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令和7年度の年金制度改正と改正育児介護休業法

2025年01月06日

昨年末のSNSへの投稿です。「ボーナスの使い道 1位所得税、2位厚生年金保険料、3位健康保険料」その他にも「天引きされている社会保険料の額が大きすぎる」と不満が続出しているようです。20年前にはボーナスの社会保険料率が1%だったことを考えると、その金額に驚くのも無理はないですね。そんな社会保険料に注目が集まる中で、2025年は5年に一度の年金制度改正の年にあたります。まず、見直しの第一の柱にあげられるのは「基礎年金の底上げ」です。厚生年金の受給者を含めたすべての人が受け取る基礎年金は、過去30年と同程度の経済状況が続く場合、年金財政悪化のために、今のままでは将来の受け取り水準が3割低下するといわれています。次に第二の柱には「働き控え」を減らすことが挙げられています。改革案ではパートの働き控えを減らすため「週20時間以上働く人は原則として厚生年金に入る」というルールに見直す方針です。また、高齢者の働き控えもあります。一定の給与所得がある高齢者について受け取る年金額を減らす「在職老齢年金制度」を縮小して、年金を満額受給できる人を増やします。現在は給与と厚生年金の合計額が月50万円を超えると、受け取る厚生年金が減らされますが、この基準額を62万円もしくは71万円に引き上げることが検討されていて、働く高齢者の就労意欲がそがれないようにします。最後に第三の柱ですが、高所得者の負担増を通じた年金財政の安定となっています。現在は厚生年金保険料の算出に用いる「標準報酬月額」の上限が月収65万円となっていますが、75万円~98万円に引き上げられる予定です。賞与を除く年収798万円以上の人の厚生年金保険料が増えることになります。

このような年金制度への大きな影響を与えているのは日本の人口動態ですが、特に生産年齢人口の減少により多方面で労働力の確保が困難となっている現状はかなり深刻です。そんな中でも労働力として頑張ってくれているのが「女性」です。総務省の労働力調査によると2024年上半期の女性の正社員数は15歳~64歳で1241万人となって、21年ぶりに非正規社員の数を上回りました。その正社員が増えている理由ですが、結婚・出産後も仕事を続ける女性が増えたことが大きいようです。最近の出産動向基本調査によると、第一子出産後も働き続ける妻は53.8%と、20年間で2倍以上に増えています。

このような女性の労働参加を支えるために、これまで法改正が繰り返し行われてきました。まず、勤労婦人福祉法が1972年(昭和47年)に制定され、初めて女性労働者への育児休業の実施等については事業主の努力義務であることが定められました。その後は、男性労働者も含めてすべての女性労働者に広く育児休業を保障するまでにはいたらなかったわけですが、大きな転機となったのは、1989年(平成元年)の「1.57ショック」といわれています。この年の合計特殊出生率は、1966年(昭和41年)「ひのえうま(丙午)」の年の1.58を下回って、戦後最低の1.57となり出生数は前年比-25.4%にまで落ち込みます。ひのえうまの年に生まれた女性は火のように激しく、夫を食い殺すという言い伝えがあり、女性の縁談には悪い条件になるとされたため、多くの夫婦が出産を避けたそうです。私は昭和42年の生まれになるので、その前の年がひのえうまの年にあたっていたわけですが、一学年上の先輩の人数がとても少なかったことだけは覚えています。この1989年が、仕事と育児の両立を推進する政策の重要性を痛感させることになって、1歳未満の子を養育する男女労働者に対して育児休業の権利を保障する「育児休業等に関する法律」が1991年に制定されるにいたりました。育児介護休業法は、幾度もの法改正を経て現在にいたっていますが、今年(令和7年)もまた改正が予定されています。 

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

意見聴取は施行前に 柔軟な働き方実現措置 育介法Q&A

厚生労働省は、2025年4月と10月の2段階で施行する改正育児介護休業法に関するQ&Aをまとめました。3歳~小学校就学前の子を養育する労働者に対する柔軟な働き方を実現するための措置について、導入要件となる過半数労働組合などへの意見聴取は施行日である2025年10月1日よりも前に行う必要があるとしました。

改正法では同措置として、始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務制度などから2つ以上を選択して講じるよう事業主に義務付けました。選択時には、過半数組合または過半数代表者から意見を聴取しなければなりません。さらに、3歳未満の子を養育する労働者への個別周知および利用意向の確認も義務付けています。

Q&Aでは、施行日の2025年10月1日時点で措置を講じることができるよう、過半数組合などの意見聴取はあらかじめ行っておくべきとしています。

労働者への個別周知・意向確認については、施行日前に実施する義務はないと明記しました。ただし、施行前に行っておくのが望ましいとしました。

事業主が措置を用意していても、労働者の職種などから利用できないことがあらかじめ想定される場合は、措置義務を果たしたことにならないと指摘しています。

◆ニュース

工期設定で協力依頼 働き方改革へ発注側に 厚労省・国交省

 厚生労働省と国土交通省は、民間建設工事の発注事業者を会員に持つ主要経済団体に対し、建設業の働き方改革の実現に向けた取組みに関する協力要請を行いました。工期設定に当たり、週休2日を確保するほか、受注者からの見積りに基づき、受注者・下請が時間外労働の上限規制を遵守できる内容となるよう、会員企業の協力を求めています。

 上限規制遵守の観点からは、猛暑日、降雨・降雪日、河川の出水期などの自然的要因における不稼働によって、作業が他の期間に集中する可能性があることへの配慮を要請。技能者や重機オペレーターが現場へ移動する時間が労働時間に該当し得る点についても注意を促しました。また、工事の前工程で工程遅延が発生するなどして受注者から工期について協議の申出があった場合には、適切に協議し、状況に応じて工期延長など必要な契約変更を実施するよう訴えています。

「交際相手の近くに」も 希望転勤制を拡充 トラスコ中山

工場用工具卸売業のトラスコ中山㈱(東京都港区)は、従業員に対して交際相手の居住地近隣への転勤を認める「ひなどり転勤制度」を新設しました。2005年から配偶者の転勤や結婚・介護などに伴う“希望転勤”は可能でしたが、対象範囲を拡大しています。これまでも結婚を控えたケースなどには準用してきたところ、線引きが分からないなどの声もあり、改めて制度化を図りました。転勤の申請に当たり、書類の提出などは特段求めません。

同社では全国転勤型の総合職に対し、ジョブ・ローテーションを通じて育成を行います。配置転換を繰り返すなか、従業員が自らの事情に沿って勤務地を選択可能とし、将来の人生設計を考えやすくするのが狙いです。

過去3年間に既存の希望転勤制度を利用した人数は、育児・介護など家庭の事情による「希望転勤制度」が67人、配偶者の転勤に伴う「おしどり転勤制度」が18人となっています。


カテゴリー:所長コラム


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