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正しい儲け方

2022年04月01日

「昨年11月頃から『雇調金を返します。ごめんなさい』という企業からの連絡が増えた。調べてみると全て不正受給だった。」ある県の労働局の助成金担当者の話だそうです。新型コロナウィルス感染症拡大を受けて、雇用を守るための「雇用調整助成金(雇調金)」ですが、当初の予定されていた支給申請期間が大幅に延長され、主な財源となっている雇用保険料の積立による資金はほぼ底をついたといわれていますが、雇調金を不正受給していたと自ら労働局に申告し、自主返還する企業が相次いでいるそうです。大手旅行代理店の補助金の不正受給発覚や、国会議員事務所が助成金の主旨と異なる受給を行ったと社会問題になったことが要因とみられています。あまり知られていないことですが、不正に助成金を申請した場合、その助成金を受給していなくても、申請したことをもって不正受給となってしまうので注意が必要です。厚生労働省は「悪質な場合は刑事告発をすることもある」としていて、社会的制裁を受けることになり、会社は受給した金額以上に大きな代償を支払う羽目になります。

「日本資本主義の父」といわれ明治から昭和にかけての産業界をリードした渋沢栄一が、2024年から発行される新1万円札の肖像となることもあって、今、世の中は渋沢栄一ブームとなっています。その渋沢栄一が、みずほ銀行、東京商工会議所、東京証券取引所といった多種多様な会社や経済団体の設立や経営に関わり、そのうち企業は約500社にも及んでいることは有名な話ですね。その渋沢が説いたのが、「道徳経済一」です。「道徳経済一」というのは、企業の目的が利潤の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要であり、国または人類全体の繁栄に対して責任を持たなければならないという意味だそうです。また、渋沢は事業が持続的に発展していくために、労務管理や給与体系、キャリアアップの道筋などをきちんと整え、社員が物質的・精神的に安心して働ける環境をつくることの必要性も説いていて、とても明治時代の話だとは思えません。

株式会社が誕生してから現在で約400年経過しました。その利益を生み、社会を豊かにしてきた会社が岐路に立っているといわれます。利益を過度に追い株主に報いようとする経営姿勢に若者らがNoを突きつけ、社会への貢献や存在意義を明確に示すよう求め始める動きがあるそうです。「会社は何のために社会にあるのか」この問いかけに今、世界の多くの会社が直面しています。その背景にあるのは、利益の株主還元重視の時代を経て、世界は約2100人の富裕層が下位46億人より多くの資産を保有しているという状態にあるそうです。上位1%の超富裕層が、全体の40%に近い富を抱えていて、逆に下位50%の人々はわずか2%しか資産を持っていない。お金を稼ぐことは悪いことではないのですが、ある調査によると、世界の若者の7割弱が「富と所得が平等に分配されていない」と認識していて、評価される機会が平等に与えられないことに不満が集中しているということです。

経済同友会の櫻田謙悟代表幹事が、この春の賃上げにあたり「労働がコストであるというビジネスモデルから早く脱却しないといけない」「労働はその価値に対して正当な対価を支払わなければならない」と語ったと報じられました。労働はコストであるというビジネスモデルから脱却し、価値を生む「大変重要な資産」であるという考え方に移行すべきという考え方です。労働はコストではなく、資産であると考えるからこそ人への投資が進み、生産性を上げることが可能になるということなのだと思いました。

「自社は何のために存在するのか」「在籍する社員は何のために働いているのか」といった企業や組織、個人の存在意義を意味する「パーパス」という概念を重視する経営スタイルに注目が集まっています。その「ヒト」が持つ「他者にとって価値のあることをしたいという信念」いわゆる「志」に基づいた経営を「パーパス経営」というそうです。「その事業がどんなに大きくとも、また小さくとも、それが事業であるかぎり何らかの成果をあげなければならず、(中略)ただ成果をあげさえすればいいんだというわけで、他の迷惑もかえりみず、しゃにむに進むということであれば、その事業は社会的に何らの存在意義も持たないことになる。」と松下幸之助がいかに正しい方法で成果をあげるかということの大切さを語った言葉です。

明治生まれである渋沢栄一の経営者、働く従業員、その家族、顧客など皆の幸せを考えた「日本型資本主義」のあり方が問われるとともに、渋沢栄一が生涯問い続けたといわれる「企業の社会的責任」を踏まえた経営姿勢が今、求められているのでしょうね。       

特定社会保険労務士 末正哲朗  

◆ニュース

安衛関係11省令を一斉改正 一人親方も保護対象に

安衛則・有機則・粉じん則・石綿則など安衛法関係の11省令が一斉に改正されます。施行は、令和5年4月1日を予定しています。

キッカケは、令和3年5月に出された最高裁判決です。石綿ばく露の労働者が健康被害を被ったのは、労働大臣(当時)が規制権限を行使しなかったためと認定しました。

たとえば、安衛法22条では「事業者に対し健康障害防止措置」を義務付けています。労働大臣は、「安衛法で定義する労働者(労基法と同じ)」以外の者に対しても措置を講ずべきところ、安衛関連則のなかでは、規制対象を労働者に限定しているものもみられます。

この判決を受け、厚労省では、安衛法令全体について見直し作業を進め、「労働者と同じ場所で働く労働者以外の者」(一人親方など)も含める形で、条文の修正を図ります。

たとえば、立入禁止に関し、「作業に従事する労働者」とあるのを、「作業に従事する者」に変更するなどのパターンが考えられます。ただし、一人親方等は事業者と指揮命令関係にないことから、「配慮規定」や「周知義務」という形で追加される部分もあります。

年休使えず休職期間満了? 始・終期の時季指定不明確

私傷病休職期間の満了で退職となった従業員が「年休取得が認められれば休職期間は伸びていたはず」と主張した事案で、東京地方裁判所は従業員側請求を棄却しました。

建材等の商社で働いていた従業員は、「ストレス反応で2カ月間の自宅療養になったので、「今月3日から年休をいただき、その後は病欠でお願いします」とメールを送信しました。

会社はそれに基づき「10日付で私傷病休職を発令」し、就業規則に基づき3カ月の休職期間満了後、退職という扱いになりました。従業員はいったん退職書類に署名押印しましたが、その後、就労可能という診断書を提出して復職を求め、争いとなったものです。

従業員側は「メールは可能な年休(19日)をすべて消化した後、休職に入る趣旨だった」のに会社は4日の消化しか認めず、退職に追い込まれたと主張しました。

しかし、裁判所は「年休は、労働者の意思のみで就労義務を消滅させる効果を発生させるため、始・終期は明確であることが必要で、メールは終期の明確性を欠く」と述べ、期間満了による自然退職を有効と判断しました。

感情的な対応はタブー 日商がパワハラ防止冊子

令和4年4月から、中小企業に対してもパワハラ防止措置が義務付けられます。日本商工会議所は、中小企業向けに、管理監督者の留意事項などを盛り込んだガイドブック(ハラスメント対策BOOK)をHP上で公開しました。

同会議所が実施した調査では、「パワハラ対策と適正な指導との困難」等の悩みを抱えている実態が明らかになっています。このため、ハラスメントの定義や実例、防止措置・事後対応等に至る一連の流れ等を詳しく説明しています。

管理監督者自身が感情的になってしまった場合、「日を改めて指導」するのが望ましく、「部下が泣いている間は、何をいっても論理的に理解されず、叱られたという記憶のみが残る」と指摘しています。


カテゴリー:所長コラム


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