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目的と目標の勘違い “強い経営者の落とし穴”

2026年04月01日

日本の労働力人口が初めて昨年、7000万人を超えました。その理由は女性就業者の増加が大きく、労働力人口の2025年平均は、男性が3805万人で前年比5万人の増加で、女性が3200万人で43万人増加、合わせて7004万人となりました。9年前の働き方改革によって労働力人口の減少を女性労働力で補う施策が進み、今では職場で働く人のほぼ半数近くが女性です。最近の女性の目覚ましい職場進出は、日本企業の労務管理を大きく変えたといえるのではないでしょうか。

日経新聞の「社長・知事も『一発アウト』」(2026.1.15)という記事では「企業や自治体のトップがハラスメントを理由に退任する例が相次いでいる。旧ジャニーズ事務所やフジテレビジョンの問題をきっかけに意識が変わった。セクハラなどは人権侵害と捉え、役職が高くても一発アウトとする流れができつつある。」とあり、企業幹部による不適切行為の発覚は今後も増えるだろうと報じています。また、「今になって不適切な行為そのものが増えたわけではない。法改正などを契機として内部通報を含む発見機能が強化され、過去には発見されてこなかった問題が洗い出されつつある」ともありましたが、これは少し違うようで、ある女性経営者は、「ハラスメントなんて昔から山ほどあったけど、言えなかっただけだ」と言います。職場で女性が増えたことで、女性の意見を無視できなくなったということではないでしょうか。今では「ハラスメントは重大な人権侵害」だという認識が当たり前にもなりました。他にも「4月にホンダの副社長が業務時間外の懇親会の場での不適切な行為を指摘され辞任」「10月に青森テレビの社長がパワハラで辞任」「12月に福井県知事が職員へのセクハラ問題の責任を取って辞任」するなど後を絶ちません。

そんな中「ニデック 減損2500億円恐れ」(日経新聞2026.3.4)と、世界No.1の総合モーターメーカーであるニデック(旧日本電産㈱)の会計不正が報じられました。調査している第三者委員会は、会計不正の原因が創業者である永守氏にあると厳しい指摘を行っています。永守氏は利益など目標に達していないグループや本社の幹部らを叱責するメールやチャットを日常的に送っていたことが明らかになっていて、「君は何度原点にもどれば指導を受けた経営のやり方を実践できると思っているのか?(中略)そのチャンスをつかめず問題ばかり発生させている現在の君の醜態は君の怠慢たる人間性が主因だと思うがな!恥を知るべきだ!」というメールを送ったり、「まさに『君は日本電産を潰すために来たのか?』という問いになる。私の元から損害だけ残して敵前逃亡していくのか、それとも死ぬ気で働いて損失を埋めてくれるのか?その選択を早くして、私を悪夢から逃れさせてほしいと思う」などとパワハラ発言を繰り返していたということです。第三者委員会は、「永守氏は一部の会計不正を容認したとの評価は免れない。最も責めを負うべきなのは、永守氏であるといわざるをえない。」と断じました。

思い出されるのが2015年に不適切会計問題があった東芝です。東芝は「3日で120億円の利益を出せ」と社長が部下に命じて、結果として完膚なきまでに分解されてしまいました。こういった企業の不祥事の原因について経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「目的」と「目標」の間違いだといいます。小宮氏は『お客様に喜んでいただけるような商品やサービスを提供して、今年は「50億円の売上高をあげよう」とか、その結果「2億円の利益を出す」というのは、「目標」であって「目的」ではありません。』、企業は、社会に良い商品やサービスを提供し、お客様に喜んでいただくこと、そしてそれを通じて働いてくれている仲間を幸せにすること、あと地域社会に貢献することこそが目的であって、多くの会社がこの「目標」と「目的」を間違ってしまっているといいます。(ダイヤモンド社「経営者の教科書」小宮一慶)

ニデックの永守重信氏といえば、京都では京セラの稲盛和夫氏と並ぶほどの大経営者と見られていましたが、あっという間に足元をすくわれてしまったようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

ストレスチェック 外部機関へ委託推奨 小規模企業向け手引き

厚生労働省は、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。実施に当たって外部機関への委託を推奨するなど、小規模事業場における現実的かつ実効的な実施方法を示しています。

マニュアルは、昨年5月公布の改正労働安全衛生法により、ストレスチェックの実施義務が労働者50人未満の事業場にも課されることを踏まえて作成しました。制度の実施に向けた事業者の準備事項には、ストレスチェック制度の導入方針の決定・表明のほか、関係労働者の意見聴取や、社内ルールの作成・周知を挙げています。

制度の実施体制については、外部機関の活用を推奨しました。事業者は、委託先に依頼して、医師や保健師などストレスチェックの「実施者」を選定します。事業場内においては実務担当者を指名するとしました。

委託先の選定に当たっては、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、料金体系のほか、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、ストレスチェック結果の通知方法といった実施方法などを確認します。

来春高卒者の採用日程 求人申込は7月から 厚労省

厚生労働省は、主要経済団体や全国高等学校長協会、経済産業省、文部科学省と高等学校就職問題検討会議を開き、令和9年3月に高校を卒業する生徒の採用選考期日を取りまとめました。

ハローワークによる求人申込書の受付は今年6月に開始します。その後、求人不受理の対象かどうかを確認して企業に求人票が返却されます。返却された求人票を用いて、企業が学校への求人申込みや訪問を行えるのは7月1日以降としました。

学校から企業への生徒の応募書類提出開始日は、沖縄県(8月30日)を除き9月5日となります。企業の選考と内定開始日は9月16日です。

新聞や雑誌、インターネット上の広告などによって労働者を募集する「文書募集」の開始は7月1日です。この場合も、通常の求人手続きと同様にハローワークの確認を受けるとともに、応募の受付はハローワークまたは学校を通じて行う必要があります。

◆送検

月1時間残業で送検 適正に代表者選出せず 大阪南労基署

大阪南労働基準監督署は、有効な36協定がないまま、労働者に1カ月当たり最大1時間の時間外労働をさせたとして、訪問介護事業者と同社部長、事業場の統括責任者を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで大阪地検に書類送検しました。過半数代表者を適正に選出しておらず、36協定が有効ではありませんでした。

同社は労働者1人に、令和5年9月~6年3月にかけ、1日当たり2~6分、1カ月当たり最大1時間、法定労働時間を超えて働かせました。時間外労働は主に事務作業や報告業務などに充てられていました。

同社は36協定を届け出ていましたが、同社が過半数代表者を一方的に指名していました。同労基署は、民主的手続きを経て選出されていないとして、協定を無効と判断しています。

同一の期間において、時間外労働に対する割増賃金を一切支払わなかったとして、同法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)違反の疑いでも送検しています。同労基署は「時間外労働があったことを認識していながら、故意に支払っていなかった」と話しています。


カテゴリー:所長コラム

国民皆保険を守るために

2026年03月02日

先日の衆議院選挙で圧勝して第二次高市政権が誕生しました。連立を組む日本維新の会は選挙戦で現役世代を中心とする社会保険料の負担軽減を訴えたこともあり、政権が直面している最大の課題は社会保険料の負担軽減となります。自民党で単独過半数を占める政治基盤で、支払い能力のある高齢者の負担増に踏み込めるかが注目されています。

日本維新の会は、医療費を年4兆円減らし、現役世代の保険料を1人当たり年6万円引き下げるとしています。社会保険料の負担は、40~60代でいえば、この20年間で1世帯当たりおおむね月2万円、40歳未満も月1万円以上増えていますが、70代はというと月6400円ほどの増加に過ぎません。(日経新聞2026.2.11)改革の方向性として、医療の窓口負担について「年齢によらない真に公平な応能負担の実現」「高齢者の定義見直し」としています。75歳以上の1人当たり国民医療費(平均95.4万円)は現役世代(0~64歳の平均21.8万円)の約4.4倍ですが、厚労省によると75歳以上の後期高齢者医療制度の2023年度の財政状況は、制度の支出を賄うための現役世代が負担する交付金は7兆1059億円と前年度から6.1%増加し、3年連続で過去最高を更新しています。75歳以上となる団塊の世代が増えたので、医療費を押し上げました。その後期高齢者医療制度の収入のおよそ5割は税金で、あとの約4割は現役世代が加入する健康保険制度が交付金という形で負担する仕組みです。しかし、現状では、75歳以上の高齢者の窓口負担は1割なので、どうしても現役世代には不公平感が残ります。

では、なぜ日本の社会保険料の負担感がこんなに大きくなってしまったのでしょうか。OECD諸国の社会保険料が収入に占める比率を見ると日本が最も高くなっています。一方で税の割合は低いことがわかっています。例えば、年収300万円ほどの世帯では、収入に占める所得税と住民税の負担は5%程度ですが、企業負担も含めた会社員の実質的な社会保険料負担は30%にもなります。給料が上がらなかった過去20年間において、社会保険料は上がり続けてきたわけです。なぜかということですが、所得税や消費税を上げるには、税制改正のプロセスを経て国会において法改正されなければならないのですが、社会保険料は厚労省の省令もしくは審議会の決定で上げることができる仕組みだからです。(2026.3.6PRESIDENT「年金・健保・所得税の正体」)

昨年末に中小企業の従業員が多く加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)が、2026年度の平均保険料率を9.9%と前年度比0.1%下げると決めたと報じられました。2012年度以降、平均料率を10%で維持してきたわけですが、ここ数年の高水準の賃上げが背景となり収支が15年連続の黒字となり、準備金も大きく積みあがっていることからというのが引下げの理由です。現役世代は給料が増えても手取りが増えない理由はここにありそうです。ただ、今後、賃金が直近10年の2倍の実績で伸び続けても2035年度には収支が200億円の赤字になるといわれていて厳しい状況に変わりはありません。また、こども家庭庁はこの4月分の給与から社会保険料に上乗せして「支援金」の徴収を始めます。収入が400万円の場合、被保険者1人当たりの負担額は労使合計で月767円(支援金率0.23%)となります。この8年度は総額6000億円で、10年度には1兆円と段階的に引き上げが予定されています。10年度の負担額は8年度の1.7倍になる見込みです。

日本歯科医師会の伊藤智加専務理事は、「女性の平均寿命が90歳を超え、100歳まで元気でいることが特別でなくなる時代となりつつある。その平均寿命の延伸は、国民皆保険制度の賜であるとも言われている。」「国民皆保険が実現する前は、医療を受けられずに亡くなる人も大勢いたと推察されるが、制度の成立によりその恩恵を国民が平等に受けられることとなった。」(「週刊社会保障」2025.12.15)と話します。国民皆保険で日本人の寿命が20歳ほど延びたわけです。こんなに恵まれた制度は、日本の他にありません。この制度をこれからも維持できるよう、そもそもの「相互扶助の精神」に立ち返る必要があるのではないかと思います。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

改正同一賃金ガイドライン 記載拡充し10月施行 住宅手当などを追加 厚労省

厚生労働省は、非正規労働者の待遇を改善するため、同一労働同一賃金ガイドラインや関係省令を改正し今年10月に施行する方針を明らかにしました。

同ガイドラインについては、待遇差などに関する考え方をさらに明確化する見込みです。これまで記載がなかった退職手当、家族手当、住宅手当などを対象に、原則的な考え方や「問題となる例」などの記載を追加します。たとえば、家族手当については、「相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない」旨を明記します。

転居を伴う配置変更の有無に応じて支給する住宅手当に関しては、通常の労働者と同一の転居を伴う配置変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同じ手当を支給することとしました。賞与に関する記載も充実させる見込みです。

省令を改正し、通常の労働者との待遇差に関する説明義務の運用改善も図ります。雇入れ時の労働条件明示事項に、待遇差の内容・理由や、待遇決定に当たって考慮した事項の説明を求めることができる旨を追加し、短時間労働者などの雇用管理改善指針(告示)においても、待遇差に関する説明方法を見直します。「資料を活用し、口頭により説明することを基本」としていた方法を改め、「資料を活用し、口頭で説明」または「説明事項すべてを記載した資料の交付」により行うこととしました。

指針ではさらに、公正な評価による待遇改善を促進する観点から、短時間・有期雇用労働者の賃金について、職務内容などの評価を昇給に反映するなど、公正な評価に基づく決定が望ましい旨を明確化する見込みです。処遇改善に関する自社の取組み事項をウェブサイトで公表することも推奨しています。

◆ニュース

自爆営業もパワハラ 10月から指針で明確化 厚労省

 厚生労働省は、パワーハラスメント防止に向けて事業主が講ずべき措置に関する指針を改正し、いわゆる「自爆営業」がパワハラに該当することを明確化します。同指針の改正を含む告示案要綱について労働政策審議会に諮問し、「妥当」との答申を受けました。今年10月から適用する予定です。

 同指針では、職場におけるパワハラについて、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害される――の3つの要素を満たす行為と定義しています。

 改正後の指針では、商品の買取り強要など、事業主が労働者に対し、自由な意思に反して自社の商品を購入させる行為に関する言動について職場におけるパワハラの3要素をすべて満たす場合にはパワハラに該当する旨を明記します。

 そのほか、労働者が自身の性的指向・性自認を他者に開示する「カミングアウト」を強要する行為が、パワハラに該当し得る旨を示しました。カミングアウトを禁止する行為も同様としています。

土日祝定休を試行 三井不動産レジ 営業社員の見学同行廃止

中高層住宅の賃貸事業などを展開する三井不動産レジデンシャル㈱は今年5月から、一部の物件を担当する営業社員約30人を対象に定休日を土日祝に変更します。モデルルームの見学に同行する商慣習を見直し、運営スタッフによる案内と平日のオンライン商談を拡充していきます。

同社には約300人の営業社員が在籍しており、定休日は水・木となっています。土日祝定休の別職種から異動を打診した際、「子どもの学校行事に参加できない」などの理由で抵抗を示されることがありました。

育児・介護中でも活躍できる環境の整備に向けて、2021年には約5人を対象に「日曜定休」を試行開始しました。23~25年にオンライン商談を実施した顧客440人に対するアンケートでは、約85%が対面商談と遜色ないと回答しています。従来は住宅販売センターに出向かなければ得られなかった情報が遠隔で得られる点などが評価されました。今後の反響次第では、全営業社員への適用も検討しています。


カテゴリー:所長コラム

丙午が映す日本のいま

2026年02月02日

今年2026年は、60年に1度の「丙午(ひのえうま)」の年です。前回の1966年の「昭和の丙午」は日本社会に大きなインパクトを残しました。その年は、出生数が前年より25%も少なく人口ピラミッドに大きな凹みを作りました。ぼくの一つ上の年齢に当たりますが、学校のクラスがひとつ少なかったことを覚えています。丙午の年に生まれる女性は気性が激しいという江戸時代からの迷信が元だそうですが、当時は出生数増のさなかに日本はあり、総人口はこのころに1億人を突破していて、出生数は、1965年182万人、丙午の1966年が136万人、1967年は193万人という状況でした。しかし、今の出生数は68万人でほぼ半減しています。8割の男女が「いずれ結婚するつもり」と答え、希望の子ども数は2人が多いという調査結果もありますが、希望と現実のギャップを埋める方策を長年にわたって日本は示せないでいます。日本など急速に経済成長した国では、伝統的な価値観が残るなかで女性の社会進出が進み、出生率が大きく低下したという見方があるくらい、「赤ちゃん」と「職場・働き方」の関係が深まっています。

また、日本の職場では働き方の価値観が多様化しています。高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いて参ります。」が流行語大賞となり注目を浴びました。昔の日本の職場では、会社での出世競争から落ちこぼれた「窓際族」といわれる働かないおじさん社員が存在していましたが、今は「静かな退職」という働き方が現れています。「静かな退職」はアメリカで広まった言葉で、競争志向の生き方を嫌い、そこから「さりげなく退避」しようとする姿勢のことをいうそうです。特に「上昇志向」「ハッスルカルチャー(過度な労働を美徳とする文化や価値観)」といった価値観に反対する動きとしてZ世代を中心に広がったとされ、やりがいやキャリアアップを求めずに、決められた仕事を淡々とこなす働き方で、実際に退職をするわけではなく、退職が決まった従業員のような余裕をもった精神状態で働くことをいうのだそうです。

今の日本は、伝統的な「終身雇用」が揺らいでしまって、ひとつの会社で頑張って長く働いても報われるとは限らなくなってしまったため、将来に不安を抱く人や仕事のために生きるという考え方に疑問を持つ人が増加しいます。マイナビが実施した調査によると、全国の20~50代の正社員のうち44.5%が「静かな退職をしている」と答えたそうです。特に20代ではその割り合いが高く、また「静かな退職を続けたい」と考えている人の合計は70.4%にも達していて、「静かな退職」は一過性の流行ではなく、働き方のひとつとして定着する可能性があるとのことです。こういった人たちについて企業の採用担当者からは「時代にあっている」「やるべき仕事をしていればよい」など、一定の賛成も得られているようです。ようは「静かな退職」は、働く人の価値観や関係性が現れたものであり、単なる怠慢や問題行動として片づけることはできないということです。従来の安定雇用の見返りに滅私奉公を求めた日本型雇用は限界を迎えたということのようです。

ここ数年、人材確保や退職防止のため若手社員の賃金アップが活発に行われていますが、会社を支えてきた中堅社員の給与はいぜんとして抑えられています。また、業績の悪くない企業が、50代以上の社員を標的として早期退職や希望退職を募集する「黒字リストラ」が目立って行われています。昨年、リストラを公表した上場企業のうち、黒字企業は28社と67%を占めており、人数では1万人を超えました。ただ、「早期退職には応じないほうがいい。」といわれています。大企業で年収1000万円以上の管理職だった人材の転職の受け皿は中小企業となりますが、そんな年収を支払える会社はないからです。また、大企業人材はなんでもそつなくこなすゼネラリストが多いため、転職市場での価値は低いことも影響します。このように若手社員には甘い日本社会ですが、高齢化が進んでいるにもかかわらず、実はシニア人材が活躍できる素地が整っていないという問題が生じているようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

管理職へ安衛教育を 高齢者労災防止で指針案 厚労省

 厚生労働省の有識者検討会は、労働安全衛生法に基づく高年齢者の労働災害防止のための指針(仮称)の案を取りまとめました。事業者が講ずべき措置として、安全衛生管理体制の確立や、職場環境の改善、健康・体力の状況の把握とそれに応じた対応、高年齢者と管理監督者などへの安全衛生教育を盛り込みました。

指針は、改正安衛法により、今年4月から高年齢者の労災防止措置が事業者の努力義務となることを受けて定めるものです。指針案では、職場環境改善の取組みとして、身体機能の低下を補う設備・装置の導入や、高年齢者の特性を考慮した作業管理を行うとしました。

設備・装置の導入に当たり、重量物の取扱いへの対応や、暑熱環境への対応の例も示しました。一般に、暑さや水分不足に対する感覚機能や、身体の調節機能が低下するため、涼しい休憩場所を整備し、利用を勧奨するとしています。

 作業管理面では、筋力や敏捷性のほか、バランス能力や全身持久力、感覚機能、認知機能の低下といった特性を考慮し、作業内容の見直しを検討・実施するよう求めています。

「おい、こら」で団交中止 不当労働行為を認定 熊本県労委

熊本県労働委員会は、団体交渉中に組合側が「おい、ちゃんと聞かんかい、こら」などの発言を繰り返したことを契機に、学校法人が団交を打ち切った事案について、不当労働行為と認定しました。発言は暴力行為を示唆するものではなく、「安全を確保できない」という法人側の主張は認め難いとしています。正当な理由のない団交拒否と支配介入に該当すると判断し、ポストノーティスを命じました。

組合は、同法人が運営する短大の廃止をきっかけに結成しました。短大が募集停止に至った理由などを議題として、団交を重ねていました。

第5回団交で、組合の執行委員長が、「おい、ちゃんと聞かんかい」、「ちゃんと顔見んかい」などの不穏当な発言をした際、法人の代理人弁護士は、法人側出席者の安全を確保できないことを理由に、すぐに団交を打ち切りました。組合側の一連の発言後、法人側は十数秒で終了を宣言し、団交は約9分で終了しました。

同労委は、組合側の発言は交渉態度として必ずしも是認されるものではないとしたうえで、法人側出席者に対して暴力を示唆するものではないと認定しました。実際に殴る、物を投げつけるなどの有形力の行使もされておらず、「法人側出席者の安全等を確保できないと認識させるには十分なものとは認め難い」と判断しています。さらに、発言後も、組合と法人の発言は聞き取れる状況にあり、団交が継続できないような喧噪状態にもなかったとしています。

弁護士が発言を受けて十数秒で団交を終わらせたことについては、「団交を緊急的に終了しなければならないほどの危険性が迫ったものとはいえない」と指摘しました。

県内企業と学生 AIが“マッチ” 埼玉県

埼玉県は、AIを活用した県内企業と大学生のマッチング支援事業を始めました。昨年11月から企業の登録申請が開始しており、1月中にサイトを立ち上げます。登録は無料です。

登録企業には「望ましくない人物像」を明確にするためのアンケートを受けてもらい、学生には行動心理学に基づいた適職診断を実施し、結果に基づきAIが両者をマッチングします。マッチングが成立した場合、学生には「おすすめの企業」として採用情報などが通知されます。 登録は県内に事業所を構える企業が対象で、すでに500社が登録済みです。学生は最低1000人を目標に、首都圏の学生へ登録を呼び掛けています。


カテゴリー:所長コラム

さらなる高みを目指す

2026年01月05日

ぼくは美味しい飲食店を見つけることが得意です。旅先や初めて訪れた土地で、何気なく入ったお店でも当たりの場合が多いので、うちの奥さんによく感心されます。ぼくはそこのお店が細かいところにまで気を配っているかどうかがポイントだと思ってます。

昨年、セブン&アイHDがカナダの企業に買収を提案され拒否することがありました。セブン&アイHDのコンビニ店の1日あたりの平均売上額は69万2千円でローソン、ファミマを大きく上回ります。しかし、この数年で伸び率が、セブンは5%台、他のコンビニ店が8%台と逆転していて、セブンに対しては他の点でも手厳しい批判が多くなっていて、顧客心理を甘く見ているとの指摘も受けているそうです。たしかに最近のセブンは魅力的な商品が減ったように思います。セブンイレブン創業者の鈴木敏文氏は「顧客心理」を大事にしなさいというのが口癖だったそうです。鈴木会長は社員に対して30年間、「欠品をするな」「掃除しろ」「挨拶しろ」「お客さんに親切にしろ」と同じことを言い続けてきたといいます。セブンでは、月に一度、全国の幹部が東京の麹町にある本社ビルに集まり会議をしていると聞いたことがあります。会議が終わり、その幹部たちが駅に向かって一斉に帰る姿は錚々たる様だったそうです。その会議で鈴木会長は毎回、同じことを話されたそうですが、当たり前のことを言い続けて、それが積み重ねられていくことによって普通が普通でなくなるということが起こるそうです。

九州旅客鉄道相談役の唐池恒二氏は、若い頃に飲食店の経営を勉強するため繁盛する飲食店に通い詰めたところ、繁盛する店と繁盛しない店には決定的な違いがあることに気がついたそうです。唐池氏は「それは『気』です。繁盛店には店全体に強烈なオーラが出ています。隅々まで掃除されていたり、スタッフの表情が自信に満ち溢れていたり。そういう店は料理やサービスも間違いない。これが『気』の正体なのでしょう。」といい、その気を呼び込むための5つの法則を話されています。それは、「夢見る力」「スピードのあるキビキビとした動き」「明るく元気な声」「隙を見せない緊張感」「(成長しようと努力する)貪欲さ」の五つだそうです。

経営コンサルタントの小宮一慶氏は「GoodはGreatの敵である」といいます。「ビジョナリーカンパニー2」からの言葉です。一定の成功をおさめるとそれで満足してしまって「もうこれでいいか」という考えになってしまう。これではダメだという意味です。「Goodであることに満足しているとGreatにはなれない」ある程度の成功をしたとしても、それで安住するのではなく、謙虚になり、なれる最高の自分になることが「自己実現」だと小宮さんはいつも説きます。

ホテルオークラ創設から支配人を務め伝説のホテルマンといわれた橋本保雄氏も「一定のレベルで満足してしまうか、それとも一つひとつに真心を込めて、さらによいものを目指していくか。それが大きな違いになるんです。」と言いました。朝食の目玉焼き1つ作るのにも「どうしたら喜んでもらえるかと精一杯工夫を凝らして出すのとでは、お客様の喜びもまったく違う。そういうふうに、感性を働かせて仕事をしていくこと。私はこれがとても重要だと思いますね。感性を精一杯働かせ、お客様に喜んでいただけることを発想し、それを行動に移す。これがやっぱりプロだと思います。」ちょっとした心遣いが大きな差になるのです。もうひと手間が大切なんですね。

東京工業大学名誉教授の本川達雄氏の著書で「ゾウの時間 ネズミの時間」には、動物は「息を1回吸って吐いての繰り返しの間に心臓は4回打つ。これは哺乳類ならばどの大きさでも当てはまる。そしてどの動物も一生の間に心臓を20億回打つため、呼吸する時間で割れば一生の間に約5億回息を吸って吐くを繰り返すことになる。」と書いています。ゾウは長命、ネズミは短命な動物ですが、人間も含めて哺乳動物の一生は、ほぼ5億回の呼吸で終わると決まっているそうです。ということは、人生の価値というのは、長さで決まるのではないということです。決められた呼吸回数を使い切るまでに、何を成すのかではないでしょうか。ひと呼吸を大切にしたいものです。  (参照:月刊誌「到知」、到知出版社「生き方の教科書」)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

悪質行為への対処方針周知 カスハラ抑止狙う 厚労省指針素案

厚生労働省は労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、カスタマーハラスメントについて雇用管理上講ずべき措置に関する指針の素案を示しました。

素案ではカスハラについて、①顧客等の言動、②労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超える、③労働者の就業環境が害される――のすべてを満たすものと定義。顧客等には取引の相手方や駅・空港など施設の利用者およびその家族も含むとしました。

講ずべき措置には、(1)事業主の方針の明確化と周知・啓発、(2)苦情・相談に応じ、適切に対応するための必要な体制整備、(3)事実関係の迅速・正確な確認など事後の迅速かつ適切な対応、(4)カスハラ抑止のための措置――などを盛り込みました。

(4)の抑止のための措置では、労働者に過度な要求を繰り返すなど、とくに悪質なものへの対処方針をあらかじめ定めます。管理監督者を含む労働者に方針を周知し、定めた対処を実行できる体制を整備しなければなりません。具体的な対処の例として、「行為者に対して警告文を発出する」、「法令の制限内で商品の販売・サービスの提供をしない」、「店舗・施設等への出入りを禁止する」などを示しています。

分科会では、求職活動におけるセクシュアルハラスメントの防止措置を含め、新たなハラスメント防止措置義務の施行日を令和8年10月1日とする案も示しました。

◆ニュース

建設業向けクマ対策で 事例集を作成 東北地方整備局

国土交通省東北地方整備局は、クマの出没が頻発している状況を受け、工事現場など屋外の作業現場向けに、クマ対策の事例集を初めて作成しました。

事例集は、同整備局発注の公共工事現場で実施している取組みを中心に、計53事例をまとめています。土木工事は緑が豊かな現場が多く、クマに遭遇するリスクも高い分、受注業者ごとにさまざまな工夫に取り組んでいます。地方公共団体発注の公共工事や民間工事にも横展開するため、写真付きで1冊に集約しました。

たとえば遭遇した際に有効なクマ撃退スプレーについては、ただ携行するだけでなく、訓練を行っている様子を紹介しました。スプレーの噴射距離を体感させ、スムーズに取り出すための方法を教育することで、万が一の場合に確実に使用できるようにしています。

クマを寄せ付けないための工夫も解説しています。クマ鈴やホイッスル、大音量スピーカーなどで人間の存在を知らせている事例を紹介しました。唐辛子粉末を練り込んだ線香を携行したり、クマの天敵であるオオカミの尿を設置したりすることも有効だとしています。 同整備局企画部は、「事例集の作成は、昨年度までは考えられなかった。被害の未然防止への取組みが今後も必要になってくる」と状況を危惧します。事例集の内容は、今後も随時更新していく予定です。


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2025年12月23日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月27日(土)~1月4日(日)まで年末年始休業とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしますが、宜しくお願いいたします。

2026年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。


カテゴリー:お知らせ



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