退職代行サービス
2025年05月01日
最近では、知られてきた退職代行業者ですが、労働者からの依頼を受けて、退職の意思表示をその労働者の代わりに行います。本来、退職の意思表示のような行為は社員本人の代わりに行えるのは弁護士だけです。弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことは、いわゆる「非弁行為」として弁護士法で禁止されているからです。つまり退職代行業者は、この非弁行為に該当しないように、あくまで退職の意思表示をしたのは労働者本人で、退職代行業者はそれを「使者」として勤務先に電話しただけという形をとります。「従業員の〇〇さんが退職したいと言っているので、代わりにお伝えします」と伝言する感じです。代行業者は、ある社員が退職の意思があること、今日から有給休暇の取得を申し出ることの「連絡」をするわけです。このように「代わり」なので、電話を受けた会社がまずしなければならないことは、労働者本人に直接連絡をとり、労働者本人の意思確認を行うことです。退職代行業者から労働者本人には連絡しないよう言われても拘束力はありません。ただ、ぼくの経験上、会社側の反応は「そこまでして退職したいならもういい。そんな高いお金を支払わないで、直接、言ってくれたらいいのに…。」となります。たしかにどうしても退職を受け入れてもらえず辞めさせてくれないという話も聞きますし、その結果、鬱や病気になるくらいならこういったサービスを使うことがあってもよいのではと思いますが、ネットでは「こうやってカジュアルに『とりあえず嫌なら辞められる』世界を作ってろくなことはない」という意見もあります。
最近は退職代行会社である民間事業者に加えて、弁護士や合同労組が運営するものが参入しています。弁護士は法的な交渉を行う「代理」となることができますし、労働組合は団体交渉権があるので、退職に関する条件等について交渉することができる点が退職代行会社と違うところです。さらに、「給与アップ代行」というサービスを提供する弁護士も現れています。転職を決意したときにその退職前に年収アップの交渉を弁護士にしてもらうというサービスで、年収アップすれば転職はせず、アップしなかったらそのまま退職代行へ移行するそうです。ぼくならそんな人とは一緒に働きたくないです。
日本において仕事に関する価値観は大きく変化したといわれます。今の20~30代前半は40~60代の世代とは異なる仕事観を持ちます。上の世代の管理職からは「下手なこと言ってハラスメントと問題にされてはたまらないので、関りは控えている」とよく聞きますが、若手社員にアンケートをとると9割近くが「距離感が縮まり、話しやすくなる」ので「非公式コミュニケーションは必要」と回答していて、「業務中の雑談」を求めている若手社員が多いことが判明したそうです。ただ、その結果を知った40~60代の経営者や管理職が自分の感覚でコミュニケーションを取ろうとすると若手側は圧力を感じたり、「この職場は合わない」と思ったりすることになるのでしょうね。
特定社会保険労務士 末正哲朗
◆ニュース
厚労省・カスハラ対策 主な行為と対応示す スーパー向け手引き作成
厚生労働省は、スーパーマーケット業界における代表的なカスタマーハラスメント行為・類型と、その対応例を示した「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)」を作成しました。とくによく見られる行為の1つとして、「継続的な、執拗な言動」を挙げ、店舗内や電話で不合理な問合せが2回寄せられたら注意し、3回目には今後対応できない旨を相手に伝えるべきとしました。
カスハラ行為への対応例は、企業への実態調査やヒアリング、業界団体や労働組合との検討を経てまとめました。
同一顧客から不合理な問合せが続いた際、担当者が今後対応できない旨を伝えても繰り返される場合は、社内で共有して会話内容を記録するとともに、対応窓口を一本化して管理職に引き継ぎます。管理職は、行為者に対し、迷惑であることや今後は連絡をやめてもらうことを伝えるとしました。その後も繰り返された際には、威力業務妨害罪も視野に入れ、警察への通報を検討します。
大声で怒鳴るなどの威圧的な言動や、侮辱、暴言といった精神的な攻撃などへの対応も示しました。
応募書類の熟読を 面接では「共通点」探る 中途採用ガイドブック
東京商工会議所江戸川支部は、近年の中途採用面接で押さえるべきポイントをまとめたガイドブックを作成しました。企業側が求職者を一方的に選別する形式は「時代遅れ」と指摘。面接官が応募書類を事前に読み込み、「前職ではこういう苦労や不満があったのでは」と想定したうえで、面接においては、求職者のニーズと会社が今後任せたい仕事との共通点を探っていくことが有効としました。
転職への抵抗感がなくなっている近年では、面接時点では応募先への志望度が高くない状態の求職者が増加しているため、志望度の高さを尋ねる面接は矛盾していると解説します。志望理由や入社意欲ではなく、「転職活動のきっかけ」や「転職で実現したいこと」を聞いた後に「自社に興味を持った理由」を尋ねることで、求職者の求める職場像が見えやすくなるとしました。
面接の前段階となる、求人票を改善する方法も紹介しています。未経験者からの応募も可能とする場合は、求職者の不安を減らす情報を掲載することを求めました。例として、教育制度の有無や、未経験者の採用実績を挙げています。
◆送検
奈良労働基準監督署は、教員36人に対し、時間外労働の割増賃金の一部を期日までに支払わなかったとして、学校法人と同法人校長、事務局長、事務長の計1法人3人を労働基準法第37条(割増賃金)違反の疑いで奈良地検に書類送検しました。部活動などで時間外労働を行わせた際には、「手当」と称する少額を支給していたといいます。
不払いだったのは、令和6年10月分の時間外・休日労働の割増賃金の一部で、総額129万9719円に上ります。本来支払うべき総額は145万5219円でしたが、実際には15万円程度しか支払っていませんでした。
同労基署は5年12月、同法人に定期監督に入っています。法定時間外に行われた部活動や生徒指導、講習の実施などの業務に対して「手当」を支給していましたが、割増賃金を計算していませんでした。本来支払うべき金額に届いていない事実が発覚し、改善を指導しました。6年11月に再度調査したところ、「手当」の金額は引き上げていたものの、依然として支払うべき金額に届いていない実態を確認。遵法意識に欠け、改善がみられないとして、送検に踏み切りました。
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