これから日本が迎える「2040年問題」とは
2024年12月02日
政府が2018年に公表している将来推計では、自己負担分を除いた費用の総額にあたる社会保障給付費は2040年度に190兆円程度に達して今年度に比べて4割程度も増加する見通しになっています。その財源は当然、国民や企業が払う税金や保険料となります。連合が公表した今年の賃上げの結果によれば、平均で5.1%となり33年ぶりの賃上げ率となっていますが、なかなかその恩恵を感じられないという人が多くいるといわれます。その理由は、日本の税制においては、給与から直接引かれてしまう税や社会保険料の額が大きいために国民の負担感が増しているということになりそうです。
社会保険料を減らす改革の一方で取り組む必要があるのは少子化対策です。この数年は、新型コロナウィルスの影響で、子どもが生まれる数である出生数が世界中で急減しているといわれています。日本は新型コロナ前から少子化が問題になっていたので、コロナにより出生数が激減したとまではいえない状況ですが、確実に減少し続けているのは間違いないようです。2015年前後までは10万人の減少に10年強を要するペースであったものが、2016年に初めて100万人を下回ってから、わずか3年後の2019年に90万人を大きく下回って86.5万人となりました。さらに、2022年には77万人にまで落ち込んでいます。昭和女子大学総長の坂東眞理子氏は、「日本の課題は少子化、人口減、労働力不足である。歴代の内閣も児童手当の増額、高校授業料の無償化、大学奨学金の増額、保育所の定員増、育児休業の充実などに取り組んできたが、効果は出なかった。出所率が日本の1.20より低い0.72の韓国も児童手当の充実、育児休業など日本同様力を入れてきたものの、出生率を上向かせることはできなかった。」「日本は効果の期待できない少子化対策に注力し続けている。少子化の最大の原因は結婚できない若者(特に若い男性)の増大なのだが、相変わらず、生まれた子供の養育負担の軽減に努めている。日本もこれからは効果の乏しい対策に力を注ぐだけでなく、人口や労働力が減る中でどうこの社会経済を維持するか考えるべきではないだろうか。」(北國新聞2024.11.4)と話されています。若い男性が結婚できていないという指摘には注目するところです。すべての人が結婚しなければいけないという話ではないですが、結婚に対する考え方が多様化していて、日本の平均年取が上がらずに結婚に躊躇する人が増えていることは事実ですし、今後も婚姻数は下がり続けることになることが危惧されます。
保育園の関係者によると、最近は20代前半の若いうちに出産、育児を済ませたいと考える女性が増えているそうです。そうするとその親の世代はまだ50代くらいなので現役で働いていることも多く、昔とちがい育児を、「おじいちゃん、おばあちゃん」に手伝ってもらえないということになるので、若い親が二人で協力して育児をしなければならず二人で育児休業がとれるのはありがたいことなんだということでした。厚労省の2024年の調査では18~25歳の約2000人のうち、男性の約9割が「仕事も育児も熱心に取り組むつもり」と回答しています。「男性も育児をするのが当たり前」との意識を職場の管理職が持って、若い世代の意識を理解する必要がありそうです。
特定社会保険労務士 末正哲朗
◆最新・行政の動き
フリーランス 労働者性の確認を強化 監督署に相談窓口 労基法違反は是正勧告へ
厚生労働省は、業務委託などで働く個人事業主(フリーランス)からの相談を端緒に、労働基準監督署において労働者に当たるかどうかの判断を積極的に行っていく方針です。11月のフリーランス新法施行に合わせ、全国の労基署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置しています。相談者の「申告」に基づき、委託者である企業に立入調査を実施していきます。実態から労基法上の労働者に該当すると判断し、割増賃金不払いや違法な時間外労働などの違反がみつかったときは是正勧告します。
厚労省によると、近年は働き方が多様化し、フリーランスとしての新しい働き方が拡大する一方で、実態は労働者に当たる働き方をしているにもかかわらず、労基法などによる保護が受けられていないといったケースがあります。そのため、全国の労基署に設置した窓口では、平日の8時30分~17時15分の時間帯に、自身の働き方が労働者に該当すると考えるフリーランスからの相談に広く対応します。割増賃金の不払いや違法な時間外労働のほか、「年次有給休暇が取得できない」「労災保険を使わせてもらえない」といった悩みなどを受け付けます。
労基署がこれまでに処理したフリーランス関係の申告事案では、建設業の一人親方や、宅配ドライバーなどの運転者が多かったといいます。窓口での相談を端緒として、実態が労働者となっている者の労働環境整備に努める方針で、厚労省は「フリーランスを活用している企業は、指揮監督下で働かせていないかなどをチェックしてほしい」と話しています。
◆ニュース
取締役などの役員は一般的には労働者に該当しないと考えられるとする一方、取締役であっても就任の経緯や取締役としての業務執行の有無、業務への対価の性質・額などを総合考慮しつつ、会社との実質的な指揮監督関係や従属関係を踏まえて労基法上の労働者と判断した裁判例があることに留意すべきとしました。
管理監督者に該当するか否かについても、実態に沿って総合的に判断すると指摘しました。
取締役などの役員兼務者や、経営者直属の組織の長、企業内でそれらと同格以上に位置付けられている全社的なプロジェクトを統括するリーダーなどについては、基本給や役付手当が地位にふさわしい待遇となっていたり、一時金の支給率などにおいて職場の一般労働者に比べて優遇措置を講じていたりする場合、「一般的には管理監督者の範囲に含めて差し支えない」としています。
ドラッグストアチェーン大手の㈱マツキヨココカラ&カンパニーは、カスタマーハラスメントに対する基本方針を策定し、対応マニュアルの作成や管理者向け研修の実施など、今後の対応体制を示しました。
店長、スーパーバイザーなどの管理者全員を対象として、今年度下期中の研修実施を予定しています。先行して全従業員に向けた「クレーム・トラブル対応研修」を10月に行いました。いずれも今後は年1回開催していく予定です。
相談窓口はすでに社内に設置しており、管理者・当事者の双方から相談を受け付けています。内容によっては関連部署と連携し、会社として対応します。相談窓口やお客様相談窓口に集まる情報を中心に事例を蓄積し、クレーム・トラブルの傾向を分析。特筆して多いケースなどについては統一した対応方法を定め、社内研修や対応マニュアルを通じて教育します。対応マニュアルは店舗運営マニュアルの一部として取り扱い、随時アップデートしていきます。
カスハラ対応については、今春に労働組合からの要求があったといいます。基本方針は、厚生労働省のマニュアルとUAゼンセンのガイドラインを参考に策定しています。
カテゴリー:所長コラム