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選べないもの

2021年12月01日

「親ガチャ」という言葉が、ネットで注目を集めています。生まれてくる子供は親を選ぶことができないことを指して、コインを入れてレバーを回すとオモチャが出てくるガチャガチャにたとえた言葉だそうです。つまり、自分ではオモチャを選べないことから、どのような親のもとに生まれてくるかによって人生が決まってしまうという意味で使われていて、「親ガチャ失敗」と言うときは、「親のせいで自分の人生が希望通りにならない」ということになるそうです。「自分がまさにそうだ」という人もいれば、「自立できていない若者の甘えだ」という批判もあったりして、賛否両論が分かれているとのことであるが、親からすればとんでもない話であることにはちがいないです。

他にも自分では選べないものがあります。会社の「上司」です。「企業組織で働くことを、ごく個人的なレベルで言い換えれば、自分では選べない上司に指揮命令を受けながら配置された業務をこなすということ。これは年齢や立場を問わずサラリーマン全体に共通している。ここで問題となるのは、上司の部下に対する理解が不十分な場合、部下のやりがいや仕事の質に顕著な影響が出ることだ。」と日経新聞(10月4日「働き方innovation」より)が取り上げていました。良い上司に恵まれることは、会社員にとってはとても重要なことだと思います。2018年末に実施した調査によると、上司から理解されていないと感じる従業員が「職場に満足」と答えた割合はわずかに6%で、対照的に、上司に理解されていると感じている従業員は68%が満足していたという結果になったそうです。では、実際には、どの程度の上司が部下のことを理解できているのかが問題となるところです。同調査では、部下に「上司は自分を理解しているか」を質問しています。「理解している」と答えた部下は、約42%で、「理解していない」が約25%、「どちらでもない」が約33%という結果になったそうです。部下が上司に理解して欲しい点についてですが、1番目は、「これまでの業務」、2番目に「業務への希望、不満」、そして3番目に「性格」となりました。

今、職場の人間関係が働きがいを左右すると考える企業が増えてきているそうです。歯みがきでおなじみのライオンという会社があります。その会社の人材開発センターの担当者は、「上司というOSをアップデートしないまま、新しい働き方を入れても効果は出ない」と言います。同社では、社員が企業人、家庭人として充実した生活を送り、自ら成長していくということが「働きがい」であると考えているからだそうです。そのために上下の関係性を改善して認め合い「部下が本音で話す心理的な安心感が必要だ」とも言っていて、会社では「信頼感のあるリーダーシップ」を打ち立てること、異なる職場でも部下への接し方に差がないようにするということを始めたそうです。社員への不満を言う前に、経営者が変われということと同じですね。

もう一つの選べないものが「性別」です。人は自分で男女を選んで生まれてくるわけではありません。明治大学の野川忍教授は、労働新聞で「日本社会の性差別は広く深くまん延しており、男女平等の度合いは世界で100位を超えることもない状態が続いている。」といいます。興味深いのは、日本の高度成長期において男女役割分担が定着し、それが企業における成功体験につながったという話です。「青壮年男性は私生活を顧みずに会社にすべてをささげ、家庭では自分のパンツのありかも分からないことが、むしろ賞賛された。女性は専業主婦として家事・育児に専念し、会社に酷使されてボロボロになった夫を家庭で優しく癒すことが期待された」「さらに深刻なのは、このような役割分担こそが奇跡とされる日本の経済的成功を導いたのだ、という認識がいまだに払しょくできずにいるとことである。」「男が身を粉にして働き、女が家庭を守る、それで大成功したのに何で変えなきゃいけないんですかというわけだ。」と書いています。野川氏は、国際社会における致命的な遅れだといい、日本の、とくに雇用社会の性差別の病根は根深いとしています。一方で、セクハラの問題もなくなりません。ハラスメントが起こる職場では、信頼関係や協力関係が築けず、チームとしての一体感やまとまりを欠く結果、会社全体の利益が低い傾向がみられるとの報告もあります。しかし、今も日本は先進国で唯一セクハラ行為自体を禁止する法律がない国です。そして、最近ではLGBTなど性的少数者への配慮や理解ということが、職場においても求められ始めています。

本来、変わるはずのないものへの変化を認め、そのうえでお互いを尊重することが大切な時代になってきたのかもしれませんね。 

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

割増賃金の計算で要望 算定基礎から在勤手当除外を

経団連は、2021年度規制改革要望のなかで、割増賃金の算定基礎賃金から在宅勤務手当を除外できるように法整備することを提言しました。

新型コロナの蔓延を契機としてテレワークが急増しましたが、仕事と家庭の両立という観点から、「新しい働き方」として同制度の定着が望まれます。

 現行の労基法では、割増賃金を計算する際、算定基礎から除外できる賃金項目は、家族手当・通勤手当等の7項目に限定されています。

しかし、テレワークの導入に際しては、在宅勤務に必要な備品の購入や、通信・交通費等の補填のために、在宅勤務手当等を整備するのが通例です。

これは「家族手当などと同様に、個人的な事情に基づいて支払われる」ものであるため、支給日数に応じた定額支給等の場合には、その趣旨からいって算定基礎から除外するのが適切という見解を示しました。

組合員の出向命令解除に合理性 支配介入に当たらず

中央労働委員会は、バス子会社に出向中の組合員に対して本社復職を命じた事案で、不当労働行為に当たるとした初審命令を取り消しました。

親会社はバス事業を子会社に移管し、従業員も在籍出向の形で子会社に異動させました。賃金差額等は親会社が負担していましたが、支出削減策として、①子会社への転籍、②特別退職、③親会社への復職を本人に選択させるプランを労組側に提案しました。

その後、労組の同意を得られないまま選択申出書を提出しなかった組合員に対し復職命令を発令して紛争となり、初審の神奈川県労働委員会は救済命令を発していました。

しかし、中労委は、神奈川労委の一時停止勧告に反し復職に踏み切った点について「やや拙速」と指摘したものの、出向費削減の必要性を認め、合意達成に向けた交渉努力も踏まえ、組合の弱体化を図る支配介入には当たらないという判断を下しています。その後、労組の同意を得られないまま選択申出書を提出しなかった組合員に対し復職命令を発令して紛争となり、初審の神奈川県労働委員会は救済命令を発していました。

中小のデジタル化へトライアル事業 商議所が診断ツール活用

長野商工会議所連合会は、デジタル技術を活用して経営革新を図りたいという中小企業を支援するため、トライアル事業を開始しました。

中小・零細企業では、デジタル化を進めようにも、専門知識を持つ人材が乏しい点が悩みのタネです。トライアル事業では、約100項目の質問により企業ごとの課題を洗い出す自己診断ツールの活用により、業務改善に向けた解決策の発見をサポートします。

ツールはスマホ等から利用できるほか、相談会等も開催し、診断を受ける機会の提供に努めます。診断後は、中小企業の希望に応じ、無料で専門家の助言も受けられます。

同事業には、県下の18の商工会議所のほか、協力団体として同県ITコーディネータ協議会やプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会等も参加し、IT系の有資格者やフリーランス人材を紹介するとしています。


カテゴリー:所長コラム


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