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国民皆保険を守るために

2026年03月02日

先日の衆議院選挙で圧勝して第二次高市政権が誕生しました。連立を組む日本維新の会は選挙戦で現役世代を中心とする社会保険料の負担軽減を訴えたこともあり、政権が直面している最大の課題は社会保険料の負担軽減となります。自民党で単独過半数を占める政治基盤で、支払い能力のある高齢者の負担増に踏み込めるかが注目されています。

日本維新の会は、医療費を年4兆円減らし、現役世代の保険料を1人当たり年6万円引き下げるとしています。社会保険料の負担は、40~60代でいえば、この20年間で1世帯当たりおおむね月2万円、40歳未満も月1万円以上増えていますが、70代はというと月6400円ほどの増加に過ぎません。(日経新聞2026.2.11)改革の方向性として、医療の窓口負担について「年齢によらない真に公平な応能負担の実現」「高齢者の定義見直し」としています。75歳以上の1人当たり国民医療費(平均95.4万円)は現役世代(0~64歳の平均21.8万円)の約4.4倍ですが、厚労省によると75歳以上の後期高齢者医療制度の2023年度の財政状況は、制度の支出を賄うための現役世代が負担する交付金は7兆1059億円と前年度から6.1%増加し、3年連続で過去最高を更新しています。75歳以上となる団塊の世代が増えたので、医療費を押し上げました。その後期高齢者医療制度の収入のおよそ5割は税金で、あとの約4割は現役世代が加入する健康保険制度が交付金という形で負担する仕組みです。しかし、現状では、75歳以上の高齢者の窓口負担は1割なので、どうしても現役世代には不公平感が残ります。

では、なぜ日本の社会保険料の負担感がこんなに大きくなってしまったのでしょうか。OECD諸国の社会保険料が収入に占める比率を見ると日本が最も高くなっています。一方で税の割合は低いことがわかっています。例えば、年収300万円ほどの世帯では、収入に占める所得税と住民税の負担は5%程度ですが、企業負担も含めた会社員の実質的な社会保険料負担は30%にもなります。給料が上がらなかった過去20年間において、社会保険料は上がり続けてきたわけです。なぜかということですが、所得税や消費税を上げるには、税制改正のプロセスを経て国会において法改正されなければならないのですが、社会保険料は厚労省の省令もしくは審議会の決定で上げることができる仕組みだからです。(2026.3.6PRESIDENT「年金・健保・所得税の正体」)

昨年末に中小企業の従業員が多く加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)が、2026年度の平均保険料率を9.9%と前年度比0.1%下げると決めたと報じられました。2012年度以降、平均料率を10%で維持してきたわけですが、ここ数年の高水準の賃上げが背景となり収支が15年連続の黒字となり、準備金も大きく積みあがっていることからというのが引下げの理由です。現役世代は給料が増えても手取りが増えない理由はここにありそうです。ただ、今後、賃金が直近10年の2倍の実績で伸び続けても2035年度には収支が200億円の赤字になるといわれていて厳しい状況に変わりはありません。また、こども家庭庁はこの4月分の給与から社会保険料に上乗せして「支援金」の徴収を始めます。収入が400万円の場合、被保険者1人当たりの負担額は労使合計で月767円(支援金率0.23%)となります。この8年度は総額6000億円で、10年度には1兆円と段階的に引き上げが予定されています。10年度の負担額は8年度の1.7倍になる見込みです。

日本歯科医師会の伊藤智加専務理事は、「女性の平均寿命が90歳を超え、100歳まで元気でいることが特別でなくなる時代となりつつある。その平均寿命の延伸は、国民皆保険制度の賜であるとも言われている。」「国民皆保険が実現する前は、医療を受けられずに亡くなる人も大勢いたと推察されるが、制度の成立によりその恩恵を国民が平等に受けられることとなった。」(「週刊社会保障」2025.12.15)と話します。国民皆保険で日本人の寿命が20歳ほど延びたわけです。こんなに恵まれた制度は、日本の他にありません。この制度をこれからも維持できるよう、そもそもの「相互扶助の精神」に立ち返る必要があるのではないかと思います。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

改正同一賃金ガイドライン 記載拡充し10月施行 住宅手当などを追加 厚労省

厚生労働省は、非正規労働者の待遇を改善するため、同一労働同一賃金ガイドラインや関係省令を改正し今年10月に施行する方針を明らかにしました。

同ガイドラインについては、待遇差などに関する考え方をさらに明確化する見込みです。これまで記載がなかった退職手当、家族手当、住宅手当などを対象に、原則的な考え方や「問題となる例」などの記載を追加します。たとえば、家族手当については、「相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない」旨を明記します。

転居を伴う配置変更の有無に応じて支給する住宅手当に関しては、通常の労働者と同一の転居を伴う配置変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同じ手当を支給することとしました。賞与に関する記載も充実させる見込みです。

省令を改正し、通常の労働者との待遇差に関する説明義務の運用改善も図ります。雇入れ時の労働条件明示事項に、待遇差の内容・理由や、待遇決定に当たって考慮した事項の説明を求めることができる旨を追加し、短時間労働者などの雇用管理改善指針(告示)においても、待遇差に関する説明方法を見直します。「資料を活用し、口頭により説明することを基本」としていた方法を改め、「資料を活用し、口頭で説明」または「説明事項すべてを記載した資料の交付」により行うこととしました。

指針ではさらに、公正な評価による待遇改善を促進する観点から、短時間・有期雇用労働者の賃金について、職務内容などの評価を昇給に反映するなど、公正な評価に基づく決定が望ましい旨を明確化する見込みです。処遇改善に関する自社の取組み事項をウェブサイトで公表することも推奨しています。

◆ニュース

自爆営業もパワハラ 10月から指針で明確化 厚労省

 厚生労働省は、パワーハラスメント防止に向けて事業主が講ずべき措置に関する指針を改正し、いわゆる「自爆営業」がパワハラに該当することを明確化します。同指針の改正を含む告示案要綱について労働政策審議会に諮問し、「妥当」との答申を受けました。今年10月から適用する予定です。

 同指針では、職場におけるパワハラについて、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害される――の3つの要素を満たす行為と定義しています。

 改正後の指針では、商品の買取り強要など、事業主が労働者に対し、自由な意思に反して自社の商品を購入させる行為に関する言動について職場におけるパワハラの3要素をすべて満たす場合にはパワハラに該当する旨を明記します。

 そのほか、労働者が自身の性的指向・性自認を他者に開示する「カミングアウト」を強要する行為が、パワハラに該当し得る旨を示しました。カミングアウトを禁止する行為も同様としています。

土日祝定休を試行 三井不動産レジ 営業社員の見学同行廃止

中高層住宅の賃貸事業などを展開する三井不動産レジデンシャル㈱は今年5月から、一部の物件を担当する営業社員約30人を対象に定休日を土日祝に変更します。モデルルームの見学に同行する商慣習を見直し、運営スタッフによる案内と平日のオンライン商談を拡充していきます。

同社には約300人の営業社員が在籍しており、定休日は水・木となっています。土日祝定休の別職種から異動を打診した際、「子どもの学校行事に参加できない」などの理由で抵抗を示されることがありました。

育児・介護中でも活躍できる環境の整備に向けて、2021年には約5人を対象に「日曜定休」を試行開始しました。23~25年にオンライン商談を実施した顧客440人に対するアンケートでは、約85%が対面商談と遜色ないと回答しています。従来は住宅販売センターに出向かなければ得られなかった情報が遠隔で得られる点などが評価されました。今後の反響次第では、全営業社員への適用も検討しています。


カテゴリー:所長コラム

丙午が映す日本のいま

2026年02月02日

今年2026年は、60年に1度の「丙午(ひのえうま)」の年です。前回の1966年の「昭和の丙午」は日本社会に大きなインパクトを残しました。その年は、出生数が前年より25%も少なく人口ピラミッドに大きな凹みを作りました。ぼくの一つ上の年齢に当たりますが、学校のクラスがひとつ少なかったことを覚えています。丙午の年に生まれる女性は気性が激しいという江戸時代からの迷信が元だそうですが、当時は出生数増のさなかに日本はあり、総人口はこのころに1億人を突破していて、出生数は、1965年182万人、丙午の1966年が136万人、1967年は193万人という状況でした。しかし、今の出生数は68万人でほぼ半減しています。8割の男女が「いずれ結婚するつもり」と答え、希望の子ども数は2人が多いという調査結果もありますが、希望と現実のギャップを埋める方策を長年にわたって日本は示せないでいます。日本など急速に経済成長した国では、伝統的な価値観が残るなかで女性の社会進出が進み、出生率が大きく低下したという見方があるくらい、「赤ちゃん」と「職場・働き方」の関係が深まっています。

また、日本の職場では働き方の価値観が多様化しています。高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いて参ります。」が流行語大賞となり注目を浴びました。昔の日本の職場では、会社での出世競争から落ちこぼれた「窓際族」といわれる働かないおじさん社員が存在していましたが、今は「静かな退職」という働き方が現れています。「静かな退職」はアメリカで広まった言葉で、競争志向の生き方を嫌い、そこから「さりげなく退避」しようとする姿勢のことをいうそうです。特に「上昇志向」「ハッスルカルチャー(過度な労働を美徳とする文化や価値観)」といった価値観に反対する動きとしてZ世代を中心に広がったとされ、やりがいやキャリアアップを求めずに、決められた仕事を淡々とこなす働き方で、実際に退職をするわけではなく、退職が決まった従業員のような余裕をもった精神状態で働くことをいうのだそうです。

今の日本は、伝統的な「終身雇用」が揺らいでしまって、ひとつの会社で頑張って長く働いても報われるとは限らなくなってしまったため、将来に不安を抱く人や仕事のために生きるという考え方に疑問を持つ人が増加しいます。マイナビが実施した調査によると、全国の20~50代の正社員のうち44.5%が「静かな退職をしている」と答えたそうです。特に20代ではその割り合いが高く、また「静かな退職を続けたい」と考えている人の合計は70.4%にも達していて、「静かな退職」は一過性の流行ではなく、働き方のひとつとして定着する可能性があるとのことです。こういった人たちについて企業の採用担当者からは「時代にあっている」「やるべき仕事をしていればよい」など、一定の賛成も得られているようです。ようは「静かな退職」は、働く人の価値観や関係性が現れたものであり、単なる怠慢や問題行動として片づけることはできないということです。従来の安定雇用の見返りに滅私奉公を求めた日本型雇用は限界を迎えたということのようです。

ここ数年、人材確保や退職防止のため若手社員の賃金アップが活発に行われていますが、会社を支えてきた中堅社員の給与はいぜんとして抑えられています。また、業績の悪くない企業が、50代以上の社員を標的として早期退職や希望退職を募集する「黒字リストラ」が目立って行われています。昨年、リストラを公表した上場企業のうち、黒字企業は28社と67%を占めており、人数では1万人を超えました。ただ、「早期退職には応じないほうがいい。」といわれています。大企業で年収1000万円以上の管理職だった人材の転職の受け皿は中小企業となりますが、そんな年収を支払える会社はないからです。また、大企業人材はなんでもそつなくこなすゼネラリストが多いため、転職市場での価値は低いことも影響します。このように若手社員には甘い日本社会ですが、高齢化が進んでいるにもかかわらず、実はシニア人材が活躍できる素地が整っていないという問題が生じているようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

管理職へ安衛教育を 高齢者労災防止で指針案 厚労省

 厚生労働省の有識者検討会は、労働安全衛生法に基づく高年齢者の労働災害防止のための指針(仮称)の案を取りまとめました。事業者が講ずべき措置として、安全衛生管理体制の確立や、職場環境の改善、健康・体力の状況の把握とそれに応じた対応、高年齢者と管理監督者などへの安全衛生教育を盛り込みました。

指針は、改正安衛法により、今年4月から高年齢者の労災防止措置が事業者の努力義務となることを受けて定めるものです。指針案では、職場環境改善の取組みとして、身体機能の低下を補う設備・装置の導入や、高年齢者の特性を考慮した作業管理を行うとしました。

設備・装置の導入に当たり、重量物の取扱いへの対応や、暑熱環境への対応の例も示しました。一般に、暑さや水分不足に対する感覚機能や、身体の調節機能が低下するため、涼しい休憩場所を整備し、利用を勧奨するとしています。

 作業管理面では、筋力や敏捷性のほか、バランス能力や全身持久力、感覚機能、認知機能の低下といった特性を考慮し、作業内容の見直しを検討・実施するよう求めています。

「おい、こら」で団交中止 不当労働行為を認定 熊本県労委

熊本県労働委員会は、団体交渉中に組合側が「おい、ちゃんと聞かんかい、こら」などの発言を繰り返したことを契機に、学校法人が団交を打ち切った事案について、不当労働行為と認定しました。発言は暴力行為を示唆するものではなく、「安全を確保できない」という法人側の主張は認め難いとしています。正当な理由のない団交拒否と支配介入に該当すると判断し、ポストノーティスを命じました。

組合は、同法人が運営する短大の廃止をきっかけに結成しました。短大が募集停止に至った理由などを議題として、団交を重ねていました。

第5回団交で、組合の執行委員長が、「おい、ちゃんと聞かんかい」、「ちゃんと顔見んかい」などの不穏当な発言をした際、法人の代理人弁護士は、法人側出席者の安全を確保できないことを理由に、すぐに団交を打ち切りました。組合側の一連の発言後、法人側は十数秒で終了を宣言し、団交は約9分で終了しました。

同労委は、組合側の発言は交渉態度として必ずしも是認されるものではないとしたうえで、法人側出席者に対して暴力を示唆するものではないと認定しました。実際に殴る、物を投げつけるなどの有形力の行使もされておらず、「法人側出席者の安全等を確保できないと認識させるには十分なものとは認め難い」と判断しています。さらに、発言後も、組合と法人の発言は聞き取れる状況にあり、団交が継続できないような喧噪状態にもなかったとしています。

弁護士が発言を受けて十数秒で団交を終わらせたことについては、「団交を緊急的に終了しなければならないほどの危険性が迫ったものとはいえない」と指摘しました。

県内企業と学生 AIが“マッチ” 埼玉県

埼玉県は、AIを活用した県内企業と大学生のマッチング支援事業を始めました。昨年11月から企業の登録申請が開始しており、1月中にサイトを立ち上げます。登録は無料です。

登録企業には「望ましくない人物像」を明確にするためのアンケートを受けてもらい、学生には行動心理学に基づいた適職診断を実施し、結果に基づきAIが両者をマッチングします。マッチングが成立した場合、学生には「おすすめの企業」として採用情報などが通知されます。 登録は県内に事業所を構える企業が対象で、すでに500社が登録済みです。学生は最低1000人を目標に、首都圏の学生へ登録を呼び掛けています。


カテゴリー:所長コラム

さらなる高みを目指す

2026年01月05日

ぼくは美味しい飲食店を見つけることが得意です。旅先や初めて訪れた土地で、何気なく入ったお店でも当たりの場合が多いので、うちの奥さんによく感心されます。ぼくはそこのお店が細かいところにまで気を配っているかどうかがポイントだと思ってます。

昨年、セブン&アイHDがカナダの企業に買収を提案され拒否することがありました。セブン&アイHDのコンビニ店の1日あたりの平均売上額は69万2千円でローソン、ファミマを大きく上回ります。しかし、この数年で伸び率が、セブンは5%台、他のコンビニ店が8%台と逆転していて、セブンに対しては他の点でも手厳しい批判が多くなっていて、顧客心理を甘く見ているとの指摘も受けているそうです。たしかに最近のセブンは魅力的な商品が減ったように思います。セブンイレブン創業者の鈴木敏文氏は「顧客心理」を大事にしなさいというのが口癖だったそうです。鈴木会長は社員に対して30年間、「欠品をするな」「掃除しろ」「挨拶しろ」「お客さんに親切にしろ」と同じことを言い続けてきたといいます。セブンでは、月に一度、全国の幹部が東京の麹町にある本社ビルに集まり会議をしていると聞いたことがあります。会議が終わり、その幹部たちが駅に向かって一斉に帰る姿は錚々たる様だったそうです。その会議で鈴木会長は毎回、同じことを話されたそうですが、当たり前のことを言い続けて、それが積み重ねられていくことによって普通が普通でなくなるということが起こるそうです。

九州旅客鉄道相談役の唐池恒二氏は、若い頃に飲食店の経営を勉強するため繁盛する飲食店に通い詰めたところ、繁盛する店と繁盛しない店には決定的な違いがあることに気がついたそうです。唐池氏は「それは『気』です。繁盛店には店全体に強烈なオーラが出ています。隅々まで掃除されていたり、スタッフの表情が自信に満ち溢れていたり。そういう店は料理やサービスも間違いない。これが『気』の正体なのでしょう。」といい、その気を呼び込むための5つの法則を話されています。それは、「夢見る力」「スピードのあるキビキビとした動き」「明るく元気な声」「隙を見せない緊張感」「(成長しようと努力する)貪欲さ」の五つだそうです。

経営コンサルタントの小宮一慶氏は「GoodはGreatの敵である」といいます。「ビジョナリーカンパニー2」からの言葉です。一定の成功をおさめるとそれで満足してしまって「もうこれでいいか」という考えになってしまう。これではダメだという意味です。「Goodであることに満足しているとGreatにはなれない」ある程度の成功をしたとしても、それで安住するのではなく、謙虚になり、なれる最高の自分になることが「自己実現」だと小宮さんはいつも説きます。

ホテルオークラ創設から支配人を務め伝説のホテルマンといわれた橋本保雄氏も「一定のレベルで満足してしまうか、それとも一つひとつに真心を込めて、さらによいものを目指していくか。それが大きな違いになるんです。」と言いました。朝食の目玉焼き1つ作るのにも「どうしたら喜んでもらえるかと精一杯工夫を凝らして出すのとでは、お客様の喜びもまったく違う。そういうふうに、感性を働かせて仕事をしていくこと。私はこれがとても重要だと思いますね。感性を精一杯働かせ、お客様に喜んでいただけることを発想し、それを行動に移す。これがやっぱりプロだと思います。」ちょっとした心遣いが大きな差になるのです。もうひと手間が大切なんですね。

東京工業大学名誉教授の本川達雄氏の著書で「ゾウの時間 ネズミの時間」には、動物は「息を1回吸って吐いての繰り返しの間に心臓は4回打つ。これは哺乳類ならばどの大きさでも当てはまる。そしてどの動物も一生の間に心臓を20億回打つため、呼吸する時間で割れば一生の間に約5億回息を吸って吐くを繰り返すことになる。」と書いています。ゾウは長命、ネズミは短命な動物ですが、人間も含めて哺乳動物の一生は、ほぼ5億回の呼吸で終わると決まっているそうです。ということは、人生の価値というのは、長さで決まるのではないということです。決められた呼吸回数を使い切るまでに、何を成すのかではないでしょうか。ひと呼吸を大切にしたいものです。  (参照:月刊誌「到知」、到知出版社「生き方の教科書」)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

悪質行為への対処方針周知 カスハラ抑止狙う 厚労省指針素案

厚生労働省は労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、カスタマーハラスメントについて雇用管理上講ずべき措置に関する指針の素案を示しました。

素案ではカスハラについて、①顧客等の言動、②労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超える、③労働者の就業環境が害される――のすべてを満たすものと定義。顧客等には取引の相手方や駅・空港など施設の利用者およびその家族も含むとしました。

講ずべき措置には、(1)事業主の方針の明確化と周知・啓発、(2)苦情・相談に応じ、適切に対応するための必要な体制整備、(3)事実関係の迅速・正確な確認など事後の迅速かつ適切な対応、(4)カスハラ抑止のための措置――などを盛り込みました。

(4)の抑止のための措置では、労働者に過度な要求を繰り返すなど、とくに悪質なものへの対処方針をあらかじめ定めます。管理監督者を含む労働者に方針を周知し、定めた対処を実行できる体制を整備しなければなりません。具体的な対処の例として、「行為者に対して警告文を発出する」、「法令の制限内で商品の販売・サービスの提供をしない」、「店舗・施設等への出入りを禁止する」などを示しています。

分科会では、求職活動におけるセクシュアルハラスメントの防止措置を含め、新たなハラスメント防止措置義務の施行日を令和8年10月1日とする案も示しました。

◆ニュース

建設業向けクマ対策で 事例集を作成 東北地方整備局

国土交通省東北地方整備局は、クマの出没が頻発している状況を受け、工事現場など屋外の作業現場向けに、クマ対策の事例集を初めて作成しました。

事例集は、同整備局発注の公共工事現場で実施している取組みを中心に、計53事例をまとめています。土木工事は緑が豊かな現場が多く、クマに遭遇するリスクも高い分、受注業者ごとにさまざまな工夫に取り組んでいます。地方公共団体発注の公共工事や民間工事にも横展開するため、写真付きで1冊に集約しました。

たとえば遭遇した際に有効なクマ撃退スプレーについては、ただ携行するだけでなく、訓練を行っている様子を紹介しました。スプレーの噴射距離を体感させ、スムーズに取り出すための方法を教育することで、万が一の場合に確実に使用できるようにしています。

クマを寄せ付けないための工夫も解説しています。クマ鈴やホイッスル、大音量スピーカーなどで人間の存在を知らせている事例を紹介しました。唐辛子粉末を練り込んだ線香を携行したり、クマの天敵であるオオカミの尿を設置したりすることも有効だとしています。 同整備局企画部は、「事例集の作成は、昨年度までは考えられなかった。被害の未然防止への取組みが今後も必要になってくる」と状況を危惧します。事例集の内容は、今後も随時更新していく予定です。


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2025年12月23日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月27日(土)~1月4日(日)まで年末年始休業とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしますが、宜しくお願いいたします。

2026年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。


カテゴリー:お知らせ

福利厚生の充実

2025年12月01日

外食大手のトリドールホールディングスは、傘下の「丸亀製麺」の店長の年収を、最大2000万円にすると発表しました。現在の店長の最高年収は約520万円ということなので、約4倍近くに引き上げるわけで、今後3年間で10名が「年収2000万円」の店長になる予定だそうです。この背景には人手不足があります。官公庁の統計データによると、2025年7月の飲食業の有効求人倍率は調理従事者で2.06倍、接客・給仕従事者で1.77倍になっています。実際、トリドールに限らず、こうした待遇の向上は他の飲食企業でも行われていて、例えば、すかいラークグループは昨年、店長の年収を800万円から1000万円にまで引き上げることを発表しています。店長全員の年収がそうなるわけではないようですが、働き手にとっては「夢」のある話となっています。現在の厳しい状況下で、自社を働き口として選んで欲しいという企業の思いが感じられます。

ここ数年の初任給の上昇スピードはまったく衰える兆しを見せません。大企業に中小企業はなかなかついていけないというのが実情ではないでしょうか。そこで最近、よく聞くのが賃金面以外の労働条件について、充実させる企業が増えているということです。「福利厚生」というのは、休暇制度、住宅手当などの各種手当、研修制度などさまざまなものがあります。ある調査によると、学生が企業選びにおいて重視していることの上位は「福利厚生が整っている」(44.3%)、「給与の高さ」(39.8%)、「職種に興味がある」(32.8%)となっていて、福利厚生の注目度が最も高くなっています。また、「企業の福利厚生について魅力を感じるものは何か」という調査では、「休暇制度(病気休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇など)」(53.8%)が半数以上でトップとなり、「働き方(フレックスタイム制度、テレワークなど)」(50.8%)、「住宅(社宅、住宅手当など)」(37.5%)が次いだということです。就活で企業を選ぶ際は、仕事内容や企業の規模、給与などさまざまなポイントがあると思いますが、その中でも福利厚生が充実しているかどうかも重要なポイントになっているようです。

トップに挙がる休暇制度ですが、相談を多く受けるのが「入社時の有給休暇付与」制度です。労働新聞が行った調査では、首都圏の求人企業770社のうち27.1%の209社が制度に取り組んでいるそうです。この数年で年次有給休暇の計画的付与の活用が増えていることや入社直後の体調不良による欠勤で賃金が減ることを避けられるということもあって、導入する企業は増えています。また、住宅手当を支給する企業も増えています。その支給額の幅は広くて、5000円程度から20000円を超える手当を支給する中小企業も見られます。住宅手当の支給は、遠隔地からの人材募集という意味もあるので、若い人材を募集するにはとても有効な手段だと思います。

人間はどのようなときに不平不満を持つものなのか、コンサルタントの一倉定先生が昭和基地の越冬隊の例を示しています。「4か月間にわたるプラトー基地に向けた雪上の移動は困難を極めた。基地にたどり着く前の2週間は、標高三千メートル以上の希薄な空気で、氷点下60度に近い極寒を、ブリザードに襲われる中、移動を続けた。眠る間もない悪戦苦闘の末に、ようやく基地にたどり着いた。基地で一休みした以後の移動は順調だった。天候は回復し、気温は上がり雪上車のスピードも上がった。しかし、環境が順調になると、まず食事に対する不満が起こった。そしてちょっとしたことでも、空気がトゲトゲしくなったのである。同じ人間が、基地にたどりつく前の2週間の悪戦苦闘の間には、食事に対する不満どころか、食事をする間も惜しんで、難関突破に全員一致して死力を尽くしたのである。『人間とは奇妙な動物だ』と隊員は語った。」

一倉先生は「立派な本社ビルを建てると、かえって不満とホンワカ・ムードが高まることは、しばしばである。」と言います。不満というのは物理的環境が悪い時には起こらず、良くなった時に起こるものといわれます。「人間は満足感を持てば、その瞬間から働かなくなり、進歩も止まる。人間とは、このようなやっかいな動物なのだ。」そうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

小規模事業場ストレスチェック 手引作成へ議論開始 厚労省・有識者検討会WG

厚生労働省は、ストレスチェックの実施義務が労働者50人未満の事業場まで拡大することを受け、小規模事業場向けの実施マニュアル作成に向けた有識者ワーキンググループの初会合を開催しました。

初会合では厚労省が、関係労働者の意見聴取や、実施者となる外部委託先の選定、調査票、医師の面接指導、集団分析・職場環境改善、プライバシー保護などの論点ごとに、対応案を示しました。

高ストレス者に対する面接指導については、労働者が安心して申出しやすくなるように、事業者に直接申し出るのではなく外部委託先を経由して申し出るなど、具体的な方法を記載するとしました。

ストレスチェックの実施や個人結果の通知・保存、面接指導の実施・申出勧奨、事後措置の各段階におけるプライバシー保護のあり方も検討事項に挙げました。厚労省は、面接指導を行う際の個人結果の取扱い方法として、事業者を経ずにストレスチェック実施者である外部委託機関が面接指導を担当する医師に直接提供すること、または本人が直接持参することを求める案を提示しています。

ストレスチェックの実施義務の対象事業場の拡大は、今年5月公布の改正労働安全衛生法に盛り込まれました。努力義務とされていた50人未満の事業場にも実施を義務付けるもので、令和10年5月までに施行されます。マニュアルは来年3~4月頃の公表を予定しています。

◆ニュース

外食産業の現状を分析  エリア責任者 心身負担大きく 過労死防止白書

 政府は令和7年版の過労死等防止対策白書を閣議決定しました。今年の白書では、重点対策業種である外食産業の調査結果を紹介。エリアマネージャーは長時間労働の傾向にあり、店舗で接客や調理を担当する従業員に比べてハラスメントを受けたことがある者の割合も高いなど、とくに心身の負担が大きい様子が浮彫りになりました。

白書では、エリアマネージャー(スーパーバイザー含む)、店長、店舗従業員(接客)、店舗従業員(調理)といった職種ごとに、労働時間の状況やハラスメントを受けた者の割合などを示しました。

それによると、1週間当たりの平均労働時間が60時間以上の労働者割合は、外食産業全体で14.9%なのに対し、エリアマネージャーは24.0%、店長は29.0%と、店舗の責任者に長時間労働の傾向がみられました。

パワハラやセクハラの経験割合についても、エリアマネージャーがとくに高い水準にあります。たとえば、パワハラの類型の1つである精神的な攻撃の経験割合は22.0%に上り、産業全体(13.6%)との差が大きくなっています。カスハラを受けた経験がある割合も、エリアマネージャーが30.0%で最も高く、店舗従業員(接客)が21.3%、店長が19.5%などと続きます。

15%が偽の会議案内クリック サイバー攻撃訓練で 東商

 日常的に目にするオンライン会議の案内メールでも、心当たりがない場合は注意を――東京商工会議所は、会員の中小企業84社1146人を対象に行った電子メールによるサイバー攻撃訓練の結果をまとめました。「オンライン会議への参加案内」を装ったメール内のURLをクリックしてしまった参加者は14.9%に上りました。そのうち31.0%が「怪しいと思ったが、開いてみないと判断できないと思った」としています。

訓練は2019年から毎年、偽装メールの内容を変えて行っています。各社が事前に提出した社員のメールアドレスに、訓練を請け負う会社から偽装メールを送信するもので、今回のメールでは、本文の「参加情報を確認する」という文字の下にURLを配置していました。

過去の訓練では、「偽の研修案内」のクリック率が7.8%、「偽のシステム提供者からの通知」では6.1%だったのに比べ、今回は倍以上となっています。東商では、企業の経営者や人事担当者に向けたセミナーの開催を通じ、従業員への啓発を呼び掛けていきます。


カテゴリー:所長コラム



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