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年金改革法案とこれからの高齢者

2025年02月03日

年明けに、弊社近くの介護施設にいると思われる92歳の方から年賀状が届きました。「長い間ご無沙汰をしていました。小学校からの友達を思い出しております。春になったら会いましょう。」というようなことが書いてあります。ぼくには92歳の友達はいないし、それに名前が微妙に間違っていて、たちの悪いイタズラかと思いましたが、なんとなく間違っている名前を検索してみたところ県内の93歳の芸術家さんがヒットしました。この人に年賀状を送りたかったんだと思うと、とても大切なもののように感じて、その施設に年賀状を届けてきました。年の初めになにか良いことをしたような気持ちになりました。

日本鋼管の創業者である浅野総一郎氏は、「大抵の人は正月になると、また一つ年を取ってしまったと言い、殊に年配になると正月がくるのを恐がるが、私は年なんか忘れてしまっている。そんなことを問題にするから、早く年がよって老いぼれてしまう。この世は一生勉強していく教場であって毎年一階ずつ進んでいくのだ。年を取るのは勉強の功を積むことに他ならない。」勉強とは学問だけでなく仕事を通じて自分を磨くことで、その勉強に真剣勝負の心構えで臨むことが必要、それを積み重ねて一年に達した時、人生学の教場の一学年を卒業させてもらえる、と言葉を重ね、浅野総一郎氏はこう結んでいる。(月刊到知2024.3より)

昨年の経済財政諮問会議で「高齢者の定義を5歳延ばすことの検討」が提言されました。ようするに高齢者の定義を65歳から70歳にしてはどうかということです。さて、日本では百歳以上の高齢者が60年前と比べてどのくらい増えていると思われますか。1963年の統計で百歳以上の高齢者数は全国で153人でしたが、それが2023年には、男性1万550人、女性8万1589人で、なんと合計9万2139人になっています。60年間で約600倍に増えているんです。この数字は今後、一気に膨れ上がるといわれていて、団塊の世代が100歳になり始める2047年に50万人を突破し、2049年には65万人を超えるという予想もあります。健康寿命が延びていることもあって以前とは「高齢者」の意味が全く異なっていますが、高齢者の定義が「70歳から」になると年金制度はもちろんですが、いろいろな制度の設計に大きな影響が生じることが予想されます。

これからの通常国会で年金改革法案の提出される予定ですが、その目玉の一つが、働く高齢者の年金をカットする在職老齢年金制度の見直しです。65歳以上の高齢者は厚生年金と賃金の合計が月50万円を超えると、受け取る厚生年金が減額されますが、その基準額を2026年4月から月62万円に引き上げることで、約20万人の減額がなくなるそうです。この制度は、人手不足が強まるなかで高齢者の働く意欲をそいでいるとの指摘があるため将来的には廃止になると思われます。これから高齢者は、元気なうちは働き、働けない高齢者を助けることが当たり前になります。

80歳をとうにすぎたぼくの母ですが、高齢による両ひざの痛みですっかり外へは出歩かない生活になっていましたが、何を思ったのか両膝を手術すると言い出し、昨年末に入院しました。両膝に人工関節を入れるそうです。よほど痛かったのかとかわいそうに思う反面、年齢を考えるとずいぶん思い切ったことをするもんだと思いました。中村天風は「運命を拓く」のなかで、「活きている間に、一日一刻といえども、完全に活きることが、この貴重なる生命を与えてくれた造物主への正当な義務である。(中略)いくつになっても、いかなる場合も、自己向上を怠らないようにすること、これが自分の生命の本来の理想的な活き方なのだ。そういう気持ちを持っていると、いつまで年老いても、極めて壮健で元気よく、人並み以上の若さと溌刺さに満たされ、その生命というものは活躍してくれるのである。」といわれています。昭和の時代の考えや価値観に基づいた制度から脱して、今の時代にあった新しい生き方や仕組みを作り上げるための過渡期に日本はあるのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

「106万円の壁」撤廃 最賃引上げが背景に 社保審年金部会報告書

厚生労働省の社会保障審議会年金部会は、年金制度改革の方向性に関する報告書をまとめました。短時間労働者に関する厚生年金の加入要件から「年収106万円の壁」となっている賃金要件の撤廃を盛り込んでいます。

地域別最低賃金の引上げによって、労働時間要件である週20時間以上働いた場合に月額賃金8.8万円以上の賃金要件を上回る地域が増加している点や、就業調整を行うかどうかを判断する基準として労働者から強く意識されている点を踏まえました。

賃金要件の撤廃時期については、保険料負担が相対的に過大にならないよう地域における最賃の引上げ動向を踏まえて決定すべきとしました。さらに、障害者など最賃の減額特例対象者のうち、月額賃金8.8万円以下の短時間労働者については、本人が希望する場合に任意で加入できる仕組みとします。賃金要件の撤廃後は、50人以下の中小企業への適用拡大を進めます。その際は、十分な周知・準備期間を確保するとしました。

年金部会では、労働者の負担感を軽減できるよう、標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者が厚生年金に加入する場合に、労使の保険料負担割合を変更できる特例措置の創設についても検討しましたが、慎重・反対意見がみられたため報告書には盛り込みませんでした。今後、政府において同特例の妥当性などの検討を深める必要があるとしました。

◆ニュース

0.1%引下げを了承 7年度雇用保険料率で 労政審部会

 厚生労働省は、労使が負担する令和7年度の雇用保険料率を引き下げる方針です。6年度の保険料率である1.55%から、0.1%引き下げて1.45%とする案を労働政策審議会雇用保険部会に示し、了承されました。そのうち、使用者の料率は0.9%、労働者の料率は0.55%となります。

現行の雇用保険料率の内訳は、失業等給付充当分0.8%(労使折半)、育児休業給付充当分0.4%(同)、雇用保険二事業充当分0.35%(使用者のみ)となっています。

雇用保険部会では昨年11月以降、財政状況を踏まえて弾力的に保険料率を設定できる失業等給付充当分および育休給付充当分の7年度保険料率について検討してきました。

同年12月23日の部会で厚労省は、失業等給付充当分について、5年度決算を踏まえた直近の財政状況が引下げの基準を満たしたとして、0.1%引き下げ、0.7%とする案を提示。育休給付充当分についても、0.4%を据え置くとしました。

「67歳定年」選択可に 技術者確保へ2年延長 大和ハウス

 大和ハウス工業㈱は、豊富な経験を持つ1級建築士や1級施工管理技士を確保するため、定年年齢を65歳とするか67歳とするか選択できる制度を導入しました。すでに2022年から60歳での役職定年や収入抑制措置を廃止しているため、最長で67歳まで、報酬を維持して働くことが可能となります。

同社は23年に、65歳定年後も原則70歳まで嘱託社員として週4~5日勤務できる再雇用制度を導入しました。とくに建築士などの技術者に関しては、年齢制限を撤廃し、生涯を通じての活躍を促しています。一方、再雇用を機に報酬が半減、またはそれ以下になることから、モチベーション低下や他社への人材流出などの課題がありました。

新制度の対象は、技術系職種の大半が所属する「全国社員(転勤あり)」のコースに限定しています。現在すでに再雇用となっている社員も、来年度以降67歳を迎える者については「67歳定年」を選択して正社員に戻ることを一部認めます。よりモチベーションの高い社員に活躍してほしいとの考えから、現在週5日で勤務している者に限定しました。


カテゴリー:所長コラム


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