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バナナとお客様

2024年08月01日

小学生の頃、楽しみな学校の行事のひとつに「遠足」がありました。先生から当日のスケジュールや持ち物の説明を受けているときに「先生!バナナはおやつに入りますか?」という質問を誰でも聞いたことがあるのではないでしょうか。当時の遠足のおやつの金額は300円ほどではなかったでしょうか。限られた予算内で自分の好きなお菓子を選ぶことに心を躍らせた人は多いのではないでしょうか。遠足に持っていくおやつ選びが一番の楽しみだったように記憶しています。さて、そのバナナですが、おやつに入るとどうなるのかということです。バナナといえば昔は高級品のイメージでした。風邪をひいたときに食べさせてもらえたという人もいるくらいです。この「昔は高級品」のバナナですが、輸入量が安定して「今では安価」となり、結果的に50年ほどの間、価格が変わっていないということに気づきます。今どきの遠足のおやつのおこずかいはいくらなのかを2022年にある会社が調査していました。その調査結果によると、小学生の「遠足のおやつ代」は平均で426円となっていて、だいたい300円から500円、なかには1000円という子もいたそうです。昔は、おやつ代の300円に今では考えられないほどの高級品であるバナナが入ってしまうと他のおやつが買えなくなってしまうというのが、とても気になるところだったというわけです。特別な楽しみである遠足にバナナは必需品だったからこその思い出ですね。

そんなように今では安く買えることが当たり前になってしまっているバナナですが、お店とすれば利幅も薄くなるため、店頭で最初に並べられるバナナに食べ頃なものをおくことはありません。必然的に店頭に長く置いておけるようにするため熟する前のバナナが並べられることになります。そうすると「バナナは買っても、すぐに食べるとあまり旨くない。」となります。むしろ、見切り品として熟しきって安く売られているバナナを買ったほうが食べ頃なので美味しく、店頭に最初に並べられたバナナを購入するのが馬鹿らしくなってしまうというのが消費者の心理です。経営コンサルタントの一倉定先生は、「お客様について心しなければならないことは、お客様には過去の実績はいっさい通用しないということである。過去においてどんな優れた商品、どんな優れたサービスをしようと、現在のサービスが悪ければ、お客様に見捨てられるということである。過去の実績は、現在正しいサービスをしている時にのみ役立つのである。」(産業能率大学出版部「社長の姿勢」より)と話されています。一方で千葉県の館山にはバナナしかおいていないバナナ専門店があるそうです。「佐藤バナナ店」というお店ですが、バナナだけでどうやって儲けを出すのだろうかという疑問がわいてきます。そこの店主のインタビュー記事によると、このお店では1日に3000本のバナナが売れていて、その店主が一番に気をつかっているところが商品であるバナナの「熟成の度合い」だそうです。ようするに商品であるバナナに工夫と手間をちゃんとかけて売ることで、しっかり利益がでるということを実践しているお店だということです。一般に売られているバナナでは売上を求めるあまりに犠牲になっている「熟成の度合い」を一番大切にすることで、顧客のニーズを捉えていたわけです。これこそが逆転の発想ですね。消費者が「こんなものが欲しい」ということを理解して商品やサービスに落とし込んで提供することがマーケティングの本質だといわれます。多くの企業では「顧客第一」や「お客さま第一」をかかげていますが、それを正しく実践することは難しいものです。これについて一倉先生は、理由は二つあると言っています。「その第一は、お客様は会社に対して何も言ってくれないのである。その会社の商品やサービスが自分の気に入らなければ、買わないだけである。これがお客様の恐いところなのである。だから、会社は売上げ不振というとらえ方はしても、これがお客様の手厳しい拒絶だとは気がつかないのである。だから、お客様は恐ろしいのである。」「第二の理由は、サービスのよい会社は非常に少ない。そのためにサービスが悪いからといって、サービスのよい会社が見つからないうちは、今の会社から買わざるを得ないからである。お客様は心ならずも買っているのであって、喜んで買っているのではないのである。そのために、自らの会社の曲がった姿勢に気がつかない。このような状態は、いったん優れたサービスを行う会社が出現した時には、たちまちその会社にお客様を奪われてしまうのである。」一倉先生は、会社を発展させたければ、お客様を大切にすることであるといいます。何も言ってくれないお客様、過去の実績などいっさい認めてくれないお客様によって会社の運命が決まるのです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

賃金上昇で追加給付 専門実践訓練見直し 雇用保険法施行規則改正案

厚生労働省は、教育訓練給付の拡充を盛り込んだ雇用保険法施行規則等改正案を労働政策審議会雇用保険部会に示し、「おおむね妥当」とされました。専門実践教育訓練給付金の対象となる講座の受講前後で賃金が5%以上上昇した場合、追加給付として給付率を10%上乗せします。それに伴い、現行制度において70%だった最大給付率は80%となります。支給額の上限は年間64万円。施行日は今年10月1日。

同給付金は、中長期的なキャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練の受講者が対象で、原則として費用の50%を支給しています。受講後に資格を取得し、就職した、または雇用されている場合には追加給付として20%を上乗せしています。個人のリスキリングに対する支援を強化するため、雇保則改正によって、賃金上昇に伴う追加給付を新たに創設します。

賃金が5%以上増加したかどうかについては、訓練開始日前の直近の離職における賃金日額と、新たに雇用された日から1年経過するまでの期間における連続6カ月間の賃金を基礎とする「みなし賃金日額」を比較して判断します。在職者の場合は、訓練開始日の前日をもとに算定する賃金日額相当額と、資格取得から1年経過するまでの連続6カ月間とを比較します。

申請には、引上げ後の賃金額についての事業主の証明が必要になります。

このほか、特定一般教育訓練給付金についても、10%の追加給付を新設します。資格を取得し、就職した場合が対象となります。

◆ニュース

6割超が職安法違反 医療等3分野の監督結果 厚労省

 医療・介護・保育の3分野の有料職業紹介事業のうち、6割を超える事業者が職業安定法等に違反していることが、厚生労働省実施の集中指導監督結果で明らかになりました。

 3分野の職業紹介事業については、短期間での離職がめだつとして、昨年6月の「規制改革実施計画」において、転職勧奨とお祝い金規制にかかる集中監督を行うとしていました。厚労省は昨年8月~今年5月にかけて、1152事業所に指導監督を実施。そのうち716事業所(62.2%)で職安法等の違反がみられました。

 お祝い金に関する違反は25件となりました。面接実施時に数千円の電子ギフトカードを支給した例や、知人を紹介した人と紹介を受けて求職登録した人に数万円の旅行券を支給した例などがみられました。職安法に基づく指針では、令和3年4月から「就職お祝い金」などの名目で金銭を提供し、求職申込みの勧奨を行うことを禁止しています。

 手数料規制違反は409件に上りました。厚労省に届け出た手数料の上限を超える額の徴収や、求人者・求職者に手数料を書面で明示しないなどの違反が発覚しています。

 都道府県労働局に設置した特別相談窓口には、「紹介手数料の一部が求職者へ支度金として支払われている」や「求職者確保キャンペーンと称して金品を提供する旨の広告が出ている」などの苦情が寄せられました。

賞与評価 部下の離職率など指標に 営業実績以外で10% 大東建託

 大東建託㈱は、全国204拠点の全支店長の賞与評価に、部下の離職率や年次有給休暇取得率、障害者雇用率、男性の育児休業取得率などの「支店健全経営度」を測る指標を導入しました。

今年4~9月を対象期間とする10月の人事評価から適用していきます。従来の営業実績による評価のウエートを90%に抑え、10%を同指標で評価します。

「成果だけの追求では、持続的な成長は見込めない」(同社広報部)とし、営業職以外の貢献をみえやすくするとともに、支店長に対して「質より量」から「効率・生産性重視」への意識転換、多様な人材が活躍できる環境づくりを促します。


カテゴリー:所長コラム


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