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「通知書と契約書の違い」

2016年12月27日

今年、5月13日に東京地裁が大変、興味深い判決が出しています。定年後再雇用による嘱託社員(有期契約労働者)と正社員(無期契約労働者)との間の賃金が、同一業務を行っているにもかかわらず相違があるのは不合理であり労働契約法20条に違反するとして、嘱託社員の賃金の定めが無効とされ、正社員の賃金規程が嘱託社員に適用されることになり、その差額賃金相当額の支払いを命じられました。

これまで、60歳で定年を迎えた社員の賃金は、老齢年金と高年齢者雇用継続給付金の受給の関係から、定年前の賃金の6割程度に減額するといったことが広く行われてきました。賃金が減っても、実質的な手取額はそんなに変わらないという理屈で経営者も社員もお互いに納得していたわけです。

しかし、現在は老齢年金の支給開始年齢は引き上げられており、60歳からは年金を受給できなくなっています。そういったこともあっての争いだったんでしょうね。これからは、安易に定年後の賃金を減額することは止めたほうがよさそうです。減額する場合は、なんらかの対策を講じる必要があります。

 

先日、東京でセミナーを受講してきたんですが、その講師の弁護士さんが、「労働条件通知書」と「労働契約書」の違いについて話をされていました。なるほどと思ったのでご紹介したいと思います。

よくお客様から、通知書と契約書の違いとどちらにするべきなのかについて質問をうけます。労働基準法では、「労働者を採用するときは、賃金、労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければならない。」とされており、契約書のかたちにすることまでは求められていません。なので、通知書で十分ですとお話しさせていただくわけですが、中には従業員に確認しましたという跡を残したいという理由で契約書を選ぶ事業主もたくさんいらっしゃいます。

そこで、法律的なお話です。一般的に労働条件の変更は、会社が一方的に行うことが出来る就業規則の変更によることが会社にとっては簡単です。なぜなら就業規則の変更には、労働者の同意は不要だからです。あまりの不利益変更でない限りこれで十分です。しかし、労働契約として書面を取り交わした場合、その内容について、会社側からの一方的な変更は出来なくなり、必ずその労働者の同意が必要になります。労働者の同意がない限り、労働時間や賃金などの変更ができないというのは、会社にとってはかなり不都合なのではないでしょうか。

なので、契約書形式を選ぶ場合は、「今回限り」とか「あなたにだけ特別に」といったケースで、労働者に不利益を生じさせる場合に限るべきといったことを話されていました。契約書形式をとらないほうがよさそうです。

 

内閣官房に「働き方改革実現推進室」が開所されました。安倍首相は、「モーレツ社員の考え方が否定される日本にしていきたい」と話されたそうです。これからますます長時間労働が悪とされる取り組みがなされるのでしょう。長時間労働は良いことだとは思いませんが、一方で労働関係法制の緩和も求めたいところですね。

 

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


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