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『お客様は神様』なのか

2024年09月02日

顧問先様の社長から従業員と面談をする際にその会話を録音してもいいかと言われることがあるという話がありました。最近はスマートフォンで簡単に録音が出来るためそういう場面が多くなっていますし、ぼくは顧問先様の従業員と面談するときには必ず録音されているつもりで話すようにしています。録音する目的は、使用者からなにか法律違反やハラスメントに該当するような発言があったときに、それを証拠に会社を訴えるということなのだと思います。そのような録音は許可しないといけないのでしょうか、そもそもそういうことが認められるのでしょうか。そこで、労働基準監督官に雑談ついでに聞いてみたところ、「事業主の許可なく秘密で録音されたデータが監督署に提出されたからといって労基署が動くことはないです。民事で争うということなら別ですが、許可なく録音されたものは証拠にならないので。」という回答でした。秘密に会話を録音されることは避けられないですが、最近は、堂々と目の前にスマートフォンを置く従業員もいますので、安易に録音の許可しないほうがよいのではないかと個人的には思います。録音している中での会話に良好な人間関係が存在するとは思えないですし、迂闊にしてしまった発言が無用なトラブルを生じさせることになります。

厚生労働省が公表した最新の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にカスタマーハラスメントについて相談があった企業割合が年々増加傾向にあります。カスハラは、昨年の9月に改正された精神障害の労災認定基準において、審査時に考慮する心理的負荷の評価項目のひとつに追加されており、顧客から人格や人間性を否定されるような暴言を執拗に受けて精神疾患が発症した場合には労災認定される可能性が高まったため、安全配慮義務のある企業は対策が求められており、カスハラ対策に動く企業は増えています。たとえば、JR西日本のカスハラに対する基本方針では、被害を受けた従業員が弁護士に相談できる仕組みを整備して損害賠償請求などをしやすくなるようにしたり、JR東日本は「駅員への暴言や暴行、土下座の要求など」をカスハラ行為と定義し、該当する場合には顧客としての対応を取りやめることにしたりしています。また、大丸松坂屋百貨店は全国の従業員へ説明会を開くほか、カスハラ相談窓口を各店舗に設けることにしているそうです。大手コンビニ2社では、店舗で働く従業員の名札について、本名以外の記載を可能にし、従業員に安心して働ける環境を提供したそうですが、これまでに顧客からの無理な要求に対して、泣き寝入りしていた従業員がいかに多かったのかがわかります。ANAホールディングスの担当者は「従来は何でも申し訳ありませんとしがちだったが、社員を守るため、ある一線を越えたらカスハラと明確化した」といいます。

厚生労働省は2022年にカスハラ対応マニュアルを公表していて「場所を変えて2人以上で対応する」「メモや音声を記録で残す」「監督者や相談窓口と情報共有する」といった対応例をあげます。日本では「おもてなしを重んじるあまり、無理な要求に応じてしまう傾向があると指摘する学者もいますが、欧米ではマニュアルの定着が進んでいて、過度な迷惑客に対しては、最終的に対応を打ち切る「グッバイ・マネジメント」という考え方が浸透しているそうです。

「お客様は神様です」というフレーズがあります。昭和を代表する歌手、三波春夫さんの言葉です。これは客の立場の強さを表現する言葉ではなくて、三波さんがある地方公演で会場がお客さんの熱気に包まれる中、司会の方から「お客様をどう思いますか」と聞かれたときに「お客様は神様だと思いますね」と答え、会場が大いに盛り上がったので、その後のツアーでも同じ発言を行うようになったそうです。「お客様は神様です」について三波さんは、生前にその言葉の意味を「自分の完璧な歌をお客様と視聴者にお届けしなければならない」という心構えだと説明したそうです。お客様を神様だとみて、神前で祈る時のような気持ちで歌を歌うということが、「お客様は神様です」の真意なんですね。まさに「お客様第一」の考えを実践していたわけです。

「マーケティングとは人間や社会のニーズを見極めてそれに応えることである。」というフィリップ・コトラーの言葉がマーケティングの原点だとされます。お客様に対する真摯な姿勢とそれに応えるお客様からの感謝の気持ちの両方があってはじめて豊かな社会が形成されるのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

地域別最低賃金 5%引き上げ平均1054円へ 中賃審が「目安」答申

厚生労働省の中央最低賃金審議会は、令和6年度の地域別最低賃金の引上げ額の「目安」を全国一律50円に決定し、武見敬三厚生労働大臣に答申しました。

目安どおりに引き上げられた場合の上昇率は5.0%で、最賃の全国加重平均は1054円に達します。引上げ額は昨年実績の43円を上回り、4年連続で過去最大となります。北海道や茨城、滋賀など8道県が新たに1000円に到達し、到達済みの地域を含めると、計16都道府県が1000円以上となります。引上げ後の最高額は東京の1163円で、最低額は岩手の943円。最高額に対する最低額の比率は81.1%となり、80.2%だった昨年に比べ地域間格差が縮小します。

今後、目安を踏まえて都道府県の地方審議会が審議・答申し、引上げ額が決定されます。昨年は、24県が目安を上回る引上げを行いました。

目安の決定に当たり、消費者物価が上昇している状況を重視したほか、賃金上昇率が昨年度を上回る水準にある点も考慮しました。

労務費などの価格転嫁が進んでいない企業があるほか、物価高による倒産が増加傾向にあることから、答申では、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払い能力の面で「50円」の目安額は厳しいと指摘。政府に対し、中小企業などが賃上げ原資を確保できるよう、生産性向上の支援策や、価格転嫁対策の継続的な実施を要望しました。

◆調査

過半数代表者 不適切な選出方法が5割超 連合調査

 連合は、働き方改革の定着状況を把握するため、被雇用者1000人を対象にアンケート調査を行いました。36協定の締結当事者が誰か尋ねたところ、過半数労働組合は45.1%、過半数代表者が24.2%でした。過半数代表者の選出方法については、「会社からの指名」27.1%、「一定の役職者が自動的に就任」14.0%、「親睦会などの代表が自動的に就任」10.3%などの不適切な方法が、合計で5割を超えています。

また、年次有給休暇の5日取得の義務化を受け、休み方の変化を尋ねたところ、12.2%が「その分夏季や年末年始の特別休暇が減らされた」と答えています。


カテゴリー:所長コラム


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