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「GDPと賃金について」

2016年01月20日

昨年、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の新たな目標である「一億総活躍社会の実現」に向けた政府の緊急対策案が発表されています。対策は、①2020年頃までに国内総生産(GDP)600兆円②出生率1.8%の実現③介護離職ゼロとなっており、アベノミクスの「新3本の矢」に沿って構成されています。

その実現に向けて出生率上昇のための出産・子育て支援、また介護離職対策では介護休業の分割取得や介護休業給付の支給額を増やすことが予定されています。

そして、GDP600兆円に向けた経済対策では、個人消費のテコ入れのため、最低賃金を1000円に引き上げるという目標が明記されました。これは、鶏が先か卵が先かといった話でないでしょうか。

ご存じの通り、GDPというのは、給与の原資となるものです。GDPが増えないと、給与も増えません。だからこそ、これまでの20年間、日本のGDPは、ほとんど変わらなかったために給与も増えませんでした。私が、大学を卒業して生命保険会社に入社した当時(25年前)の給与は、20万円位だったと思いますが、今の新入社員の給与もほとんど変わっていませんですしね。

 

今回の政策は給与を先に上げることでGDPを増やそうというものです。多くの中小企業では、バブル後入社の若い社員の給与が、低く抑えられてきたために、50代以上の社員の給与との間に格差が生じています。若い世代の社員の給与を引き上げたいという相談も多くあり、とてもよいことだと思いますが、急に若い社員の給与だけを引き上げるのは、制度上、無理があるので難しいところです。

 

先日、お客様のところで打ち合わせをしている際に、今年はいつも以上に会社の休日が多くて…

という話が出ました。ここ数年で、祝日の日数が増えましたよね。2015年度の事務所カレンダーを作成していて、年間休日数が、125日にもなってびっくりしたことがあります。3日のうち1日がお休みなんですよ。もうお分かりのように、休日数が増えるということは、それにともなって給与が減らないかぎり、実質的な賃金アップになっていることになります。最低賃金は上がっていくのに、労働時間数が少なくなるということになると経営者は頭が痛いですね。

 

昨年は、「下流老人」という本が売れました。この本では、年収400万円以下だと、将来「下流老人」になる可能性があって、また、日本の高齢者のうち約600万人が一人暮らしで、うち半数は生活保護レベルにあると書かれています。誰もが、生活保護レベルの暮らししか出来なくなるかもしれない世の中にはしたくないですね。

企業に最低賃金を引き上げなさいというのであれば、国は絶対にGDP600兆円を達成すべきです。

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


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