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「妊娠・出産・育休等を契機とする不利益取り扱い」

2018年08月10日

サッカーの第21回ワールドカップロシア大会は、決勝でフランスがクロアチアに勝ち、20年ぶり2度目の優勝で終わりました。日本代表の活躍もあって、とても盛り上がった大会となりましたね。決勝戦では敗れながらも大会最優秀選手に選ばれたクロアチアのモドリッチやベストヤングプレーヤー賞に輝いたフランスの19歳のFWエムバぺなど若い選手の活躍が目立った大会でもあったようです。一方で、メッシのアルゼンチン、C.ロナウドのポルトガルが早々に敗れ去ったため、10年以上も続いた2人の時代は、「ロシアW杯で終わりを告げた」と報じられています。広いピッチを、疲れを感じさせず走り回り攻守両面で大活躍した若手の二人と比較されたメッシ、ロナウドですがいくらなんでも「永遠に超人」というわけにもいかないわけで、若手のように試合時間中走り続けることなんてできないでしょうし、そんな必要もないのでしょう。ゴール前でボールがきたら、確実にゴールを決めることが二人の仕事なんだろうと思いました。ぼくも、7月で51歳になりました。これまでは、365日走り続けてきたような感覚がありますが、メッシ、ロナウドのように必要なときに確実にお客様に喜ばれる仕事ができる社労士でいたいと思いました。これからは、「半端ない社労士」になれるようがんばります!

先日、お客様のところに労働局の調査が入りました。男女雇用機会均等法に基づいてハラスメント対策などの法律に沿った措置が講じられているかの調査でしたが、ご存知の通り、パワーハラスメントを除き、セクハラと妊娠・出産などに関するハラスメント対策については、法律で就業規則に規定しておくことが求められています。

実務上、とくに注意が必要になるのは、『妊娠・出産・育休等の事由を「契機として」不利益取り扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産・育休等を「理由として」不利益取り扱いがなされたとして、法違反だとされる』ということになります。原則として、「妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取り扱いがなされた場合は「契機として」いると判断されます。

数年前にあった事例ですが、雇い入れた後、その社員の試用期間中の勤務態度が良くなかったために、試用期間終了後は、本採用しないと本人に解雇通告したところ、実は入社後に妊娠しており、そのことを理由に労働局へ救済を求めたということがありました。妊娠は致し方ないことですが、入社直後となると、雇う側はとても頭の痛い問題となります。このケースでも、妊娠を「理由とした」解雇であるとされてしまうと、雇用は継続され、当然のことながら出産後は、育児休業の取得も可能になります。このケースの場合は、周囲の社員の話から、本人は出産後にすぐに2人目の妊娠も望んでいるという情報もあったため、理屈上、働かないまま、この先何年も雇用し続ける必要が生じるということも考えられました。しかしその会社は、しっかりと人事考課の結果や入社後に実施した教育記録等をしっかりととってあったこともあり、最終的には会社の言い分が認められることになりました。

また、別の会社でも妊娠した女性社員を解雇したことがありました。解雇する前に、そこの社長には「妊娠を理由とした解雇として裁判で負けますよ。」と話をしましたが、本当に妊娠が理由ではなく、本人の勤務態度不良が原因だからということで、その社長は、解雇することを希望しました。私も、当時、2年ほど前から、この社員の問題行動の相談は受けていたので、とにかく最後までやりましょう、と解雇したわけですが、結局、裁判となり、地裁の段階で裁判官から和解を求められ、和解金を支払うこととなりました。こういった場合、会社側の言い分が認められることは非常に難しいといえるでしょう。

先ほどの労働局であっせんになったケースは、たまたまその社員は外国人でしたが、これからはいろいろな考えを持った社員が会社に入ってくる可能性がとても高くなります。これまでは必要なかったような細かい労務管理が求められる時代になったということでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

 

◆今月の実務チェックポイント

 

国民年金保険料後納制度

 

国民年金の保険料の「払い忘れていた期間があり、時効により納めることができなかった期間」について、平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、過去5年以内の分を納めることができる制度です。

 

平成30年9月末日までに支払いをすることで、年金の受給資格ができたり、将来の年金額を増やすことができる制度です。

 

「なぜ5年以内の分を納めると受給資格ができる場合があるの?」

 

平成29年8月1日から、20歳以上60歳未満の期間のうち、納付済み期間+学生納付特例承認期間+免除・猶予承認期間+日本国内に住所を有しない期間等の資格期間が、10年以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになりました。

 

そのため、上記の納付済み等の期間を足しても10年に満たなかったため、老齢年金の受給資格を得られなかった方が、過去5年以内の払い忘れた分を納付することで、10年以上になる場合があります。

 

※日本国内に住所を有しない期間などは、合算対象期間(カラ期間)といい、年金額には反映されない期間です。

 

ただし、海外在住期間(日本国内に住所を有しないカラ期間)については、後納の申出はできません。

 

申し込みは平成30年9月28日までとなっています。

 

後納可能期間の確認等に時間がかかる場合もあり、また納付書は後日郵送で到着するため、余裕を持って申し込むことをお勧めします。

 

◆ニュース

 

労契法へ請求権を明記へ 解雇の金銭救済制度

 

厚生労働省は専門検討会を設置し、「解雇時の金銭救済制度」の具体的設計に関する議論をスタートさせました。半年ほどをかけて検討会報告をまとめる予定で、具体的金額は別途労働政策審議会で検討する見通しです。

 

金銭救済の法的モデルとしては、①判決確定後に改めて金銭救済を申し立てる仕組み、②不法行為として損害賠償とともに金銭救済を支払う仕組み、③一定要件を満たした場合の請求権を労働契約法などの実態法に新たに規定する仕組みが考えられます。

 

有力視されているのは、③の仕組みです。労契法等に基づき労働者が金銭救済を提起すると同時に、解雇が客観的合理的で社会通念上相当性を有しているかも判断する形をとります。解雇の合理性と金銭救済の支払いを裁判所が1回で判断する仕組みなので、労働者にとって分かりやすく、負担も軽減されます。

 

労契法16条(権利乱用)に基づく解雇が対象となるのは当然として、そのほか労基法19条(業務上傷病の解雇制限)によるもの等を含めるかも検討課題となります。

 


カテゴリー:所長コラム


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