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学び直し

2023年07月04日

先日、お酒を飲んでタクシーで家に帰るときの話です。少し走ったところで、運転手さんがかなり高齢の方だったので、「交通系のカードは支払いに使えますか?」と聞いたところ「使えなくはないけど…」という返事だったので、「クレジットは大丈夫ですね。」と確認をして家に着きました。運転手さんにクレジットカードを渡すと、たどたどしい手つきで機械操作をすすめています。すると「お客さん、暗証番号を教えてください。打ち込むので。」と言われたので、「いやいや、それはありえないでしょう!」と断りました。押し問答が続いたため、文句を言おうと、ふとタクシー会社はどこなのだろうと車内を見回すと個人タクシーであることが分かりました。これでは文句を言っても仕方がないと思い、一緒に機械操作をしてなんとか支払いを済ませタクシーを降りました。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、マーケティングでは、「お客様は自分の基準で一番を決める」、そこにはとても重要なヒントが隠されていると言います。お客様がモノを買うときは、「主観的に」自社を一番だと思ってくれるかどうかが必要であって、客観的に一番である必要はありません。例えば「日本一高い山は?」というと客観的な基準ですが、「日本一の百貨店はどこ?」になると主観的な基準に変わります。お客様にとっての「主観的一番」になれる要素をいかに見つけ出せるかどうかがビジネスで成功するために大変重要な要素になるということです。ぼくは、これから個人タクシーに乗ることはやめようと思いました。お客様はいつも勝手なものです。

「最近の多くの新入社員は、上場企業でも3年で辞めるつもりでいるらしい」という話を聞きました。企業は、新入社員に対して長く働いて欲しいと思って採用しているはずで、嫌ならいつでも辞めていいと思っている企業などありません。それは、1992年にノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカー教授が「企業は新入社員にコストをかけて教育訓練(人的資本投資)を行い、それにより高まった能力でその後その企業に貢献してもらうことで投資コストを回収するからである。」という人的資本理論にあります。そして多くの企業はマジメに人的資本投資を行う上で、社員の定着を図るのは当然ですし、そのために長く勤めるほど得をするような年功賃金や定年退職金は経済合理性にかなった制度であるということは労働経済学の実証分析で繰り返し確認されているとこれまではいわれてきました。しかし、最近の国が考えていることは少し違うようです。(参照:週刊社会保障N3216「時事評論」)

日経新聞(6月6日)で「終身雇用前提の退職金を見直し」と退職金税制の改正が報じられています。現在、退職一時金の税金は同じ会社に長く勤めるほど優遇されます。政府は、この長く勤めるほど優遇される税制の是正を目指すとし、また企業には勤続年数が短いと退職金を支払わない慣行をなくすように促すとともに硬直的な労働市場を見直して成長産業に人材が移動しやすくするそうです。

最近では、リスキリングの取り組みを検討する企業が増えてきていますが、リスキリングという言葉が先行していて、そもそもリスキリングはなぜ求められているのか、リスキリングとは何かを理解していない人も多いと思います。リスキリングとは時代の流れを見据えて今後必要とされるスキルや知識を新たに獲得する(企業がさせる)ことです。仕事の進め方が大きく変化したり、社会や産業構造が変化・進展するなどで、既存の仕事が減少または消滅して新しい仕事が作り出されることが予想されています。この変化に適応していくために新たなスキルを身に付け、今後のビジネスモデルの変化や技術革新に対応する準備をすることがリスキリングです。また、もうひとつ社会人の学びとして注目されているのが、リカレント教育です。リカレント教育は、学校を卒業して社会人として働いた後、自分が必要とするスキルを学ぶことをいいます。リスキリングは、主に企業側からの社員に対する教育の提供になりますが、リカレント教育は自らの希望や考えで新たなスキルを身に付けていくことに違いがあります。

岸田首相は、リスキリング、日本型職務給の導入、成長分野への円滑な労働移動の3つを「三位一体の改革」として進めるといいます。大手企業に就職すれば一生安泰という時代が終わり、生涯学び続けることでキャリアが充実し、人生が豊かになる。自分のキャリアは自分で描くことが、これから重要視されます。

(参照:ビジネスガイド2023.7「中小企業版「リスキリング」取り組みステップ」)

特定社会保険労務士 末正哲朗

身近な労働法の解説 ―LGBTとSOGI―

5月17日は「多様な性にYESの日」(国際的には「LGBT嫌悪に反対する国際デー」)です。また、6月は「プライド月間」(LGBTQ+の権利を啓発する活動が世界中で開催される月)です。

今回は、労働施策総合推進法に基づく指針における性的指向・性自認に関するハラスメント防止について解説します。

1.LGBTとSOGI

(1)LGBT・LGBTQとは

性的指向としてのレズビアン(女性同性愛者)・ゲイ(男性同性愛者)・バイセクシュアル(両性愛者)と、性自認としてのトランスジェンダー(心と出生時の性別が一致しない人)の頭文字を取った言葉です。クエスチョニング(性のあり方を決めない人・決めたくない人)もいます。

(2)性的指向・性自認(SOGI)とは

恋愛感情または性的感情の対象となる性別についての指向のことを「性的指向(Sexual Orientation)」、自己の性別についての認識のことを「性自認(Gender Identity)」といいます。この頭文字であるSOGI(ソジ・ソギ)は、すべての人が持つものです。LGBTは当事者のみが対象で、SOGIはすべての人が持っている属性です。

男性に惹かれる人・女性に惹かれる人・どちらにも惹かれる人・どちらにも惹かれない人と、恋愛対象はすべての人それぞれです。また、「自分は男性(女性)」と思う人もいれば、「どちらでもない」「どちらでもある」と思う人もいます。身体的な性とSOGIの組み合わせは実に多様で、また、それぞれの性(身体・指向・自認)にはグラデーションがあり、時に揺れ動くものでもあります。

2.労推法(パワハラ防止)におけるSOGI

均等法(セクハラ防止)のほか、職場におけるパワハラ6類型の中で、該当するまたはしないと考えられる例のうち、SOGIに関連して次のようなものが挙げられています。

神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

該当すると 考えられる例

人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む。

●個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

該当すると 考えられる例

労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する。

該当しないと 考えられる例

労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報(上記)について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促す。

※SOGIに関する言動やSOGIに関する望まぬ暴露(アウティング)は、職場におけるパワハラの定義を満たす場合には、これに該当します。

SOGIに関する侮辱的な言動は、特定の相手だけではなく、周囲の誰かを傷つけます。自らのSOGIについて他者に伝える「カミングアウト」をしていない人がいることに留意しましょう。

自身を含めたすべての人の人権として捉え、尊重することが大切です。


カテゴリー:所長コラム


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