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緊急事態宣言下での休業手当

2020年05月01日

わずか数カ月で世の中が大きく変わってしまうなんてことがあるんですね。コロナウィルスのために外出の自粛が続いていますが、自由に生活できないことがこんなにしんどいこととは思いませんでした。他人から自分にウィルスがうつってしまうというより、他人にうつさないための自粛だと思うので、今は頑張らないといけないですね。

歴史上の人物に北条早雲がいます。その北条早雲のエピソードです。伊豆国、相模国を一代で支配する勢力を築いた北条早雲ですが、早雲が伊豆に足を踏み入れた時、疫病が蔓延し死者が続出するという悲惨な状況がありました。当時、疫病への対処といえば、祈祷を行い事態の収束を見守ることが多かった中で、早雲はすぐに京都から良薬を取り寄せ、率いていた兵士五百名に命じて薬や食べ物を配り、村人を看病させました。その結果、十七日間で疫病を鎮静化できたというのです。早雲は、この素早い対応によって農民や土豪の信頼を得ることができたのでした。今の政府も、早雲の非常事態への迅速果敢な行動に学ぶべきではないでしょうか。(2020.5致知「特集 先達に学ぶ」より)

歴史を通じて、これからの未来を考えていくことはとても大事なことだと思います。今の日本の状況をみると、あくまでも社労士が関与する助成金についての話ですが、企業が生き残るためには、不十分なように思います。もっとスピード感があってもいいのではないか、もっと拡充すべきではないかと感じられるところです。

現在、政府が発令した緊急事態宣言を受けて休業している会社から従業員への休業手当をどうしたらいいのかという相談が増えています。労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由」の場合、会社は従業員に対し、休業手当として平均賃金の6割以上を支払う義務があると定めています。しかし、使用者に責任がなく、やむを得ないものとなるとその休業手当を支払う義務はなくなることになります。今回の休業をどう考えるかですが、法律家である学者や弁護士の間で意見が分かれます。ある弁護士は「都道府県知事による休業要請の対象となった場合は、支払い義務は免じられる」と言います。法的根拠のない自粛要請と違い、法令に基づくものであるため、休業は企業の自主的な行動とはいえなくなるそうです。一方で、ある労働側の弁護士は「企業には休業手当を支払う義務はある」という立場をとります。天災による工場の倒壊などと異なり、企業は経営努力によりテレワークをしたり、販売方法をネットで行うよう変更したりするなど休業を免れることができるため、休業をすることは使用者に責任があるのだといいます。また、そもそも「緊急事態宣言自体、強制力がなく。これだけをもって休業はやむを得ないとはいえないだろう」いう意見の弁護士もいます。

このことについて厚労省の見解は現時点ではっきりしていません。2011年の東日本大震災時に作成したQ&A集は、天災などの不可抗力の場合は使用者に手当の支払い義務はないとしているので、今回の緊急事態宣言による休業はこれに沿うという解釈もあるようですが、加藤厚労大臣は「(休業要請で)一律に休業手当の支払い義務がなくなるものではない。総合的に判断する必要がある。」と話しました。

IMFは日本の2020年の経済成長率をマイナス5.2%となる予測を出しています。リーマンショック翌年の2009年がマイナス5.4%だったことを考えると事の重大さはほぼ匹敵していることになります。第一生命研究所の試算では、「失業率は最悪2021年第1四半期までに4%程度まで上昇する可能性がある」とされています。コロナの直前3月の失業率は約2.5%となっていてまだ落ち着いてはいますが、これから大幅に悪化することが予想されています。

休業手当の支払いが義務なのか免除されるのか法律の議論はおいといて、たとえ法的な支払い義務がなかったとしても、こんなときだからこそ企業は休業手当を支払うことで、雇用を守り、従業員の生活を守ることが必要だと思います。そうできるように国は、中小企業をしっかり守ってもらいたいものです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

労基・雇保法等の改正法成立 4月1日から一部施行スタート

令和元年度末に「労基法等の一部を改正する法律」「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立・公布され、令和2年4月1日から施行(後者の一部は段階施行)されています。

労基法関連では、賃金等の消滅時効期間が5年(当分の間の経過措置で3年)に延長されました。

雇用保険法関連では、令和2年度から2年間、雇用保険率引下げの暫定措置を延長しています(令和2年度は一般の企業で1000分の9)。

労災法の改正は「公布から6カ月以内」の施行で、ダブルワーカーに対する補償内容を充実させます(2事業場分の賃金をベースとして給付基礎日額を算定など)。

次年度以降については、70歳までの就業確保の努力義務化(令和3年4月)、高年齢雇用継続給付の縮小(令和7年4月1日)等が予定されています。

従業員による「逆求償」認める 業務上事故の賠償

業務中に起きた事故に関する賠償金に関し、最高裁判所は、会社に対する労働者の「逆求償」を認める判決を下しました。

原告労働者は、トラック運転者として運送業務に従事中に、死亡事故を起こしました。遺族に対して1500万円の賠償金を支払った後、会社に対してその返還を求める訴訟を提起しました。

民法715条では、被用者が第三者に損害を与えた場合、使用者が賠償の責任を負うと定めています(使用者責任)。この場合も、使用者から被用者への求償権の行使は認められると解されていますが、逆パターン(賠償をした被用者から使用者への求償)が可能か否かは、判例上明らかでありませんでした。

今回の最高裁判決は、この問題に対して初めての判断を示すもので、「会社と労働者のどちらが先に賠償したかによって、使用者の負担額が異なるのは本条の趣旨に反する」として、「逆求償権」を認容したものです。

◆監督指導動向

休業・助成金関係で相談急増 新型コロナの対応を調査 兵庫労働局

兵庫労働局は、「新型コロナ感染症の影響による特別労働相談窓口」の相談状況をとりまとめました。休業や助成金関係の相談がめだっています。

窓口は令和元年2月14日に開設され、集計データは同月末までのものです。相談者は110人で、事業主(74人)のほか、社労士・労働者も窓口を訪れています。

相談内容のトップは、いうまでもなく休業関係です。厚労省発表のQ&Aでも、感染が疑われる場合等の取扱いについて細かく対応を示していますが、休業時に労基法に基づく休業手当の支払いを要するか否かなどは、事業主にとって悩ましい問題です。

そのほか、2月中旬に特例措置が講じられ、その後、漸次、拡充されている雇用調整助成金等の助成措置、安全衛生、休暇、解雇・雇止め等に関する質問も寄せられています。


カテゴリー:所長コラム


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