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令和2年版 厚生労働白書

2020年12月01日

令和2年版の厚生労働白書が10月23日に公表されました。白書では、平成30年間の社会の変化とこれから2040年にかけて、これからの日本社会がどう変化していくかという見通しが書かれています。2040年は、このまま推移すると、高齢者となった男性の約4割が90歳まで、女性の約2割が100歳まで生存するといわれている年です。さらに、海外の研究では、2007年(平成19年)に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きるとも推計されているそうです。まさに「人生100年時代」が、現実化する一方で、20~64歳人口が人口全体のちょうど半分くらいに減少すると推計されています。

こういった寿命が伸びる中で、人々が「高齢者」ととらえているのは何歳以降かという意識の変化が起きています。2014年において「高齢者とは何歳以上か」という質問に対して「65歳以上」とする人は1割に満たず、「70歳以上」と「75歳以上」がそれぞれ約3割、「80歳以上」が約2割といった状況にあります。過去の調査では「60歳以上」「65歳以上」とする回答が多かったことからすると、人々の意識における高齢者像は変化してきていることがわかりますし、 最近では「年齢では判断できない」とする割合がかなり増えてきているそうです。また、高齢化が進んではいますが、それとともに健康寿命が延伸しているため、高齢であっても労働力として社会に貢献できる人も増えています。そのため、日本の人口は減少しているにもかかわらず、労働力人口や就業者数は、1990年代後半の水準を維持しています。この数字には、高齢者だけでなく、女性も大きく貢献しています。1989(平成元)年と2019(令和元)年を比較した労働力調査では、25~39歳の男性が大きく減少していますが、同じ年齢層の女性は約1割増加し、65歳以上の男女についても大きく増加しています。その結果として、その間、15~64歳の人口は8500万人から7500万人と1000万人減となっていますが、就業者数は6100万人から6500万人に拡大しました。人口が減少していく中で、この点については、厚労省のこれまでの法改正等の苦肉の策が功を奏したといえるのではないでしょうか。

少子化対策の一つに、男性の育児休業の取得促進があります。男性の育休取得率を2025年までに30%に引き上げるという目標を掲げるとともに、その目標達成のために男性の育休取得を義務付けるという検討がされていました。ぼくも労働局の方からは、「来年は男性の育休の義務化の法改正がありますよ」と聞いていたので義務化されるものだと思っていましたが、やはり経済界からの反発はかなり強かったようです。日本商工会議所の杉崎友則氏は「中小企業の7割が義務化に反対だとする調査結果を報告していて「深刻な人材不足が続く中、コロナ禍で企業に影響が出ている。残業時間の上限規制や有給休暇の義務化など度重なる労働規制の強化、負担増もあり、強制力を持った施策には反対する」と話していて、男性の育休取得の義務化は立ち消えになったようです。

その代わりなのでしょうか、厚生労働省は、男性の育児休業取得促進制度についての方向性を打ち出しました。経済界からの取得義務化に対して反発があってすぐに修正を行ったようです。検討案の内容は、男性がより育児休業を取得しやすいようにするため、とくに子の出産にあわせて取得しやすいような仕組みになるそうです。新制度の方向性としては、取得できる期間を子の出生後8週間とし、取得できる日数を4週間程度に限定するとしているそうです。現在、育児休業を取得している男性の半数近くが、子の出生後8週間以内に取得していることを考慮していて、現行の育児休業制度と同じく「義務」ではなく労働者からの「申出」により取得することができるとするそうです。また、2回程度に分けて分割取得できるようにもなるようです。また、新制度では、あらかじめ予定した曜日や時間に出勤することができるようにすることも検討されているそうです。この新制度は、来年の通常国会に育児・介護休業法改正案として提出される予定です。

今年はコロナ禍でこれまでの自分や社会を見つめ直す年になったように思います。最後に高名な教育者である東井義雄氏の言葉で1年を終わりたいと思います。

「根を養えば樹は自ら育つ」

「高く伸びようとするには、まずしっかり根を張らねばならない。基礎となる努力をしないと、強い風や雪の重みに負けてたおれてしまう」

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

中小企業7割が反対 男性育休の「義務化」

日本商工会議所の「多様な人材の活用に関する調査」によると、中小企業の7割が男性育休の「義務化」に反対しています。

イクメンということばが流行しましたが、男性の育休取得率は今も8%というレベルにとどまっています。休業の取得促進のため、厚労省では、休業の取得要件緩和や分割取得の導入等の検討をスタートさせています。

日商の調査では、中小企業2939社から回答を得ましたが、全体の70.9%が「反対」「どちらかというと反対」と回答しました。

「運輸業」(81.5%)、「建設業」(74.6%)、介護・看護業(74.5%)など、人手不足が深刻な業界で、とくに「反対」とする割合が高くなっています。

会社が経費負担を テレワーク時の通信費等

連合は、「テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」を策定しました。新型コロナウイルス禍への緊急対策として、テレワーク導入が急速に進められましたが、十分な環境対策が行われていないのが実態です。

6月に実施した調査結果等を踏まえ、労組サイドとして、使用者に対し提案・要求すべき事項を示したものです。モデルとなるテレワーク就業規則(在宅勤務規定)も作成しました。

導入時のパソコン・ソフト・照明・事務機器等の費用について、使用者が上限付きで補償するほか、勤務時のランニングコストとしての通信費・水道費などについても月払いの手当を付加するのが望ましいとしています。

生活時間の確保のため、「つながらない権利」に対する配慮も重要と指摘し、時間外・休日・深夜のメール送付、即時に対応できなかった際の不利益取扱い等の禁止も求めました。

届出の押印・署名を廃止 行政手続き簡素化へ

政府の規制改革実施計画(令和2年7月閣議決定)で行政手続きに関する押印見直しが明記されたこと等を受け、厚労省は、労基法関連の省令様式から、押印欄を削除します。

対象となるのは労基則、年少則、最賃則、事業附属寄宿舎規程などで、省令改正により、使用者・労働者双方の押印・署名を求めない規定に改めます。これを受け、電子申請時の電子署名の添付も不要となります(令和3年4月1日施行予定)。

協定の当事者である過半数労組(ないときは過半数代表)の適格性については、新たにチェックボックスを設けて確認します。

このほか、労働委員会規則に基づく不当労働行為審査の申立て、あっせん・調停申請などの手続きに関しても、押印不要とする方針です(令和3年12月施行予定)。

◆監督指導動向

「介護労働」の現場を査察 残業・割増等の違反めだつ 北海道労働局

北海道労働局は、介護労働者を使用する事業場を対象とする監督指導結果(令和元年)を公表しました。

介護労働者の人材確保のためには「魅力的な職場づくり」が求められますが、実際の労働環境をみると改善すべき点が少なくないようです。

監督指導が実施された203事業場のうち、68.0%(138事業場)で労基関連違反が指摘されました。主な違反項目は、「労働時間」97件、「割増賃金」74件、「安全衛生管理体制」49件などです。  労働時間関係では「36協定を超える時間外労働」、割増賃金関係では「割増賃金の算定単価の誤り」等の事案が報告されています。

監督指導が実施された203事業場のうち、68.0%(138事業場)で労基関連違反が指摘されました。主な違反項目は、「労働時間」97件、「割増賃金」74件、「安全衛生管理体制」49件などです。

労働時間関係では「36協定を超える時間外労働」、割増賃金関係では「割増賃金の算定単価の誤り」等の事案が報告されています。


カテゴリー:所長コラム


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