人事・労務のエキスパート、石川県金沢市の社会保険労務士法人 末正事務所。人事・労務管理相談、社会保険労働保険手続き、紛争解決、組織活性、給与計算、人材適正検査まで、フルサポートします。

seminar

seminar

contact

ブログ

選べないもの

2021年12月01日

「親ガチャ」という言葉が、ネットで注目を集めています。生まれてくる子供は親を選ぶことができないことを指して、コインを入れてレバーを回すとオモチャが出てくるガチャガチャにたとえた言葉だそうです。つまり、自分ではオモチャを選べないことから、どのような親のもとに生まれてくるかによって人生が決まってしまうという意味で使われていて、「親ガチャ失敗」と言うときは、「親のせいで自分の人生が希望通りにならない」ということになるそうです。「自分がまさにそうだ」という人もいれば、「自立できていない若者の甘えだ」という批判もあったりして、賛否両論が分かれているとのことであるが、親からすればとんでもない話であることにはちがいないです。

他にも自分では選べないものがあります。会社の「上司」です。「企業組織で働くことを、ごく個人的なレベルで言い換えれば、自分では選べない上司に指揮命令を受けながら配置された業務をこなすということ。これは年齢や立場を問わずサラリーマン全体に共通している。ここで問題となるのは、上司の部下に対する理解が不十分な場合、部下のやりがいや仕事の質に顕著な影響が出ることだ。」と日経新聞(10月4日「働き方innovation」より)が取り上げていました。良い上司に恵まれることは、会社員にとってはとても重要なことだと思います。2018年末に実施した調査によると、上司から理解されていないと感じる従業員が「職場に満足」と答えた割合はわずかに6%で、対照的に、上司に理解されていると感じている従業員は68%が満足していたという結果になったそうです。では、実際には、どの程度の上司が部下のことを理解できているのかが問題となるところです。同調査では、部下に「上司は自分を理解しているか」を質問しています。「理解している」と答えた部下は、約42%で、「理解していない」が約25%、「どちらでもない」が約33%という結果になったそうです。部下が上司に理解して欲しい点についてですが、1番目は、「これまでの業務」、2番目に「業務への希望、不満」、そして3番目に「性格」となりました。

今、職場の人間関係が働きがいを左右すると考える企業が増えてきているそうです。歯みがきでおなじみのライオンという会社があります。その会社の人材開発センターの担当者は、「上司というOSをアップデートしないまま、新しい働き方を入れても効果は出ない」と言います。同社では、社員が企業人、家庭人として充実した生活を送り、自ら成長していくということが「働きがい」であると考えているからだそうです。そのために上下の関係性を改善して認め合い「部下が本音で話す心理的な安心感が必要だ」とも言っていて、会社では「信頼感のあるリーダーシップ」を打ち立てること、異なる職場でも部下への接し方に差がないようにするということを始めたそうです。社員への不満を言う前に、経営者が変われということと同じですね。

もう一つの選べないものが「性別」です。人は自分で男女を選んで生まれてくるわけではありません。明治大学の野川忍教授は、労働新聞で「日本社会の性差別は広く深くまん延しており、男女平等の度合いは世界で100位を超えることもない状態が続いている。」といいます。興味深いのは、日本の高度成長期において男女役割分担が定着し、それが企業における成功体験につながったという話です。「青壮年男性は私生活を顧みずに会社にすべてをささげ、家庭では自分のパンツのありかも分からないことが、むしろ賞賛された。女性は専業主婦として家事・育児に専念し、会社に酷使されてボロボロになった夫を家庭で優しく癒すことが期待された」「さらに深刻なのは、このような役割分担こそが奇跡とされる日本の経済的成功を導いたのだ、という認識がいまだに払しょくできずにいるとことである。」「男が身を粉にして働き、女が家庭を守る、それで大成功したのに何で変えなきゃいけないんですかというわけだ。」と書いています。野川氏は、国際社会における致命的な遅れだといい、日本の、とくに雇用社会の性差別の病根は根深いとしています。一方で、セクハラの問題もなくなりません。ハラスメントが起こる職場では、信頼関係や協力関係が築けず、チームとしての一体感やまとまりを欠く結果、会社全体の利益が低い傾向がみられるとの報告もあります。しかし、今も日本は先進国で唯一セクハラ行為自体を禁止する法律がない国です。そして、最近ではLGBTなど性的少数者への配慮や理解ということが、職場においても求められ始めています。

本来、変わるはずのないものへの変化を認め、そのうえでお互いを尊重することが大切な時代になってきたのかもしれませんね。 

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

割増賃金の計算で要望 算定基礎から在勤手当除外を

経団連は、2021年度規制改革要望のなかで、割増賃金の算定基礎賃金から在宅勤務手当を除外できるように法整備することを提言しました。

新型コロナの蔓延を契機としてテレワークが急増しましたが、仕事と家庭の両立という観点から、「新しい働き方」として同制度の定着が望まれます。

 現行の労基法では、割増賃金を計算する際、算定基礎から除外できる賃金項目は、家族手当・通勤手当等の7項目に限定されています。

しかし、テレワークの導入に際しては、在宅勤務に必要な備品の購入や、通信・交通費等の補填のために、在宅勤務手当等を整備するのが通例です。

これは「家族手当などと同様に、個人的な事情に基づいて支払われる」ものであるため、支給日数に応じた定額支給等の場合には、その趣旨からいって算定基礎から除外するのが適切という見解を示しました。

組合員の出向命令解除に合理性 支配介入に当たらず

中央労働委員会は、バス子会社に出向中の組合員に対して本社復職を命じた事案で、不当労働行為に当たるとした初審命令を取り消しました。

親会社はバス事業を子会社に移管し、従業員も在籍出向の形で子会社に異動させました。賃金差額等は親会社が負担していましたが、支出削減策として、①子会社への転籍、②特別退職、③親会社への復職を本人に選択させるプランを労組側に提案しました。

その後、労組の同意を得られないまま選択申出書を提出しなかった組合員に対し復職命令を発令して紛争となり、初審の神奈川県労働委員会は救済命令を発していました。

しかし、中労委は、神奈川労委の一時停止勧告に反し復職に踏み切った点について「やや拙速」と指摘したものの、出向費削減の必要性を認め、合意達成に向けた交渉努力も踏まえ、組合の弱体化を図る支配介入には当たらないという判断を下しています。その後、労組の同意を得られないまま選択申出書を提出しなかった組合員に対し復職命令を発令して紛争となり、初審の神奈川県労働委員会は救済命令を発していました。

中小のデジタル化へトライアル事業 商議所が診断ツール活用

長野商工会議所連合会は、デジタル技術を活用して経営革新を図りたいという中小企業を支援するため、トライアル事業を開始しました。

中小・零細企業では、デジタル化を進めようにも、専門知識を持つ人材が乏しい点が悩みのタネです。トライアル事業では、約100項目の質問により企業ごとの課題を洗い出す自己診断ツールの活用により、業務改善に向けた解決策の発見をサポートします。

ツールはスマホ等から利用できるほか、相談会等も開催し、診断を受ける機会の提供に努めます。診断後は、中小企業の希望に応じ、無料で専門家の助言も受けられます。

同事業には、県下の18の商工会議所のほか、協力団体として同県ITコーディネータ協議会やプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会等も参加し、IT系の有資格者やフリーランス人材を紹介するとしています。


カテゴリー:所長コラム

日々のこころがけ

2021年11月01日

王貞治氏の話です。『僕の現役時代には、一球一球が文字通りの真剣勝負で、絶対にミスは許されない、と思いながら打席に立っていました。よく「人間だからミスはするもんだよ」という人がいますが、初めからそう思ってやる人は必ずミスをするんです。基本的にプロというのは、ミスをしてはいけないんですよ。プロは自分のことを、人間だなんて思っちゃいけないんです。百回やっても、千回やっても絶対俺はちゃんとできる、という強い気持ちを持って臨んで、初めてプロと言えるんです。相手もこちらを打ち取ろうとしているわけですから、最終的に悪い結果が出ることはあります。でも、やる前からそれを受け入れちゃダメだということですよね。』(「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」致知出版社)これは頭で理解はできるのですが、なかなか王さんのように思いこんで実践することは難しいものです。自分を信じ切って、全力を出し切ることができる人はそうそういません。

リンゲルマンというフランスの農学者がやった「綱引き実験」のお話です。『一対一で全力を出して綱引きをしたときの力の単位を100としたとき、各々がもう一人ずつ連れてきて二人対二人で綱引きをやると、一人当たりの発揮できるパワーは100から上がるか下がるか。三人一組で綱引きをやるとどうなのか。もう少し人数を増やして八対八だとどうなるかということを実験したのです。リンゲルマンの実験では、二人一組のときにそれぞれが発揮する力は一対一のときの93%になりました。つまり、7%の手抜きをしていることがわかりました。これが三人一組になると15%の手抜き、八人一組の場合はなんと51%の手抜きが見られるという結果が出ました。このデータにしたがえば、全力を出す四人と手抜きをする八人で綱引きをすると、全力を出す四人のほうが勝つことになります。これは「社会的手抜きの実験」と呼ばれるものです。』「ワンチーム」という言葉を使う人がいます。日本語でいうところの「一体」ということを表わしているわけですが、一丸となって事に当たるということは確かに勇ましいけれども、実は手抜きを誘発しているということだそうです。(「経営者を育てるアドラーの教え」岩井俊憲著 致知出版社)

雇用調整助成金の特例措置が11月30日まで延長されることになりました。雇用調整助成金とは、事業主の命令で休業した従業員に休業手当を支払った場合に、休業手当の額に応じて支払われる助成金です。コロナウィルスの蔓延が続く中で、雇用者総数が2021年4月に13か月ぶりに増加に転じていて、その後もプラスを続けているそうです。完全失業率はコロナ禍で最も悪かったときで3.1%。直近の7月は2.8%となっていて、現在の日本の雇用状況は「完全雇用」に近いといえます。

先日、コロナが蔓延して以来、助成金を使って長期にわたり従業員を休業させてきた経営者のかたが「久しぶりに従業員を出社させて仕事してもらったけど、ぜんぜん仕事がすすまないんだよ。」と話していました。その社長がいうには、久しぶりの仕事で身体がなまってしまっていたということだそうです。休業前には、当たり前に出来ていたことが出来なくなってしまっていたそうでコロナが終息して本格的に稼働する前に出社させてよかったと言っていました。やはり、助成金を使って休みにしてしまうと、働かなくても給与が入ってくるので、働くことがバカらしくなるようです。スポーツでは「練習を1日休んだら取り戻すのに3日かかる」といわれますが、仕事も同じようです。できることなら、もうそろそろ会社を元に戻していくことも必要なようです。

「知識も大事。しかし、それがなければ、ほんとうに仕事ができないというものでもない。たとえ知識が乏しく、才能が劣っていても、なんとかしてこの仕事をやりとげたい、そういう誠実な熱意にあふれていたならば、そこから必ずよい仕事が生まれてくる。」(「おろそかにしない」「道をひらく」より)

「商売も同じこと、経営も同じこと。けじめをつけない経営は、いつかはどこかで破綻する。景気のよいときはまだよいが、不景気になればたちまちくずれる。立派な土手も蟻の穴からくずれるように、大きな商売も、ちょっとしたけじめのゆるみからくずれる。だからつねひごろから、小さいことにもけじめをつけて、キチンとした心がけを持ちたいもの。そのためには何と言っても躾が大事。平生から、しっかりした躾を身につけておかなければならない。」(「けじめが大事」)松下幸之助さんの言葉でした。どのような社会になっても日々のこころがけの大切さは昔から変わらないようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

公取委が「最賃引上げ対応」 中小相手の取引公正化へ

今年10月の地域別最低賃金引上げは、過去最高の28円の上げ幅となりました。公正取引委員会は、中小企業に不当なしわ寄せが及ばないように、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」をまとめました。

関係省庁連絡会議のワーキンググループが、今年8月に「9月を『価格交渉促進月間』とする」決定を行いましたが、アクションプランはその取組みの一環です。

最賃引上げに伴う「買いたたき」、「下請代金の減額」、「支払遅延」等を防止するため、下請法の執行強化や相談対応の整備等を図ります。

全国9カ所に相談窓口を設置するほか、オンラインによる相談会も実施します。「下請事業者が、最賃引上げ対応のため単価アップを求めた際、親事業者が一方的に単価を据え置くのは、『買いたたき』に該当」等のQ&Aも作成し、周知を図ります。

雇保「二事業」の資金底つく 雇調金等支出が急増

厚生労働省の公表では、雇用保険制度の収支状況が急激に悪化しています。失業給付関係の積立金残額が大きく減少したほか、雇用保険二事業の資金残高はゼロとなっています。

失業給付関係積立金は、その名のとおり、離職時の基本手当等の原資となるもので、労使折半の保険料が主財源です。

令和元年には4兆4871億円あったのが、3年度(予算)には4039億円まで減少する見通しです。

雇用保険二事業は助成金の原資となるもので、保険料はすべて事業主負担です。雇用調整助成金をはじめとする支出増により、資金残高ゼロと底をついています。

一般会計や失業給付関係積立金残高から借り入れをして、増大する支出をまかなっている状況です。

未払残業400万円支払え コロナ解雇後に争い

健康美容メーカー勤務の従業員が、新型コロナの影響で解雇された後に未払い残業代の支払いなどを求めた事件で、東京地方裁判所はメーカー側に400万円の支払いを命じました。

病気で9日間休んだ後に出勤したところ、会社から「コロナによる事業縮小」を理由とする解雇通知書を交付されました。

同社店舗では、「営業開始時刻の45分前には朝礼があり、遅刻者は店舗に連絡を入れる」とされていた点等を考慮し、裁判所は「少なくとも出社を黙示には指示・命令していた」と指摘し、2年間の未払い残業代の請求を認めました。

さらに解雇予告手当も支払われておらず、割増賃金と予告手当の不払いに正当な理由もないとして、労基法114条で定める付加金を合わせ、約400万円の支払いを命じたものです。


カテゴリー:所長コラム

働く意味

2021年10月01日

父「おい!そんなところでゴロゴロ寝てないで!勉強しなさい!」子「どうして勉強しなきゃいけないの?」父「勉強しないといい学校に入れないだろ!」子「どうしていい学校に入らなきゃいけないの?」 父「いい学校に入らなきゃ、いい会社に入れないだろ!」子「どうしていい会社に入らないといけないの?」父「いい会社に入らなきゃ、いい暮らしができないだろ!」子「いい暮らしって何さ?」 父「……そうだな……寝て暮らせるってことだ…」子「ぼく、もう寝て暮らしてるよ!」

親なら一度はこんなような会話をしたことがあるのではないでしょうか。子どもの質問に答えるうちに「いい暮らし=寝て暮らすこと=幸福」となりましたが、父親が本当に言いたかったことではないですよね。

中国でインターネット上から削除された歌があるそうです。ある若者がソファに寝転んでギターを弾きながら「寝そべっているのはいいことだ、寝そべっているのは素晴らしい、寝そべるのは正しい。寝そべっていれば倒れることもない」と歌う様子がアップされていたとのこと。最近、中国の若者の間では。ストレスに耐えながら必死に働かなければならない仕事はごめんだとする「寝そべり族」が増えているそうです。中国政府はこれに強い危機感を募らせていて、中国国防相の報道官は「この激動の時代に寝そべりながら成功を待つことなどあり得ない。必死の努力にこそ栄光がある。若者たちよ、奮起せよ」とハッパをかけます。しかし、この原因は中間層の生活が、どんなに頑張ってもよくならず、苦労は増える一方なのに、見返りは少なくなり、多くの人が閉塞感に陥っていることにあるそうです。(2021.8.6 日本経済新聞から)

日本国憲法には「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」(第二七条)と書いてあります。働くことは、権利でもあり、義務でもあるということですが、働くのは「生活費を稼ぐため」という人や、「体が動くうちは何らかの形で働きたい」と考える高齢者や、食うには困らない資産を持っていても働き続ける人もいます。「お金のため」「義務だから」というように、自分の外側にある目的のために仕事をするのではなく、「私が私らしくあるためにその仕事をしている」「私の心がその仕事をすることを欲している」といった内発的な働く理由があることを忘れてはならないということです。そして、稲盛和夫氏は、「仕事において新しいことを成し遂げられる人は、自分の可能性を信じることのできる人です。現在の能力をもって「できる、できない」を判断してしまっては、新しいことや困難なことなどできるはずはありません。人間の能力は、努力し続けることによって無限に拡がるのです。」と話されました。

毎年、10月上旬に地域別最低賃金が引き上げられます。昨年はコロナ禍で政府が「雇用を守ることが最優先」と表明し、全国平均の引き上げ幅は1円にとどまりました。しかし今年は2002年度以降、過去最大となる全国一律28円増の引き上げが行われます。北陸三県はそろって28円引き上げることになり、石川県861円、富山県877円、福井県858円となります。労使ともに新型コロナウィルスによる会社経営への打撃や最低賃金増額の重要性については理解を示しましたが、最終的には歩み寄ることになったようです。

しかし、今春の賃上げ結果が前年を割り込んでいることや、内閣府の月例経済報告が日本の経済について厳しい状況にあると毎月繰り返していることを考えると、大幅な引き上げを行える状況にはないという意見も多くあります。一方で、連合は「誰もが時給1000円」実現を掲げていますが、英仏独の最賃は1300円前後の水準にあるように、日本の最賃の水準が先進国の中で遅れをとっていることも事実のようです。

ただ、最低賃金は、労働者は何もしなくても毎年、上昇するので事業者の負担はとても大きいです。しかし、最低賃金の上昇でしか昇給の恩恵を受けることができない労働者も多くいます。石川労働局によると、時給861円未満で働き、今回の引き上げの影響を受けるのは県内の労働者の約12%に当たる約5万6千人もいるそうです。 「喜働」という言葉があります。「働きが喜びになるのは、人間が創造的になったとき。人間は創造して意欲に満ちているときが一番幸せで、それが喜びになる。」という意味だそうです。そして、最後にロシアの作家ゴーリキーの言葉です。「働きが喜びになったらこれ以上の幸せはない。そのかわり、働きが苦痛になったら地獄だ」 (「座右の寓話」戸田智弘著( ㈱ディスカバートゥエンティワンー)より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

「雇用仲介サービス」は、スマートフォンの普及やデータ分析技術の拡大により、その形態を大きく変えつつあります。厚労省は、サービスの適正化や法的位置付けの明確化に取り組む方針です。

同省では、学識経験者による研究会報告書を踏まえ、議論をスタートしました。新形態のサービスは、採用コストを圧縮する効果を持つ一方、トラブルも多発・多様化しています。

ルール作りに当たっては、①正確な情報の流通、➁個人情報の保護、③事業内容区分の明確化等を柱とし、優良事業者の認定制度等の整備も検討します。

有益なイノベーションを阻害しないという前提の下、サービス従事者が業務に必要な知識を有しているかチェックするなど規制の強化も課題となります。

◆ニュース

雇調金特例が切り札に 失業率2.6ポイント押下げ

厚労省が公表した「労働経済白書」によると、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金が完全失業率抑制に果たした効果は2.6ポイント程度だったことが明らかになりました。同白書には、「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」という副題が付されています。

 分析対象は2020年4~10月の7カ月間です。2020年10月時点、実際の失業率は単月で3.1%、月平均2.9%に達していました

雇用調整助成金の対象労働者が支給を受けなければ全て失業したと想定して試算すると、雇調金の抑制効果は2.1ポイント、緊急雇用安定助成金が0.5ポイント程度と見込まれます。こうした特例措置がなければ、失業率は5%を大きく超えていた可能性があります。

一方、新型コロナの影響でテレワークが急速に普及しましたが、白書では、オフィスワークに比べて生産・効率性などでやや劣ると評価しています。

テレワークを中止した企業については、テレワーク中の連絡調整や就業環境に問題があったケースが多く、労務管理上の工夫が必要と指摘しています。

労働条件低下を拒否 雇止めもやむなし

受験予備校の講師が雇止めを不服とした裁判で、東京地方裁判所は、契約の不成立に合理性があるとして、請求を棄却しました。

講師は23年間にわたって契約更新を続けていましたが、「次年度の授業数を減らし、賃金も引き下げる」という条件提示を受けました。従来と同じ内容での更新を求めたところ、拒否されたため、最終的に新契約は成立しませんでした。

判決文では「低下した契約条件提示に労働者が合意しないことを理由に更新拒絶する場合、新条件の客観的合理性・社会的相当性を検討すべき」と判示しました。

「予備校教師という性質上、授業アンケート結果によりコマ数減となる可能性は認識していたはず」と指摘したうえで、アンケート結果は毎年最下位近辺で、無断の文書配布で懲戒を受けた点も踏まえ、条件引下げには合理性があり、雇止めは有効と結論付けました。


カテゴリー:所長コラム

健康保険法等の法改正情報

2021年09月01日

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険等の一部を改正する法律」が今年の6月に成立しています。その中で健康保険法等の改正のうち、私たちの生活に影響の大きいものを取り上げてみたいと思います。今月は法改正情報一色です!

令和4年1月1日から施行される改正が二つあります。まず、任意継続被保険者制度の保険料や被保険者資格の喪失について見直しが行われます。任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が会社を退職した後にもそのまま2年間は、退職前に加入していた健康保険制度に残り続けることができる制度です。これまでは、任意継続被保険者となった後に資格を喪失する場合、「任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき」「保険料を納付期日までに納付しなかったとき」など限られていて、任意継続被保険者が届出を行うことで、自分から制度を脱退することはできませんでした。そうしたこともあって、再就職で新しく健康保険に加入した場合には、あえて保険料を納付せずに資格喪失をさせることもありました。わざと未納にするというのはあまり気分のよいものではないですね。今回の改正で、任意継続被保険者が届け出ることによって、その申出が受理された日の属する月の末日に被保険者資格を喪失できるようになりました。そして任意継続被保険者の保険料についても見直しがなされました。次に現行では任意継続被保険者の保険料は、「退職直前の標準報酬月額」か「保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額」のいずれか低い額を選ぶことができます。ようするに、在職時の健康保険料よりも低い額で任意継続被保険者になることができる制度になっているということです。改正後は、健康保険組合が、高い方の保険料を選ぶことができるようになります。保険料の低い方を選びたいという場合には、改正法施行日以降は注意が必要です。

もう一つ令和4年1月1日から施行されることになるのが、傷病手当金の支給期間の通算化です。傷病手当金は、私傷病により療養のため仕事を4日以上休んで給料を受けられないときに支給される健康保険の給付金です。傷病手当金の支給期間は支給開始日から起算して1年6か月を超えない範囲と定められているので、精神疾患やがん治療などで休職と復職を繰りかえすことで、支給期間中に傷病手当金を受けていない期間があっても、1年6か月が経過してしまうと、再び入院しても給付金は受けられないことになっていました。改正後は、支給期間が「支給を始めた日から通算して1年6か月」となるので、実際に1年6か月分の日数の給付金を受けるまでは、傷病手当金を受給することが可能となります。また、施行は来年1月1日ですが、経過措置が設けられていて、昨年7月2日以降に傷病手当金の受給を開始した者で、出勤に伴い不支給となった期間がある場合には、その日数分について受給が可能になるとされました。

あと、最後に健康保険の扶養認定の実務に影響がある通達が令和3年8月1日に出されています。現在、被扶養者として認定されるための条件に「主として被保険者の収入で生計を維持している」状態にあることとありますが、機械的に一律に適用されるわけではなく、生活の実態とかけはなれるなど妥当性を欠く場合に、実情に応じた認定が行われます。ようするに、基本的には収入が多いほうの被扶養者となるけれども、世帯の生計状況から見て生計維持の中心的役割をはたしていると認められるほうの被扶養者になることも認められています。新しく適用される通達では、夫婦とも健康保険の被保険者の場合を例にとると、まず「年間収入の多い方の被扶養者」になることになります。次に、「年間収入の差額の多い方の1割以内である場合は、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者」とされます。被扶養者の認定は、保険者によって温度差はありますが、これから厳しくなるのでしょうね。

最後に労働法の法改正です。令和4年1月1日から複数の職場で就労する65歳以上の高年齢労働者に対して雇用保険の特例適用制度が試行されます。現在はひとつの事業主に週20時間以上、雇用されていることが必要ですが、改正後は、65歳以上の高年齢労働者が、複数の事業所の労働時間を合算して「週の所定労働時間が20時間以上」就労している場合に雇用保険に加入できるようになります。ただ、事業主が合算した所定労働時間を把握して、手続きを行うことは困難であるとして、労働者本人がハローワークに対して届出を行うことになっています。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

労災の過労死認定基準が、20年ぶりに見直される予定です。厚労省設置の専門検討会は、最新の医学的知見を踏まえた報告書をとりまとめました。

長時間労働の数値的基準(月100時間、2~6カ月平均80時間)等は現行維持が適切と判断する一方で、それ以外の負荷要因である「勤務時間の不規則性」を重視し、判断要素を再整理する方針です。

具体的項目としては、「拘束時間の長い勤務」「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルが短い勤務」「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」を挙げています。

たとえば、勤務間インターバルについては休息期間11時間未満の勤務の頻度・連続性、海外出張勤務に関しては4時間以上の時差を伴うか否か等を評価するとしています。

◆ニュース

裁量労働改正へ「道ならし」 調査で問題点整理

裁量労働制の改正は「働き方改革の一環としての労基法改正案(平成30年国会上程)」の中に含まれていましたが、審議の途中で「偽造比較データ」の問題がクロ-ズ・アップされ、法案から削除されるという一幕がありました。

その後、厚労省では「実態を把握しなおして議論を再開する」という方針の下、再調査に着手しました。このほど、約3年を経て、調査結果が公表されましたが、企画型裁量労働制を採用する事業場の40%が見直しを求めていることが明らかになりました。

要望の第1位は「手続き負担を軽減すべき」(77%)で、僅差で「対象労働者の範囲を見直すべき」(72%)が続いています。

後者の範囲見直しについては、「『常態として』でなく、『主として』従事していればよいとすべき」(75%)、「法令ではなく、労使で合意された業務を対象とすべき」(52%)といった声が多数を占めました。今後、法改正も視野に入れ、さらに検討が進められる予定です。

◆送検

年休5日の時季指定怠る 「賃金不払い」端緒に捜査 津島労基署

愛知・津島労基署は、年休の時季指定を怠ったとして、給食管理会社と店長3人を名古屋区検に書類送検しました。

働き方改革関連法(労基法改正)により、平成31年度以降、使用者には年5日の年休時季指定が義務付けられています。同社は病院・社会福祉施設等で給食調理を受託していましたが、時季指定を怠ったまま、従業員6人に1日の年休も取得させていませんでした。

捜査の発端は、外回り従業員の勤務実態が不明として賃金を支払わなかった事案です。調査を続ける中で、年休についての実態も明らかになったものです。

年休の時季指定(労基法39条7項)に関する送検は愛知県内初で、全国でも初めてとみられます。


カテゴリー:所長コラム

運を良くする

2021年08月02日

新型コロナウィルスの影響で1年延期された東京オリンピックが開催されました。東京では緊急事態宣言が発出されていて、ほとんどの会場が無観客で競技が行われることになり極めて異例な状況で行われる大会となっていますが、選手たちはそんなことなど全く関係ないように競技に打ち込んでいるように見えます。本当に一流選手の精神力のすごさには驚かされます。

また、最近では大リーグの大谷翔平選手がMBLオールスターゲームで歴史に残る二刀流での活躍にも驚かされました。そんな大谷選手の高校時代に書いた目標達成シートが話題になりました。高校生の大谷選手が、最終的に達成したい目標にドラフト1位指名を8球団から受け、日本のプロ野球に進むこととして、またその目標を達成するためにさらに8つの項目を挙げているのですが、注目したいのはその中に「人間性」と「運」を選んでいることです。体力、技術、精神面での強さは誰でも考えますが、やはり超一流になる人は違うのでしょうね。「運」を手に入れるために大谷選手は、「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「あいさつ」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」「道具を大事に使う」を実行するとしました。「運」の良さは誰もが欲しいと思うものですが、その人の意思や努力ではどうしようもないことだと一般的には考えられていることですね。大谷選手は、自分自身の日頃の行動や態度、ようするに考え方で「運」を引き寄せることが出来ると考えて、そのことを自身が身をもって示してくれているのはスゴイことだと思います。

長年、松下幸之助の薫陶を受けてこられた青年塾の代表である上甲晃氏は月刊誌致知に書いています。「運の良し悪しがどうしたら見極められるのか、私は長年疑問を抱いてきました。ある時、プロ野球の日本ハムファイターズの白井一幸元コーチと玄米酵素の鹿内正孝社長との会話の中に、その答えを得ました。鹿内社長から「運の強い人を先発メンバーに使うそうですが、どうしたら運が強いかが分かるのですか」と質問を受けた白井コーチは、「どんな平凡なゴロを打っても、全力で一塁まで走る人は運が強い」と答えていたのです。どんな平凡なことでも手抜きをしない。これこそが人生の真理だ!とハッとさせられました。」

iPS細胞の山中伸弥教授と稲盛和夫氏の対談でのことです。山中教授が「百メートル走では死に物狂いで全力疾走しますが、それをマラソンであると必ず途中で力尽きてしまう。ですから、いいタイムで完走するためにはペース配分をきちんと考えて、途中で水分や栄養も補給しながら、ペースを乱さずに走り切ることが大切です。実際、体力も走力も高かった二十代の時よりも、いまのほうがマラソンのタイムは速いんです。研究開発もそれと同じで、特に医学の分野では二十年、三十年という長い歳月を要します。途中で息切れしないように、ペース配分を考えて毎日頑張っています。」と話されました。稲盛さんは、「僕は違う。いつも全力疾走だ」「会社経営はマラソンと同じで、全速力で走っては長く続かないと皆さん言いますが、それでは本当の競争にはなりません。会社経営の経験のない素人がちんたら走っていたら、自分では走っているつもりかもしれないけど、全然勝負にならないでしょう。だから僕は、走り切れなくてもいい、最初の数キロだけでも一流選手に伍していこうという思いで、常に全力疾走してきました。周りはいつまで続くかと見ていたのでしょうが、走っているうちにそれが自分の習い性となり、今日まで続いている。最初から全力で走ろうと決めて、必死になって先頭集団に追いつこうと意気込んで走り続けてきたからこそ、実を結んだと思っています。」と話されました。山中教授は「まだまだアマチュアなのだ、勘違いしてはいけない」と思い知らされたというのですが、それもスゴイですね。最近は、こういった話に「昭和だね」という反応を返えす人もいます。ぼくもとてもではないですが、マネすることすら無理だと思っています。ただ、今の社会を良くするために、こういう生き方を貫いている人たちがいるのだということはわかっておくべきなんでしょうね。やはり、自分のためではなく、誰か他人のため社会のために必死の努力を続けられる人は結果をしっかり残すことができるのでしょう。それは、企業経営においても、スポーツにおいても同じことなんだと思います。(月刊誌致知2021.4「特集稲盛和夫に学ぶ人間学」より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

厚労省は、過労死等の労災請求事案の労働時間認定に関する質疑応答・事例集を作成し、都道府県労働局労災保険課長に通知しました。過労死等の労災請求事案が増加傾向を示す中、適切な労働時間認定と迅速な労災認定を推進するのが目的です。

事例集では、14個の質疑応答と7つの参考事例を収録しています。質疑応答では、具体的な考え方と併せて、参考となる判例・労働保険審査会裁決も示しました。

持帰り残業や出張先ホテル等での作業に関しては、使用者が作業を義務付けているか否かを評価し、指揮命令下にあったかどうかは関係者への聴取等も踏まえて判断します。

◆ニュース

ワクチン職域接種で手引き 本人の意思確認を

新型コロナウイルスの予防に向け、職域接種がスタートしています(現在は、新規受付一時休止)。厚労省は円滑な推進のため、「職域接種向け手引き」(現在は第2版)を公開しました。

実施に際しては、市町村と委託契約を結んだ医療機関が企業・職域単位でワクチン接種を行います。形態としては、①企業内診療所が実施、➁外部医療機関が企業に出張、③非接種者が外部医療機関に出向く、の3とおりがあります。

 同一会場で2回の接種を済ませることを基本とし、実施企業は、医療機関の確保、申請入力・連絡調整、会場の手配、自治体等との連絡を担う事務局体制を確保することが条件となります。

手引では、正規・非正規等の雇用形態により一律に対象者を区別することは望ましくなく、「接種を受けるかどうかは自ら決定する」という考え方に基づき、強制は避けるように留意を求めました。

5割超の退職金減額は無効 「接待漬け」で諭旨解雇

クラブ接待を繰り返し受けた等として諭旨解雇された元従業員が、退職金の減額は無効と訴えた事件で、東京地方裁判所は「5割を超える減額は無効」と判示しました。

元従業員は、不動産サブリース専門会社の支店勤務で、管理建物の修繕工事等の発注に関する業務上の権限を有していました。

その権限を行使して、業務の受注先を元部下が経営する会社に変更した後、繰り返し高額なクラブで接待を受けました。さらに、元部下に対して、クラブで働く外国人ホステスの在職証明書偽造も頼んでいました。

内部調査で不正が発覚し、会社は諭旨退職処分としましたが、退職金規定に基づき、退職金は全額が不支給となりました。

裁判所は、元従業員の「元部下からの接待は、個人的関係によるもの」という主張は退けましたが、退職金の減額のうち5割を超える部分は無効という判断を示しました。

接待金額が非常に高額とはいえず、偽造証明書も実際に使用されなかった点を踏まえ、「過去の勤続の功をすべて抹消するまでの背信行為といえない」と述べています。


カテゴリー:所長コラム



  • access
  • cubic
  • blog

pagetop