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暑い夏と就職活動

2024年07月01日

「定額減税」はじめましたか?6月1日以降最初に支払う給与から定額減税をしなければならないことになっていますが、「定額減税を実施せずに労働者に賃金を支払った場合、税法上の罰則はないが、労働基準法違反になりうる」と林官房長官が会見で発言しました。定額減税しないと手取り額が減ってしまうため、労基法第24条の賃金の全額払いの原則に違反するということを意味していると思われます。この法違反では、30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。林長官は一般論としつつも、違反が認められた場合は、まずは労働基準監督官が是正指導を行い、自主的改善を求めると話したそうですが、監督官は大変だなぁと思いました。

今年も暑い夏がやってきました。8月は猛暑になると気象庁が発表していて「災害級の暑さ」になると予想されています。今年の冬は「エルニーニョ現象」により暖冬となり2月に全国各地で20度を超える日がありましたが引き続き、この夏も「ラニーニャ現象」を受けての猛暑だそうです。昨年は東京で30度以上の真夏日が57日連続で観測されるなど暑さが長期化する傾向にあって、厚生労働省によると、熱中症による死亡者数は毎年千人(21年を除く)を超えているそうです。「昔の日本はこんなに暑くなかった」と思いませんか。日本全国の平均気温の偏りを直して比較すると、1960年代前半から20年間は寒冷化の時代といわれ「地球寒冷化」が話題になっていたそうです。「地球温暖化」はその後になって始まっていて、最高気温の月平均は40年ほどで1.5度上昇したそうです。特に2010年代から一気に気温が上がっているようなので、ここ数年では、1.5度どころではなくかなり気温が上がっているということになりますね。ということで「昔はこんなに暑くなかった」という結論になりそうです。

この暑い夏の始まりとともにリクルートスーツに身を固めた大学生が就職活動のための企業訪問を始めます。2025年春に卒業する学生を対象とした採用選考は6月1日に解禁されましたが、すでに約4割の学生が就活を終えていて、また、ある調査によると、5月1日時点の内定率は前年同期比6.7%増の76.9%にもなり過去最高になっているそうです。企業がルールを無視してまで採用活動を急ぐのは少子化により若手人材が少なく確保できないことが背景にあるということです。リクルートの調査によると、昨年の採用活動では「予定数を充足できた」企業は36.1%しかなく、調査開始以来、過去最低となりました。今の学生は、福利厚生制度が充実し、賃上げや働き方改革を進める大手に人気が集中しており、人気企業ランキングでも「安定」の評価が高い企業が上位になっています。この就活の早期化と学生の大手志向であおりを食っているのが中小企業です。25年卒の求人倍率は、500人以上の大企業が0.34倍、一方で300人未満の中小企業は6.5倍と大きな差がついています。苦労している中小企業が多い中で、人材確保ができている中小企業は、働きやすい職場作りのために賃金改善よりも残業削減や有給休暇取得促進などの労働条件の改善に取り組んでいる傾向にあるそうです。中小企業に勤める従業員にとっては安心して働けることや  「人らしくいられる職場」であることが長く働く上での大切なポイントになっているようです。

先日、ある企業に訪問したときの話です。その会社では、あることをきっかけにして、従業員の採用がうまく出来るようになり、人員に余裕が出始めて、仕事がうまくまわるようになったそうです。すると、以前は仕事の忙しさのあまり職場でイライラして周囲にキツく当たっていた従業員が周囲の人に優しく接するようになってくれましたとお相手の担当者の方はうれしそうにお話しされていました。「忙」(いそがしい)という字は、「心を亡くす」と書きます。忙しかったり、疲れたりするとどうしてもイライラしがちになりますが、普段から心に余裕を持つようにしたいものです。

「故 渡部昇一氏は学生によくこういう質問をしたそうである。『ゾウから鼻を取ったらゾウでなくなる。キリンから首を取ったらキリンでなくなる。では、人間から何を取ったら人間でなくなるか』ウィットに富んだ質問である。あなたはなんと答えるだろうか。本誌は、それは『心』である、と思う。」という文集の一節を思い出しました。(㈱到知出版社「心に残る到知の言葉⑮」より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

柔軟な働き方へ措置拡充 改正育児介護休業法が成立

 改正育介法が通常国会で可決成立し、公布されました。令和7年4月から順次施行します。

改正法では、子の年齢に応じた支援策として、子が3歳未満の労働者のテレワークを事業主の努力義務としたほか、所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲を、現行の子が3歳未満から、小学校就学前までに拡大します。

 3歳~小学校就学前の時期についてはさらに、①始業時刻などの変更、②テレワーク、③短時間勤務、④新たな休暇の付与――などの措置のなかから、2つ以上を事業主が選択して講じるよう義務付けます。措置を講じるときにはあらかじめ、過半数労組から、過半数労組がない場合には過半数代表者から意見を聴取しなければなりません。対象となる労働者に措置の内容を通知し、面談などを通じて利用するかどうかの意向を確認することも義務付けます。

 現行法において小学校就学前までの子を対象としている看護休暇は、子の行事などの目的でも利用できるようにするとともに、請求できる期間を小学校3年修了前までに伸ばします。取得事由の拡大に伴い、名称は「子の看護等休暇」に改めます。

 男性の育児休業の取得を促進するため、男性育休取得率の公表義務の対象となる事業主の範囲も拡大します。現行の「常時雇用労働者数1000人超」から「300人超」に広げます。

 仕事と介護の両立支援関係では、家族の介護に直面した旨を労働者が申し出た際に、支援制度を個別に周知し、利用意向を確認することを事業主に求めます。労働者が40歳に達した時などにおける早期の情報提供の実施や、研修実施など介護休業の申出を行いやすくするための雇用環境の整備も義務化します。

 そのほか、介護に直面した際にテレワークが行えるようにすることを努力義務とします。介護休暇について、労使協定によって勤続6カ月未満の労働者を除外する仕組みは廃止します。

奨学金・企業調査 返済支援制度 4割が活用意向 帯広商工会議所

北海道・帯広商工会議所は、帯広市とともに新設を検討している、企業への奨学金返済支援制度のニーズを把握するため、180社に対し活用意向に関する調査を実施しました。「活用したい」と回答した割合は43.0%の77社に上りました。人材獲得を争う近隣の釧路市が導入している、同制度の参加企業51社(今年4月時点)を上回りました。同商議所は今後、制度の実現に向けて市との協議を進めていくとしています。

77社を「5人以下」「6~20人」「21~50人」「51人以上」の事業規模別にみると、いずれも25%(約20社)程度を示しました。同商議所の担当者は、「小規模でも制度のニーズがあることが明らかになった」と話しています。

180社のうち、自社独自の返済支援制度が「ある」企業は7%(13社)でした。「自社単独では困難」は、67%(121社)となっています。

土日休み固定の運転士募集 岐阜バス

岐阜県岐阜市を中心に路線バスを運行する岐阜乗合自動車㈱(=岐阜バス)は、運転士不足の解消に向け、完全週休2日制の正社員運転士の募集を開始しました。土日を基本に、休日の曜日を採用時に固定。本人が希望しない限り、休日出勤は発生しません。

同社の勤務形態は5勤2休×3回と4勤2休を基本とするシフト制で、年間休日は107日となっています。「休日出勤をして稼ぎたい」という需要もあり、多くの運転士が週6日稼働してきました。

同社人事部によると、近年は新卒・中途を問わず、賃金より休日の多さ、取りやすさを重視する応募者が増加傾向にあります。「このままでは人が集まらない」と考え、5月16日から募集を開始しました。路線バスは平日の運行が多いため、土日休みを基本としました。休日の曜日固定、「休日出勤なし」での勤務については、既存の社員からの希望にも対応します。


カテゴリー:所長コラム

育児と年金

2024年06月03日

厚生労働省は、労働者が育児休業給付の受給期間を延長する目的で子供を保育所に入れるつもりがないにもかかわらず、自治体へ保育所の入所を申し込む行為を防止するため、法律を改正し、令和7年4月1日から期間延長手続きを厳格化します。育児休業給付は休業開始から180日目まで賃金の67%を受けることができ、以降も子供が1歳になるまで賃金の50%を受給できる制度です。そして、保育所への入所を希望したのに落選して休業を続けることになると最長2歳まで受給することが可能になります。そもそもこの給付は育児のために離職をすることなく職場に復帰できるようにということが目的であるにもかかわらず、育児休業を取得後に退職するつもりなのに給付金の申請を行うケースがあります。事業主からすると「従業員の補充をせずに欠員のまま1年間待たされた挙句に退社されるのだからたまったものではない。」となります。政府は25年度から給付制度の拡充を予定しており、夫婦で育児休業を取ると最大28日間は給付率を手取りの実質100%に引き上げることや、2歳未満の子どもを育てる親が時短勤務をすると、毎月の給与に10%上乗せして手当を支給すると決めました。こうなると、「2歳までは毎日子どもの成長をそばで見ていたい。できれば給付金が出る2年間は育児休業をとりたい。」という気持ちになるのもわからなくはないところです。延長に必要な手続きは、落選したことを示す「保留通知書」をハローワークに提出するだけなので、あえて人気があって入所の難しい施設に申し込んで落ちる事例が相次いでいるそうです。     今後は、「速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限る」と法改正して、利用を申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく、自宅又は勤務先からの移動に相当の時間を要する施設のみとなっていないことや市区町村に対する保育利用の申込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないことの確認が行われることになりました。

次は老後の話です。内閣府が、「生活設計と年金に関する世論調査」について発表しています。老後の生活設計について、何歳まで仕事をしたいか(したか)、何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいと考えるか(していたか)を聞いたところ、「61歳以上」働きたいと答えた者が71.1%となりました。また、収入を伴う仕事をしたいと答えた者の理由は、「生活の糧を得るため」が75.2%と一番多く、「いきがい、社会参加のため」(36.9%)、「健康にいいから」(28.7%)、「時間に余裕があるから」(14.6%)と続きます。そして、老後生活においての公的年金についてですが、「全面的に公的年金に頼る」と答えた者の割合が26.3%、「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と答えた者の割合が53.8%となっていて、老後生活を公的年金に頼る者の割合は8割にもなっていて、公的年金の重要性がかなり高くなっていることがわかります。その年金に関する法改正が2025年に予定されていて、改正項目の検証が行われています。まず、国民年金の保険料納付期間が現行の40年間(20~60歳)から45年間(20~65歳)へ延長することで給付額がどれくらい上がるか試算されます。将来の給付額の減少に備えてのことです、保険料の増額に批判が集まりそうです。次に、働く高齢者の厚生年金受給額を減らす「在職老齢年金制度」の見直しです。現在は賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えると年金が減額となりますが、高齢者の就業促進に向けて制度を廃止・緩和した場合の効果が検討されることになっています。

定年後に再雇用となる労働者の賃金については、特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付の金額を考慮したうえで決められていました。しかし、令和7年4月からは高年齢雇用継続給付の支給額が減額されることになっていて、また男性については令和8年4月以降、特別支給の老齢厚生年金が支給されなくなります。定年後に引き続き働く労働者の賃金の決め方については、定年後に再雇用されたことだけを理由に、賃金を引き下げるのは難しくなりそうです。経団連は、同一労働同一賃金の観点も踏まえながら、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度への移行を進め、職務などとの整合性の取れた水準を設定する必要があると報告書をまとめています。定年後についても働きがいのある労働に見合った賃金の額を提示する必要性がますます高まりそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

同一労働同一賃金   遵守へ「報告徴収」積極化   厚労省・令和6年度運営方針

厚生労働省は令和6年度地方労働行政運営方針を策定しました。非正規雇用労働者の処遇を改善するため、同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組みを強化します。

具体的には、労基署と労働局雇用環境・均等部門が連携する枠組みを引き続き運用したうえで、パート・有期雇用労働法に基づく報告徴収を積極的に実施し、是正指導の実効性を高めていきます。

昨年3月から運用している連携の枠組みでは、労基署が定期監督などで事業場を訪問した際に、非正規雇用労働者の有無のほか、諸手当・賞与・基本給などの待遇差などを確認。その結果を踏まえ、労働局の雇用環境・均等部門が報告徴収の対象企業を選定しています。連携強化後は、違反の恐れのある企業に的を絞って報告徴収を実施できるようになったため、以前に比べて報告徴収時の是正指導件数が大幅に増加しています。

6年度は、労基署による事実確認の結果、基本給や賞与について正社員との待遇差の理由を説明できない企業に対し、文書要請を集中的に実施します。待遇差の理由について自主点検し、説明できない場合には待遇を見直すよう促していきます。一定期間後も点検・見直しに関する報告を提出しない企業については、報告徴収の対象として検討していくとしました。

◆ニュース

「在宅勤務手当」の取扱い  実費弁償分は基礎に含めず  割増賃金算定で通達

厚生労働省は、割増賃金の算定における「在宅勤務手当」の取扱いについて、都道府県労働局長に通達しました。労働者に対する在宅勤務手当が、在宅勤務に必要な通信費などの実費を弁償するものとして支給される場合は労働基準法上の賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金には算入しないとしました。

実費弁償分に当たり得る費用としては、事務用品の購入費用、通信費、電気料金、レンタルオフィスの利用料金などを挙げました。在宅勤務手当が実費弁償分として認められるためには、労働者が実際に負担した費用のうち、業務に使用した金額が特定され、その実費を精算するものであることが外形上明確な必要があるとしています。そのため、就業規則などで実費弁償分の計算方法が明示されている必要があるとしました。計算方法は、在宅勤務の実態を踏まえた合理的・客観的な計算方法でなければなりません。毎月一定額を支給し、従業員に支出がなかった場合でも返還しなくて良いような手当は、実費弁償に当たらないとしています。

半日取得も可能に 積立年休制度を大幅拡充 参天製薬

 参天製薬㈱(大阪府大阪市)は、失効する年次有給休暇を最大60日まで積み立て、家族の看護やリフレッシュ目的の旅行に使える積立年休制度を拡充しました。取得事由として新たに、女性の健康課題(月経前症候群)、不妊治療、二次健診、がん検診、人間ドック、眼科検診、介護、自己研鑽、リスキリング(学び直し)を認めます。さらに一部の事由では半日単位での取得を可能にするなど、取得要件も緩和しました。

不妊治療など健康関連の事由に関しては「ウェルネス休暇」と総称し、具体的な取得理由を上司や同僚に明らかにすることなく利用できるようにしました。これまで積立年休の取得は1日単位に限られていましたが、ウェルネス休暇や家族の看護、授業参観などについては、通常の年休と同様、半日単位での取得も認めます。

リスキリング目的の利用に関しては、1年間の取得日数の上限を20日としました。1週間以上連続で取得する場合には、厚生労働省の教育訓練制度の対象講座であることなどの要件を設けています。


カテゴリー:所長コラム

生活習慣を見直す

2024年05月01日

昨年、石油元売り最大手のENEOSホールディングスは、懇親会の場で同席していた女性に酒に酔って抱きつくという不適切な行為をおこなった社長を解任しました。これで立て続けにグループの首脳3人が相次いで引責辞任するという不祥事が続いたわけですが、再発防止策として、取締役が会食時に飲酒しすぎていないか、同行者が監視するルールを新たに設けたと新聞が報道しました。日本を代表する大企業のトップが、監視付きでないとお酒が飲めないってかなり笑えませんか。そんな中、厚生労働省が初めて飲酒に関するガイドラインを2月に公表しています。やり玉に挙がっているのがアルコール度数9%のいわゆる「ストロング系酎ハイ」です。ぼくもよく飲みましたが、息子から「そんなの飲んでいるとアル中になるぞ!」とよく言われたものです。そのストロング系は、「安く酔える」を売りに2010年前後から需要が拡大してきたということですが、今年に入り飲料各社が、アルコール度数8%以上の缶酎ハイの新商品を販売しない方針を示すなど、ストロング系からの撤退の動きが活発化しているそうです。ぼくは定期的に血液検査を受けていますが、担当医からは「アルコールを何グラム飲んでいるかわかっていますか」と聞かれるようになりました。先ほどのガイドラインでは、酒量よりも純アルコール量に着目することが重要だとしています。その計算式は、お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8=純アルコール量(g)となっていて、ガイドラインによると1日20グラム以上摂取するとガンの発症リスクが生じるとされます。20グラムというのは、酒量でいえばビール中瓶1本、日本酒は1合となります。また、避けるべき飲み方としては、不安・不眠を解消するために飲むことや、アルコールハラスメントといわれるような他人に飲酒を強要することが挙げられています。厚労省によると「体への影響は年齢や体質によって異なり、ガイドラインを参考に自分に合った飲酒量を決めることが大切だ」とされます。最近では、タバコの次はお酒がターゲットになったといわれているようです。

もうひとつ厚労省から睡眠について興味深い数字が発表されています。「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると「適正な睡眠時間」と「睡眠休養感」の確保のため、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上を目安に睡眠時間を確保するよう推奨しています。また、高齢者には長時間睡眠は健康リスクだとして、「床上時間(寝床で過ごす時間)」が8時間以上にならないよう示したうえで、8時間以上の睡眠、長時間の昼寝を避けることを提案しています。ぼくも最近は、5時間くらいしか眠れないけどいいのかなと思っていましたが、それで十分に普通なんですね。また、ガイドでは睡眠で休養が取れているという「睡眠休養感」を高めることも大切だとしています。寝室にスマートフォンやタブレットを持ち込まないとか、就寝直前の夜食や飲酒は控えなさいとか、覚醒作用があるカフェイン摂取は1日400ミリグラムを超えると眠りにくくなる可能性があるからコーヒーは1日にカップ4杯までにしなさいとか。厚労省は、いつからか私たちの生活習慣の指導に力が入るようになったみたいです。

昨年、脳・心臓疾患等の疾病についての労災認定基準の一部が改正されて「脳心臓疾患の労災認定基準」では、過重労働や長時間労働の影響を重要視するようになりました。「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること。」と定義していますが、これは睡眠時間がもとになっていて「1日6時間程度の睡眠が確保できない状態」が1か月継続すると1日4時間程度の時間外労働を行った場合に相当するとされ、「おおむね80時間を超える時間外労働が想定される」としています。また「1日5時間程度の睡眠が確保できない状態」だと1日5時間程度の時間外労働を行ったこととして「おおむね100時間を超える時間外労働が想定される」としています。労災認定においては、1日4~6時間以下の睡眠時間は良くないということのようです。

脳心臓疾患は元気に働いていた人が急に倒れるという病気です。そして、労災認定を受ける人は、40代以上が8割を占めるといわれています。40歳を過ぎたら他人からどうこう言われなくても、自分にあったからだの休ませ方を知ることが大切ですね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

過労死等発生企業  再発防止対策を強化  全社的な対応へ指導  厚労省・過労死防止大綱素案

厚生労働省は、今年7月の閣議決定をめざしている新たな過労死等防止対策大綱の素案を作成しました。

素案では、国が取り組む重点対策として、時間外労働の上限規制の遵守徹底や、脳・心臓疾患または精神障害に関する労災保険支給決定が行われた企業における再発防止対策の強化、勤務間インターバル制度の周知などを掲げました。

上限規制については、4月から建設事業や自動車運転業務などでも適用が開始されたことから、労働基準監督署で遵守徹底を図ります。建設業では短い工期設定、自動車運転者では長時間の荷待ちなどが課題になっているため、施主や荷主などの取引関係者に対しても、長時間労働改善に向けた協力を呼び掛けていきます。

一方、過労死等の再発防止対策の取組みとしては、これまで行ってきた発生事業場に対する監督指導・個別指導に加えて、企業本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施します。企業本社への指導は、事業場を通じて実施します。

さらに、一定期間内に複数事案を発生させた企業に対しては、企業の本社を管轄する都道府県労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定を求め、同計画に基づく取組みを企業全体に定着させるための助言・指導(過労死等防止計画指導)を実施するとしました。

◆ニュース

職安が延長適否判断 育休給付巡り雇保則改正 厚労省

 厚生労働省は、子供を保育所に入所させる意思がないにもかかわらず、労働者が育児休業給付の受給期間を延長する目的で自治体へ入所を申し込む行為を防止するため、雇用保険法施行規則を改正し、期間延長手続きを厳格化します。施行は来年4月1日。入所申込みなどに関する労働者本人の申告内容をハローワークが確認し、延長の適否を判断します。

 子が1歳および1歳6カ月を超えた後も労働者が育児休業給付を受給するためには従来、保育所の入所を希望したにもかかわらず入所できないことが要件になっていました。その確認は原則として、市区町村が発行する入所保留通知書や入所不承諾通知書で行ってきました。

 雇保則改正により、受給を延長する要件として、「市区町村に申し込んだ内容が速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものと公共職業安定所長が認めるものであること」を追加。入所保留通知書に加え、本人が記載する申告書と、市区町村への利用申込書の写しを提出させて、申し込んだ施設が、合理的な理由なく自宅や勤務先から遠隔地の施設のみになっていないかどうかなどを確認します。

あらゆる危険に対応 中小へBCP策定ガイド 東商

東京商工会議所は中小企業向けに、自然災害や感染症、サイバー攻撃などさまざまなハザード(危険)に対応できる「オールハザード型BCP」の策定ガイドを発行しました。ハザードごとにBCPを策定するのではなく、ハザードにより生じる人員や設備などの資源への影響に着目して、経営資源ごとに復旧戦略を検討するよう勧めています。

まずは重要な事業を選定し、事業を遂行するために必要な経営資源として、決裁者やスキルを持った人員を決めておくべきとしました。何らかのハザードによってその人員を活用できなくなった場合の対策を立てておけば、想定外の災害も含めてどんなハザードが起きても対処できます。具体的には、決裁者の代行順位の設定、スキル保有者の在宅勤務などを検討しておくよう促しています。


カテゴリー:所長コラム

24年度の年金額改定

2024年04月01日

先日、受講したセミナーでとても心に残る言葉を教えていただきました。「明日死ぬかのように生きろ、永遠に生きるかのように学べ」ガンジーの言葉だそうです。最近の自分はどうだろうといろいろな場面で思うことが多かったので、まず、何をするのにも遅くはないと考え行動することにしました。なんとなく新しいことに挑戦しなくなっているように感じていたからです。次に自分が言ったことは、必ず守るということ。これはコンサルタントの小宮一慶さんに教えていただいたことです。「信」という言葉は、人の言葉と書きます。人からの信頼を得られるかどうかは、言ったことを守るかどうかにかかっていて、相手が誰であれ、言ったことは行うこと、それをしないと、やらない人になってしまう。信用を得るとともに、実行力をつける意味でも言ったことをやる習慣を持つことが大切だといいます。なので、身近なところでいえば、相手が誰であっても「今度、飲みに行こう!」と言ったからには、必ず行くようするそうです。くだらないことのように聞こえますが、これがなかなか難しくて出来ない。「言ったことは必ずやる」となると何も言えなくなってしまうものなので、小宮さんは言わなくても自分が思ったことはやりなさいと言います。たとえば、こういう勉強をしてみようとか、海外旅行したいな、などとふと思うことがあったときにそんな必要はないかと思いとどまったり、時間やお金の制約があって、実際には、行動せずに終わったりしていると、実行力も上がらないし、何も変わらないことになります。できる範囲で、思ったことを行動に移す、そうしていると、必ず人生がステップアップするそうです。人生のステージが上がると、付き合う人も増えるし、仕事もランクアップし、収入も増える。そうすると、思ったことがもっとできるようになります。思ったことを行う行動力が、自分を自由に大きくする。松下幸之助さんは「自己観照」という言葉を残しています。自己観照とは、自分の心を取り出し、身体の外に置いて、自分で観てみる、ということで、客観的に自分の心を観ることをいうそうです。一日を振り返る時間を作り、あれはまずかったなとかあんなこと言わなきゃよかったということに気づいて反省する。失敗することは誰でもあるので、それを反省することが大事なことなのだろうと思っています。

最近、有名人や芸能人が受給している年金額を調べるテレビ番組が人気だそうです。高収入のイメージがある芸能人はさぞかし高額の年金を毎月受け取っているであろうと興味をそそるのでしょう。ちなみにビートたけしさんが、「オレ、国民年金って(通知書を)ビーっとはがしてみたけど、1か月に6万円だったもん。めまいがして倒れた」とその番組で話しています。多くの芸能人は、会社員ではないので国民年金にしか加入していないし、そもそも厚生年金制度では、どれだけ高額の収入がある人でも、その収入は月額65万円とみなされてしまいます。ようするに、いくら高額の年収がある人でも65万円分の保険料しか払わせてくれない仕組みになっているというわけです。

そもそも月額30万円以上の受給者は全体の0.1%である1万2490人しかいません。ぼくはこれまでに1度だけ30万円以上の方の年金相談を受けたことがありますが、その人の職業は、若いころから日本酒を作っている能登の杜氏さんでした。高額な年収だったのでしょうね。当時の年金額の計算方法は現在とは異なっているので、もうそのような人に会うことはないだろうと思います。

厚生労働省が24年度の年金額改定について公表しました。年金額は2.7%引上げとなり、国民年金で月額6万8000円(+1750円)、モデル厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)で月額23万483円(+6001円)となりました。年金額の毎年の増減は、受給者から注目されているところですが、先ほどのように、厚生年金を月額30万円以上受け取っている人がいる一方で、2人に1人以上は月額15万円未満であることもわかっています。また、今後の年金制度に大きな影響を与える日本の人口ですが、2月に発表された2023年の出生数は75万8631人で、前年から5.1%減少しました。減少ペースは想定より速く、この傾向が続くと2035年にも50万人を割り込み、結婚適齢期の人口が急減してしまいます。この「2030年の壁」を超えてしまうと、出生数の反転は難しくなるといわれていて、あと残された数年が少子化トレンドを脱却するラストチャンスだといわれています。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

女性活躍推進 ハラスメント対応強化へ 有識者検討会で議論 厚労省

厚生労働省は「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」を設置しました。

企業に対して行動計画の策定などを求める女性活躍推進法は、10年間の時限立法として平成28年度から施行されており、令和8年3月末で失効することになっています。令和元年に成立した女性活躍推進法等改正法では、行動計画の策定義務および女性活躍に関する情報公表義務の対象を、常用労働者101人以上企業にまで拡大し、事業主におけるパワーハラスメント防止措置義務も新設。さらに4年7月には、省令改正によって、301人以上企業に対して男女の賃金の差異を公表するよう義務付けるなど、女性の活躍に向けて規定を充実させてきました。

その一方で、男女の賃金差異は依然として大きく、女性の管理職割合も国際的にみると低い状態です。都道府県労働局に寄せられるハラスメントに関する相談件数も高止まりしています。セクシュアルハラスメント・パワハラのほか、妊娠・出産に関するハラスメントなどの相談件数は令和4年度1年間で13万件に達します。厚労省の調査によると、顧客などからの著しい迷惑行為(カスハラ)を受けたことがある労働者も少なくありません。

このため、同検討会において、女性活躍推進に関する現状・課題を改めて整理し、めざすべき方向性・対応について議論します。2月29日の初会合では、生理や更年期障害など女性特有の健康問題への対応や、カスハラを含めたハラスメント対策の強化を検討課題とする声が多く挙がりました。

◆ニュース

本社一括届出を拡大 1カ月変形時間制など 厚労省

厚生労働省は、事業場ごとの届出を求めている1カ月単位の変形労働時間制に関する労使協定などについて、電子申請に限り、本社機能を持つ事業場が一括して届け出ることを認める通達を、都道府県労働局長に向けて発出しました。2月23日から適用しています。

従来、本社一括届出の対象は、就業規則のほか、時間外・休日労働協定、1年単位の変形労働時間制に関する協定に限られていました。

新たに電子申請による本社一括届出が認められるのは、①1カ月単位の変形労働時間制に関する協定、②1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定、③事業場外労働のみなし労働時間制に関する協定、④専門業務型裁量労働制に関する協定、⑤企画業務型裁量労働制に関する決議、⑥企画業務型裁量労働制に関する定期報告――の6つの手続きです。

いずれの手続きも、本社の協定・決議・報告と、本社以外の事業場の協定などの「内容が同一」でなければならないとしました。

たとえば、1カ月単位の変形労働時間制の場合は、業務の種類、変形期間(起算日)、変形期間中の各日および各週の労働時間・所定休日などが、一括届出を行う事業場間で同一である必要があるとしました。

◆調査

配偶者収入も実質減に 家計調査報告(2023年平均)

 総務省は家計調査の2023年平均結果を公表しました。世帯主が会社などに勤めている「勤労者世帯」について、2人以上の世帯をみると、2023年の実収入(現金収入)平均は1世帯当たり60万8182円でした。前年比に関しては、名目では1.5%減少、実質では5.1%減少となりました。3年連続で実質減少が続いています。

実収入のうち、配偶者収入の平均は9万7670円でした。名目では0.3%増加していますが、実質では3.4%の減少となっています。実質減少したのは、6年ぶりとなりました。世帯主の収入は44万1862円で、名目では2.0%減少、実質では5.6%減少しました。実質減少となるのは2年連続。勤労者世帯のうち総世帯の実収入平均は、1世帯当たり52万2334円でした。名目2.4%の減少、実質6.0%の減少となりました。


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精神障害の労災認定基準改正の影響

2024年03月01日

昨年、金沢地検の50代の男性検察事務官が、捜査の協力関係にある機関の職員に電話で「そんなことサルでもできるでしょ」などと発言したとして戒告の懲戒処分にしたと報じられました。事務官は職員とのやりとりで「捜査協力しないのなら捜査妨害やぞ」「そちらの上司に言いふらすぞ」「そんなことも知らないのか」とも発言したそうです。事務官は「要望にそった回答が得られずいらだった」と話しました。

パワーハラスメントに対する社会からの風当たりがどんどん強くなっています。数年前であれば、強く注意しただけで済んだことが済まなくなってきています。先日、ある都市の監督署に用事があり訪問した際に、そこの副署長さんと話す機会がありました。その副署長さんは、本当に業務がどんどん大変になっていると話してくれました。パワハラがあって精神疾患が発症したことについて労災認定を求めることに加えて、最近では職場でパワハラがあるため家に帰って毎日のようにお酒を飲まずにはいられずアルコール依存症になったとか、パワハラが恐くて胸がドキドキするようになった、これは狭心症だとかいって労災申請がガンガン出てくる。それらが労災認定されるケースがドンドン増えているということでした。「それじゃ何でも労災になるのでは」と、その副署長さんに問うたところ、「現状はそうなっています。」という返事でした。部下を持つ上司の方々は、部下の指導に当たって、正しい知識を身につけておく必要があるようです。

これらのことは、2023年9月の精神障害の労災認定基準の改正が影響しているようです。従来、精神障害、自殺の事案があり労災申請がされた場合、2011年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災保険の支給決定が行われてきましたが、現在は新たな認定基準により決定されているということです。今回の改正は、「業務による心理的負荷評価表」の見直しが大きなポイントといわれています。その負荷評価表の改正項目は次の4つです。①カスタマーハラスメント項目を追加②感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したことによる負荷を追加③パワーハラスメントの全6類型を明記④性的指向・性自認に関するハラスメントを明記、となっています。また、注意しなければならないのは、精神障害の悪化について業務起因性が認められる範囲が見直されて広くなっていることです。従来はもともと精神疾患を持つ治療が必要な労働者が、心理的負荷がかかる業務に従事した際、特に強い心理的負荷となる出来事がなければ労災認定されませんでしたが、業務による強い心理的負荷により悪化した場合には、専門家による判断のうえで、悪化した部分について労災認定される可能性があるようになったそうです。そして、精神疾患の既往歴があり、通院、服薬を継続しているものの、症状がなく病状がすでに安定していて、通常勤務を行っている場合については、悪化ではなく新たな発病として判断されることになったということです。最近、入社後数か月しか経っていないのに職場でのパワハラを理由に精神疾患を発病したという労働者が増えていることが気にかかるところです。そうした場合には、本当の原因がわからず事業主も対応に苦慮することが多く、今後はますます入社時の健康状態の見極めが重要になるのではないでしょうか。

職場におけるパワハラ対策義務化は、2022年4月1日以降中小企業にも適用されていて、対応が済んでいる企業も多いと思います。厚労省が公表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争における相談、助言・指導の申出、あっせんの申請の全項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が最多となっているそうです。この傾向は長年にわたって続いていることですが、労災申請の可能性が高まっている現在、企業におけるパワハラ対策がより一層求められているといえます。また、被害者が会社に相談していたり、会社がパワハラを把握していながら適切な対応をせず、改善がなされなかったりした場合は労災認定の可能性が強くなります。ありがちですが、見て見ぬふりをしないように、会社としてどうすることが適切なのか検討することが大切です。今回の改正では「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が追加されました。いわゆるカスタマーハラスメントです。社外の人たちからのパワハラも今後は企業にとってのリスクになります。カスタマーハラスメントの現場での対応は限界があります。ひどいケースであれば取引中止も含めた検討が必要です。従業員を守るという決断を経営者ができるのか、その経営者の姿勢を周りが見ていることを忘れてはなりません。 (「企業実務2024.1月号」より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

育児期残業免除 小学校就学前まで延長 子の看護休暇も拡大対象 来年4月に施行へ

厚生労働省は1月30日、育児に伴う残業免除期間の延長などを盛り込んだ育児・介護休業法などの改正法案要綱を労働政策審議会に示し、「おおむね妥当」との答申を得られました。

改正案要綱では、子を養育する労働者が請求した場合に、事業主が所定労働時間を超えて労働させてはならない労働者の範囲を、現行の「3歳に満たない子を養育する労働者」から「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」へ拡大するとしました。勤続1年未満や、所定労働日数が週2日以下の労働者に対しては、引き続き、労使協定で適用を除外できます。

子の看護休暇制度については、感染症に伴う学級閉鎖や、子の行事参加にも利用できるようにするとともに、請求できる期間を小学校3年生修了時まで延長します。対象となる行事は改正省令で示す予定としており、子の入園式や卒園式、入学式などが盛り込まれる方向です。労使協定によって勤続6カ月未満の労働者への適用を除外できる仕組みは廃止します。取得理由の拡大を踏まえ、制度の名称は「子の看護等休暇」に変更します。

いずれも施行予定日は来年4月1日。今通常国会に改正法案を提出する方針です。

◆ニュース

見込みも届出必要に 社保適用拡大でQ&A 厚労省

 厚生労働省は10月に控える短時間労働者に対する社会保険適用拡大に関するQ&Aをまとめました。事業所の新規適用時や合併時に、厚生年金保険の被保険者の総数が50人を超える見込みがある場合は、50人を超えた実績がなくても、特定適用事業所該当届の提出が必要としています。該当年月日は50人を超えると見込まれた事実の発生日としました。50人超の要件は、12カ月のうち、6カ月以上50人を超えることが見込まれるかどうかで判断します。

 現行制度では、所定労働時間・労働日数が通常の労働者の4分の3以上に満たない場合であっても、週所定労働時間20時間以上、所定内賃金月額8万8000円以上、被保険者数100人超の企業――などの要件を満たすとき、社会保険を適用しています。10月の適用拡大は企業規模要件を100人超から50人超に緩和するものです。

 雇用時には所定内賃金月額が8万8000円以下だった労働者が、遡及する給与改定によって8万8000円を超えた場合は、給与改定日から社会保険を適用します。業務の都合によって恒常的に労働時間が増加したケースでは、連続する2カ月間要件を満たし、引き続き同様の状態が見込まれる場合に、3月目の初日に被保険者資格を取得するとしています。

◆送検

36協定が期限切れ 15人違法残業させ送検 立川労基署

東京・立川労働基準監督署は、36協定の期限が切れていたにもかかわらず、労働者15人に対し、週40時間を超える時間外労働を行わせたとして、食品加工業者と同社代表取締役を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで東京地検に書類送検しました。

同社は令和5年9月11~17日の1週間において、週40時間を超えて最大39時間の時間外労働を行わせた疑い。直前の7月21日~8月20日の1カ月間は、15人中3人が月100時間を超えていました。定期監督で違反が発覚し、行政指導を挟まずに送検しています。

同労基署は数年前にも同社に定期監督に入り、長時間労働を確認していました。その際、36協定が締結されていなかったため、是正勧告を出して改善を求めました。同社は協定を締結・届出して是正報告しましたが、その後一度も協定を更新せず、期限切れになっていました。今回の定期監督は、当時の違反の記録を端緒に行っています。

同労基署は違反を繰り返した点や月100時間と時間外労働が長かった点を悪質とみて、送検に踏み切りました。36協定の未締結や期限切れは、労働時間に関する違反のうち、定期監督で最もよくみられるものといいます。


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