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徳を積む

2023年01月05日

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

新しい年が始まるにあたって、古くから徳を身につけようとする人が、最初に読むべき本と言われている「大学」についての話をしたいと思います。(「『大学』に学ぶ人間学」より 東洋思想研究家 田口佳史氏著 致知出版社)

「大学」の巻頭には「大学の道は、明徳を明らかにするに在り」と書かれていて、ここに本義があるといわれています。江戸時代には、立派な人間になりたい人はまず「大学」を読むべしといわれ、今ならば小学校一年生の一学期の最初の授業で教えられていたそうです。まずはこの最初に出てくる「明徳」の意味を理解しないといけませんね。「徳」の概念ですが、本では松下幸之助さんの話が取り上げられています。筆者は、松下幸之助さんに「経営の神様と言われているあなたに、是非伺いたいことがあります。経営者というのは、いかなる条件を持っていないとできないものでしょうか?」と質問します。すると松下さんは即座に「運が強くなければダメだ」と答えたそうです。続けて「運を強くするにはどうしたらいいのですか?」と聞くと、この質問にも間髪入れずに「それは徳を積むことしかない」と答えられました。著者の田口氏は、「運というのは、自分の力を超えた存在である宇宙の哲理に沿った行動を自分に課することが運を強くするためには重要だ」と言います。なかなか難しいですが、自分の人生をしっかり生きようと思えば、天の道理・道義をよく知ることが必要だということになります。松下幸之助さんも「宇宙の哲理を承知していなければ、成功しても結局足をすくわれて惨めな末路になってしまう」といっています。その意味は、「宇宙の大原則に即して生きていくことが成功の秘訣であり、それを言葉や立ち居振る舞いとして表現することが徳なのだ」といい、そして、「そこにはほんの少しもやましいことや私利私欲があってはいけない」とも言っています。

ぼくなどは、「じゃどうしたらいいの?」となりますが、田口氏は、「徳」を「自己の最善を他者に尽くし切ること」だと表現していて、その純粋な形で相手を思いやって自己のベストを尽くすことが大事だという答えに三十年もかかってたどり着いたそうです。この考え方は大成功した人が共通に語っています。松下幸之助さんや稲盛和夫さんはこれを「生成発展」といいます。その意味は、常に世の中は発展していて、その宇宙の原理に則るかぎり、必ず成功するようになっており、成功しないのは自分にとらわれたり、何かにこだわったりして、この自然の法則に則っていないからだということです。

経営コンサルタントの小宮一慶さんは、決して宗教の話をしているわけではないと前置きしたうえで、著書「経営者の教科書」の中で、人を害する、人の不幸を願う、ライバルを蹴落とす、自分だけが良ければいい、などというのは宇宙の原理に反することで、そういった点において自身や自社がより良い商品やサービスをお客様に提供することにより、社会に貢献することが宇宙の原理にかなっていると書いています。また自分や自社も発展を続ける、小宮さんの言葉にすると「なれる最高の自分になる」ように務めることが生成発展にかなっていて、そこに妥協する余地はありません。つまり、自分や自社が成長、発展が出来ているのか、そして常にそうなろうと努力し続けることことが大切だということです。ビジネスの世界は「弱肉強食」ではなく、「優勝劣敗」」であって、会社同士も社員同士もお互いが切磋琢磨して、発展していくことが正しい姿です。「自分の仕事を通じて社会に貢献すること」や「それを通じて働く人が幸せになること」が会社の存在目的であることを十分に理解していれば、そのために頑張ろうと思うことができるし、とくに経営者はしっかりとそのことを認識している必要があります。

中国の古典に「暗いところから明るいところはよく見えるが、明るいところから暗いところは見えない」というのがあります。経営者は明るいところにいて、比較的暗いところにいる部下という舞台の上と下というイメージです。経営者は部下の様子はそれほどよくは見えないけれど、部下たちからは経営者の動きは、とてもよく見えるものだという意味です。この一年、常に他人に見られているという意識をしっかり持ち、行動をしたいと思います。

特定社会保険労務士 末正哲朗  

◆最新・行政の動き

厚生労働省は、コロナ禍で助成内容を拡充している雇用調整助成金について、今年12月から原則として通常の制度に戻す方針を明らかにしました。助成の日額上限は中小企業・大企業ともに雇用保険の基本手当と同額の8355円を維持しつつ、休業手当相当額に対する助成率を中小企業3分の2、大企業2分の1に引き下げます(11月までの助成率は中小企業が原則10分の9、大企業が同4分の3でした)。

とくに業況が厳しい事業主に対しては、来年1月末まで助成額などを上乗せする経過措置を設定します。売上高などの生産指標が最近3カ月の月平均で前年、前々年、または3年前同期比で30%以上減少しているケースが対象。助成上限額は9000円で、助成率は中小企業が10分の9、大企業が3分の2。解雇を行った事業主は順に3分の2、2分の1とします。

新型コロナの影響で小学校などが臨時休業した場合に、子どもの保護者に有給の休暇を取得させた企業に支給する小学校休業等対応助成金については、支給対象となる休暇取得期間を来年3月まで延長する方針。日額上限額は8355円を維持します。

一方、緊急事態宣言の対象区域などの事業主へ日額1万2000円まで支給する特例措置は、11月末で廃止となります。

◆ニュース

労災認定 事業主の「不服」表明可能に 保険料引上げ巡り

厚生労働省は、自社の労働災害の発生状況に応じて労災保険率が増減する労災保険のメリット制について、事業主が労働保険料の引上げ決定後に「労災認定は違法」として保険料決定に関する不服を申し立てられるよう、行政解釈の変更を行う考えです。近年、保険料決定処分の取消し訴訟において、保険給付支給の違法性の主張が認められるケースが現れていました。

都道府県労働局長が行った保険料引上げの決定を不服として、事業主が厚労大臣に審査請求し、厚労省での審査において労災給付が支給要件に該当しないことが認められた場合、労働保険料の引上げは行わないものとします。一方、労働者に対する支給決定自体は取り消さない方向です。支給決定を取り消せば、いったん支払った給付の回収や支給打ち切りを行う必要が生じることから、支給決定を維持し、給付を生活の糧にしている被災労働者や遺族に甚大な影響が及ぶのを防ぎます。

産業医勧告 不利益取扱い禁止は努力義務 東京高裁

産業医事務所が、労働安全衛生法に基づく勧告権行使を理由に顧客企業から契約を解除されたと訴えた裁判で、東京高等裁判所は同事務所の請求を棄却しました。

同事務所の産業医は平成31年4月15日、勧告書を顧客企業の代表取締役に手交しました。内容は、同社の総括安全衛生管理者兼人事総務部長が不適切な健康管理運営をしているため、処遇を考えて欲しいというものでした。同社は勧告書の内容を踏まえ、弁護士を選任し、産業医を含めた関係者の聞き取り調査を進めた結果、指摘事項の多くは存在が認められませんでした。認められたものについても緊急の対応は必要なく、法令違反もないとの結論を得て、同年6月19日に産業医との契約を解除しました。

二審の同高裁は一審同様、契約解除を有効と判断しました。同社は勧告書を受け取った際、事実確認のうえ、必要に応じて改善措置を講じると約束しており、勧告権行使は契約解除の理由ではないと評価しています。産業医が同社の言い分に耳を貸さず、労基署の行政指導を示唆するなど、対決姿勢を深めていき、信頼関係破壊に至ったとしました。

勧告権行使を理由とする不利益取扱いを禁止した安衛則第14条4項の規定は「努力義務」と判示。委嘱契約は準委任に当たり、原則双方がいつでも契約解除できるが、安衛法第13条5項が労働者の健康確保のために産業医に職務権限を与えていることを考慮し、契約解除が法の趣旨を実質的に失わせている場合は権利濫用に該当するとしています。


カテゴリー:所長コラム


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