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同一労働同一賃金がついに決着

2020年11月04日

今年、2020年4月1日にパートタイム・有期契約労働法が施行されており、同一労働同一賃金への対応が企業に求められています(中小企業における同法の適用は2021年4月1日)。同一労働同一賃金とは、同じ仕事をする正社員と非正規社員(パート、期間契約社員や派遣労働者)との待遇差や賃金格差をなくすという考え方です。これまでの日本では、長期雇用を前提とした終身雇用制度のもとで正社員は非正規社員よりも給与面はもちろん、福利厚生面でもより良い安定した待遇を保障し、そして会社は正社員に対する社員教育を充実させることにより生産性を向上させ企業は業績を伸ばしてきました。

弁護士の丸尾拓養氏は、旧安部政権のもとで行われてきた「1億総活躍」や「働き方改革」は正社員制度を否定するものであると話します。その背景にあるのが、「正社員ではない女性や高齢者の活躍が企図されると同時に、正社員にも変革を迫る。これまでの男性中心の正社員は強い雇用保障の下で高い賃金水準を享受してきた。この改革の背景には、高成長・安定成長の終焉という経済的要因とともに、非婚・離婚者の増加という社会的要因もあろう。父親(家庭)に対し賃金を安定的に支払う仕組みが社会で機能しなくなっている。」ことといいます。また、「正社員制度がなくなれば『非正規雇用』という言葉は不要となる。『多様な正社員』論は、実は『多様な社員』論である。」とも。

今、同一労働同一賃金の取り組み状況について労働局が県内の企業に実施状況の調査に入っています。調査に立ち会って感じたのは同一労働であればもちろんのこと、国は正社員だろうとパートであろうと全社員を基本的には同じ扱いに近づけたいのだろうということです。

そんな中で、この10月に同一労働同一賃金の考え方に重大な影響を与える最高裁判決が出されました。大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便(東京、大阪、佐賀)事件の5件についての最高裁での上告審判決です。これまで基本給については性質や目的を判断するに当たっては、いくつかの要素を総合的に検討することが必要となるためその金額の差については使用者の裁量が認められる傾向にあったようです。今回、大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件で争われたのは、非正規労働者であることを理由に賞与や退職金を支払しないことの是非です。これまでは、高裁での判決を理由に、非正規社員にも支給すべきといった流れに傾いていましたが、判決では、「各企業などにおける賞与、退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべきだ」とした上で、支給していなかったことについて「不合理な格差」には当たらないと結論付けました。

また、もうひとつの日本郵便(東京)の契約社員らが正社員と同様に各種手当や休暇を与えるよう求めた3件の訴訟では各種手当など「不合理な格差で違法だ」として、契約社員にも認める判断をしました。今回、認められたのは、扶養手当、病気休暇、年末年始勤務手当、夏期・冬期休暇、祝日休の5つとなっています。手当について正社員だけとする合理的な理由はないと結論づけていて、こちらのほうは非正規労働者の待遇改善につながりそうです。

今回、賞与と退職金についての格差是正が認められなかったことで、賃金について正社員と非正規社員の格差是正がわずかながらも進み始めようとしていた空気が一変することになると思います。結果として使用者側の裁量が広く認められましたが、「不合理な格差と認められる場合はあり得る」との考え方も示されていて、企業は賞与、退職金の支給目的を明確にしておく必要がありそうです。

最高裁は、配置転換や転勤を受け入れて、業務においても重責を担う日本型の長期雇用を前提とした正社員という存在を認めざるを得なかったのでしょうか。企業の側に立てば正社員に対して功労報償的な意味合いで賞与を支給したり、継続的な勤務に対する退職金を支払ったりすることで、正社員として職務を遂行できる人材をいかにして確保し、そして定着させるかということが大きな課題となっています。

労働局の調査で、「なぜパートには賞与を支給していないんですか?」と問われた企業の担当者は、「正社員はやる気を出して生産性を上げるなど担当の業務をしっかりがんばって欲しい。だけど、パートは言われたことを確実にこなしてもらえたらそれでいい。」と言います。本来は、丸尾拓養弁護士が言われるように、正社員制度そのものがなくなることが一番の解決方法かもしれないです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

10年ぶりに前年割れ 令和3年3月の高卒求人

新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う景気停滞により、令和3年3月の新卒者の就職活動は、大きな影響を受けています。

厚生労働省は、令和2年7月末現在で、ハローワークにより受け付けた高校・中学卒業者の求人・求職状況をとりまとめました。

高卒の集計データをみると、企業等による求人数は33万5757人で、前年同期に比べ、10万7589人少なくなっています。率換算で、24.3ポイントの大幅減です。

産業別では、「宿泊業、飲食サービス業」(49.6ポイント減)の落ち込みが目立ちます。その他、「製造業」で28.8ポイント減、建設業で4.4ポイント減といった状況です。

生徒からの求職者数も、率換算で8.0ポイント低下しました。結果として、求人数を求職数で除した求人倍率は2.08倍で、前年比0.44ポイントのダウンです。求人倍率が前年を割り込むのは10年ぶりのことです。

事務所衛生基準を改正へ トイレや更衣設備の充実めざす

働き方改革関連法は平成30年に成立しましたが、その附帯決議では事務所等の清潔・休養に関する関連法令の見直しを求めていました。

これを受け、厚生労働省では、検討会を設け、事務所衛生基準規則および関係指針等の改正に向けた論議をスタートさせています。

事務所則は事務作業に用いるオフィス等に適用されますが、その中では環境管理(第2章)、清潔(第3章)、休養(第4章)等について基準を設定しています。

検討会では、事務作業面の照度(現行は精密作業で300ルクス以上等)、二酸化炭素の管理(含有率100万分の5000以下等)などについて見直しを行います。

トイレ(男女別に一定数を設置)に関しても、小規模事業所で男女別の設置が遅れている現状等を改善する方針です。

監督指導動向

新型コロナで内定取消急増 悪質事案の企業名も公表 厚生労働省

厚生労働省の発表によると、今年4月に就職予定だった大学生・高校生等のうち、内定を取り消された人の数は、令和2年8月末時点で174人(76事業所)となっています。新型コロナの影響で、前年度・同時期(35人)の5倍に急増しました。

内定取消には至らないまでも、入社時期繰下げの対象となった学生・生徒数は1,210人(87事業所)の多数に上っています(前年度はゼロ人)。

併せて、大学生28人の内定を取り消したとして、神奈川県横浜市の生活関連サービス業者(旅行業)が企業名公表の対象となっています。

職安則では、告示で定める基準(取消者10人以上など)に合致する場合、学生の適切な職業選択に役立てるため、企業名を公表できる旨の根拠規定を置いています(17条の4)。


カテゴリー:所長コラム


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