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ビジネスと人権

2025年09月10日

平成27年から石川県中小企業団体中央会より外国人技能実習制度適正化事業の専門家として、石川県内の技能実習生を受入れている協同組合や企業の訪問を始めて今年で10年目になりました。この外国人技能実習制度は、1993年に創設されており、その制度の目的は、日本で培われた技術などを開発途上国へ移転して、その地域の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという国際協力が基本であって「労働力」ではないとされてきました。しかし、実習生を受け入れている企業の経営者から聞こえてくるのは、「実習生がいないと会社は立ちいかない」という切実な声です。

制度創設の頃は、中国からの受入れが中心でしたが、中国の経済発展とともにその数は減少し、受入国はベトナムにうつり、昨年あたりからはインドネシアやミャンマーからが増え始めているようです。これはその国の経済力の大きさを表しているようです。当初の日本のGDPは、1国でアジア全体の国を合わせても約2倍の規模を誇っていましたが、現在は約10分の1程度に縮小してしまっています。それだけ、日本に比べて、他のアジア諸国の経済力が強くなっています。つまり日本に来なくても、自国で働いて十分な収入が得られるのであれば日本で働く必要がないのです。いまや日本の経済を支えている技能実習制度ですが、失踪や過酷な労働条件によるトラブルが頻発したこと、また実習生は転職ができないため、日本は外国人労働者を低賃金で強制労働に就かせていると諸外国からは人権保護の観点から非人道的と批判されてきました。

「カカオ2050年問題」をご存じでしょうか。気候変動が原因で、2050年にチョコレートが食べられなくなるかもしれないといわれています。国連機関の報告書によると平均気温が上昇するとカカオが生育しなくなり、生産量が大幅に減少してしまう可能性が高いといわれています。また、カカオ産業での「児童労働」は特に深刻な状況にあるといわれます。児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことをいいます。カカオの生産現場は過酷な状況にあるといわれていますが、そこでは多くの子どもたちが働いています。

最近は日本企業でも「ビジネスと人権」への関心が高まっています。企業活動が社会、経済、環境に与える影響は無視できなくなっていて、「製品に責任を持つ」から「生産の在り方に責任を持つ」へと深化しています。人権を無視して大きな損害を生じさせたあるアメリカのアパレル企業があります。2013年にバングラデシュで8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落して少なくとも1132人が死亡する事故が起こりました。この事故がきっかけで自分たちのファッションが劣悪で安全基準が欠如した労働環境から生み出されていたことを知ることになり、ヨーロッパで大規模な不買運動が起こりました。その事故により失われた売上高は約1兆4000億円といわれています。このようにビジネスにおける人権侵害が企業の経済活動に与える影響は無視できなくなっていますが日本での取り組みは世界に遅れているといわれます。

こういった中で今、日本の繊維業界の取り組みが注目されています。繊維業はこれまで対象外だった外国人材受入れの特定技能制度をスタートさせました。繊維業界では技能実習生に対する労基法違反の事例が多くあったといわれています。しかし、特定技能制度の開始にあたり、業界独自の要件を設定しました。それは「国際的な人権基準を遵守し事業を行っていること」「勤怠管理を電子化していること」「パートナーシップ構築宣言の実施」「特定技能外国人の給与を月給制とすること」の4つです。この追加要件の設定は、単なる労働力確保にとどまらず、業界全体の労働環境と企業文化の改善を促す契機になるのではないかといわわれています。

20年前は、技能実習生が日本で3年働けば帰国後には家が3軒建つといわれ、日本で働きたい外国人はたくさんいました。その頃から比べると、日本を取り巻く状況は大きく変わりました。技能実習制度は、2027年に育成就労制度として生まれ変わります。今後は選ばれる日本となるための行動が求められそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

遺族補償年金 男女差解消を提言 厚労省労災研究会・中間報告

厚生労働省の「労災保険制度の在り方に関する研究会」は中間報告書をまとめ、遺族(補償)等年金における夫と妻の受給要件の差の解消などを提言しました。

現行の遺族(補償)等年金は、被災労働者の遺族である妻が年齢にかかわりなく受給できるのに対し、夫の場合は労働者である妻の死亡時に55歳以上か、一定の障害がある状態でなければ受給できません。中間報告書では、夫と妻の支給要件に差を設ける合理的理由を見出すことは困難と指摘し、要件の差を解消することが適当としました。差を解消する方法については、夫の要件を撤廃すべきとの意見が大半を占めたとしています。

労働災害が長期的に減少傾向にあるなかで存在意義が問われていたメリット制については、一定の災害防止効果があるうえ、事業主の負担の公平性の観点からも一定の意義が認められるとし、労災かくしを助長するといった懸念はあるものの、制度の意義を損なうほどの影響は確認できなったとして、「今後も存続させ、適切に運用することが適当」と結論付けました。

今後、提言内容について労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会で議論を進めます。

◆ニュース

男性の育休取得40% 前年度から大幅上昇 雇用均等基本調査

 厚生労働省がまとめた令和6年度雇用均等基本調査結果で、男性の育児休業取得率が初めて4割を超えたことが明らかになりました。4年10月1日~5年9月30日の1年間に子供が生まれた男性労働者の取得率を調べたもので、6年10月1日までに産後パパ育休を含め育休を開始した割合は前年度調査の30.1%から10ポイント以上増え、40.5%に達しました。

 育休を取得した男性のうち、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる産後パパ育休を取得した者は60.6%でした。有期契約で働く男性の育休取得率は33.2%で、前年度の26.9%より6.3ポイント上昇しました。

 業種別に男性の取得率をみると、鉱業・採石業・砂利採取業(67.7%)や、金融業・保険業(63.6%)、学術研究・専門・技術サービス業(60.7%)で6割を超えました。一方、生活関連サービス・娯楽業(15.8%)や不動産業・物品賃貸業(19.9%)は2割未満と、業種間の差が大きい状態です。

運転者の採用倍増 完全週休2日制導入へ 名正運輸

愛知県を中心に関東・東海・関西エリアに拠点を持つ名正運輸㈱は、トラック運転者の完全週休2日制を実現し、各種手当による給与増を図ったことで、昨年度の採用人数が50人に上ったと明らかにしました。例年の20~30人から大幅に伸び、運転者の総数が300人を超えています。

新制度の適用は今年4月ですが、昨年から募集要項で予告し、採用人数の増加につなげたといいます。完全週休2日制の導入により、年間休日を96日から104日まで増やしています。

給与に関しては、全従業員の平均で10~15%アップしました。子育て世代への生活支援として、「家族手当」を新設。20歳以下の子どもを扶養する社員に対して、1人当たり月1万円を支給します。中堅・ベテラン層向けには「プロドライバー手当」を導入しました。勤続2年目から月1000円を支給。勤続年数に応じて上がっていき、10年目に上限の1万円まで高める仕組みとしています。

無事故だった場合に支給する「安全手当」や、非喫煙者と禁煙中の者に支給する「健康手当」なども増額しています。

同社は日給月給制で一部に歩合給を導入していますが、その割合を下げ、基本給を3000円から6000円に増額しました。同社の広報担当者によると、トラック運転者に完全週休2日制を導入する企業はまだ少なく、「しっかり休めて、安定した給与がもらえる」ことを魅力にしていく考えです。


カテゴリー:所長コラム

睡眠時間と通勤手当

2025年08月01日

高齢者は寝すぎると、死亡リスクが1.57倍にもなるようです。厚生労働省が公表した「健康つくりのための睡眠ガイド2023」では、成人、こども、高齢者ごとに睡眠・休養についての推奨事項や参考となる情報がまとめられていて、睡眠時間や眠り方などの生活習慣が、寿命に大きな影響を与えるとされています。どれくらいの時間を寝るのが適当なのかということは誰しも気になりますね。ぼくは、高齢者というにはまだ少し早いですが、最近は5時間ほど寝れば十分になってきました。さきほどの睡眠ガイドでは、世代ごとに推奨される睡眠時間が示されています。小学生なら9~12時間、中学・高校生は8~10時間、成人は6時間以上ですが、高齢者は「床上時間が8時間以上にならないこと」とされていて、「寝すぎない」ことが推奨されています。人は加齢とともにエネルギー消費量が落ちて、睡眠は短く、浅くなっていきます。高齢者の寝すぎは死亡リスクを高めるともいわれていて、その理由は、睡眠時間が長いと睡眠の質が低下してしまい、身体を休めることにならないということだそうです。身体が休まらないので、意欲が減退し、動くのがおっくうになり、「運動不足」や「認知機能の低下」をまねき、やがて肥満や高血圧、糖尿病、心筋梗塞、ガン、うつなどの病気のリスクを高めてしまうということになるようです。

「睡眠時間」は労災認定においても重要視されていることはご存じでしょうか。脳・心臓疾患の労災認定の可能性は、「発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合」に高まります。「100時間」「80時間」の意味は、「1日6時間程度の睡眠が確保できない状態が1か月継続した場合に、おおむね80時間を超える時間外労働が想定され、1日5時間程度の睡眠が確保できない状態が1か月継続した場合としては、おおむね100時間を超える時間外労働が想定される」ということです。このように労災認定と睡眠時間は、強く結びついているわけですが、都市部の場合には、理屈上、ここに通勤時間が加算されることになります。

ぼくが初めて東京に出て驚いたのは、通勤時間帯の満員電車でした。もう乗れないだろうという状態の車両に無理やり身体をねじこみ、そのまま都心まで1時間以上も揺られて毎日通勤します。この背景には、都心と郊外の「家賃の格差」と勤務先からの「通勤定期券」の支給があります。会社員は郊外の家賃の安い物件から、通勤定期券を使って都心の会社に通うわけです。しかも、この通勤定期券を購入するための通勤手当は、非課税なので社員の給与所得とはなりません。この「無料」の通勤定期券を使って遠くに住むことのデメリットが通勤時間です。往復3時間だとすると労働時間に対して約4割にも相当するので「健康的な生活」という点においては、とても大きな負担になっていることは間違いありません。最近では、パワーカップルといわれる高収入の若い夫婦世帯が通勤定期券には目もくれず、都心のタワーマンションに住み時間を大切にするケースもでてきていますが、通勤定期券の支給は「昭和型の日本」を支えてきた要因のひとつといえるでしょう。

今年の秋に、ガソリン価格の上昇を反映してマイカー通勤手当の非課税額が11年ぶりに引き上げられるといわれています。前回は、平成28年度の税制改正により1か月あたりの非課税限度額が10万円から15万円に引き上げられましたが、今回も11年ぶりにこの非課税枠が増額される予定になっています。ただ一方で、通勤手当の非課税枠が廃止されて、全額課税対象になるという話もききます。これは2023年の税制調査会の答申で「通勤手当の課税が検討されている」という内容が報じられたためです。先日、税〇署関係の友人と飲んだとき、その友達が「通勤手当って今度、課税になるんだよね」とポロリ。参議院議員選挙の結果もあってどちらになるのかわかりませんがとても気になるところです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

SNSの対応加える 職場情報提供手引を改訂 厚労省

 厚生労働省は、企業が求職者に対して働き方などの職場情報を提供する際の留意点をまとめた「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」を改訂しました。インターネットやSNSで募集する際の開示・提供事項に関する記述を追加。いわゆる闇バイトなど犯罪実行者の募集との誤解を生じさせないよう、募集者の氏名(名称)、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を記載する必要があるとしています。

手引では、求職者に正確な情報を提供する観点から、定義があいまいな情報のほか、長期間更新されていない情報や、利用実績が明らかでない制度の情報を見直す必要があると指摘しています。

改訂版ではさらに、職業安定法において、労働者を募集する際に求人情報や自社に関する情報の的確な表示が義務付けられ、虚偽の表示または誤解を生じさせるような記載が禁止されている点を明記しました。

◆調査

職場における熱中症による死傷災害の発生状況 厚労省

 厚労省は2024年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況を公表しました。熱中症による休業4日以上の業務上疾病者数は1257人で、統計を取り始めた2005年以降最多となりました。うち死亡者数は31人となり、死亡災害の統計を開始した1989年以降、2番目に多くなりました。

 時間帯別にみると、午前中が430人、17時台が99人、18時台以降が115人でした。全体に占める割合は、順に34.2%、7.9%、9.1%。午前中や、気温が下がった17時台以降でも発生している状況がうかがえます。17時台や18時台以降での死亡者は計6人となり、「日中には重篤な症状はみられなかったにもかかわらず、作業終了後や帰宅後に体調が悪化した事案が含まれる」と分析しています。


カテゴリー:所長コラム

『いつの間にか』富裕層

2025年07月01日

年金制度改革法が6月13日に参院本会議で可決、成立しました。この改革法の最大のポイントは厚生年金の積立金を使っての「基礎年金の底上げ」です。改革法には、4年後の財政検証で将来的に基礎年金の水準が下がりそうな場合には、厚生年金の積立金と税金を使って底上げすることが盛り込まれています。この底上げが行われると、実際の受給額は、男性が62歳、女性は66歳まではプラスになる一方で、現在63歳以上の男性や67歳以上の女性は、今よりマイナスになってしまうようです。国民全員が受ける基礎年金は、現状のままだと約30年後に3割下がるといわれています。この改革法では氷河期世代をはじめとする現役世代の年金額を底上げして救済することが狙いのように言われていますが、将来的に基礎年金が減ることに対しての底上げなので、現在の給付水準よりも増額されるというわけではないようです。

バブル経済崩壊後の1993年から2004年まで続いた就職難の時期は就職氷河期とよばれます。その時期に就職活動をした「就職氷河期世代」は、大卒であれば大体43歳~54歳の人たちが該当して、全国で1700万人以上いるとされます。この世代は、非正規雇用や低賃金で働く期間が長く十分な資産形成のないまま将来、低年金に陥るのではと懸念されています。現役時代の低賃金と少子高齢化に伴う年金の減額調整の影響で、この氷河期世代が老後に貧困化するリスクが高まっているといわれている一方で、新しい富裕層が拡大しているようです。

野村総合研究所(NRI)の推計によると、日本において2023年時点で純金融資産を1億円以上保有する「富裕層」(純金融資産1億円以上5億円未満)と「超富裕層」(純金融資産5億円以上)は合わせて165万世帯になっていて、準富裕層(純金融資産5000万円以上1億円未満)といわれる世帯数も含めて2013年以降増加傾向にあるそうです。これまでの富裕層といえば企業のオーナーで、いわゆる資産家のことを指していたのではないかと思いますが、最近の社会経済環境の変化に伴って、新たなタイプの富裕層が現れ始めたといわれます。会社員など一般的な給与所得者であっても、近年の株価上昇を受けて資産価値が増加し、結果として富裕層入りした世帯が増えていて、NRIはこの世帯を「いつの間にか富裕層」と呼んでいます。この人たちに共通する特徴は企業オーナーや地主といった従来型の富裕層ではなく、一般の給与所得者でいわゆる「普通の人」、富裕層となった後でも、今まで通りの生活を変えることなく、お金があっても「数十万のゴルフセット」「家族との海外旅行」「車を少しよいものに買い替える」などちょっと上の贅沢を楽しむ人たちです。

また、女性の社会進出に伴って現れたのが「パワーファミリー(世帯年収1500万円以上の共働き世帯)」です。夫婦ともに大企業に勤めており、20~30代は子育て・教育の支出や住宅ローンで苦労するそうですが、その後は昇格・昇進により夫婦を合わせた世帯年収が大幅に伸びて、特に都市部においては最終的に世帯年収3000万円に達し、50歳頃には富裕層となるポテンシャルがあるといわれます。また、地方においても世帯年収1000万円以上で60歳前後に富裕層となる人たちがいるということです。テレビでは、普通に売られているお米よりも安い備蓄米を数時間もならんで買ったというニュースが溢れていますが、この差はなんなのでしょうね。

就職活動を行う時期に求人がほとんどなく、多くが非正規雇用にとどまったことで、安定した収入を得ることが難しく、社会的な不安定さが長期にわたって続いた氷河期世代ですが、現在でも大多数が不安定な雇用状況に苦しんでいるといわれています。そもそも氷河期世代(1970年~1982年生)には、日本の第二次ベビーブーム世代(1971年~1974年生)の人たちが含まれていて、人口のボリュームが多い世代です。政治的にもこうした世代への支援が重みをもってきたということなのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

協議ない決定違法に 下請法の改正法案が成立

 協議を適切に行わない代金額決定の違法化などを盛り込んだ、改正下請法が通常国会で可決・成立しました。一部の規定を除き令和8年1月1日に施行します。政府は改正法により、適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図るとしています。

 改正法では、下請事業者から価格協議の申出があったにもかかわらず、親事業者が協議に応じなかったり、必要な説明をせずに一方的に代金を決めたりする行為が新たに禁止されます。労務費などのコストが急上昇するなかで、協議を経ない価格の据え置きやコスト上昇に見合わない一方的な代金決定を防ぐのが狙いです。

 衆議院の附帯決議は、改正法施行に当たり、違反があった場合は迅速・的確に対処し、どのような行為が違反となるのか具体的な基準を示すよう求めました。併せて、協議が形骸化しないための必要な措置も検討すべきとしています。

 改正法はそのほか、手形払いの禁止、下請法適用の線引きに従業員数基準を追加、運送委託を対象取引に追加、用語について「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」に改める――などを内容としています。従業員数基準の新設について、同附帯決議は今後も見直しを検討し、新たな手段による適用逃れが起きないよう中小事業者との連携強化に努め、発生した場合には速やかに対策を講じるよう要請しました。

◆調査

半数超が管理職志向あり 2025年度新入社員意識調査

 東京商工会議所は、2025年度の新入社員857人を対象に、仕事に対する意識を調査しました。入社後、管理職をめざしたいかどうかについては、「めざしたい」が59.0%となりました。理由を単一回答で尋ねたところ、「仕事を通じて、自分自身を成長させたい」が44.9%で最も高く、次いで「やりがい・達成感を感じたい」が17.2%となっています。

めざしたくない理由については、「自分には適性がなさそうだから」が最も高く、42.2%でした。「仕事よりもプライベートを大切にしたい」が19.1%、「仕事の責任が重く大変そうだから」が13.1%となっています。


カテゴリー:所長コラム

頭を良くする行動

2025年06月02日

手相占いをしている人にぼくの手を見てもらいました。その人によると、ぼくの手相はなかなか珍しいタイプのようです。線が少なくシンプルで、右手と左手が同じ手相になっているのが特徴だそうです。手相というのは、右手と左手で表す意味が異なっていて、一般的に右手は日頃の行動や考え方によって変化した結果である後天的な運勢が表れるといわれ考え方や生き方次第で変化するそうです。そして、左手はもともと自分が持っている運勢、つまり自らが生まれながらに持った性質や才能が表れるといわれているそうです。ぼくのような手相の人は、考えていること(右手)と行動(左手)が一致しているということになり、「白黒がはっきりしていてわかりやすく、表裏のない人」ですと言われました。日頃、考え方と行動を一致させることを心掛けていますが、それが手相に表れていると聞きうれしかったです。この方によると、占い師という職業では、人の良いところを褒められる人は人気が出るそうです。「ウソも方便」ではなくて「ウソと方便は別物」なんですよと教えていただきました。「方便」とは、「人を真実に導くため、仮にとる便宜的な手段」という仏語だそうです。やはり、「ウソ」はいけませんが、「本当のことは言わない」ということを選ぶことはできます。

手相のように自分の運勢を見てもらう場合には、「運がいいですね」と言われたほうが気持ちは良いし、長い人生を生きていくうえで運は悪いより、良いほうがいいに決まってます。できれば、少しでも運を良くしたいと考えるのが普通ではないでしょうか。「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。一見、不運に見えたことが幸運につながったり、その逆だったりすることのたとえです。『中国の北の国境の近くに、占いが得意な老人が済んでいました。あるとき、彼の飼っていた馬が逃げてしまったので、みんなが同情しましたが、彼は「これは幸運が訪れる印だよ」と言います。そして、そのとおり、逃げた馬は立派な馬を連れて帰ってきました。そこでみんなが祝福すると、今度は「これは不運の兆しだ」と言います。実際、しばらくすると彼の息子がその馬から落ち。足の骨を折ってしまったのです。またみんなが同情すると、彼の答えは、「これは幸運の前触れだ」。息子はその怪我のおかげで、戦争に行かずにすんだのでした。』といった話です。起きた事実は変えられないけれど、それをどう受け止め、どう生かしていくかで運は左右されるので、マイナスなことがあっても、よかったところに目を向けていくほうが豊かな人生になっていくという意味です。

SBIグループの子会社の社長である横山信治氏は、運をよくする方法を長く研究されていて、運は100%コントロールできるといいます。横山氏は、運とは人間力であって、運を良くしたいのであれば、日々の考え方と行動により、人間力を高めることが不可欠で、人や環境のせいにする他責で生きていてはいけないと言います。運のいい人とはよい出来事ばかりが起こるのではなく、起こった事象をプラスに捉えることができる人だそうです。不平不満や愚痴からは何も生まれません。ちなみに、運を高める上で大前提となるのは、「人の喜ぶことをして、人の嫌がることをしない」ことだそうです。さらにその重要なポイントは「できるだけ近くから」となって、つまり「自分自身」を「快」の状態にすることにより、自分自身の秘めた能力を存分に発揮し、普通では考えもつかない発想を得ることに繋ぐことができるのだそうです。

“経営の神様”といわれる松下幸之助さんは「運をよくするためには、自分の運がいいと常に思い続けることだ」と言っています。また、人は付き合う人に染まるものなので、運がいいと思う人に近づくことも大切で、そういう人のそばにいると自ずから心がけが変わり、発想が変わり、行動が変わり、そして運がよくなるといわれます。ぼくがは「この人は運がいいな」と思う経営者の行動をあげるとしたら、近づけてはいけない人をうまく遠ざけることができる人のように思います。(月刊誌「到知」2025年4月号より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

体制整備を義務付け 熱中症の早期発見へ 改正省令公布

厚生労働省は4月15日、熱中症のおそれがある作業者の早期発見に向けた体制整備を事業者に義務付ける労働安全衛生規則の改正省令を公布しました。熱中症のおそれがある作業を行わせる際に、症状悪化を防止するために必要な措置の実施手順を事業場ごとにあらかじめ作成しておくことも義務付けます。今年6月1日に施行します。

対象となるのは、暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われる作業。改正省令では、対象作業を行う際に、「熱中症の自覚症状がある作業者」や、「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ整備し、関係者に周知するよう事業者に求めます。

さらに、作業からの離脱や身体の冷却、医師の診察または処置を受けさせること、事業場における緊急連絡網および緊急搬送先の連絡先など、症状の悪化を防ぐための措置の実施手順を定め、関係者に周知することも義務とします。

賃上げ支援広がる 市町が支給金上乗せも 地方自治体

物価上昇や人手不足を背景に賃上げの機運が高まるなか、中小企業の賃上げを支援する地方自治体の取組みが広がっています。

群馬県では、従業員1人当たり5万円を支給する奨励金制度を新設します。太田市など県内4市町と連携し、県の支援金の受給企業に対しては、市町が1~2万円を上乗せ支援します。奨励金は、5%以上の賃上げを行った場合に支給します。支給上限は1事業所当たり20人まで。受付開始は7月上旬を予定しています。

栃木県も5月から、賃金を引き上げた従業員1人当たり5万円を支給する奨励金制度を開始しました。要件として、企業内男女間格差の是正につながる取組みの実施を設けます。たとえば、女性管理職の割合を昨年4月よりも高めるなどの取組みが対象となります。同県労働政策課は、「奨励金を機に、男女間の格差是正の機運も高めていきたい」と話します。令和6年賃金構造基本統計調査によると、同県の男性の所定内給与を100とした場合の女性の指数は74。全国で4番目に開きがある状態となっています。

大分県は、非正規雇用労働者や障害者の賃上げに焦点を当てています。国のキャリアアップ助成金のうち、正社員化コースと障害者正社員化コースを受給した企業に最大10万円を上乗せして支給します。両コースは、賃上げを3%以上行い、有期雇用労働者等を正社員化した場合などに支給される助成金。国と県の支給額の合計は、正社員化コースは最大90万円、障害者コースは100万円に上ります。

育休取得者増加で 部署全員へ応援手当 シャボン玉石けん

 無添加石けんの製造・販売を行うシャボン玉石けん㈱は今年度から、産前産後休業・育児休業の取得者が出た部署のメンバー全員に、1人当たり月1万円の手当を支給します。部署のメンバーが10人を超える場合は、10万円を全員で等分します。「部署全体でフォローするという風土醸成を重視した」(同社広報担当)としています。

同社の各部署は10人前後のメンバーで構成されています。たとえば15人が在籍する部署で取得者が1人出た場合、14人に1人7000円ずつ支給します。支給期間は、取得者が復職するまで、あるいは新規採用や他部署からの応援などにより、人員補充が完了するまで。

同社では2014年以降、女性従業員の産休・育休取得後復職率は100%を維持しています。全体の約6割を占める男性従業員の取得も増加しており、今後も業務をフォローする従業員の負担増が見込まれることから、手当導入に踏み切りました。


カテゴリー:所長コラム

退職代行サービス

2025年05月01日

今春の新卒初任給を30万円以上とした企業は131社となり、昨年の58社から倍以上に増えたそうです。平均額は25万4228円と過去最高を記録しました。人手不足を背景とした初任給バブルに加えて採用数も2桁以上の伸びとなっていて来年もこの勢いは続きそうな状況です。しかし、まだ4月なのにもかかわらず、退職代行業者に新入社員からの依頼が殺到しているということです。退職代行サービスを行っている「モームリ」という事業者によると、4月だけで80人以上になったそうです。モームリによると「入社前に聞いていたことと違う。」ことがもっとも多い退職理由だといいます。入社後に「休日出勤の必要がある」と初めて聞いたからとか、飲食店で働く女性のケースでは、入社前に「接客の仕事ができる」と聞いていたのに、入社してみると主な仕事は食器洗いだったために4日間で辞めることにしたということもあったそうです。

最近では、知られてきた退職代行業者ですが、労働者からの依頼を受けて、退職の意思表示をその労働者の代わりに行います。本来、退職の意思表示のような行為は社員本人の代わりに行えるのは弁護士だけです。弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことは、いわゆる「非弁行為」として弁護士法で禁止されているからです。つまり退職代行業者は、この非弁行為に該当しないように、あくまで退職の意思表示をしたのは労働者本人で、退職代行業者はそれを「使者」として勤務先に電話しただけという形をとります。「従業員の〇〇さんが退職したいと言っているので、代わりにお伝えします」と伝言する感じです。代行業者は、ある社員が退職の意思があること、今日から有給休暇の取得を申し出ることの「連絡」をするわけです。このように「代わり」なので、電話を受けた会社がまずしなければならないことは、労働者本人に直接連絡をとり、労働者本人の意思確認を行うことです。退職代行業者から労働者本人には連絡しないよう言われても拘束力はありません。ただ、ぼくの経験上、会社側の反応は「そこまでして退職したいならもういい。そんな高いお金を支払わないで、直接、言ってくれたらいいのに…。」となります。たしかにどうしても退職を受け入れてもらえず辞めさせてくれないという話も聞きますし、その結果、鬱や病気になるくらいならこういったサービスを使うことがあってもよいのではと思いますが、ネットでは「こうやってカジュアルに『とりあえず嫌なら辞められる』世界を作ってろくなことはない」という意見もあります。

最近は退職代行会社である民間事業者に加えて、弁護士や合同労組が運営するものが参入しています。弁護士は法的な交渉を行う「代理」となることができますし、労働組合は団体交渉権があるので、退職に関する条件等について交渉することができる点が退職代行会社と違うところです。さらに、「給与アップ代行」というサービスを提供する弁護士も現れています。転職を決意したときにその退職前に年収アップの交渉を弁護士にしてもらうというサービスで、年収アップすれば転職はせず、アップしなかったらそのまま退職代行へ移行するそうです。ぼくならそんな人とは一緒に働きたくないです。

日本において仕事に関する価値観は大きく変化したといわれます。今の20~30代前半は40~60代の世代とは異なる仕事観を持ちます。上の世代の管理職からは「下手なこと言ってハラスメントと問題にされてはたまらないので、関りは控えている」とよく聞きますが、若手社員にアンケートをとると9割近くが「距離感が縮まり、話しやすくなる」ので「非公式コミュニケーションは必要」と回答していて、「業務中の雑談」を求めている若手社員が多いことが判明したそうです。ただ、その結果を知った40~60代の経営者や管理職が自分の感覚でコミュニケーションを取ろうとすると若手側は圧力を感じたり、「この職場は合わない」と思ったりすることになるのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

厚労省・カスハラ対策 主な行為と対応示す スーパー向け手引き作成

 厚生労働省は、スーパーマーケット業界における代表的なカスタマーハラスメント行為・類型と、その対応例を示した「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)」を作成しました。とくによく見られる行為の1つとして、「継続的な、執拗な言動」を挙げ、店舗内や電話で不合理な問合せが2回寄せられたら注意し、3回目には今後対応できない旨を相手に伝えるべきとしました。

カスハラ行為への対応例は、企業への実態調査やヒアリング、業界団体や労働組合との検討を経てまとめました。

同一顧客から不合理な問合せが続いた際、担当者が今後対応できない旨を伝えても繰り返される場合は、社内で共有して会話内容を記録するとともに、対応窓口を一本化して管理職に引き継ぎます。管理職は、行為者に対し、迷惑であることや今後は連絡をやめてもらうことを伝えるとしました。その後も繰り返された際には、威力業務妨害罪も視野に入れ、警察への通報を検討します。

大声で怒鳴るなどの威圧的な言動や、侮辱、暴言といった精神的な攻撃などへの対応も示しました。

応募書類の熟読を 面接では「共通点」探る 中途採用ガイドブック

東京商工会議所江戸川支部は、近年の中途採用面接で押さえるべきポイントをまとめたガイドブックを作成しました。企業側が求職者を一方的に選別する形式は「時代遅れ」と指摘。面接官が応募書類を事前に読み込み、「前職ではこういう苦労や不満があったのでは」と想定したうえで、面接においては、求職者のニーズと会社が今後任せたい仕事との共通点を探っていくことが有効としました。

 転職への抵抗感がなくなっている近年では、面接時点では応募先への志望度が高くない状態の求職者が増加しているため、志望度の高さを尋ねる面接は矛盾していると解説します。志望理由や入社意欲ではなく、「転職活動のきっかけ」や「転職で実現したいこと」を聞いた後に「自社に興味を持った理由」を尋ねることで、求職者の求める職場像が見えやすくなるとしました。

 面接の前段階となる、求人票を改善する方法も紹介しています。未経験者からの応募も可能とする場合は、求職者の不安を減らす情報を掲載することを求めました。例として、教育制度の有無や、未経験者の採用実績を挙げています。

◆送検

部活動は少額「手当」のみ 教員36人に割増不払 奈良労基署

奈良労働基準監督署は、教員36人に対し、時間外労働の割増賃金の一部を期日までに支払わなかったとして、学校法人と同法人校長、事務局長、事務長の計1法人3人を労働基準法第37条(割増賃金)違反の疑いで奈良地検に書類送検しました。部活動などで時間外労働を行わせた際には、「手当」と称する少額を支給していたといいます。

不払いだったのは、令和6年10月分の時間外・休日労働の割増賃金の一部で、総額129万9719円に上ります。本来支払うべき総額は145万5219円でしたが、実際には15万円程度しか支払っていませんでした。

同労基署は5年12月、同法人に定期監督に入っています。法定時間外に行われた部活動や生徒指導、講習の実施などの業務に対して「手当」を支給していましたが、割増賃金を計算していませんでした。本来支払うべき金額に届いていない事実が発覚し、改善を指導しました。6年11月に再度調査したところ、「手当」の金額は引き上げていたものの、依然として支払うべき金額に届いていない実態を確認。遵法意識に欠け、改善がみられないとして、送検に踏み切りました。


カテゴリー:所長コラム



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