令和7年度の年金制度改正と改正育児介護休業法
2025年01月06日
このような年金制度への大きな影響を与えているのは日本の人口動態ですが、特に生産年齢人口の減少により多方面で労働力の確保が困難となっている現状はかなり深刻です。そんな中でも労働力として頑張ってくれているのが「女性」です。総務省の労働力調査によると2024年上半期の女性の正社員数は15歳~64歳で1241万人となって、21年ぶりに非正規社員の数を上回りました。その正社員が増えている理由ですが、結婚・出産後も仕事を続ける女性が増えたことが大きいようです。最近の出産動向基本調査によると、第一子出産後も働き続ける妻は53.8%と、20年間で2倍以上に増えています。
このような女性の労働参加を支えるために、これまで法改正が繰り返し行われてきました。まず、勤労婦人福祉法が1972年(昭和47年)に制定され、初めて女性労働者への育児休業の実施等については事業主の努力義務であることが定められました。その後は、男性労働者も含めてすべての女性労働者に広く育児休業を保障するまでにはいたらなかったわけですが、大きな転機となったのは、1989年(平成元年)の「1.57ショック」といわれています。この年の合計特殊出生率は、1966年(昭和41年)「ひのえうま(丙午)」の年の1.58を下回って、戦後最低の1.57となり出生数は前年比-25.4%にまで落ち込みます。ひのえうまの年に生まれた女性は火のように激しく、夫を食い殺すという言い伝えがあり、女性の縁談には悪い条件になるとされたため、多くの夫婦が出産を避けたそうです。私は昭和42年の生まれになるので、その前の年がひのえうまの年にあたっていたわけですが、一学年上の先輩の人数がとても少なかったことだけは覚えています。この1989年が、仕事と育児の両立を推進する政策の重要性を痛感させることになって、1歳未満の子を養育する男女労働者に対して育児休業の権利を保障する「育児休業等に関する法律」が1991年に制定されるにいたりました。育児介護休業法は、幾度もの法改正を経て現在にいたっていますが、今年(令和7年)もまた改正が予定されています。
特定社会保険労務士 末正哲朗
◆最新・行政の動き
改正法では同措置として、始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務制度などから2つ以上を選択して講じるよう事業主に義務付けました。選択時には、過半数組合または過半数代表者から意見を聴取しなければなりません。さらに、3歳未満の子を養育する労働者への個別周知および利用意向の確認も義務付けています。
Q&Aでは、施行日の2025年10月1日時点で措置を講じることができるよう、過半数組合などの意見聴取はあらかじめ行っておくべきとしています。
労働者への個別周知・意向確認については、施行日前に実施する義務はないと明記しました。ただし、施行前に行っておくのが望ましいとしました。
事業主が措置を用意していても、労働者の職種などから利用できないことがあらかじめ想定される場合は、措置義務を果たしたことにならないと指摘しています。
◆ニュース
上限規制遵守の観点からは、猛暑日、降雨・降雪日、河川の出水期などの自然的要因における不稼働によって、作業が他の期間に集中する可能性があることへの配慮を要請。技能者や重機オペレーターが現場へ移動する時間が労働時間に該当し得る点についても注意を促しました。また、工事の前工程で工程遅延が発生するなどして受注者から工期について協議の申出があった場合には、適切に協議し、状況に応じて工期延長など必要な契約変更を実施するよう訴えています。
「交際相手の近くに」も 希望転勤制を拡充 トラスコ中山
工場用工具卸売業のトラスコ中山㈱(東京都港区)は、従業員に対して交際相手の居住地近隣への転勤を認める「ひなどり転勤制度」を新設しました。2005年から配偶者の転勤や結婚・介護などに伴う“希望転勤”は可能でしたが、対象範囲を拡大しています。これまでも結婚を控えたケースなどには準用してきたところ、線引きが分からないなどの声もあり、改めて制度化を図りました。転勤の申請に当たり、書類の提出などは特段求めません。
同社では全国転勤型の総合職に対し、ジョブ・ローテーションを通じて育成を行います。配置転換を繰り返すなか、従業員が自らの事情に沿って勤務地を選択可能とし、将来の人生設計を考えやすくするのが狙いです。
過去3年間に既存の希望転勤制度を利用した人数は、育児・介護など家庭の事情による「希望転勤制度」が67人、配偶者の転勤に伴う「おしどり転勤制度」が18人となっています。
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