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お金のはなし

2023年05月01日

長くお世話になっているとある行政の方から異動のご挨拶をいただきました。その際に、コロナ禍での雇用調整助成金の不正受給の調査を今後、人員を増加するなど強化していくそうだと話されていました。令和4年12月において、その雇用調整助成金の支給決定件数は、5万件を超え、その額は330億円に達しています。一方では、石川県内で旅館を経営する会社が、実際には働いている従業員を休ませているように見せかけるなど、ウソの助成金申請により、8700万円あまりを不正に受け取っていたことが判明したため、労働局はこの会社に対して助成金の返還を命じました。そんな中、厚生労働省は、雇用調整助成金を不正受給した企業名を公表する際の基準を提示することで、自主的な返還を促すようです。厚労省は、公表対象を不正額が100万円以上の場合、不正を自主申告して、返還命令後1か月以内に全額返納すれば公表しないとしました。ただ不正受給の中でも悪質なケースは刑法上の詐欺罪として立件されるケースもあるので、軽い気持ちで…なんていう理由は受け入れられるものではありません。弁護士事務所の中には、ホームページ上で「雇用調整助成金を不正受給してしまった方へ」として、刑事告発を回避するための相談を受け始めるところも出てきています。

 松下幸之助さんは、素直な心になることをとても大切にしたそうです。朝起きると神棚に向かって「今日一日、素直でありますように」とお祈りし、そして夜寝る前には「今日一日素直であったかどうか」を反省していたといいます。松下幸之助さんは、「素直な心とは、寛容にして私心なき心、広く人の教えを受ける心、分を楽しむ心であります。また、静にして動、動にして静の働きのある心、真理に通ずる心であります。」と定義しています。聞いた話ですが、松下幸之助さんは、「最近、素直な心になっていない」として「素直な心になるために」(PHP研究所)という本を書いたそうです。それがなんと80歳を過ぎてのことだというので驚きます。

 その本の中に、「素直な心というものの内容の一つには、自分だけの利益や欲望にとらわれることのない、いわゆる私心にとらわれない、ということがあげられると思います。」とあります。そもそも私利私欲というものは誰にもあるわけですが、幸之助さんは「問題は、その私心にとらわれ、私利私欲の奴隷になってはならないということです。私心にとらわれて物を考え、事を行うということになると、やはりいろいろと好ましからざる姿が起こってくると思うのです」「またなにか一つの商売をする場合でも、私心にとらわれて商売をしたならば、他に損害を与えても自分だけ儲けたらいいなどといった姿に陥り、世間に大きな迷惑を与えかねません。そしてそれはやがて自分自身の信用を傷つけ、みずから墓穴を掘ることにもなりかねないでしょう」「私心にとらわれた姿はたいていの場合、自他とものマイナスというか不幸に結びついているように思います」と書いています。やはり商売というのは、多くの人々に支えられて行うものなので自分だけ良ければいいという考え方は社会に受け入れられないのでしょう。自分とお客様の利益を同時に考えてよりよいサービスの提供を心がけるところに商売の発展があり、本当に世の中の役に立つ商売が営まれるものだと松下幸之助さんは言われていて、そういう私心にとらわれない姿を生む心というものが、とりもなおさず、素直な心というものだそうです。では、“素直な心”を養おうとする場合にはどうしたらよいのでしょうか。幸之助さんは、「やはりなんといってもまず、素直な心になりたい、というつよい願いをもつことが必要だ」といいます。そして「毎日、自分の行いを反省して、改めるべきは改めてゆくよう心がけることが大切」だそうです。稲盛和夫さんも「『他に善かれなし』と願う邪心のない美しい思いにこそ、周囲はもとより神様も味方し、成功へと導かれるのです」と話されています。 経営コンサルタントの小宮一慶さんは「お金はないと不自由だが、魔物でもある」と師匠に教えられたそうです。事業がうまく運びお金が入ってくると、しっかりと生き方の勉強をしていない経営者は、お金の魔力に負けてしまって、正しい判断が出来なくなると言います。今さえよければいい、自分さえよければいい、お金さえあればいいという考え方でやっている経営者が躓いてしまう姿をたくさん見てこられたということです。本当に、お金はコワいですよ 。

特定社会保険労務士 末正哲朗  

◆最新・行政の動き

厚生労働省は、雇用調整助成金のコロナ特例を不正受給した企業などの公表基準を明らかにしました。

基準では、不正受給に伴う支給取消額と、不正を理由に不支給となった支給申請額の合計額が100万円未満の企業は、公表対象外としました。ただし、不正の態様・手段、組織性などから、管轄労働局長がとくに重大・悪質と判断した際は公表します。

合計100万円以上の企業は原則として公表しますが、労働局の調査前に自主申告を行い、返還命令後1カ月以内に全額納付すれば、とくに重大・悪質なケースを除き、公表しないとしました。

雇調金と緊急雇用安定助成金の不正受給は、昨年12月末までの累計で1221件、約188億円に上り、うち約129億円が返還されました。休業実態がないにもかかわらず休業したように装うケースや、休業手当を支払った事実がないのに支払ったとするケースなどがありました。

このため、厚労省は新たな公表基準を公開し、自主的な申告・返還の申出をしやすい環境を整えることとしました。不正受給や不適切な受給の是正に向けて、雇調金を受給した企業へ自主点検を呼び掛けていく考えです。

◆ニュース 

メリット制の対象へ 5類移行後に発病で保険料増加も

 メリット制は、個々の事業ごとに、労働保険給付の多寡により、給付があった翌々年度以降の保険料を増減させる仕組みです。新型コロナに関連する給付は、すべての業種においてメリット制の対象外とし、保険料に影響を与えない特例を設けていました。Q&Aでは、移行前に労働者が発病した場合は、メリット制による保険料への影響はないと指摘。一方、移行後の発病は影響があり得るとしました。

 医療従事者や介護従事者以外の労働者が感染した場合の労災保険の取扱いについては、5類への移行後も変更しない方針を示しました。感染経路が判明し、感染が業務によるものであれば給付対象とし、感染経路が判明しない場合は個別事案ごとに調査し、給付の対象となるか否かを判断します。

適法な残業代といえず トラック運転者の事件で審理差戻し

残業の多寡によって賃金総額が変わらない仕組みの適法性が争われた裁判で、最高裁判所第二小法廷は、一部を適法な残業代と認めた二審判決を破棄し、審理を福岡高等裁判所に差し戻しました。適法な残業代支払いというためには、割増賃金全体が残業の対価になっているかを検証すべきであり、その点に関する審理が不十分と判断しました。

裁判は、トラック運転者が平成27年12月から2年分の残業代支払いを求めたもの。会社は27年5月に賃金総額をあらかじめ決め、賃金総額から基本給を引いた額を「割増賃金」として支給する賃金制度を採用。割増賃金はさらに「時間外手当」と「調整手当」に分かれ、時間外手当は基本給を通常の労働時間の賃金として、労働基準法所定の方法により算出した額、調整手当は割増賃金から時間外手当を引いた額としていました。残業が増えると時間外手当が増えるものの、調整手当がその分減るため、結果的に残業の多寡で賃金総額が変わらない仕組みとなっていました。

二審は時間外手当を適法な残業代支払いと認める一方、調整手当は適法と認めていませんでした。最高裁は時間外手当を適法な残業代と認めた二審判決を破棄し、審理を福岡高裁に差し戻しています。


カテゴリー:所長コラム


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