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『いつの間にか』富裕層

2025年07月01日

年金制度改革法が6月13日に参院本会議で可決、成立しました。この改革法の最大のポイントは厚生年金の積立金を使っての「基礎年金の底上げ」です。改革法には、4年後の財政検証で将来的に基礎年金の水準が下がりそうな場合には、厚生年金の積立金と税金を使って底上げすることが盛り込まれています。この底上げが行われると、実際の受給額は、男性が62歳、女性は66歳まではプラスになる一方で、現在63歳以上の男性や67歳以上の女性は、今よりマイナスになってしまうようです。国民全員が受ける基礎年金は、現状のままだと約30年後に3割下がるといわれています。この改革法では氷河期世代をはじめとする現役世代の年金額を底上げして救済することが狙いのように言われていますが、将来的に基礎年金が減ることに対しての底上げなので、現在の給付水準よりも増額されるというわけではないようです。

バブル経済崩壊後の1993年から2004年まで続いた就職難の時期は就職氷河期とよばれます。その時期に就職活動をした「就職氷河期世代」は、大卒であれば大体43歳~54歳の人たちが該当して、全国で1700万人以上いるとされます。この世代は、非正規雇用や低賃金で働く期間が長く十分な資産形成のないまま将来、低年金に陥るのではと懸念されています。現役時代の低賃金と少子高齢化に伴う年金の減額調整の影響で、この氷河期世代が老後に貧困化するリスクが高まっているといわれている一方で、新しい富裕層が拡大しているようです。

野村総合研究所(NRI)の推計によると、日本において2023年時点で純金融資産を1億円以上保有する「富裕層」(純金融資産1億円以上5億円未満)と「超富裕層」(純金融資産5億円以上)は合わせて165万世帯になっていて、準富裕層(純金融資産5000万円以上1億円未満)といわれる世帯数も含めて2013年以降増加傾向にあるそうです。これまでの富裕層といえば企業のオーナーで、いわゆる資産家のことを指していたのではないかと思いますが、最近の社会経済環境の変化に伴って、新たなタイプの富裕層が現れ始めたといわれます。会社員など一般的な給与所得者であっても、近年の株価上昇を受けて資産価値が増加し、結果として富裕層入りした世帯が増えていて、NRIはこの世帯を「いつの間にか富裕層」と呼んでいます。この人たちに共通する特徴は企業オーナーや地主といった従来型の富裕層ではなく、一般の給与所得者でいわゆる「普通の人」、富裕層となった後でも、今まで通りの生活を変えることなく、お金があっても「数十万のゴルフセット」「家族との海外旅行」「車を少しよいものに買い替える」などちょっと上の贅沢を楽しむ人たちです。

また、女性の社会進出に伴って現れたのが「パワーファミリー(世帯年収1500万円以上の共働き世帯)」です。夫婦ともに大企業に勤めており、20~30代は子育て・教育の支出や住宅ローンで苦労するそうですが、その後は昇格・昇進により夫婦を合わせた世帯年収が大幅に伸びて、特に都市部においては最終的に世帯年収3000万円に達し、50歳頃には富裕層となるポテンシャルがあるといわれます。また、地方においても世帯年収1000万円以上で60歳前後に富裕層となる人たちがいるということです。テレビでは、普通に売られているお米よりも安い備蓄米を数時間もならんで買ったというニュースが溢れていますが、この差はなんなのでしょうね。

就職活動を行う時期に求人がほとんどなく、多くが非正規雇用にとどまったことで、安定した収入を得ることが難しく、社会的な不安定さが長期にわたって続いた氷河期世代ですが、現在でも大多数が不安定な雇用状況に苦しんでいるといわれています。そもそも氷河期世代(1970年~1982年生)には、日本の第二次ベビーブーム世代(1971年~1974年生)の人たちが含まれていて、人口のボリュームが多い世代です。政治的にもこうした世代への支援が重みをもってきたということなのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

協議ない決定違法に 下請法の改正法案が成立

 協議を適切に行わない代金額決定の違法化などを盛り込んだ、改正下請法が通常国会で可決・成立しました。一部の規定を除き令和8年1月1日に施行します。政府は改正法により、適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図るとしています。

 改正法では、下請事業者から価格協議の申出があったにもかかわらず、親事業者が協議に応じなかったり、必要な説明をせずに一方的に代金を決めたりする行為が新たに禁止されます。労務費などのコストが急上昇するなかで、協議を経ない価格の据え置きやコスト上昇に見合わない一方的な代金決定を防ぐのが狙いです。

 衆議院の附帯決議は、改正法施行に当たり、違反があった場合は迅速・的確に対処し、どのような行為が違反となるのか具体的な基準を示すよう求めました。併せて、協議が形骸化しないための必要な措置も検討すべきとしています。

 改正法はそのほか、手形払いの禁止、下請法適用の線引きに従業員数基準を追加、運送委託を対象取引に追加、用語について「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」に改める――などを内容としています。従業員数基準の新設について、同附帯決議は今後も見直しを検討し、新たな手段による適用逃れが起きないよう中小事業者との連携強化に努め、発生した場合には速やかに対策を講じるよう要請しました。

◆調査

半数超が管理職志向あり 2025年度新入社員意識調査

 東京商工会議所は、2025年度の新入社員857人を対象に、仕事に対する意識を調査しました。入社後、管理職をめざしたいかどうかについては、「めざしたい」が59.0%となりました。理由を単一回答で尋ねたところ、「仕事を通じて、自分自身を成長させたい」が44.9%で最も高く、次いで「やりがい・達成感を感じたい」が17.2%となっています。

めざしたくない理由については、「自分には適性がなさそうだから」が最も高く、42.2%でした。「仕事よりもプライベートを大切にしたい」が19.1%、「仕事の責任が重く大変そうだから」が13.1%となっています。


カテゴリー:所長コラム


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