スマホ依存が奪う子どもの未来
2026年06月01日
総務省が未成年のSNS依存対策に乗り出すそうです(日経新聞2026.4.22)。未成年のSNS依存は世界的に問題になっていて、オーストラリアでは2025年に16歳未満の利用を禁じられていて、欧州でもフランスなどで未成年の利用を禁じる動きが広がりを見せています。日本でも長時間の利用や不適切なコンテンツ閲覧といった悪影響を防ぐ取り組みを行うとのことです。
スマホやデジタル端末の弊害の悪影響を最も受けるのが子供たちです。東北大学の川島隆太教授は、スマホやタブレットなどが脳に与える悪影響を指摘します。飲食店で大人が食事をする隣でスマホの画面を見つめる幼児をよく見ますし、まともに赤ちゃんと目を合わせずにスマホばかり見ている若い母親の姿も見かけます。スマホ中毒の親に育てられた子がスマホ中毒になるというのが今の親子関係となっていて、そんな環境で育った子は他人とコミュニケーションをとってきていないので、他者の気持ちが理解できません。親との愛着形成が不十分であることから、例えば他の大人をなかなか信じられず、自分の感情を抑えることができないという傾向が出てくるそうです。保育士の友達に話しを聞くと、最近の園児は話を聞けずじっとしていられなかったり、保育士に嚙みついてケガをさせたりすることが増えているそうです。文部科学省の全国調査で、2006年に発達障害の児童数が7千人あまりだったのが、2022年には12万人を超えたそうです。なんと、16年間で約17倍にも増えています。川島先生の研究所の調査によると、スマホを一日に1時間以上使っている子供たちは、全く勉強しない子供たちよりも学力が低いというデータが出ていて、インターネットを毎日のように使う子供たちの脳は、言葉や情報伝達を掌る領域をはじめとして、かなりの部分で発育が止まるという信じられない結果になっているそうです。他にもマイクロソフトのカナダ社が行った調査によると、2015年の段階でカナダ人成人の2割が10秒しか集中力が保てなくなっていることがわかっていて、こういった人の特徴は、毎日、SNSを利用する、スマホでマルチタスクをする人だということです。ネット広告は短くないと誰も見ないと言われていますが、川島先生は、その影響でわずか10秒しか集中力が持たない金魚と同じ人間を作ってしまっていると言います。
精神科医でスマホ依存に詳しい樋口進医師は、スマホの使い過ぎをやめるには「意志の力」に頼らないこと、「まずは10分離れて」と言います。スマホは一切使わないというわけにはいきませんが、ショート動画を見ることや、誰かからの反応を「待つ」状態が続くSNSなどを利用することで脳は常に緊張状態となり、依存症が高まるそうです。またスマホは、アルゴリズムを使って本人の興味を学習し、逃れられない「アリ地獄」のようにユーザーを惹きつけ続けます。樋口先生は、「スマホが使えない時間帯をどうつくっていくか」という考え方を持つことが大事だといいます。スマホは手元にあると絶対に触ってしまうので、触らない時間を決めて、その時間はスマホを自分から物理的に離れたところに置くことをすすめています。10分でいいのでスマホから離れることで、自分の人生の主導権を取り戻すことが必要だとうったえます。
コンサルタントの小宮一慶さんは、今の時代は便利な時代で、駅の改札で交通系カードさえ持っていれば、昔のように乗り継ぎ料金を自分で確認して切符を買うこともなくなったといいます。小宮さんは、「このように、便利な時代は、実は頭を使わなくなっている時代でもあります。日常生活ではどんどん思考力が必要ではなくなっているのです。」「しかし、世の中全体は、ますます複雑になっています。」と言い、この状態が進めば所得での二極化を生むことになるとも指摘します。これからは考える人がもっと少なくなります。「企業においても、思考力を高める、つまり知恵の出ない企業は生き残れません。逆に知恵が出る人、企業はそれだけで大きな差別化ができます。」思考力を普段から高めようと思っている人にとっては有利な時代になったのかもしれません。
(参照:「月間致知2026.5月号」「PRESIDENT2026.5月号」)
特定社会保険労務士 末正哲朗
◆最新・行政の動き
賃上げや非正規支援に重点 助成金パッケージを周知 厚労省運営方針
厚生労働省は令和8年度地方労働行政運営方針を策定しました。賃金引上げに向けた支援や非正規雇用労働者への支援を重点対策に位置付け、「賃上げ」支援助成金パッケージの周知や、同一労働同一賃金の遵守徹底を図るとしました。賃上げに取り組む目的・方法に応じ、個々の企業がニーズに合った助成金を活用できるよう丁寧な情報提供を実施します。
同パッケージのうち、労働時間削減などに向けた環境整備として労働能率向上に役立つ設備・機器の導入などを行い、成果を上げた場合に経費の一部を助成する働き方改革推進支援助成金では、小規模企業への支援を強化しました。賃上げ結果に応じて設定されている助成上限額の加算措置について、1~9人規模企業が賃金を5%以上引き上げた場合の加算幅を拡大しています。
人材確保等支援助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースでも、5%以上の賃上げを要件とする加算措置に、「7%以上」などの区分を新設しました。同コースは、賃金規程・諸手当や人事評価などの雇用管理制度を整備したり、作業負担を軽減する機器を導入したりして離職率を低下させた企業が対象です。雇用環境を整備し賃金を7%以上引き上げた場合に助成額を50%加算する措置や、雇用管理に困難を抱える事業所が3%以上引き上げた場合に25%加算する措置を新設しています。
非正規労働者の処遇改善にも重点的に取り組むとしました。同一労働同一賃金の遵守徹底に向け、労基署の定期監督で事実確認を行ったうえ、労働局の雇用環境・均等部(室)や職業安定部が効率的に報告徴収・指導監督を実施します。労基署による集団指導の場も活用し、不合理な待遇差の解消に向けた取組みを要請していきます。基本給・賞与で待遇差が生じている理由を説明できていない企業には点検実施を要請し、自主的な取組みを促します。
◆ニュース
意思決定の補助役に HR部門でのAI活用 経団連報告
活用への手順としては、①AIに行わせる内容の決定とAIへの必要なデータの入力、②AIによる担当者のサポートや検討結果の出力、③AIの判定理由を把握し、人間が責任を持って最終的に意思決定――の3つの段階を示しました。たとえば採用の場面では、まずは客観的・具体的で明確な評価基準をAIに入力し、その後、AIが面接内容のレポートや評価基準のレコメンドを作成し、最終的に人間が候補者の合否を決定します。
HR部門は労働者のキャリアや処遇に大きな影響を与える部門であるため、AI活用においては、安全性、公平性、透明性の確保が求められるとしました。具体的には、採用、評価、配置など、及ぼす影響が大きい場面では、AIの結果のみで不利益な処遇を決定しないなどの対応を想定しています。
戦略的推進体制の構築も重要と指摘しました。AIの推進責任者の設置や担い手の確保、社員の不安や懸念を取り除くために十分な説明を通じて現場の理解を得るなど、現場に根付かせるための運用、定着の仕組みづくりも欠かせないとしました。
民間シンクタンクによる夏季賞与の予測が発表されました。前年比2.3~2.5%増の43.6~43.7万円で、5年連続で2%台の増加が見込まれるとしています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、前年比2.3%増の43.6万円と予測しました。企業の好業績と労働需給のひっ迫が追い風になると分析しています。支給労働者数は3.3%増の4521万人、支給総額は5.7%増の19.7兆円としました。
第一ライフ資産運用経済研究所は前年比2.5%増の43.7万円を見込みました。自動車関連の業績は下振れがめだつものの、そのほかの業種、とくに非製造業では価格転嫁の進展もあり業績は底堅いとしています。
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