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パワハラ防止対策の義務化

2020年01月07日

ある調査のために県内の大きな企業に訪問したときのことです。広い事務所スペースの一角で担当者のかたにお話を聞かせていただいていたところ、衝立の向こうから「バカかおまえ!」「こんなことやっているからバカなんだよ!」とバカを5回くらい連発して部下を指導する上司の声が聞こえてきました。あまりにストレートなパワハラだったので、ぼくは、今どきこんな上司がいるんだと気をそちらにもっていかれていたところ、その担当者のかたに「気にしないでください。」と言われて、いつものことなんだなぁと思いましたが、いまどきこんなにわかりやすいパワハラ上司をほっておく会社もどうかと思いますが、こんなにわかりやすいパワハラをしている自分に気づかない上司というのも不思議に思いました。

先日、三菱電機の新入社員だった20代の男性が昨年8月に自殺し、兵庫県警三田署が教育主任だった30代の男性社員を自殺教唆容疑で書類送検していたと報じられました。新入社員の男性は、上司である教育主任から日常的に暴言を受けていたとのことで、神戸地検は刑事責任の有無を慎重に判断するとみられているそうです。同社によると、亡くなった社員は技術職として4月に入社し、配属先で教育主任の指導を受けており、その後8月に自殺しました。その教育主任は社内調査で「死ねとは言っていないが、似たような言葉を言ったかもしれない」と言っているそうです。このケースでは、入社からたった4ヶ月で自殺にいたっています。ぼくが相談を受けたことのあるケースでも、入社して3ヶ月程度の社員が上司のパワハラで精神疾患を患うようになったということがありました。こういう場合、会社は「そんなわずかな期間で精神疾患になるわけない。他に原因があるはず!」といいますが、今回のケースにみるように会社に対して刑事責任を問われるまでになるということがはっきりしました。

そんな中、企業に初めてパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法の今年6月の施行(中小企業は2022年4月1日から)に向けてパワハラの定義や防止策の具体的内容を盛り込んだ指針がまとめられたと発表されています。職場におけるパワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者に身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境が害されること、をすべて満たしているものとされています。また、今回の法改正によって、パワハラだけでなくセクハラやマタハラなど職場におけるハラスメント対策全体が強化されているので注意が必要です。パワハラ対策を今後、企業は導入していく必要がありますが、経営者が、まずはパワハラとは何か、パワハラが起こったらどのような影響があるのかを理解しておく必要があります。経験上、パワハラの結果として起こるのは社員の離職です。やはり、ひとりの社員のパワハラ行為がきっかけで他の社員が次々と退社していくというのは、一番の罪だと思いますし、会社にとっても大きな損失になります。

そこでパワハラへの基本的な対策です。まずは、企業として、職場のハラスメントをなくすという明確な方針を社員に対して打ち出す必要があります。そして、就業規則等を整備することで、起こった場合の対処方針を定めます。実態調査や、ハラスメント研修の実施により全社員への周知や啓発を行うことが必要です。そして、実際にハラスメントが起こったときのための解決方法ですが、相談窓口を設置しておくことが必要です。これまでのぼくのケースでも相談窓口を設置した途端にハラスメントの相談が窓口に入ることが多くありました。ハラスメントで悩んでいる社員はどこの会社にもいるということなのでしょう。相談担当者を誰にするのかや相談があった場合の対応フローなども事前に決めておいたほうがよさそうです。

ハラスメントはこれまでも問題視されることが多かったので、対策をとっている会社は多いと思いますが、今回のパワハラ防止対策の義務化を契機にもういちど社内を見直すことがよいのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

時間単位の取得も可能に 介護・子の看護休暇

育介休業法施行規則・指針の改正により、介護休暇と子の看護休暇について1時間単位の取得を可能とします。  事業主に十分な準備期間を確保させるため、改正施行規則などの施行は令和3年1月1日を予定しています。  介護休暇は要介護状態にある家族の介護のため、子の看護休暇はケガ・病気等子の世話をするため、1年度5日(対象者が複数のときは10日)を限度に付与されます。現行の仕組みでは、全日のほか、「半日」単位の取得も認められています。  今回の改正では、取得単位をさらに柔軟化し、原則として始業または終業と連続する「1時間単位」とします。ただし、個々の労働者の事情も考慮し、始業・終業と連続しない時間単位取得も可能とするよう指針に明記し、事業主に配慮を求めます。  このほか、現在(改正前)は「半日単位」での休暇取得の対象から除外されている「1日の所定労働時間が4時間以下の労働者」に関しても、時間単位の休暇利用を可能とする方針です。

全学歴で過去最高を更新 経団連・2019年初任給調査

経団連と東京経営者協会は、2019年3月卒業者を対象とした「初任給調査」をまとめました。すべての学歴で過去最高額を更新し、大卒21万7981円(対前年比0.76%増)、高卒17万932円(同1.05%増)となっています。  決定に当たって考慮した要因は「世間相場」(27.9%)が最も多く、「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」(21.1%)が続いています。  2019年の卒業者が入社した時点で、東京の最賃は985円でした。17万円は172時間分に相当し、月の所定労働時間と変わりません。「最賃の影響から、2~3年前の初任給額では通用しない現状にある」(賃金システム研究所赤津雅彦所長)という指摘もあります。

申請3年以内に希望地へ 地域限定社員制度を拡充

オタフクソース㈱は、令和2年4月から「地域限定制度」を見直し、同制度を選択した社員は3年以内に希望地域へ異動できるようにするとしています。  改正前は、「育児・介護に従事」「配偶者との別離が困難」等の理由がある場合、「現在、勤務している地域」に限定して勤務できる仕組みでした。  改正後は、対象を全社員に広げるとともに、たとえば広島勤務者が関西勤務等を選択することも可能となります。条件は、本人・家族の居住地があり、会社の事業所があることです。ただし、全国転勤型と比べると、賃金水準を一般職5%、管理職10%相当、減額調整するとしています。  同社では、令和元年10月にも、時差通勤制度・テレワーク制度を導入するなど、仕事と家庭の両立をサポートする体制整備を進めています。


カテゴリー:所長コラム


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