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年金の受給開始が75歳に

2019年11月06日

厚生労働省が、現在は60歳~70歳の間で選べる公的年金の受給開始年齢を75歳にまで期間を広げる案を社会保障審議会の部会に示すことになりました。公的年金の受け取り開始を75歳まで遅らせた人には毎月の年金額をどれだけ増額することが妥当なのかといったことを議論するようです。

繰り下げ受給は、年金の受け取り開始を遅らせると年金の受け取り期間が短くなるぶん、毎月の年金額を増やすことができます。現状は1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ増やすようになっていて、基本的には65歳から支給される年金の支給開始を70歳からとする5年後に遅らせると、毎月の支給額は42%増えることになります。そうなると、今のままのルールで受け取り開始年齢を75歳からとした場合、年金額は65歳で受け取り始める人に比べて84%増えるということになります。

厚労省によると2018年の日本人の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳となっていてここ数年過去最高を連続更新しています。年金を何歳から受給するのかは個人の価値観によりますし、また現状では、時期を遅らせて年金を受け取り始める人は高齢者の1%前後しかいないということなので、75歳まで増やすことができるということになっても、75歳から年金を受給する人はほとんどいないということになりそうです。自分は年金に頼らなくても生活できるから幸せ者だと思えるような人じゃない限り、どうせもらえるものなら早く受け取りたいと考える人が普通だと思います。

政府が考えているのは、高齢者の就業拡大で、元気な人には長く働いてもらい年金制度の支え手にまわって欲しいということです。ただ、70歳までの増額率を0.7%と決めたのは2000年の時点です。当時から現在までの平均寿命の延びを考えると増額率を下げなければ過剰給付になるリスクがあり、そしてそのツケはそのまま将来世代に回ることになります。

その他にも厚生労働省が提議しているのは、基礎年金の保険料支払期間を40年から45年に延長するということです。現在は、基礎年金の元になる国民年金保険料の支払い期間は、20歳から60歳までの40年間となっています。60歳まで国民年金保険料を支払った後、国民年金の老齢基礎年金が65歳から支給されることになります。現在、老齢基礎年金は、10年以上国民年金に加入した人が受け取ることが出来ますが、40年支払った場合に受給できる額は、年額780,096円(令和元年度)となっています。支払期間が延びるのであれば、年金額も増額になるべきだと思いますが、どのようになるのでしょうか。

あとは、先月も書きましたが、在職老齢年金の制度変更です。現在、月収47万円を超す稼ぎがある65歳以上の人は、本来もらうべき厚生年金が減らされたり支給が止められたりします。厚生労働省はこの月収基準を62万円程度に引き上げ、年金減額・停止の対象者を少なくすると考えています。しかし、この47万円というのは、月収+厚生年金月額のことです。また、厚生年金の額は、多くの人は10万円程度です。ということは、月収が37万円を超える人の年金の減額・停止をなくすということになりますが国はどのような社会を想定しているのでしょうか。65歳以上で、37万円を超える給与をもらっている人を守る必要があるのかわかりませんが、抜本的な制度改革が必要に思います。厚労省は、2020年の通常国会に関連法の改正案を出すべく準備をすすめているということです。

今後の社会保障給付費は政府の推計では2025年度に140兆円に達します。18年度に比べて16%も増加することになるそうです。本来であれば社会保障改革を積極的にすすめるべきなのですが、そうなってはいないようです。背景にあるのは、社会保障費の自然増が近年で最も少なくなっていることがあるからということです。相対的に人口が少ない戦中・終戦直後生まれの世代が75歳にさしかかっているため、後期高齢者数の伸びが一時的に鈍っていることが原因だそうです。ですが、その後の財政悪化を待っていては手遅れになってしまうので今のうちになんとか手をうってほしいところです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

会社パソコンで求人申込み可能に 職安の紹介システムを一新

厚生労働省は、令和2年1月から、ハローワークの職業紹介システムを全面刷新します。自宅や会社のパソコンなどによる求職・求人申込みが可能となり、待ち時間の削減など、求人・求職者双方の利便性・効率性を向上させるのがねらいです。

新システムでは、求人企業に「マイページ」を付与します。事業所のパソコンを通じてマイページを開設すれば、原則として窓口に書類を持参する必要がなくなり、採否連絡もマイページ経由となります。

求人情報の発信時には、事業所の画像やメッセージなどPR情報を掲載することも可能となります。20年度以降の予定として、求人企業がオンラインで求職者情報(公開希望者に限定)を検索し、併せて求職者にコンタクトできる仕組みも整えます。

求職者についてもパソコン利用(マイページ開設)による利便度を高め、ミスマッチの解消を図ります。同時に、労働市場のインフラ整備として「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」(仮称)の運用開始を急ぐとしています。

後継者試用雇用に補助金 世代交代を集中支援 中企庁

中小企業庁は、令和2年度、事業承継・世代交代集中支援事業をスタートさせます。今後10年程度の中長期スパンで、専門家派遣等の個別支援を強化するとともに、補助金制度も拡充する方針です。

個別支援については、都道府県の「事業承継ネットワーク」による診断件数を拡大し、承継ニーズの掘り起こしを目指します。必要性が認められた企業に対しては、計画策定の支援や専門家派遣等のサービスを提供します。

新設する承継トライアル補助金は、後継者不在の中小企業での第三者継承を促進するもので、外部から候補者を試行的に雇用する際の費用等を支援します。

既存の事業承継補助金に関しては、新規事業に参入する際の支援を手厚くするなど、事業再編・業態転換などへの挑戦をさらに後押しする方向で見直すとしています。

◆監督指導動向

労働時間把握で是正勧告 PCの使用記録とかい離 千葉・船橋労基署

千葉・船橋労働基準監督署は、千葉県水道事務所本所と水道局本局、船橋水道事務所本所に対する立入調査を実施しました。その結果、パソコンのログと労働時間のかい離が発見されたため、千葉県に対して、実態調査と割増賃金の支払いを求める是正勧告を行いました。

同県が職員本人に確認する等の調査を実施したところ、職員(管理職除く)903人のうち、500人に割増賃金の不払いが認められました。不払い額は定例議会に補正予算案として計上し、議決後速やかに支給するとしています。

現場では「時間外・休日労働(36)協定の順守を徹底するあまり、時間外を申請しづらい雰囲気もあった」といいます。同県では再発防止策を講じるとともに、36協定の見直し(特別条項の締結)等も行っています。


カテゴリー:所長コラム


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