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全世代型社会保障改革

2021年02月01日

先月、11都府県で緊急事態宣言が再発令される中、コロナ対策が後手にまわっていると、たびたび菅政権は批判されました。そこで、単なる政権批判ではなくて、菅総理のコミュニケーション能力という観点で記事を書いているコミュニケーション・ストラテジストの岡本順子氏の話をとりあげてみます。

現在のコロナの感染拡大の状況においては、誰が総理大臣だったとしてもとても難しい局面だと思いますが、岡本氏はこの未曽有の危機下でわが国のリーダーの「伝える力」のお粗末さが、人々の絶望感や不安を掻き立てているといっています。岡本氏は、菅首相がある約30分の会見内で39回も、語尾に「思います」「思っています」とつけていて、自信のなさや責任逃れの印象を与えてしまっていると指摘しました。「思います」と言った時点で、それは「事実」ではなく、単なる「私見」になってしまうのだそうです。この「思います」は日本人がよく使う表現だそうで、岡本氏がコーチングをしている企業のエグゼクティブの中でも、気が付かないうちに多用している人は少なくないと言っています。また、菅総理は、「改めてコロナ対策の強化を図っていきたいと思います」「不要不急の外出などは控えていただきたいと思います」「国民の皆様と共に、この危機を乗り越えていきたいと思います」ではなく、「強化を図ります」「控えてください」「危機を乗り越えます」と強く短く言い切ればいいだけのことなのに、ついワンクッション置いてしまうことで、丁寧さや謙虚さを感じる一方、自信のなさや責任のがれという印象を与えてしまっているようです。「やりぬきます!」ではなく、「やりぬきたいと思います」では、真剣度が全く違って聞こえるし、「思います」がつくことで「一応、やってみるけど、出来なかったら勘弁してね」というニュアンスになってしまうし、また、岡本氏は菅首相が「言葉よりも、実行である」と信じ、マジメに仕事をし、成果を出すことで国民に報いたいと考えているのかもしれないが、しっかりと国民に向き合い、対話をし、納得させるコミュニケーション能力なくして、リーダーシップは発揮しえないと指摘されました。私たちにとっても非常に参考になる話ではないでしょうか。

政府は昨年12月15日に「全世代型社会保障改革の方針」を閣議決定しました。その中には、少子化対策として、①不妊治療への保険適用等、②待機児童の解消、③男性の育児休業の取得促進を進めることとされ、また後期高齢者(75歳以上)の自己負担割合の在り方として、後期高齢者であっても課税所得が28万円以上(所得上位30%)及び年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の者に限って、その医療費の窓口負担割合を1割から2割に引き上げることとしました。(現在、現役並所得者は3割)

とくに後期高齢者の医療費窓口負担の引上げは、令和4年(2022年)には、団塊の世代が75歳以上の高齢者となり始める中で医療費の増大が予想されるために待ったなしの課題となっています。厚生労働省の調査結果によると、人口一人当たりの国民医療費を年齢別で見ると65歳未満は15万8900円であるところ、65歳以上になると67万3400円と跳ね上がり、さらに75歳以上では83万円にもなっています。逆に医療費の年代別の自己負担は、65~69歳が8万9316円で最も高額であり、75~79歳 6万4401円、50~54歳 5万0212円、30~34歳 2万6005円となります。ちなみに最も金額が低いのは20~24歳の1万7804円です。単純な感想ではありますが、両方の数字から感じるのは自己負担額に対する国民医療費の額の大きさです。

さらに、75歳以上の医療費は、本人の窓口負担を除いて、公費が約5割、現役世代からの「支援金」が約4割、残り1割は高齢者の保険料で賄うことになっています。現役世代が、「支援金」という名目で高齢者の医療費を負担しているということです。現役一人当たりの相当額は、2020年の年6万3000円から2025年には年8万円に増えるといわれています。自己負担割合の2割への引上げは、反対もあるかと思いますが、菅首相が将来の世代の負担を減らすことを考えたうえでの結果ということですね。菅首相が目指す社会像は、「自助・共助・公助」そして「絆」と言われています。これは非常に厳しいことですが、まずは自分でやってみるという自助があって、その国民一人一人の努力が、全ての世代が公平に支えあう「全世代型社会保障」への改革を更にすすめるということになるようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

傷病手当金・育休の保険料免除等を見直し 医療保険改革で議論を整理

医療保険改革に向け、政府の全世代型社会保障検討会議の議論とあわせ、厚労省でも議論のとりまとめが行われています。

傷病手当金の支給上限期間は1年6カ月と定められていますが、現行は途中で就労可能となり、支給が中断しても、上限は延びない規定となっています。「治療と仕事の両立」の観点から、断続的な労務不能期間を「通算」して上限を適用する形に改めます。

75歳以上高齢者の窓口負担は、現役並所得者3割、それ以外1割となっていますが、「それ以外」のうち年収200万円以上は2割負担に引き上げます。

育児休業期間中の保険料免除に関しては、短期取得者に関する規定を整備します。現行は休業が月をまたぐ場合のみ免除の対象としていますが、2週間以上休業も対象とします。

任意継続被保険者については、「2年経過」「保険料未納付」等の法定要件に該当する場合のほか、本人の選択により任意脱退も認める規定に改正する方針です。

「口外禁止条項」は違法 今後の審判に影響も

労働審判の内容を口外しないという禁止条項について、長崎地方裁判所は、バス運転士の訴えを認め、同条項は違法という判断を示しました。

雇止めにあったバス運転士は労働審判を申し立て、会社側が230万円の解決金を支払って、労働契約を終了するという内容で審判が確定しました。その際、「正当な理由のない限り、第三者に内容を口外しない」という条項が付されていました。

しかし、バス運転手は、会社側要望により、調停案に口外禁止条項が追加された際、「裁判への協力を約束してくれた同僚には、和解成立を報告したい」と訴えるなど、明確に反対する意思を表明していました。

判決文では、「将来にわたり義務を負い続けることは過大な負担を強いるもので、審判の経過を踏まえたものといえず、相当性を欠く」という判断を示しました。

口外禁止条項の違法性に関する判断は初めてとみられ、年間500~600件ほど発生している他の審判にも影響を与える可能性があります。

初任給据置きが5割超える 全学歴で引上げ率1%未満に

経団連が公表した2020年3月卒「新規学卒者決定初任給調査結果」によると、初任給を据え置いた企業は57.4%で、前年比15.0ポイント増加し、2017年以来3年ぶりに5割を超えました。

前年の初任給から引き上げた企業は42.6%、引き下げた企業はゼロでした。学歴別にみると、大学卒・事務系21万8472円、高校卒・技術系17万3939円等という状況です。

引上げ率は、大学卒・技術系で前年比0・55%増、高校卒・現業系0・83%増などで、全学歴で1%未満となりました。

初任給の推移をみると、2014年以降、業績の回復・拡大によって、横ばい傾向から増加に転じていましたが、2020年は、短大卒・事務系で引上げ率が0.34ポイント低下するなど、伸び率の鈍化が目立つ結果となりました。


カテゴリー:所長コラム


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