います。録音している中での会話に良好な人間関係が存在するとは思えないですし、迂闊にしてしまった発言が無用なトラブルを生じさせることになります。

厚生労働省が公表した最新の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にカスタマーハラスメントについて相談があった企業割合が年々増加傾向にあります。カスハラは、昨年の9月に改正された精神障害の労災認定基準において、審査時に考慮する心理的負荷の評価項目のひとつに追加されており、顧客から人格や人間性を否定されるような暴言を執拗に受けて精神疾患が発症した場合には労災認定される可能性が高まったため、安全配慮義務のある企業は対策が求められており、カスハラ対策に動く企業は増えています。たとえば、JR西日本のカスハラに対する基本方針では、被害を受けた従業員が弁護士に相談できる仕組みを整備して損害賠償請求などをしやすくなるようにしたり、JR東日本は「駅員への暴言や暴行、土下座の要求など」をカスハラ行為と定義し、該当する場合には顧客としての対応を取りやめることにしたりしています。また、大丸松坂屋百貨店は全国の従業員へ説明会を開くほか、カスハラ相談窓口を各店舗に設けることにしているそうです。大手コンビニ2社では、店舗で働く従業員の名札について、本名以外の記載を可能にし、従業員に安心して働ける環境を提供したそうですが、これまでに顧客からの無理な要求に対して、泣き寝入りしていた従業員がいかに多かったのかがわかります。ANAホールディングスの担当者は「従来は何でも申し訳ありませんとしがちだったが、社員を守るため、ある一線を越えたらカスハラと明確化した」といいます。

厚生労働省は2022年にカスハラ対応マニュアルを公表していて「場所を変えて2人以上で対応する」「メモや音声を記録で残す」「監督者や相談窓口と情報共有する」といった対応例をあげます。日本では「おもてなしを重んじるあまり、無理な要求に応じてしまう傾向があると指摘する学者もいますが、欧米ではマニュアルの定着が進んでいて、過度な迷惑客に対しては、最終的に対応を打ち切る「グッバイ・マネジメント」という考え方が浸透しているそうです。

「お客様は神様です」というフレーズがあります。昭和を代表する歌手、三波春夫さんの言葉です。これは客の立場の強さを表現する言葉ではなくて、三波さんがある地方公演で会場がお客さんの熱気に包まれる中、司会の方から「お客様をどう思いますか」と聞かれたときに「お客様は神様だと思いますね」と答え、会場が大いに盛り上がったので、その後のツアーでも同じ発言を行うようになったそうです。「お客様は神様です」について三波さんは、生前にその言葉の意味を「自分の完璧な歌をお客様と視聴者にお届けしなければならない」という心構えだと説明したそうです。お客様を神様だとみて、神前で祈る時のような気持ちで歌を歌うということが、「お客様は神様です」の真意なんですね。まさに「お客様第一」の考えを実践していたわけです。

「マーケティングとは人間や社会のニーズを見極めてそれに応えることである。」というフィリップ・コトラーの言葉がマーケティングの原点だとされます。お客様に対する真摯な姿勢とそれに応えるお客様からの感謝の気持ちの両方があってはじめて豊かな社会が形成されるのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

地域別最低賃金 5%引き上げ平均1054円へ 中賃審が「目安」答申

厚生労働省の中央最低賃金審議会は、令和6年度の地域別最低賃金の引上げ額の「目安」を全国一律50円に決定し、武見敬三厚生労働大臣に答申しました。

目安どおりに引き上げられた場合の上昇率は5.0%で、最賃の全国加重平均は1054円に達します。引上げ額は昨年実績の43円を上回り、4年連続で過去最大となります。北海道や茨城、滋賀など8道県が新たに1000円に到達し、到達済みの地域を含めると、計16都道府県が1000円以上となります。引上げ後の最高額は東京の1163円で、最低額は岩手の943円。最高額に対する最低額の比率は81.1%となり、80.2%だった昨年に比べ地域間格差が縮小します。

今後、目安を踏まえて都道府県の地方審議会が審議・答申し、引上げ額が決定されます。昨年は、24県が目安を上回る引上げを行いました。

目安の決定に当たり、消費者物価が上昇している状況を重視したほか、賃金上昇率が昨年度を上回る水準にある点も考慮しました。

労務費などの価格転嫁が進んでいない企業があるほか、物価高による倒産が増加傾向にあることから、答申では、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払い能力の面で「50円」の目安額は厳しいと指摘。政府に対し、中小企業などが賃上げ原資を確保できるよう、生産性向上の支援策や、価格転嫁対策の継続的な実施を要望しました。

◆調査

過半数代表者 不適切な選出方法が5割超 連合調査

 連合は、働き方改革の定着状況を把握するため、被雇用者1000人を対象にアンケート調査を行いました。36協定の締結当事者が誰か尋ねたところ、過半数労働組合は45.1%、過半数代表者が24.2%でした。過半数代表者の選出方法については、「会社からの指名」27.1%、「一定の役職者が自動的に就任」14.0%、「親睦会などの代表が自動的に就任」10.3%などの不適切な方法が、合計で5割を超えています。

また、年次有給休暇の5日取得の義務化を受け、休み方の変化を尋ねたところ、12.2%が「その分夏季や年末年始の特別休暇が減らされた」と答えています。


カテゴリー:所長コラム

夏季休業のお知らせ

2024年08月02日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら8月13日(火)~8月15日(木)まで夏季休業(お盆休み)とさせて頂きます。

8月16日(金)より通常営業となります。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。


カテゴリー:お知らせ



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