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受動喫煙防止

2020年04月02日

先日、あるお客様から、「会社の敷地内を禁煙にしたい」という相談があり、就業規則を変更することになりました。禁煙の取り組みは、これまでは病院などで先駆けて行われてきたことですが、一般企業での受動喫煙防止対策の強化が求められることになるようです。

令和2年4月1日に改正健康増進法が全面施行されました。事務所、工場等の屋内の職場は、改正健康増進法の第二種施設「多数の者が利用する施設」(厚生労働省Q&Aによると「2人以上」)として、1.屋内禁煙、2.喫煙専用室設置、3.加熱式タバコ用喫煙室設置のいずれかしか認められなくなります。これまで許されてきた、紙巻タバコを喫煙しながらの就業やエリア分煙・時間帯分煙は許されなくなり、それに違反すると、50万円以下の過料の罰則もあるそうです。

最近では、「場所」での禁煙に加えて、勤務「時間」中の禁煙を導入する企業も増えてきています。新聞報道によると、コカ・コーラボトラーズジャパン㈱は、今年の1月から休憩時間を除く就業時間中の喫煙を全面的に禁止しています。「屋内禁煙」とするため屋外に喫煙場所を移し、また、社有車内は、休憩時間を含めて喫煙を認めないこととしたそうです。その他の企業でも、「喫煙した職員にその後45分間のエレベータ利用禁止」「職員のみならず来訪者にも喫煙後45分間の敷地内への立入禁止」「通勤路の歩きタバコや会社周辺のコンビニ前での喫煙禁止」といったルールを設けるケースがあります。

このように今回の法規制を上回る措置を実施する企業も増えてきていますが、そもそも使用者は、従業員の喫煙を制限することなんてできるのかなと、ぼくは疑問に思いました。なんですが、従業員(労働者)は、労働するにあたり使用者の指揮命令に従って労働を誠実に遂行する義務(誠実労働義務)があって、また、労働時間中は職務に専念し、他の私的活動を差し控える義務(職務専念義務)も負っています。これを根拠に、使用者は労働時間中の喫煙を禁止できると考えることができるようです。また、最高裁の判決でも、「「喫煙の自由」は保障されなければならないものではない。」と示されていて、喫煙の自由は制限できるものと考えられます。ここで問題となっているのは受動喫煙の「他者危害性」です。喫煙労働者の仕事中に離席して喫煙することによる非喫煙者である労働者の負担増や不公平感などは、以前より言われていることであり、また、最近では喫煙して帰ってきた者の衣服や呼気に残留しているタバコ煙が非喫煙労働者に苦痛を与えているも問題になっています。喫煙後も呼気から有害な成分が出続け、他者に迷惑や苦痛を及ぼすことを踏まえれば、休憩時間中に「他の労働者の休息を妨げてはならないこと」また、休憩後の勤務時間に「他の職員の職務集中に妨げとなるおそれがあること」を理由に休憩時間中の喫煙についても禁止することが正当とされる場合もあると考えることができるそうです。

2020年1月からハローワークの求人票に、「就業場所における受動喫煙防止のための取組」を明示することが必要になっています。求職者に対して、受動喫煙防止の取り組みを示さなければならないことになったわけです。もう少し踏み込んで、非喫煙者に限定した求人・採用は可能なのでしょうか。使用者は原則として「採用の自由」を有しています。いろいろな法律によって採用の自由が制限される場合があり、求職者の個人情報についても収集が禁止されてものもあります。しかし、喫煙については、職業安定法による個人情報収集の制限の対象外と考えられていて、収集が可能となっています。そして、実際に多くの企業が、様々な理由から「喫煙者不採用」の方針を公表しているケースもあり、使用者側が応募者の喫煙の有無を理由に雇入れを拒むことは、合理的な理由に基づくものであれば可能ということになるようです。

ビジネスガイド(日本法令)「企業がどこまでできる!?仕事中・私生活上の喫煙制限」より

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆身近な労働法の解説 ―労働者名簿―

会社(事業場)においては、労働基準法に定める帳簿を備えなければなりません。 その一つである「労働者名簿」について、解説します。

1.労働者名簿の調製

使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければなりません(労基法107条1項)。事業場の規模・法人・個人事業に関わらず、パート・アルバイト等雇用形態を問わず、全ての労働者について作成・整備します。ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。 また、記入すべき事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません(同条2項)。

2.労働者名簿に記入する事項(労基法107条、労基則53条1項)

氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入の年月日、退職の年月日およびその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)、死亡の年月日およびその原因

3.調製のポイント

・様式第19号(厚労省HPからダウンロード可能)が用意されていますが、調製に当たっては法定の項目が記入されていれば異なる様式を用いることもできます(労基則59条の2)。

・常時30人未満の労働者を使用する事業においては、上記2の「従事する業務の種類」は記入することを要しません(労基則53条2項)。

・労働者名簿と賃金台帳をあわせて調製することができます(労基則55条の2)。

・以下の要件を満たす場合は、電子データによって作成・保存することも認められます(平7.3.10基収94号、平17.3.31基発0331014号)。

・電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調製された労働者名簿に法定必要記載事項を具備し、かつ、各事業場ごとにそれぞれ労働者名簿を画面に表示し、および印字するための装置を備えつける等の措置を講ずること。

・労働基準監督官の臨検時等労働者名簿の閲覧、提出等が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、かつ、写しを提出し得るシステムとなっていること。

4.保存期限

労働者名簿は、3年間※保存しなければなりません(労基法109条)。 ※民法改正に伴う改正労基法109条では「5年間」ですが、附則143条において当分の間「3年間」とされています。 保存期間の起算日は、労働者の死亡、退職または解雇の日です(労基則56条1号)。

5.罰則

労基法107条(労働者名簿)・109条(記録の保存)の規定に違反した者は、30万円以下の罰金とされています(労基法120条)。


カテゴリー:所長コラム


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