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進化するデジタルマーケティング

2022年12月01日

日経新聞に「城崎温泉復活へ宿泊データ共有」という記事がありました。兵庫県の城崎温泉が生き残りをかけて宿泊データを地域内で共有し始めたというものです。最上位の企業秘密といえる各旅館の予約データを自動で収集・分析するシステムを構築し共有することで、各旅館は他の旅館や地域全体のデータを参考にして、需要予測や宿泊プラン作りなどに生かしているそうです。これまでは「いつどこから観光客が来ているのか、今までは正確に把握できていなかった」のが、ウェブのプラットフォームを使い、予約の日程、人数、金額、予約者の居住地域などを自動で収集し、温泉地全体の予約状況を可視化して、数カ月先までの需要を予測できる仕組みを作り上げたということです。個別の旅館名や予約者名などのプライバシーに配慮したうえで、プラットフォームに参加する旅館は自社のデータを提供する代わりに、同価格帯の旅館や地域全体の平均データなどを閲覧できるようになります。そうなると、たとえば「今月に入って東京からの予約が少し増えている」という情報がある時には、都民の誘客に注力するため都民向けの広告を大幅に増やしたり、連休中の同価格帯の旅館データから高価格の需要が見込めると判断できたときには、安売りプランの販売を控えても全客室に予約を入れられたりという成功事例が出てきて戦略がとても立てやすくなったそうです。

城崎温泉が情報共有に踏み切った背景には、新型コロナウィルス禍による旅行需要の激減があります。特に2020年度は観光客数が44万8千人と前年度からほぼ半減していて、旅館業の経営はこれまでの「勘と経験だけ」では立ちゆかなくなりました。それに加えて温泉地にくる旅行客は団体旅行から個人旅行へ移行していて、需要を可視化できる精緻なデータの必要性がますます高まっています。そして温泉旅館は競合するライバルでありながら運命共同体になってきており、また温泉地の活性化が、地域全体の潤いをもたらすという考えから他の温泉地でも個人客の嗜好の多様化を温泉地全体で応える取り組みが行われ始めています。

今、私たちはどんどん進化する「デジタルマーケティング」の時代に生きています。従来のマーケティングの手法に加えて、AIなどのデジタル技術の発達が「進化」をもたらしているといわれます。AIの発達に加えて消費者がネットを活用していることにより、企業は「購買前」のデータを「個別」に取得することが可能になったといわれます。たとえばネット上の購買履歴から、Aさんはどういう商品やブランドをよく買い、何と何を比較した後にどういう商品を買っているかということが分かり、また購入の時間帯も分かるので、企業側は、かなり精緻な「購買前」のデータを取得して、それに応じた個別の提案が可能になっています。その手法は現在の個人の嗜好の多様化にとてもマッチします。このように収集されたデータが、今後ますます、マーケティングだけでなく企業の戦略立案に大きな影響を与えることは間違いなさそうです。

ちなみにマーケティングといえばやはりドラッカーですね。ドラッカーのマーケティングの本質をついた言葉と言われているのが、「マーケティングの目的は、セリングを不要にすることなのである。マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ。理想を言えば、マーケティングは製品なりサービスを買おうと思う顧客を創造するものであるべきだ。そうすれば、あとは顧客がいつでも製品やサービスを手に入れられるようにしておきさえすればいい。」(ピーター・ドラッカー『マネジメント』)です。ドラッカーは、マーケティングの目的は「セリング(営業活動)」を不要にすることだといいます。つまりマーケティングができていれば営業活動をしなくても商品やサービスは売れるということになります。言い換えると、企業が存続を許される条件は、良い商品やサービスを顧客に提供し続けることが必要だとなります。同じように松下幸之助氏は、社会の発展や人々の生活の向上のために企業が商品やサービスを提供することを行えている限り企業も生き残り、発展すると語っています。マーケティング活動が企業の存在意義そのものだと言われる所以です。ぼくもお客様のお役に立てる存在であり続けられるように努力して、常に謙虚でいられるなら長く社労士をさせてもらえるのであろうと信じています。(参照:「小宮一慶の実践!マーケティング」日本経済新聞出版社)

特定社会保険労務士 末正哲朗

最新・行政の動き

厚生労働省は、コロナ禍で助成内容を拡充している雇用調整助成金について、今年12月から原則として通常の制度に戻す方針を明らかにしました。助成の日額上限は中小企業・大企業ともに雇用保険の基本手当と同額の8355円を維持しつつ、休業手当相当額に対する助成率を中小企業3分の2、大企業2分の1に引き下げます(11月までの助成率は中小企業が原則10分の9、大企業が同4分の3でした)。

とくに業況が厳しい事業主に対しては、来年1月末まで助成額などを上乗せする経過措置を設定します。売上高などの生産指標が最近3カ月の月平均で前年、前々年、または3年前同期比で30%以上減少しているケースが対象。助成上限額は9000円で、助成率は中小企業が10分の9、大企業が3分の2。解雇を行った事業主は順に3分の2、2分の1とします。

新型コロナの影響で小学校などが臨時休業した場合に、子どもの保護者に有給の休暇を取得させた企業に支給する小学校休業等対応助成金については、支給対象となる休暇取得期間を来年3月まで延長する方針。日額上限額は8355円を維持します。

一方、緊急事態宣言の対象区域などの事業主へ日額1万2000円まで支給する特例措置は、11月末で廃止となります。

◆ニュース

労災認定 事業主の「不服」表明可能に 保険料引上げ巡り

厚生労働省は、自社の労働災害の発生状況に応じて労災保険率が増減する労災保険のメリット制について、事業主が労働保険料の引上げ決定後に「労災認定は違法」として保険料決定に関する不服を申し立てられるよう、行政解釈の変更を行う考えです。近年、保険料決定処分の取消し訴訟において、保険給付支給の違法性の主張が認められるケースが現れていました。

都道府県労働局長が行った保険料引上げの決定を不服として、事業主が厚労大臣に審査請求し、厚労省での審査において労災給付が支給要件に該当しないことが認められた場合、労働保険料の引上げは行わないものとします。一方、労働者に対する支給決定自体は取り消さない方向です。支給決定を取り消せば、いったん支払った給付の回収や支給打ち切りを行う必要が生じることから、支給決定を維持し、給付を生活の糧にしている被災労働者や遺族に甚大な影響が及ぶのを防ぎます。

産業医勧告 不利益取扱い禁止は努力義務 東京高裁

産業医事務所が、労働安全衛生法に基づく勧告権行使を理由に顧客企業から契約を解除されたと訴えた裁判で、東京高等裁判所は同事務所の請求を棄却しました。

同事務所の産業医は平成31年4月15日、勧告書を顧客企業の代表取締役に手交しました。内容は、同社の総括安全衛生管理者兼人事総務部長が不適切な健康管理運営をしているため、処遇を考えて欲しいというものでした。同社は勧告書の内容を踏まえ、弁護士を選任し、産業医を含めた関係者の聞き取り調査を進めた結果、指摘事項の多くは存在が認められませんでした。認められたものについても緊急の対応は必要なく、法令違反もないとの結論を得て、同年6月19日に産業医との契約を解除しました。

二審の同高裁は一審同様、契約解除を有効と判断しました。同社は勧告書を受け取った際、事実確認のうえ、必要に応じて改善措置を講じると約束しており、勧告権行使は契約解除の理由ではないと評価しています。産業医が同社の言い分に耳を貸さず、労基署の行政指導を示唆するなど、対決姿勢を深めていき、信頼関係破壊に至ったとしました。

勧告権行使を理由とする不利益取扱いを禁止した安衛則第14条4項の規定は「努力義務」と判示。委嘱契約は準委任に当たり、原則双方がいつでも契約解除できるが、安衛法第13条5項が労働者の健康確保のために産業医に職務権限を与えていることを考慮し、契約解除が法の趣旨を実質的に失わせている場合は権利濫用に該当するとしています。


カテゴリー:所長コラム


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