人事・労務のエキスパート、石川県金沢市の社会保険労務士法人 末正事務所。人事・労務管理相談、社会保険労働保険手続き、紛争解決、組織活性、給与計算、人材適正検査まで、フルサポートします。

seminar

seminar

contact

ブログ

健康保険法等の法改正情報

2021年09月01日

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険等の一部を改正する法律」が今年の6月に成立しています。その中で健康保険法等の改正のうち、私たちの生活に影響の大きいものを取り上げてみたいと思います。今月は法改正情報一色です!

令和4年1月1日から施行される改正が二つあります。まず、任意継続被保険者制度の保険料や被保険者資格の喪失について見直しが行われます。任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が会社を退職した後にもそのまま2年間は、退職前に加入していた健康保険制度に残り続けることができる制度です。これまでは、任意継続被保険者となった後に資格を喪失する場合、「任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき」「保険料を納付期日までに納付しなかったとき」など限られていて、任意継続被保険者が届出を行うことで、自分から制度を脱退することはできませんでした。そうしたこともあって、再就職で新しく健康保険に加入した場合には、あえて保険料を納付せずに資格喪失をさせることもありました。わざと未納にするというのはあまり気分のよいものではないですね。今回の改正で、任意継続被保険者が届け出ることによって、その申出が受理された日の属する月の末日に被保険者資格を喪失できるようになりました。そして任意継続被保険者の保険料についても見直しがなされました。次に現行では任意継続被保険者の保険料は、「退職直前の標準報酬月額」か「保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額」のいずれか低い額を選ぶことができます。ようするに、在職時の健康保険料よりも低い額で任意継続被保険者になることができる制度になっているということです。改正後は、健康保険組合が、高い方の保険料を選ぶことができるようになります。保険料の低い方を選びたいという場合には、改正法施行日以降は注意が必要です。

もう一つ令和4年1月1日から施行されることになるのが、傷病手当金の支給期間の通算化です。傷病手当金は、私傷病により療養のため仕事を4日以上休んで給料を受けられないときに支給される健康保険の給付金です。傷病手当金の支給期間は支給開始日から起算して1年6か月を超えない範囲と定められているので、精神疾患やがん治療などで休職と復職を繰りかえすことで、支給期間中に傷病手当金を受けていない期間があっても、1年6か月が経過してしまうと、再び入院しても給付金は受けられないことになっていました。改正後は、支給期間が「支給を始めた日から通算して1年6か月」となるので、実際に1年6か月分の日数の給付金を受けるまでは、傷病手当金を受給することが可能となります。また、施行は来年1月1日ですが、経過措置が設けられていて、昨年7月2日以降に傷病手当金の受給を開始した者で、出勤に伴い不支給となった期間がある場合には、その日数分について受給が可能になるとされました。

あと、最後に健康保険の扶養認定の実務に影響がある通達が令和3年8月1日に出されています。現在、被扶養者として認定されるための条件に「主として被保険者の収入で生計を維持している」状態にあることとありますが、機械的に一律に適用されるわけではなく、生活の実態とかけはなれるなど妥当性を欠く場合に、実情に応じた認定が行われます。ようするに、基本的には収入が多いほうの被扶養者となるけれども、世帯の生計状況から見て生計維持の中心的役割をはたしていると認められるほうの被扶養者になることも認められています。新しく適用される通達では、夫婦とも健康保険の被保険者の場合を例にとると、まず「年間収入の多い方の被扶養者」になることになります。次に、「年間収入の差額の多い方の1割以内である場合は、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者」とされます。被扶養者の認定は、保険者によって温度差はありますが、これから厳しくなるのでしょうね。

最後に労働法の法改正です。令和4年1月1日から複数の職場で就労する65歳以上の高年齢労働者に対して雇用保険の特例適用制度が試行されます。現在はひとつの事業主に週20時間以上、雇用されていることが必要ですが、改正後は、65歳以上の高年齢労働者が、複数の事業所の労働時間を合算して「週の所定労働時間が20時間以上」就労している場合に雇用保険に加入できるようになります。ただ、事業主が合算した所定労働時間を把握して、手続きを行うことは困難であるとして、労働者本人がハローワークに対して届出を行うことになっています。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

労災の過労死認定基準が、20年ぶりに見直される予定です。厚労省設置の専門検討会は、最新の医学的知見を踏まえた報告書をとりまとめました。

長時間労働の数値的基準(月100時間、2~6カ月平均80時間)等は現行維持が適切と判断する一方で、それ以外の負荷要因である「勤務時間の不規則性」を重視し、判断要素を再整理する方針です。

具体的項目としては、「拘束時間の長い勤務」「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルが短い勤務」「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」を挙げています。

たとえば、勤務間インターバルについては休息期間11時間未満の勤務の頻度・連続性、海外出張勤務に関しては4時間以上の時差を伴うか否か等を評価するとしています。

◆ニュース

裁量労働改正へ「道ならし」 調査で問題点整理

裁量労働制の改正は「働き方改革の一環としての労基法改正案(平成30年国会上程)」の中に含まれていましたが、審議の途中で「偽造比較データ」の問題がクロ-ズ・アップされ、法案から削除されるという一幕がありました。

その後、厚労省では「実態を把握しなおして議論を再開する」という方針の下、再調査に着手しました。このほど、約3年を経て、調査結果が公表されましたが、企画型裁量労働制を採用する事業場の40%が見直しを求めていることが明らかになりました。

要望の第1位は「手続き負担を軽減すべき」(77%)で、僅差で「対象労働者の範囲を見直すべき」(72%)が続いています。

後者の範囲見直しについては、「『常態として』でなく、『主として』従事していればよいとすべき」(75%)、「法令ではなく、労使で合意された業務を対象とすべき」(52%)といった声が多数を占めました。今後、法改正も視野に入れ、さらに検討が進められる予定です。

◆送検

年休5日の時季指定怠る 「賃金不払い」端緒に捜査 津島労基署

愛知・津島労基署は、年休の時季指定を怠ったとして、給食管理会社と店長3人を名古屋区検に書類送検しました。

働き方改革関連法(労基法改正)により、平成31年度以降、使用者には年5日の年休時季指定が義務付けられています。同社は病院・社会福祉施設等で給食調理を受託していましたが、時季指定を怠ったまま、従業員6人に1日の年休も取得させていませんでした。

捜査の発端は、外回り従業員の勤務実態が不明として賃金を支払わなかった事案です。調査を続ける中で、年休についての実態も明らかになったものです。

年休の時季指定(労基法39条7項)に関する送検は愛知県内初で、全国でも初めてとみられます。


カテゴリー:所長コラム

夏季休業のお知らせ

2021年08月10日

いつもお世話になりありがとうございます。 

誠に勝手ながら8月13日(金)午後~8月16日(月)まで夏季休業(お盆休み)とさせて頂きます。 

8月17日(火)より通常営業となります。 

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。


カテゴリー:お知らせ

運を良くする

2021年08月02日

新型コロナウィルスの影響で1年延期された東京オリンピックが開催されました。東京では緊急事態宣言が発出されていて、ほとんどの会場が無観客で競技が行われることになり極めて異例な状況で行われる大会となっていますが、選手たちはそんなことなど全く関係ないように競技に打ち込んでいるように見えます。本当に一流選手の精神力のすごさには驚かされます。

また、最近では大リーグの大谷翔平選手がMBLオールスターゲームで歴史に残る二刀流での活躍にも驚かされました。そんな大谷選手の高校時代に書いた目標達成シートが話題になりました。高校生の大谷選手が、最終的に達成したい目標にドラフト1位指名を8球団から受け、日本のプロ野球に進むこととして、またその目標を達成するためにさらに8つの項目を挙げているのですが、注目したいのはその中に「人間性」と「運」を選んでいることです。体力、技術、精神面での強さは誰でも考えますが、やはり超一流になる人は違うのでしょうね。「運」を手に入れるために大谷選手は、「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「あいさつ」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」「道具を大事に使う」を実行するとしました。「運」の良さは誰もが欲しいと思うものですが、その人の意思や努力ではどうしようもないことだと一般的には考えられていることですね。大谷選手は、自分自身の日頃の行動や態度、ようするに考え方で「運」を引き寄せることが出来ると考えて、そのことを自身が身をもって示してくれているのはスゴイことだと思います。

長年、松下幸之助の薫陶を受けてこられた青年塾の代表である上甲晃氏は月刊誌致知に書いています。「運の良し悪しがどうしたら見極められるのか、私は長年疑問を抱いてきました。ある時、プロ野球の日本ハムファイターズの白井一幸元コーチと玄米酵素の鹿内正孝社長との会話の中に、その答えを得ました。鹿内社長から「運の強い人を先発メンバーに使うそうですが、どうしたら運が強いかが分かるのですか」と質問を受けた白井コーチは、「どんな平凡なゴロを打っても、全力で一塁まで走る人は運が強い」と答えていたのです。どんな平凡なことでも手抜きをしない。これこそが人生の真理だ!とハッとさせられました。」

iPS細胞の山中伸弥教授と稲盛和夫氏の対談でのことです。山中教授が「百メートル走では死に物狂いで全力疾走しますが、それをマラソンであると必ず途中で力尽きてしまう。ですから、いいタイムで完走するためにはペース配分をきちんと考えて、途中で水分や栄養も補給しながら、ペースを乱さずに走り切ることが大切です。実際、体力も走力も高かった二十代の時よりも、いまのほうがマラソンのタイムは速いんです。研究開発もそれと同じで、特に医学の分野では二十年、三十年という長い歳月を要します。途中で息切れしないように、ペース配分を考えて毎日頑張っています。」と話されました。稲盛さんは、「僕は違う。いつも全力疾走だ」「会社経営はマラソンと同じで、全速力で走っては長く続かないと皆さん言いますが、それでは本当の競争にはなりません。会社経営の経験のない素人がちんたら走っていたら、自分では走っているつもりかもしれないけど、全然勝負にならないでしょう。だから僕は、走り切れなくてもいい、最初の数キロだけでも一流選手に伍していこうという思いで、常に全力疾走してきました。周りはいつまで続くかと見ていたのでしょうが、走っているうちにそれが自分の習い性となり、今日まで続いている。最初から全力で走ろうと決めて、必死になって先頭集団に追いつこうと意気込んで走り続けてきたからこそ、実を結んだと思っています。」と話されました。山中教授は「まだまだアマチュアなのだ、勘違いしてはいけない」と思い知らされたというのですが、それもスゴイですね。最近は、こういった話に「昭和だね」という反応を返えす人もいます。ぼくもとてもではないですが、マネすることすら無理だと思っています。ただ、今の社会を良くするために、こういう生き方を貫いている人たちがいるのだということはわかっておくべきなんでしょうね。やはり、自分のためではなく、誰か他人のため社会のために必死の努力を続けられる人は結果をしっかり残すことができるのでしょう。それは、企業経営においても、スポーツにおいても同じことなんだと思います。(月刊誌致知2021.4「特集稲盛和夫に学ぶ人間学」より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

厚労省は、過労死等の労災請求事案の労働時間認定に関する質疑応答・事例集を作成し、都道府県労働局労災保険課長に通知しました。過労死等の労災請求事案が増加傾向を示す中、適切な労働時間認定と迅速な労災認定を推進するのが目的です。

事例集では、14個の質疑応答と7つの参考事例を収録しています。質疑応答では、具体的な考え方と併せて、参考となる判例・労働保険審査会裁決も示しました。

持帰り残業や出張先ホテル等での作業に関しては、使用者が作業を義務付けているか否かを評価し、指揮命令下にあったかどうかは関係者への聴取等も踏まえて判断します。

◆ニュース

ワクチン職域接種で手引き 本人の意思確認を

新型コロナウイルスの予防に向け、職域接種がスタートしています(現在は、新規受付一時休止)。厚労省は円滑な推進のため、「職域接種向け手引き」(現在は第2版)を公開しました。

実施に際しては、市町村と委託契約を結んだ医療機関が企業・職域単位でワクチン接種を行います。形態としては、①企業内診療所が実施、➁外部医療機関が企業に出張、③非接種者が外部医療機関に出向く、の3とおりがあります。

 同一会場で2回の接種を済ませることを基本とし、実施企業は、医療機関の確保、申請入力・連絡調整、会場の手配、自治体等との連絡を担う事務局体制を確保することが条件となります。

手引では、正規・非正規等の雇用形態により一律に対象者を区別することは望ましくなく、「接種を受けるかどうかは自ら決定する」という考え方に基づき、強制は避けるように留意を求めました。

5割超の退職金減額は無効 「接待漬け」で諭旨解雇

クラブ接待を繰り返し受けた等として諭旨解雇された元従業員が、退職金の減額は無効と訴えた事件で、東京地方裁判所は「5割を超える減額は無効」と判示しました。

元従業員は、不動産サブリース専門会社の支店勤務で、管理建物の修繕工事等の発注に関する業務上の権限を有していました。

その権限を行使して、業務の受注先を元部下が経営する会社に変更した後、繰り返し高額なクラブで接待を受けました。さらに、元部下に対して、クラブで働く外国人ホステスの在職証明書偽造も頼んでいました。

内部調査で不正が発覚し、会社は諭旨退職処分としましたが、退職金規定に基づき、退職金は全額が不支給となりました。

裁判所は、元従業員の「元部下からの接待は、個人的関係によるもの」という主張は退けましたが、退職金の減額のうち5割を超える部分は無効という判断を示しました。

接待金額が非常に高額とはいえず、偽造証明書も実際に使用されなかった点を踏まえ、「過去の勤続の功をすべて抹消するまでの背信行為といえない」と述べています。


カテゴリー:所長コラム

男性育休の取得義務化

2021年07月01日

イエローハットの創業者である鍵山秀三郎さんがあるところで若い人たちに、「成功のコツは二つある」と話されたそうです。「何だと思われますか?」との質問に対し、会場からいろいろな答えが返ってきましたが、鍵山さんは「コツは二つといったでしょう」と言って「コツコツ」と板書されたそうです。会場ではどっと笑いが起こったようですが、これは笑い話ではなく真面目な人生の真実のようです。松下幸之助さんは、「成功するとは成功するまで続けることだ」と言いました。また、97年の生涯を生きられた仏教詩人の坂村真民さんが生前に「一つのことをコツコツと誠心誠意続けていると、不思議なことが起こってくる」と仰っていたそうです。月刊誌「致知」の編集長である藤尾秀昭さんは「だから、本当にコツコツ、倦まずたゆまず希望をもってやり続けていくと、天地が味方をして、何か不思議なことが起きてくる、というのが私の実感です。」と話していました。ぼくは、先日、たまたま大腸の内視鏡検査する機会があって、診てもらったところまずいポリープが見つかり、早めに切除することが出来ました。ぼくの父親は58歳の時に大腸ガンで亡くなっているので、同じ運命を辿っていたのだと思いますが、なんとかぼくは助けられたようです。これからまだまだ世の中のために一生懸命がんばりなさいと言われたように感じました。(「はじめて読む人のための人間学」藤尾秀昭 致知出版社 より)

オリンピックを前に通常国会は閉会となりましたが、気になるのは労働関係の法改正のことです。厚生労働省は、新型コロナウィルス感染症対策に時間をとられて、これまで大きく進んできた働き方改革はいったんお休みとなっていて、今国会での労働関係の法案提出は、育児介護休業法改正案のみになりました。その内容は、男性の育児休業取得促進のために、子の出生直後の時期に柔軟な取得を可能とする制度の創設が柱になっています。男性社員は、子の出生後8週間以内に4週間まで休業を取得できて、2回までの分割取得が可能になります。それに伴い、この改正で、従来の育児休業も新たに2回までの分割取得が可能となりました。また、休業取得の申出は、現行の「1か月前」よりも短縮して「2週間前」となり、取得しやすくなります。さらに労使協定を締結することにより、新制度の育児休業中に就業することが認められました。男性社員が取得し易くするための配慮ですね。次に企業に対して、妊娠・出産の申出をした労働者に対して、事業主側から制度の周知と休業の取得意向の確認を個別に行うよう義務付けられました。これは男性社員の側から言い出しにくいという状況の解消が目的のようです。従業員数が1000人超の企業に対しては、育児休業の取得の状況についての公表も義務付けとなりました。この法律の施行は、原則として令和4年4月1日となっています。

男性の育児休業を取りやすくするその改正育児介護休業法は成立しましたが、内閣府が公表した数字では、子育て世代の男性で育児休暇を取得しない人が4割を超えているそうです。その調査結果の内容ですが、20~30代の既婚男性に育休の取得予定を聞いたところ「取得しない」42.2%、「取得予定」39.4%となっていて、取得期間については「1週間未満」17.1%、1~2週間未満8.9%、「1か月以上」8.4%の順だそうです。長期の育休を取らない理由は、「職場に迷惑をかけたくない」が最も多くなっていますが、「職場が男性の育休を認めない雰囲気である」などの回答も多く、男性の育休への職場の理解不足が取得への壁になっていることがわかります。内閣府の担当者は、「取得が進まないのは、制度より職場の雰囲気にあり、変えていかなければならない」と強調していますが、一方で、男性労働者が育児休業を取得することは良いと思うが、大企業はともかく、小零細企業では代替要員を確保できないために死活問題となりかねないという意見も多くあるようです。

ただ、男性社員が抜けることと女性社員が抜けることの企業へのダメージは本来、一緒である社会を日本は目指しているのではなかったでしょうか。仕事上、女性よりも男性のほうが、重要なポジションに多く就いているということなんでしょうね。こんなところに日本社会の考え方が垣間見えるように思いました。どうも問題は違うところにあるという見方もできるのではないのかなと感じました。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

総合職で22万円超え 令和4年大卒初任給

インターネット上の求人情報を対象として労働新聞社が実施した調査によると、令和4年3月卒業見込みの大卒初任給は、総合職の平均が初めて22万円を超えた(22万826円)ほか、他の職種も上昇傾向を示しました。

総合職(主として首都圏勤務の全国転勤型。事務・企画・営業系)の集計企業のうち、23%が水準を引き上げ、残りの77%が据置きを選択しています。

技術系は22万3281円で、特に高齢化・人材不足に直面している建設業では、全体の3割強が初任給を増額しました。

このほか、一般職(事務系)は19万1160円、営業職は23万3822円という結果でした。前年調査と比べると伸び幅はほぼ半減していますが、大卒初任給に対する経済停滞の影響は限定的となっています。

国家公務員の定年65歳へ 賃金は60歳前70%に設定

通常国会で、国家公務員の定年の段階的引上げが決まりました。国家公務員法の改正案上程は前年に続き2度目です。前回は検察幹部の特例規定に対する批判により廃案となりましたが、今回は特例部分がカットされています。

令和5年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、13年度に65歳とします。現在、民間企業に対しては「希望者全員65歳まで継続雇用(60歳定年で継続雇用による場合等も可)」が義務付けられていますが、65歳定年は公務員が民間をリードする形になります。

 60歳以降の賃金は当分の間、60歳以前の70%に設定、同時に管理監督職は60歳までとする役職定年制を設けます。13年度までには、給与全体を見直し、賃金カーブを緩やかにする方向で、検討を進めるとしています。

民間企業の定年引上げに関しては、賃金体系がネックとなっています。段階的引上げの間に、人事院がどのような制度設計を提示するのか注目されるところです。

なお、今国会では、改正育介法、改正健保法も成立しました。

雇保料率の引上げを 財務省審議会が意見

雇用保険料率は平成29年度以降、5年連続で1000分の9という低水準で据え置かれています。一方、新型コロナウイルスによる失業防止のため雇用調整助成金の支出が3兆円を超えるなど、財政状況がひっ迫しています。

財務省の財政制度等審議会は、この問題について「まずは保険料引上げによる対応が検討されるべき」という意見を表明しました。

現在の雇用保険料率は本則ではなく、附則により「時限的」に引き下げられています。附則の期限(令和2年度に一度延長)は令和3年度末までとなっているので、令和4年度以降の対応は、今年度末に労働政策審議会で議論する方針です。

ただし、雇用保険財政の悪化は、上記とは別に国庫負担を軽減する特例(平成19年度から実施)によるという指摘もあり、議論は曲折が予想されます。


カテゴリー:所長コラム

国家公務員の定年引上げ

2021年06月01日

最近、よく「他の会社は、定年年齢をいくつにしてるの?やっぱり引き上げる傾向にあるの?」と聞かれます。今年の4月から改正高年齢者雇用安定法が施行されて、70歳までの就業機会の確保が努力義務化されました。現行の高年齢者雇用安定法が全員の雇用を義務付けているのは65歳までとなっています。以前にもお伝えしましたが、従業員の60歳定年制としている事業主は、さらにその労働者を65歳まで雇用する義務に加えて、65歳から70歳までについて就業機会を確保するための措置を講ずる努力義務を負うことになっています。

そもそもの定年年齢を何歳にしたらよいのか、また60歳以降の賃金などの労働条件をどのように決定したらよいかと悩む会社がとても多いようです。そういった中で、政府は4月に「国家公務員法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。この改正法案には、国家公務員の定年年齢を段階的に65歳へ引き上げることなどが盛り込まれており、民間企業での労働条件を決める際に参考になるのではないかと思いました。

まず、定年年齢ですが令和5年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、13年度には65歳に達して引上げの完成形となります。そして、60歳以降の賃金は当分の間、60歳以前の70%に設定することにしています。次に組織活力を維持するために、管理監督職の職員に対して役職定年制(60歳まで)の導入も行われました。また、65歳定年制の導入にあたって高齢期における多様な職業生活設計の支援も行われることになっていて、60歳以後定年前に退職した者の退職手当は、定年前の退職を選択した職員に不利にならないよう、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当の額を算定することとし、あわせて60歳以後定年前に退職した職員については、本人の希望により、いったん退職した後に、短時間勤務者として採用することができる定年前再任用短時間勤務制が導入されています。

民間企業においては先ほどの65歳までの雇用確保措置の義務化と70歳までの就業確保措置の努力義務化が決められています。その現状として、厚労省の2020年「高年齢者の雇用状況」集計結果によると、高年齢者雇用確保措置の実施状況については、65歳までの雇用確保措置のある企業は計99.9%に達していますが、65歳定年企業は18.4%にとどまります。国家公務員での調査によると、できるだけ長く働きたいと回答される者も多くいて、官民にかかわらず高齢期の賃金と老齢年金での生活に不安を抱えているということのようです。民間企業においては今後の定年の引上げに当たって賃金水準や退職金制度の再設計をどうするかということが一番のネックになりそうです。公務員は70%の水準に見直すということになりましたが、民間企業においては、仕事内容に全く変更がないまま賃金だけが下がっているケースも多く見受けられ、同一労働同一賃金との整合性を検討する必要もありそうです。

今、国が対応を求められている高齢期の問題ですが、まずは目の前に団塊の世代の全ての人が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」があります。これは医療・介護費の急増が問題になるということで、すでに消費増税がなされています。そして、この先には「2040年問題」への対応が急を要するといわれています。2040年は、団塊ジュニア世代(昭和46年から昭和49年生まれ)が、65歳以上の高齢期に入るため、65歳以上の高齢者人口がピークとなり、その人口は、約4000万人に達すると推定されています。どのような社会になるかというと、2040年の現役世代の人口は約6000万人となるので、1人の高齢者を1.5人(ほぼ1人)の現役世代で支えることになります。いわゆる「肩車」っていう状態ですね。

コロナ禍の影響で少子化が一気に進み、2021年の出生数が過去最少を更新して、戦後初めて80万人を割り込む可能性があるそうです。日本の人口構造は、生産年齢人口や労働力人口の減少の問題をこれからも抱え続けることになりますが、それは現役世代の負担を意味します。少子高齢化で若者世代の減少が止まらないのであれば、いつまでは働きたいという希望なんて関係なく、高齢者が支え続けなければならないのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

「無期転換ルール」見直しへ 不当な抑制策の規制検討

無期転換ルールは、平成24年改正労契法で創設されました。その際、附則により「施行後8年を経過した場合」、見直しの要否を検討する旨定められていました。

これを受け、厚労省では、検討会を設け、改正に向けた議論を開始しました。労契法18条では、有期労働契約期間が通算5年を超えると、労働者に無期転換申込権が生じるとしています。

しかし、通算期間が法定条件を満たしても、権利の行使をためらう(あるいは、よく理解していない)労働者も少なくありません。

一方、企業側についても、契約の回数・期間に制限を設けたり、クーリング期間を挟み込んだりする等により、転換申込みの抑制対策を講じるケースが散見されます。

検討会では、無期転換をバックアップするため、阻害要因の洗い出しや、対策の検討を進めます。併せて、「多様な正社員制度」をめぐるトラブル防止策等についても、提言を行う予定です。

拡大続く「営業秘密持出し」 警察庁の検挙件数

警察庁の統計によると、営業秘密の不正持出しの件数は、昨年1年間で22事件38人に上り、過去最高を更新しました。

検挙事件数は、平成26年が11件、27年が12件、28~30年が18件、令和元年が21件と、増加傾向が続いています。

昨年発生した事案では、人材ビジネス会社で派遣労働者の情報ファイルを複製し、営業秘密を不正に取得したとして、3人の元従業員が逮捕されています。

営業秘密の漏えいは不正競争防止法の規制対象ですが、平成27年の法改正で罰則等が強化され、違反者(個人)には10年以下の懲役または2000万円以下の罰金が科されます。

賞与の変動枠を6割に 70歳までの就労確保

ダイキン工業㈱は、再雇用制度を拡充し、希望者全員を70歳まで継続雇用する制度を整備しました。これに合わせ、賃金制度も仕事内容を評価する仕組みに転換しています。

公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられていることを踏まえ、65歳未満と65歳以上に分けて、制度設計がなされています。標準年収としては、従来制度の水準を維持しつつ、賞与に重点を置いて成果配分する点が特色です。

目標に対する成果をA・B・C・標準の4段階で相対評価し、Aでは1.6倍、Bでは1.3倍相当の賞与額を支給します。

2018年から労使間で協議している65歳への定年延長については、今後も検討を続ける方針です。


カテゴリー:所長コラム



  • access
  • cubic
  • blog

pagetop