人事・労務のエキスパート、石川県金沢市の社会保険労務士法人 末正事務所。人事・労務管理相談、社会保険労働保険手続き、紛争解決、組織活性、給与計算、人材適正検査まで、フルサポートします。

seminar

seminar

contact

ブログ

新型コロナウィルスへの会社の対応

2020年03月13日

ぼくの机の隣の書棚には、ボロボロになった本「菜根譚講話」があります。これは、亡くなった父が「おまえも人を使うようになったらこれを読みなさい。」と言って渡してくれた本です。結局、読んではいませんが(バカ息子ですね)、なんとなく大切にそばにおいています。月刊誌「致知」に、その菜根譚からの言葉が紹介されていました。「天は無心のところについてその衷をひらく」天は一つの目標に向けて意思を固め、無心に努力する者に、その真心をひらいて導いてくれる、ということだそうです。二宮尊徳は「世間、心力を尽くして私なき者、必ず功を成す」と言いました。私心なく心力を尽くす者は必ず成功する。なぜなら、そういう人を天が応援してくれるからだそうです。また、松下幸之助氏も「“むずかしいことだけれどやろうじゃないか”ということを言い続け、そして実際にやる努力を続けていけば、必ず事は成る。“もうできないだろう”とさじを投げたら、永遠にできない」と言っています。「私心なく」ということが一番難しいといつも思っていますが、「意志あるところ道はひらく」好きな言葉です。

新型コロナウィルスの流行がとまらないですね。「流行期」「蔓延期」のフェーズに入ったと言われますが、今後、流行期が2~3か月は続くと考えられるなかで、企業はどのような対応を求められるのか、厚生労働省が「新型コロナウィルスに関する事業者・職場のQ&A」を出しているのでその内容を見てみます。

2月1日付けで、新型コロナウィルス感染症が指定感染症として定められました。そのため都道府県知事が就業制限や入院の勧告を行うことができるようになっています。会社の就業規則には、「病者の就業禁止」が定められており「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者」などの就業を制限することが可能になっていますが、新型コロナウィルス感染症が指定感染症となったため感染症法の対象となり、就業規則による就業制限の措置をうけないことになりました。これによって何がおきるのかということですが、会社は就業規則に基づき就業を禁止することはできず、従業員の自主的な判断に基づき自宅待機などの対策を検討しなければなりません。そして、Q&Aでは、新型コロナウィルスに関連して従業員を休業させる場合の欠勤中の賃金の取扱いですが、「労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。」とされています。賃金の支払いが必要かどうかを、個別事案ごとに判断してくださいということみたいですが、注意が必要なのは、その休業が「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するかどうかということになります。例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、従業員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。また、この場合に使用者から一方的に年休を取得させることはできません。年次有給休暇の請求は、原則として労働者の希望する時季に与えなければならないとなっているためです。

では、従業員が自主的に、または会社の勧めにしたがって病院に行き、医師の診断や判断を尊重して自ら休業を選択するとした場合、従業員は会社に年次有給休暇の申請をして療養します。そして、会社は病気欠勤ではなく、年休として100%の賃金支払いをします。つまり、会社と従業員は、話し合ってお互いに納得したうえで、従業員は、年次有給休暇を取得し、療養に必要な期間を休んでもらうということが実務上求められることになりますね。

また、不要不急の外出を控えるよう言われているなかで、出張命令ができるのかということも気になります。ぼく自身、3月に東京出張がありましたが、万が一のことを考えて取り止めてしまいました。仮にウィルスに感染した場合ですが、「安全配慮義務を尽くさなかった」として会社が責任を追及される可能性もあるようです。ただ、安全配慮義務は、「結果債務ではなく、安全と健康そのものを請け負う債務とまではいえない」(菅野和夫「労働法」)とされているので、やはり、会社は、必要十分な安全衛生対策をとっておくことが求められることになります。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

心理的負荷要因にパワハラを追加 労災の認定基準見直し

厚生労働省は、精神障害に対する労災認定基準の見直しに着手しました。令和2年6月から、パワーハラスメント防止の措置義務が課されるのを踏まえた措置です。

業務によるメンタルヘルス不調については、現在、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(平23・12・26基発1226第1号)に沿って労災認定が行われていますが、労災請求件数は6年連続で過去最多を更新している状況にあります。

現行基準では、発症前6カ月間に業務による強い心理的負荷があったこと等が認定要件とされ、パワハラに近い事由として「嫌がらせ、いじめ、暴行」や「上司とのトラブル」等が挙げられています。

しかし、パワハラは「嫌がらせ、いじめ」とは異質な面があるとの見方から、独立した事由としてパワハラを分離し、その定義や強度を検討するとしています。

同省では、令和2年度中に調査を実施し、翌3年度以降に基準の改定を図る方針です。

トイレ使用制限で賠償命令 性同一性障害の公務員

性同一性障害の国家公務員が女性用トイレの利用制限を不服とした裁判で、東京地方裁判所は国に損害賠償を命じました。

原告は性同一性障害の診断を受けましたが、性別適合手術は受けておらず、戸籍上も男性のままでした。障害を理由として、女性の身なりでの勤務や女性用トイレの使用許可を求めましたが、トイレについては所属フロアから2階以上離れた階のものに限る等の条件を課されました。

地裁は、性自認に対応したトイレの使用を制限されることは、重要な法的利益の制約に当たる一方で、トラブルの可能性は抽象的なものにとどまると判示しました。上司による「手術を受けないのだったら、もう男に戻ってはどうか」等の発言も踏まえ、慰謝料など132万円の支払いを命じています。

裁判所は、性別に関係なく誰でも入れるトイレを設置した資生堂やLGBT(性的少数者)の社員が使用可能なトイレを整備したJXエネルギーの取組などを参考に、「国民の意識には相応の変化が生じている」とも指摘しました。

最大52時間分を還元 働き方改革で減少の残業代

東急建設㈱は、働き方改革により減少した残業代を、一時金として還元する新施策を講じました。対象者は、若手・中堅社員を中心とした「キャリア職」の総合職・一般職で全社員の4割に相当します。

同社では、18年7月にフレックスタイム、テレワーク、勤務間インターバル、時間単位年休など、労働時間制度の全面見直しを実施しました。

その前年度を基準として、残業時間の変化を計算したところ、総合技術職は年平均52時間、総合事務職は5時間の減少という結果が出ました。

同社広報では、「来年度以降も、年2回実施している従業員サーベイの結果をみて、取組の継続を判断する」としています。


カテゴリー:所長コラム


  • access
  • cubic
  • blog

pagetop