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精神障害の労災認定基準改正の影響

2024年03月01日

昨年、金沢地検の50代の男性検察事務官が、捜査の協力関係にある機関の職員に電話で「そんなことサルでもできるでしょ」などと発言したとして戒告の懲戒処分にしたと報じられました。事務官は職員とのやりとりで「捜査協力しないのなら捜査妨害やぞ」「そちらの上司に言いふらすぞ」「そんなことも知らないのか」とも発言したそうです。事務官は「要望にそった回答が得られずいらだった」と話しました。

パワーハラスメントに対する社会からの風当たりがどんどん強くなっています。数年前であれば、強く注意しただけで済んだことが済まなくなってきています。先日、ある都市の監督署に用事があり訪問した際に、そこの副署長さんと話す機会がありました。その副署長さんは、本当に業務がどんどん大変になっていると話してくれました。パワハラがあって精神疾患が発症したことについて労災認定を求めることに加えて、最近では職場でパワハラがあるため家に帰って毎日のようにお酒を飲まずにはいられずアルコール依存症になったとか、パワハラが恐くて胸がドキドキするようになった、これは狭心症だとかいって労災申請がガンガン出てくる。それらが労災認定されるケースがドンドン増えているということでした。「それじゃ何でも労災になるのでは」と、その副署長さんに問うたところ、「現状はそうなっています。」という返事でした。部下を持つ上司の方々は、部下の指導に当たって、正しい知識を身につけておく必要があるようです。

これらのことは、2023年9月の精神障害の労災認定基準の改正が影響しているようです。従来、精神障害、自殺の事案があり労災申請がされた場合、2011年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災保険の支給決定が行われてきましたが、現在は新たな認定基準により決定されているということです。今回の改正は、「業務による心理的負荷評価表」の見直しが大きなポイントといわれています。その負荷評価表の改正項目は次の4つです。①カスタマーハラスメント項目を追加②感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したことによる負荷を追加③パワーハラスメントの全6類型を明記④性的指向・性自認に関するハラスメントを明記、となっています。また、注意しなければならないのは、精神障害の悪化について業務起因性が認められる範囲が見直されて広くなっていることです。従来はもともと精神疾患を持つ治療が必要な労働者が、心理的負荷がかかる業務に従事した際、特に強い心理的負荷となる出来事がなければ労災認定されませんでしたが、業務による強い心理的負荷により悪化した場合には、専門家による判断のうえで、悪化した部分について労災認定される可能性があるようになったそうです。そして、精神疾患の既往歴があり、通院、服薬を継続しているものの、症状がなく病状がすでに安定していて、通常勤務を行っている場合については、悪化ではなく新たな発病として判断されることになったということです。最近、入社後数か月しか経っていないのに職場でのパワハラを理由に精神疾患を発病したという労働者が増えていることが気にかかるところです。そうした場合には、本当の原因がわからず事業主も対応に苦慮することが多く、今後はますます入社時の健康状態の見極めが重要になるのではないでしょうか。

職場におけるパワハラ対策義務化は、2022年4月1日以降中小企業にも適用されていて、対応が済んでいる企業も多いと思います。厚労省が公表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争における相談、助言・指導の申出、あっせんの申請の全項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が最多となっているそうです。この傾向は長年にわたって続いていることですが、労災申請の可能性が高まっている現在、企業におけるパワハラ対策がより一層求められているといえます。また、被害者が会社に相談していたり、会社がパワハラを把握していながら適切な対応をせず、改善がなされなかったりした場合は労災認定の可能性が強くなります。ありがちですが、見て見ぬふりをしないように、会社としてどうすることが適切なのか検討することが大切です。今回の改正では「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が追加されました。いわゆるカスタマーハラスメントです。社外の人たちからのパワハラも今後は企業にとってのリスクになります。カスタマーハラスメントの現場での対応は限界があります。ひどいケースであれば取引中止も含めた検討が必要です。従業員を守るという決断を経営者ができるのか、その経営者の姿勢を周りが見ていることを忘れてはなりません。 (「企業実務2024.1月号」より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

育児期残業免除 小学校就学前まで延長 子の看護休暇も拡大対象 来年4月に施行へ

厚生労働省は1月30日、育児に伴う残業免除期間の延長などを盛り込んだ育児・介護休業法などの改正法案要綱を労働政策審議会に示し、「おおむね妥当」との答申を得られました。

改正案要綱では、子を養育する労働者が請求した場合に、事業主が所定労働時間を超えて労働させてはならない労働者の範囲を、現行の「3歳に満たない子を養育する労働者」から「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」へ拡大するとしました。勤続1年未満や、所定労働日数が週2日以下の労働者に対しては、引き続き、労使協定で適用を除外できます。

子の看護休暇制度については、感染症に伴う学級閉鎖や、子の行事参加にも利用できるようにするとともに、請求できる期間を小学校3年生修了時まで延長します。対象となる行事は改正省令で示す予定としており、子の入園式や卒園式、入学式などが盛り込まれる方向です。労使協定によって勤続6カ月未満の労働者への適用を除外できる仕組みは廃止します。取得理由の拡大を踏まえ、制度の名称は「子の看護等休暇」に変更します。

いずれも施行予定日は来年4月1日。今通常国会に改正法案を提出する方針です。

◆ニュース

見込みも届出必要に 社保適用拡大でQ&A 厚労省

 厚生労働省は10月に控える短時間労働者に対する社会保険適用拡大に関するQ&Aをまとめました。事業所の新規適用時や合併時に、厚生年金保険の被保険者の総数が50人を超える見込みがある場合は、50人を超えた実績がなくても、特定適用事業所該当届の提出が必要としています。該当年月日は50人を超えると見込まれた事実の発生日としました。50人超の要件は、12カ月のうち、6カ月以上50人を超えることが見込まれるかどうかで判断します。

 現行制度では、所定労働時間・労働日数が通常の労働者の4分の3以上に満たない場合であっても、週所定労働時間20時間以上、所定内賃金月額8万8000円以上、被保険者数100人超の企業――などの要件を満たすとき、社会保険を適用しています。10月の適用拡大は企業規模要件を100人超から50人超に緩和するものです。

 雇用時には所定内賃金月額が8万8000円以下だった労働者が、遡及する給与改定によって8万8000円を超えた場合は、給与改定日から社会保険を適用します。業務の都合によって恒常的に労働時間が増加したケースでは、連続する2カ月間要件を満たし、引き続き同様の状態が見込まれる場合に、3月目の初日に被保険者資格を取得するとしています。

◆送検

36協定が期限切れ 15人違法残業させ送検 立川労基署

東京・立川労働基準監督署は、36協定の期限が切れていたにもかかわらず、労働者15人に対し、週40時間を超える時間外労働を行わせたとして、食品加工業者と同社代表取締役を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで東京地検に書類送検しました。

同社は令和5年9月11~17日の1週間において、週40時間を超えて最大39時間の時間外労働を行わせた疑い。直前の7月21日~8月20日の1カ月間は、15人中3人が月100時間を超えていました。定期監督で違反が発覚し、行政指導を挟まずに送検しています。

同労基署は数年前にも同社に定期監督に入り、長時間労働を確認していました。その際、36協定が締結されていなかったため、是正勧告を出して改善を求めました。同社は協定を締結・届出して是正報告しましたが、その後一度も協定を更新せず、期限切れになっていました。今回の定期監督は、当時の違反の記録を端緒に行っています。

同労基署は違反を繰り返した点や月100時間と時間外労働が長かった点を悪質とみて、送検に踏み切りました。36協定の未締結や期限切れは、労働時間に関する違反のうち、定期監督で最もよくみられるものといいます。


カテゴリー:所長コラム

環境整備の大切さ

2024年02月01日

2024年は元旦に起こった能登半島地震からスタートとなりました。大変な痛ましい状況に亡くなられた方、ご遺族の方にはお悔やみを申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申しあげます。

先月、早起きが重要な習慣ですとお伝えいたしましたが、もうひとつよく言われることが「環境整備」です。環境整備といえばイエローハットの創業者である鍵山秀三郎氏が有名です。鍵山氏は「掃除をすると人が変わる」といいます。先日、鍵山氏の掃除研修に参加した方のお話をたまたま聞くことができました。その研修では、トイレ掃除をするとき素手で便器を磨くといった話は聞いていましたが、なんとその方はキレイにした後の便器の水をすくって飲んだそうです。「飲んでも問題ないくらいキレイにしたから」ということだそうですが、良い悪いは置いておいてそれくらい清潔にすることにこだわった掃除をするそうですね。ぼくも毎日、会社のトイレ掃除をしていますが、いくらなんでもそこまではできません。

「利益を追うな、仕事を追え」といわれます。鍵山氏は「会社で何が大事かというと、利益より社風をよくすることだと思います。社風が悪い会社で未来永劫よくなった会社はありません。社員というのは、命令や規則あるいは職務規定によって仕事をするということは絶対にありません。どんな会社にでも厚い規定集がありますが、その規定によって仕事をしている人は一人もいません。」「つまり、規定にしたがって仕事をしているということはないということです。何にしたがっているかというと、社風にしたがって仕事をしているわけです。ですから、いい社風になれば、いい仕事ができるわけです。いい社風をつくるためには、まず会社、それから、もちろんトイレ、車、道路をきれいにするといいと思います。」と掃除の大切さを説きます。あと、「気づく」ことが結果をよくしていくために求められることだともいいます。気づくといってもいろいろあるわけですが、「人との関係において、自分のやっていることがどうなのかということにたえず気づく。あるいは、この人のためにどうしたらいいかということを基本にして気づく人にならないと駄目だ」ということです。ようするに、特別なことではなく、当たり前の、だれでも知ってはいるけれども、やっていない小さなことに目を向けて、それを徹底できるかどうかが大事なことだと鍵山氏は言っているのではないでしょうか。話を掃除にもどしますが、鍵山氏が主宰する掃除研修には全国から経営者や幹部の方が参加されるそうです。なかにはものすごく感激した社長がキレイにすることは素晴らしいことだから、早速、全社で取り組みたいと言うことがあるそうですが、鍵山氏は「そんなに感激したのなら、まず、あなたが明日からやってほしい。できれば最初は誰にも知られないように。」と指導するそうです。

経営コンサルタントの一倉定氏は、「社長は、社員に対しては、一生懸命やっている限り、寛大にならなければならない。会社の業績は、社長の考え方と行動によって決まるのであって、『企業は人なり』というのは、社長次第ということであって、社員のことではない、と解釈するのが、社長としては正しいのである。」といっています。((一倉定の社長学第7巻より)ぼくは、そのとおりだと思っていて、いつも自分に言い聞かせるようにしています。「悪い経営者はいても、悪い会社はない」ということですね。

この大災害にあたりコンサルタントの小宮一慶氏は松下幸之助さんの言葉から「逆境は尊い。しかしまた順境も尊い。要は逆境であれ、順境であれ、その与えられた境涯に素直に生きることである。謙虚の心を忘れぬことである。素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境はうぬぼれを生む。逆境、順境そのいずれをも問わぬ。それはそのときのその人に与えられた一つの運命である。ただ、その境涯に素直に生きるがよい。素直さは人を強く正しく聡明にする。逆境に素直に生き抜いてきた人、順境に素直に伸びてきた人、その道程は異なっても、同じ強さと正しさと聡明さを持つ。」(「道をひらく」より)と、お悔やみの言葉とともに紹介していました。このような状況でも、能登の被災地では強く立ち上がろうとする人がいます。本当に頭が下がる思いです。松下幸之助さんは、前向きであればどんな状況でも道は必ず開けると言います。その言葉を信じて未来に進みたいと思いました。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

育児休業給付 国庫負担「8分の1」に引上げ 財政基盤強化狙う 厚労省案

厚生労働省は、雇用保険の育児休業給付に関する財政基盤を強化するため、現在暫定的に「80分の1」に引き下げている国庫負担割合を、令和6年度から、同法で原則として定める「8分の1」に戻す方針です。

保険料率については、当面の間現行の0.4%を据え置きつつ、7年度から保険財政の状況に応じて弾力的に調整できる仕組みを導入します。規定上の料率を0.5%に引き上げたうえで、実際の保険料率は弾力的に0.4%に引き下げられるようにします。

育児休業給付については、育児休業取得者の増加を受けて支給額が増加傾向にあり、男性育休の取得推進によって今後さらに伸びることが見込まれています。

近年の収支状況をみると、労使から徴収している保険料(労使折半0.4%)と国庫負担(給付費用の80分の1)を合わせた収入額が、令和2年度以降7700億~8000億円弱で推移しているのに対し、令和2年度に6648億円だった支給額は、3年度6656億円、4年度7117億円、5年度7780億円と急増しています。

4年4月以降の雇用保険料率を定めた改正雇用保険法の附則で、「6年度までをめどに、育児休業給付の財源のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講じる」とされていることを踏まえ、厚労省は、財政基盤の強化策の方向性を労働政策審議会雇用保険部会に提示。昨年12月26日の部会で示した報告書案にも盛り込みました。

◆ニュース

雇保適用「週10時間以上」へ拡大 基本手当の給付制限短縮

 厚生労働省の労働政策審議会雇用保険部会は1月5日、雇用保険制度の見直しに向けた部会報告書をまとめました

 雇用のセーフティネットを広げる観点から、現在、週の所定労働時間が20時間以上の労働者に限定している雇用保険制度の対象者について、10時間以上にまで拡大するべきとしました。新たに対象に加わる労働者も、現行の被保険者と同様に、基本手当のほか、育児休業給付や教育訓練給付などの対象とします。令和10年度中の実施をめざします。

 基本手当については、正当な理由がない自己都合離職者に設定している給付制限期間を、現行の原則2カ月から1カ月に見直します。その際、給付目的の早期離職を防止するため、5年間で3回以上の正当な理由のない自己都合離職を繰り返す場合は、給付制限期間を3カ月とします。離職期間中や、離職日前1年以内に、自主的に教育訓練を行った場合には、給付制限を解除します。期間短縮と制限解除は、令和7年度からの導入を見込んでいます。

6年度保険料率 10%維持を決定 協会けんぽ

全国健康保険協会(協会けんぽ)は、来年度の全国平均保険料率について、10%の維持を決めました。決算では黒字が続いているものの、医療費の伸びが賃金の伸びを上回る赤字構造が解消されておらず、中長期的な財政運営の観点から、10%を維持する必要があると判断しています。

平均保険料率については、協会けんぽが平成30年度に「中長期的な観点で考える」とする方針を表明しました。以降方針に変更はなく、単年度収支で黒字が見込まれる場合であっても、料率を引き下げず、準備金残高を積み上げてきました。

維持を決定した運営委員会では、事業主代表から少子化対策支援金の動向を懸念する声が出ました。労使は追加の拠出を求められるため、これまでと同様「中長期的な視点だけで10%を維持するという一点だけではもたない」と強調しています。


カテゴリー:所長コラム

早起きの実践

2024年01月05日

 2024年1月から新しいNISA制度が始まります。通常、株や投資信託の売買で生じた利益には、20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で買った場合、将来どれだけ儲かっても税金がかからないという制度です。最近、モノの値段が上がっています。食品や日用品は言うに及ばず、電気代から通信費、ガソリン代などさまざまな「値上げラッシュ」を日々実感しているところです。原因として、コロナ禍で停滞した経済活動の反動や人手不足が深刻化しているとか、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格が上昇しているとか理由はさまざま挙げられています。では、それらの原因が解決したら物価は下がるのかということですが、もう物価は以前の水準には戻らず、さらに上昇し続けると言われます。なぜかというと世界経済はすでに完全なインフレ基調だからだそうです。日銀が1999年に「ゼロ金利政策」を導入して以降、ほぼ一貫して金融緩和政策がとられました。つまり日本はもう30年以上もの間、インフレではない状態が続いてきたわけで、インフレを知っている人はほとんどいません。以前、老後2000万円問題が話題になったこともあって「貯蓄から投資へ」の風潮が強まったことがありましたが、いまだに日本の金融資産約2053兆円のうちの50%超を「現金・預金」が占めています。インフレに強い資産とされる株式や投資信託などは15.4%しかありません。現預金を貯めこんでいる人は、インフレでどんどん貧しくなっていると言われます。というのもインフレではモノの価値が上がる一方でお金の価値が下がるからです。例えば、仮にこの先、年2%のペースで物価上昇が続くとした場合、金庫に2000万円を保管したまま20年後に使うとすると、お金の実質的な価値は約67%にまで減ってしまいます。20年後に現金2000万円はそのままですが、現在の金額に割り戻すと約1346万円となって、約654万円も目減りしてしまうことになります。そもそも、日本の金融政策がおかしいともいえるわけです。昨年暮れに日銀は金融政策会合を開きました。植田総裁が日銀の金融政策について「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っている」と発言していたことから注目されていましたが、日銀は金融緩和策の現状維持を決めました。マイナス金利政策の解除の見極め段階に入ったといわれていますが、次は今年の1月後半の決定会合で判断されるとのことです。金利の上げは経済への影響も大きく慎重にあるべきだと思いますが、早く正常化してもらいたいと思います。

社会教育家の田中真澄氏が、「八起会」の創設者である野口誠一氏について「到知」2023年10月号で話されていました。野口氏は自身の放漫経営で会社を倒産させてしまい塗炭の苦しみを味わった経験について講演などを通して、伝え続けた方だそうです。八起会には、会社を潰さないための五つの指針「八起五則」(早起き、笑顔、素直、感謝、いい出会い)というものがあり、どれもが会社経営をうまくいかせる大切な心得と言われているということですが、その中でも「早起き」が最も重要な習慣であり、松下幸之助氏や稲盛和夫氏の会社はどこも早起きを奨励していたことや「毎朝七時半までに出勤する社長の会社は倒産しない」として、経営者も社員も共に早起きをして、勤勉な生き方を志向することの大切さを訴えているそうです。田中氏は、「最近はグローバリズムの影響からか、勤勉な生き方や早起きを否定する言論もマスコミで散見しますが、こんな意見に惑わされないことです。日本人は昔から勤勉性を重視し、朝早くから真面目に、誠実に働くことを善しとしてきました。この習慣はどんなに時代が変わっても、未来永劫、変わることのない正しいものなのです。」といいます。また、田中氏の受け持つ大学の講座の中で、「卒業して就職したら、最初の一年間だけでもいいから毎朝、職場へ一番に出社し、整理整頓に努め、早め早めに仕事の準備をして能率を上げること。これを心掛ければ、その後の人生でどれだけ得をするか計り知れないものがあるということです。」と伝え続けたそうです。実際にこの話を実践した卒業生が何人もいたそうですが、その採用先の企業からはその働きぶりに感心したと大学側に連絡がたくさんあったそうです。ぼくもいつの間にか早起きが習慣になっていますが、毎朝、家から外へでたときのまだ世の中が動き出していない空気感が大好きです。それに朝早くからの仕事はずいぶんとはかどりますよ。

人生をうまく生きることや会社経営を成功させることに必要なことはワンパターンで決まっていると言う人がいます。そのことに早く気づいて実践することが必要だそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

応援手当支給へ助成 育休取得時で最大125万円 厚労省

厚生労働省は、育児休業取得者の業務を代替する労働者に“応援手当”を支給する中小企業への助成を拡充しました。両立支援等助成金に新コースを追加する雇用保険法施行規則の改正省令を公布しています。施行は2024年1月1日で、育休中に業務を代替する労働者に手当を支給した場合、育休取得者1人につき最大125万円を支給します。

追加するのは「育休中等業務代替支援コース」です。同コースでは、育休や育児短時間勤務中の業務体制整備のため、業務を代替する労働者への応援手当(業務代替手当)の支給や、代替要員の新規雇用(派遣含む)を実施した中小企業を支援します。

育休中の手当支給に対しては、制度利用者1人当たり、業務体制整備の経費(原則5万円)のほか、手当額の4分の3(最大120万円)を助成します。手当への助成では、1カ月当たり上限10万円で最長12カ月支援します。

時短勤務中に手当を支払う場合は、業務体制整備経費が定額2万円、手当への助成が最大108万円(上限月3万円、子が3歳になるまで)。育休取得者や時短勤務利用者が有期雇用の場合、10万円を加算します。

◆ニュース

新制度「育成就労」創設へ 技能実習を廃止し 有識者会議・最終報告

 外国人技能実習制度と特定技能制度の見直しの検討を進めていた政府の有識者会議は11月30日、最終報告書をまとめ、小泉龍司法務大臣に提出しました。

技能実習について最終報告書は、労働力の需給調整の手段として利用してはならないという基本理念を掲げている一方、実際には実習生が国内企業の貴重な労働力として受け止められてきたと指摘。技能実習制度を廃止し、人材確保と育成を目的とする新たな制度「育成就労」を創設するよう提言しています。

新制度での受入れ分野は特定技能の分野に合わせ、3年間の就労を通じて特定技能1号の水準の人材を育成します。

技能実習では原則的に認めていなかった他社への転職については、同一企業で1年を超えて就労するなどの要件を満たした場合に認めます。転職の期間要件に関しては、必要な経過措置を検討するよう政府に求めました。

「推薦なし」理由に昇格差別 役職との差額支払い命令 都労委

東京都労働委員会は、都内の運輸業者が所属長の推薦がないことを理由に組合員2人を未だに昇格させていないのは、組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たると認定しました。平成30年11月末付けで2人を指導員以上の職位に昇格したものとして取り扱い、現在までの賃金額と指導員以上の職位ならば支払われるべき賃金額との差額を支払うよう命じました。

合同労組に加入している組合員2人はトレーラーの運転者で、入社以来20年以上にわたって役職者に昇格することなく、最低位の職位のままでした。会社は組合との団体交渉で、昇格は所属長などからの推薦に基づいて実施しているため、推薦がないと昇格できないと回答していました。

都労委は、昇格に関する手続きを明確に定めた社内規程はなかったと認定しました。全運転者198人のうち、役職者は59人と約3割を占めていますが、推薦によって昇格したのは7人だけでした。一方で、組合員らの所属部署では、勤続18年以上の従業員のなかで、役職者になっていないのは両名のみとなっています。

組合員らに勤務成績が低いなどの役職者に不適任な事実はなく、非組合員との間に不自然な差異が生じていると疑わざるを得ないとしています。推薦という形式的な部分にかこつけて、昇格を回避していたと判断しました。


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2023年12月22日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月29日(金)~1月4日(木)まで年末年始休業とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしますが、宜しくお願いいたします。

2024年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。




カテゴリー:お知らせ 未分類

変化するこれからの労務管理

2023年12月01日

今年を振り返るとだんだんと労働問題の様子が変わってきているようなことがいくつかありました。驚いたのは、社員が会社在職中に弁護士を立てて会社を訴えたり、要求を突き付けてきたりしたことです。これまでは、退社することになった社員が、退職する理由は上司のパワハラだったとか、在職中の未払いになっている残業代を請求してくることはありましたが、さすがに在職中に労働条件について弁護士を通じて改善を求めてきたり、上司からのハラスメントに対して損害賠償を請求したりということは経験がないです。

一方で、人材不足も深刻化しているようです。名古屋のほうでは、トヨタのグループ会社が工場で働く期間工を採用するために、1人につき100万円の入社祝金を支給していると聞きました。そして業界によっては、ハローワークの求人票に入社祝金制度があることを記載してアピールを行うようになっていますし、企業が学生時代の奨学金を代理返済する制度も整備されました。また、人材確保が難しいといわれる薬剤師は、薬学部の大学生に対して企業が学費の貸し付けを行ったり、給付金を支給したりするなど、獲得競争が激化しているようです。

では、来年以降に社会がどのように変わっていくのか。日経新聞の記事をもとに現在、議論されていることを取り上げてみます。まずは、国民年金です。国民年金保険料の65歳までの納付が社会保障審議会で議論されています。国民年金の保険料納付期間を現行の20歳以上60歳未満の40年間から、65歳までの45年間に延長するという案です。審議会委員からは、「このままだと基礎年金だけでは生活が成り立たなくなる可能性があり、延長したほうがいい」「平均寿命が延び、働ける高齢者は保険料を支払うべきだ」といった賛成の意見が多くある一方で、根本的な原因である給付の抑制が進まない現状を改める機運は乏しいといわれています。そんな中、年金改革はもう間に合わないのではないかという記事も載っています。ヨーロッパでは年金の支給開始年齢の引き上げを進めていて、フランスは国民の大反対を受けながら62歳から64歳に引き上げたことは記憶に新しいし、イギリスも現在の66歳から67歳への引き上げが予定されているそうです。日本は、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりますが、本来はこの団塊の世代への支給が開始される前に取り組むべきだった支給開始年齢の引き上げが見送られていて、もし今から支給開始年齢を遅らせるということになると、経済情勢から非正規雇用で働いてこざるをえなかった人が多い就職氷河期世代を直撃することになり世代間格差を広げかねず、もはや着手できなくなっているということだそうです。

次は雇用保険についてです。国は子育て支援のため、育児休業給付を賃金の手取りの実質8割から10割へ拡充することとして、2025年度から制度が開始されます。さらに2歳未満の子供を養育している労働者が育休明けに短時間勤務をした場合には労働時間や日数の制限を設けずに賃金の一定割合を上乗せして支給することになっています。また政府は男性の育休取得率の目標を「25年に50%、30年に85%」とすると表明しています。昨年の取得率は17.3%で、目標に向けて取得率が高まれば給付はさらに伸びることになります。この状況に財務省は育児休業給付の保険料率と国庫負担割合の見直しを、早急に図るべきとする方針を明らかにしていると11月20日の労働新聞が報じています。雇用保険料率は昨年10月に失業等給付にかかる料率が0.2%から0.6%に引き上げられたばかりなので、再度の引き上げとなると労使双方からの反発が予想されるということです。また、雇用保険の加入条件の一つとして週の労働時間について現行の「20時間以上」から「10時間以上」に緩和する方向で検討されているとのことで、新たに500万人が加入となる見込みだそうです。労働時間の規定の緩和でアルバイトやパート従業員が広く雇用保険の給付を受けられるようになることは良いことですが、企業や個人の保険料負担が増える面もあるということになります。

インドの名目国内総生産(GDP)が2026年に日本を抜くといわれています。その後、27年にはドイツも抜いて米中に次ぐ世界第3位の経済大国になるということです。今年は中国が人口減少に入ったといわれており、これまで日本、中国、韓国を中心に発展してきた極東アジアの時代が終わるのではないかという人もいます。これからますます日本社会の変化は続くのでしょう。社会が変わってきたことを実感した1年でした。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

介護直面前に情報提供も 支援制度活用を促進 離職防止策で論点示す

厚生労働省はこのほど、仕事と介護の両立支援制度の見直しに向けた論点を整理し、労働政策審議会の分科会に示しました。

介護離職を防止する観点からは、労働者への周知に関する新たな仕組みの導入を挙げています。具体的には、①介護の必要性に直面した労働者を対象に、両立支援制度に関する情報を個別に周知し、労働者の意向を確認すること、②介護に直面するよりも早期に支援制度の情報を一律に提供すること、③研修の開催や相談窓口設置などの雇用環境の整備――の3点を検討課題としました。

使用者委員からは、②の情報提供の時期として、介護保険被保険者となる40歳到達時のほか、育児期の労働者に実施する定期的な面談の活用なども検討すべきとの発言がありました。また、③の研修開催などについて別の使用者委員は、「中小企業での対応は難しい」と訴えました。

介護期の働き方としてテレワークの導入を事業主の努力義務にすべきかどうかも論点に盛り込みました。分科会では「テレワークは両立支援の手段として望ましい一方、実施が困難な業種・業態がある中では、努力義務化には慎重であるべき」、「選択的措置義務の選択肢の一つに追加すべき」などの声が挙がっています。

◆ニュース

4段階で手順示す 配偶者手当見直しへ 厚労省

 厚生労働省は、企業に対して配偶者手当の見直しを促すリーフレットを作成しました。9月に決定した年収の壁・支援強化パッケージの取組みの一環。配偶者の勤務先から配偶者手当をもらうために就業を調整している短時間労働者がいることから、廃止など見直しの手順を4ステップのフローチャートで示しました。

 取組みの第一歩として、賃金制度・人事制度の見直しの検討に着手した後、従業員アンケートなどを通じて、ニーズを踏まえて自社に合った案に絞り込みます。

 絞り込んだ案を基に、労使での話合いや、必要な経過措置の検討などを経て、見直し案を決定します。その後は、見直しの影響を受ける従業員に対して新制度に関する丁寧な説明を行っていくとしました。

 見直しの具体例として、①配偶者手当の廃止・縮小+基本給の増額、②手当廃止・縮小+子ども手当の増額、③手当廃止・縮小+資格手当の創設などを示しています。

死後の加入認めず 団交拒否は正当と判断 群馬県労働委員会

群馬県労働委員会は、鉄道車両メンテナンス業者が業務中に死亡した従業員の勤務状況に関する団体交渉に応じなかったとして、労働組合が救済を申し立てた紛争で、同社の対応は不当労働行為に該当しないと判断し、申立てを棄却しました。従業員が生前に同労組に加入した事実はなく、労組は「事後加入」と扱っていました。

従業員は昨年、業務中に心不全で死亡しました。労組は同社に対し、従業員の勤務状況などを交渉事項とする団交を申し入れました。同社は、従業員が生前に組合員だったことの確認を求めましたが、労組は応じず、団交は行われませんでした。労組は、団交拒否が不当労働行為に当たるとし、同労委に救済を申し立てました。

同労委の審査過程で、従業員が生前に同労組に加入したことはなく、相続人の意向で死後に「事後加入」となっていたことが判明しました。同労委は、死後、労働組合に加入することができないことは明らかであると指摘。他の従業員の中に同労組の組合員が存在しないことからも、同労組が「使用者が雇用する労働者の代表者」には該当しないとしました。


カテゴリー:所長コラム



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