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働く意味

2021年10月01日

父「おい!そんなところでゴロゴロ寝てないで!勉強しなさい!」子「どうして勉強しなきゃいけないの?」父「勉強しないといい学校に入れないだろ!」子「どうしていい学校に入らなきゃいけないの?」 父「いい学校に入らなきゃ、いい会社に入れないだろ!」子「どうしていい会社に入らないといけないの?」父「いい会社に入らなきゃ、いい暮らしができないだろ!」子「いい暮らしって何さ?」 父「……そうだな……寝て暮らせるってことだ…」子「ぼく、もう寝て暮らしてるよ!」

親なら一度はこんなような会話をしたことがあるのではないでしょうか。子どもの質問に答えるうちに「いい暮らし=寝て暮らすこと=幸福」となりましたが、父親が本当に言いたかったことではないですよね。

中国でインターネット上から削除された歌があるそうです。ある若者がソファに寝転んでギターを弾きながら「寝そべっているのはいいことだ、寝そべっているのは素晴らしい、寝そべるのは正しい。寝そべっていれば倒れることもない」と歌う様子がアップされていたとのこと。最近、中国の若者の間では。ストレスに耐えながら必死に働かなければならない仕事はごめんだとする「寝そべり族」が増えているそうです。中国政府はこれに強い危機感を募らせていて、中国国防相の報道官は「この激動の時代に寝そべりながら成功を待つことなどあり得ない。必死の努力にこそ栄光がある。若者たちよ、奮起せよ」とハッパをかけます。しかし、この原因は中間層の生活が、どんなに頑張ってもよくならず、苦労は増える一方なのに、見返りは少なくなり、多くの人が閉塞感に陥っていることにあるそうです。(2021.8.6 日本経済新聞から)

日本国憲法には「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」(第二七条)と書いてあります。働くことは、権利でもあり、義務でもあるということですが、働くのは「生活費を稼ぐため」という人や、「体が動くうちは何らかの形で働きたい」と考える高齢者や、食うには困らない資産を持っていても働き続ける人もいます。「お金のため」「義務だから」というように、自分の外側にある目的のために仕事をするのではなく、「私が私らしくあるためにその仕事をしている」「私の心がその仕事をすることを欲している」といった内発的な働く理由があることを忘れてはならないということです。そして、稲盛和夫氏は、「仕事において新しいことを成し遂げられる人は、自分の可能性を信じることのできる人です。現在の能力をもって「できる、できない」を判断してしまっては、新しいことや困難なことなどできるはずはありません。人間の能力は、努力し続けることによって無限に拡がるのです。」と話されました。

毎年、10月上旬に地域別最低賃金が引き上げられます。昨年はコロナ禍で政府が「雇用を守ることが最優先」と表明し、全国平均の引き上げ幅は1円にとどまりました。しかし今年は2002年度以降、過去最大となる全国一律28円増の引き上げが行われます。北陸三県はそろって28円引き上げることになり、石川県861円、富山県877円、福井県858円となります。労使ともに新型コロナウィルスによる会社経営への打撃や最低賃金増額の重要性については理解を示しましたが、最終的には歩み寄ることになったようです。

しかし、今春の賃上げ結果が前年を割り込んでいることや、内閣府の月例経済報告が日本の経済について厳しい状況にあると毎月繰り返していることを考えると、大幅な引き上げを行える状況にはないという意見も多くあります。一方で、連合は「誰もが時給1000円」実現を掲げていますが、英仏独の最賃は1300円前後の水準にあるように、日本の最賃の水準が先進国の中で遅れをとっていることも事実のようです。

ただ、最低賃金は、労働者は何もしなくても毎年、上昇するので事業者の負担はとても大きいです。しかし、最低賃金の上昇でしか昇給の恩恵を受けることができない労働者も多くいます。石川労働局によると、時給861円未満で働き、今回の引き上げの影響を受けるのは県内の労働者の約12%に当たる約5万6千人もいるそうです。 「喜働」という言葉があります。「働きが喜びになるのは、人間が創造的になったとき。人間は創造して意欲に満ちているときが一番幸せで、それが喜びになる。」という意味だそうです。そして、最後にロシアの作家ゴーリキーの言葉です。「働きが喜びになったらこれ以上の幸せはない。そのかわり、働きが苦痛になったら地獄だ」 (「座右の寓話」戸田智弘著( ㈱ディスカバートゥエンティワンー)より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

「雇用仲介サービス」は、スマートフォンの普及やデータ分析技術の拡大により、その形態を大きく変えつつあります。厚労省は、サービスの適正化や法的位置付けの明確化に取り組む方針です。

同省では、学識経験者による研究会報告書を踏まえ、議論をスタートしました。新形態のサービスは、採用コストを圧縮する効果を持つ一方、トラブルも多発・多様化しています。

ルール作りに当たっては、①正確な情報の流通、➁個人情報の保護、③事業内容区分の明確化等を柱とし、優良事業者の認定制度等の整備も検討します。

有益なイノベーションを阻害しないという前提の下、サービス従事者が業務に必要な知識を有しているかチェックするなど規制の強化も課題となります。

◆ニュース

雇調金特例が切り札に 失業率2.6ポイント押下げ

厚労省が公表した「労働経済白書」によると、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金が完全失業率抑制に果たした効果は2.6ポイント程度だったことが明らかになりました。同白書には、「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」という副題が付されています。

 分析対象は2020年4~10月の7カ月間です。2020年10月時点、実際の失業率は単月で3.1%、月平均2.9%に達していました

雇用調整助成金の対象労働者が支給を受けなければ全て失業したと想定して試算すると、雇調金の抑制効果は2.1ポイント、緊急雇用安定助成金が0.5ポイント程度と見込まれます。こうした特例措置がなければ、失業率は5%を大きく超えていた可能性があります。

一方、新型コロナの影響でテレワークが急速に普及しましたが、白書では、オフィスワークに比べて生産・効率性などでやや劣ると評価しています。

テレワークを中止した企業については、テレワーク中の連絡調整や就業環境に問題があったケースが多く、労務管理上の工夫が必要と指摘しています。

労働条件低下を拒否 雇止めもやむなし

受験予備校の講師が雇止めを不服とした裁判で、東京地方裁判所は、契約の不成立に合理性があるとして、請求を棄却しました。

講師は23年間にわたって契約更新を続けていましたが、「次年度の授業数を減らし、賃金も引き下げる」という条件提示を受けました。従来と同じ内容での更新を求めたところ、拒否されたため、最終的に新契約は成立しませんでした。

判決文では「低下した契約条件提示に労働者が合意しないことを理由に更新拒絶する場合、新条件の客観的合理性・社会的相当性を検討すべき」と判示しました。

「予備校教師という性質上、授業アンケート結果によりコマ数減となる可能性は認識していたはず」と指摘したうえで、アンケート結果は毎年最下位近辺で、無断の文書配布で懲戒を受けた点も踏まえ、条件引下げには合理性があり、雇止めは有効と結論付けました。


カテゴリー:所長コラム


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