今年の賃上げ事情
2025年04月01日
石破首相が自民党所属の新人議員15人に10万円の商品券を配っていたことが発覚しました。合計すると150万円にもなるわけですが、石破総理は「ポケットマネーで用意したもので法律に抵触しない」と釈明しましたが、この問題が収束の兆しを見せません。法律に触れなければ問題ないという主張をする人がいますが、そういう釈明はやめるべきだと思います。今は、「法的な判断」よりも「社会的な判断」が優先されるようになっているからです。裁判をしているわけではなく、人としてどうなのかということが大事なんですね。それにしても、いったい石破総理のポケットにはいくらのお金が入っているのでしょうね。
内閣府が行った「大人のお小遣い」の家計調査によると、世帯単位のこづかいの金額がこの20年でおよそ7割も減っているそうです。働き手が1人の世帯では2003年に年間で24万8千円だったのが2023年に7万2千円になり、働き手が2人以上の世帯でも35万円から9万1千円に減っています。ただ、やはり気になるのは「お父さんのお小遣い」ですね。少し前になりますが、新生銀行が行った「2018年サラリーマンのお小遣い調査」によると、男性のお小遣いの平均額は39,836円です。これは平均なので、年代別に見ると50代と20代が4万円台で、30代と40代がほぼ横並びで35,000円を超える程度です。ただ、その使い道は「昼食代」「スマホ料金」がトップにくるようなので、自由に使えるお金はほとんどないことになります。そんな中での商品券問題というのは、あまりにも社会の現状とかけ離れた感覚ではないのかということになりますね。
今年の賃上げ相場に注目が集まっています。昨年の労使交渉では、経団連・大手企業の妥結結果は5.58%という記録的な賃上げとなりました。中小企業の従業員300人未満規模でも、4.45%と前年実績を1%以上も上回る結果でした。ただ、中小企業の賃上げ率は大手企業を下回っていて結果として大企業との格差がさらに広がったことや、円安による好業績が反映された大企業の賃上げと違い、中小企業のなかには、業績の裏付けが伴わない「防衛的な賃上げ」を行わざる得なかったケースも多くあるといわれています。中小企業の厳しい状況は来年度も簡単には変わらないと思いますが、今年も中小企業の賃上げ率は昨年同様の4%半ばを予想されていて、金額になおすと1万円を超える金額になります。
このように昨年あたりから賃上げの潮目が変わったといえますが、この賃上げも「コメ」に消えているようです。お米の価格が歴史的な上昇を記録していますが、その消費量は減っていません。総務省の家計調査によると、2人以上世帯についてのひと月のコメの購入量は3.8㎏となっていて、前年同月の3.5㎏より増えていたそうです。家計のコメ支出は1世帯あたり2383円で、前年の1.7倍となっていて、価格上昇分だけ支出額が増えていたそうです。米の小売価格が前年の2倍程度まで上昇しても買い控えは起こっていないため、賃金の上昇分は日々の食費に消えている家計が多いといえそうです。
最近の賃金の話題では大企業の新入社員の初任給の大幅なアップがあります。日本は大企業を中心に新卒一括採用を行い、長い年月をかけて基幹人材を育てることをしてきましたが、人手不足により初任給が高騰しているため、これまでのような長い時間をかけて人材を育てることは難しくなっているといえます。「高い初任給をもらうのは最初こそいいが、数年後に企業、社員ともにとんでもないことになるのは目に見えている」という見方もあるようです。
特定社会保険労務士 末正哲朗
◆最新・行政の動き
通達には新たな判断基準を掲載しました。同基準は介護休業について、障害児・者や医療的ケア児・者も含め、常時介護を必要とする者を介護するための休業と定義。「常時介護」に関するチェック項目には「外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある」、「周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れなど日常生活に支障を来すほどの認知・行動上の課題がある」などを盛り込みました。
項目に関する要件を満たし、その状態が継続すると認められる場合、または、介護保険制度の要介護状態区分が「要介護2」以上の場合、常時介護を必要とする状態に該当するとしました。
改正通達と新たな判断基準は、4月1日から適用されます。
◆ニュース
熱中症対策を義務化へ 報告体制整え重篤化防ぐ 厚労省
厚生労働省は、労働安全衛生規則を改正し、作業場所での熱中症の早期発見や重篤化を防ぐための対策を事業者に罰則付きで義務付ける考えです。熱中症による死亡災害の多くで初期症状の放置や対応の遅れがみられることから、重篤化させないための対策が必要と判断しました。公布は今年4月上旬、施行は6月1日を予定しています。
改正安衛則では、熱中症による健康障害が発生する恐れのある作業を行わせるときは、作業従事者に熱中症の自覚症状がある場合や、熱中症の恐れがある作業従事者をみつけた場合にその旨を報告させるための体制を整備し、関係者に周知しなければならないものとします。
さらに、作業中止、身体冷却、医療機関への搬送など熱中症の症状の重篤化を防ぐために必要な措置の内容およびその実施手順をあらかじめ定め、関係者に周知するよう義務付けます。
副業は月35時間まで 通算で上限規制超過防ぐ 大光銀行
㈱大光銀行(新潟県長岡市)は3月から、私傷病休職者などを除く全職員に対し、他社に雇用される形も含めて、副業を認めます。副業先での労働時間については、36協定で時間外労働の延長時間を月45時間と定めていることを踏まえ、「月35時間」を上限としました。通算して月80時間以内に収まるようにすることで、上限規制を超える時間外労働の発生を防ぎます。
労働時間の管理方法は、厚生労働省の「管理モデル」を採用しました。副業先での時間外労働に時間制限があること、所定労働時間内であっても、割増賃金の支払いが必要であることについては、職員から副業先に伝えてもらいます。副業開始に当たっては、人事部長の許可が必要となります。
副業として想定しているのは、中学校の部活の顧問などの地域貢献活動や家業、役員就任など。副業を認める背景には「定年を迎えるシニア社員にセカンドキャリアを探してほしい」(同行人事担当者)との狙いもあります。
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