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GDPの見方

2022年06月03日

タクシーの運転手さんに「最近の景気はどう?」と話しかける方も多いと思います。内閣府の統計調査においても、タクシー乗務員の方は「地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々」として、調査の対象になっています。「街角景気」と言われるものですが、足元の景気動向を把握するために、2000人からアンケートをとっています。タクシーの運転手さんや店頭で商品を販売している人などが対象(家計関連産業に従事する人7割、人材派遣など雇用関連1割)だそうです。先日、出張先でタクシーに乗る機会があり、週末だったので運転手さんに「お忙しいでしょうね。」と声を掛けたところ、「そうでもないよ。タクシーは景気ウオッチャーのように以前は言われていたけど、コロナになってお客さんのタクシーの使い方が変わってしまって。ちょっとタクシーに乗ろうかって1000円の料金を支払ってくれる人がいなくなってしまった。世の中は、1000円を支払ってタクシーに乗ることがムダっていう価値観に変わってしまったから。われわれの言うおいしいお客様はいなくなったねぇ。」と話していました。コロナ禍で、飲みに行っても一次会で帰ったり、家族葬が多く受入れられていたりすることが当たり前のようになりましたが、コロナ後も元に戻らないものがはっきりしてきたようです。

大学4年生の就職活動が始まっています。最近は、新入社員の初任給が引き上げられたと聞きます。厚生労働省が今年の3月に公表した「賃金構造基本統計調査」によると、2022年入社の新入社員を対象にした調査によると、平均額は「23.6万円」だったようです。ある調査によると、もっとも多かったのは「21万円」(17.5%)で、次いで「24万円」(14.0%)、「23万円」(12.3%)となっています。しかし、新入社員の給与が上がる一方で、一般労働者の賃金は8年ぶりに減少しています。この私たちの給料に密接な関係があるといわれる指標が「GDP(国内総生産)」です。GDPとは国内の企業の中で作り出された価値のことで、それをすべて足し合わせたものをいいます。日本では、名目GDPのうち約50%が給与として支払われているため、名目GDPは私たちの給与の源といわれています。ということは、働く人一人あたりの名目GDPが増えない限り、私たちの給与も増えないことになります。日本のGDPは、約5兆ドル(2021年 約541兆円)です。ちなみに世界第1位のアメリカは約21兆ドル、第2位の中国は約15兆ドルです。もう一つ、今の日本の名目GDPで知っておくべきことは、バブル崩壊直後の1991年度の水準(約480兆円)を少し超えているに過ぎないということです。よくいわれることですが、この国のGDPは、バブル崩壊以降、30年もの間、ほとんど伸びていません。ちなみに、アメリカは当時のGDPが6兆ドルでしたから、約3倍伸びているし、中国に至っては10倍以上も伸びたことになります。

日本のGDPの55%程度は個人消費(家計の支出)が支えていると言われていて、個人消費がもっとも大きなウエイトを占めています。つまり、私たちの消費次第でGDPが落ち込んだり、上昇したりするわけですが、なぜ日本の個人消費はこんなに長い間、弱いままなのでしょうか。これには3つの理由があると言われています。まず、1つ目は、私たちの給与が上がりにくいことです。これは多くの方が感じていることですね。次に、先行き不安が挙げられます。日本は、超高齢化により公的年金の先行きに不安を感じている方が多くいます。また、国民の医療費の負担も増加傾向にあります。なので、給料の少ない若年層だけでなく、比較的お金に余裕のある高齢者層もますます消費をしないという状況にあります。最後の3つ目は、社会全体に大きなトレンドの変化が起こっていると言われています。特に若い人の価値観が大きく変わっていて、例えば、今の多くの若い人たちは車を持つ必要はないと考えているし、車を持つにしても高級車でなくてもいいと考えています。メルカリなどで中古品の取引が増えており、今後も節約志向が続くとされています。

最後に、日本の消費の低迷が続いていると新聞が報じています。総務省が発表した2021年度の家計調査では2人以上世帯の1か月の消費支出が前年度比1.6%増と増えたもののコロナ後の落ち込みをカバーするまでには至っていません。消費の全体像を把握するデータである消費動向指数でも21年度においてもコロナ前の19年平均を超えた月は1月もありませんでした。世界では個人消費がコロナの影響から抜け出す国が多い中で、日本だけが消費低迷のトンネルから抜け出せない状況が続いているようです。(参考:「小宮一慶の『日経新聞』深読み講座」日本経済新聞社)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

厚労省は、今年10月に施行される短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、日本年金機構に事務の取扱い上の留意点を通知しました。

今回の適用拡大では、週の所定労働時間が30時間未満の短時間労働者の社会保険加入について、対象となる企業規模が従来の「常時500人超」から「常時100人超」に拡大されます。

併せて、継続1年以上としていた労働者の雇用期間要件が廃止されます。週の所定労働時間などが正社員の4分の3以上の労働者の場合と同様に、雇用期間が2カ月を超える見込みがあれば加入対象となります。

同通知などでは「常時100人超」について、同一法人事業所における厚生年金保険の被保険者の総数が、1年間のうち6カ月以上100人を超えることが見込まれる場合に該当するとし、70歳以上で健康保険のみ加入している労働者や、今回の適用拡大の対象になる短時間労働者を含めないとしました。

◆ニュース

意思表示の錯誤無効認める 退職届は会社が指示 東京地裁

警備会社で働いていた労働者が退職強要を受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所は退職の意思表示の錯誤無効を認め、労働契約上の地位確認とバックペイ支払いを命じました。

判決によると、同社は令和元年5月9日の終業後に労働者をビジネスホテルに連れて行き事情聴取をしました。その際、遅刻を申告せずその分の賃金を受け取っていたのは詐欺罪に当たるとの虚偽説明をし、「去る者追わずっていうのはある」などと告げ、暗に退職を促しました。

同地裁は、労働者は退職届を書かなければ警察に連れて行かれると誤信していたと指摘。意思表示は錯誤に基づくものとして、無効と判断しました。

労働者は週払いで賃金を受け取っていました。退職届の提出日から判決日まで148週経過しており、バックペイは約1050万円に上ります。

「従業員雇用」で適用 飲食店の屋内原則禁煙へ 大阪府・条例施行

大阪府では4月1日から、受動喫煙防止条例に基づき、従業員を雇用するすべての飲食店で、喫煙専用室を除く屋内の禁煙(原則屋内禁煙)が努力義務となりました。同条例は2019年から段階的に施行しており、万博開催の2025年には客席面積30㎡の飲食店に対する罰則も導入されます。

改正健康増進法では経過措置の対象となり、喫煙が選択できる飲食店の客席面積は100㎡以下で、従業員の雇用有無による規定はありません。同府は面積に応じた義務とは別に、従業員雇用店舗の努力義務規定を設けた理由を、「従業員は客より選択の幅が狭く、長時間にわたり受動喫煙に晒されるため」と話しました。

東京都の先行条例では、客席面積100㎡以下または従業員を雇用する飲食店に義務を課しました。後者に関して同府では努力義務に留まりましたが、面積に関しては全国に先駆ける厳しい規定となります。


カテゴリー:所長コラム


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