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「長時間労働の摘発実態」

2017年08月08日

先月は長時間労働の摘発の話題を取り上げてみましたが、石川県内の労働基準監督署でも監督官による過重労働の取り締まりを目的とした事業所への立入調査が頻繁に行われているようです。監督署で少し話を聞いてみたところ、今年に入っての1月と2月の2か月間にかなりの数の調査を一人の監督官がこなしているようで、詳しくは書けませんが普段の業務に加えてしんどそうな様子です。

厚生労働省から平成28年4月~9月まで、長時間労働が疑われる1万59事業場に対して労働基準監督官が実施した監督指導の実施結果を公表しています。ご存知の通り、監督指導は、28年度から1か月当たり80時間を超える残業が行われた疑いのある事業場や、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場を対象としているそうです。ただ、私からすると調査に入られた会社は過去に監督署の立入調査があり、労働時間に関する是正勧告を受けた会社も多く対象になっているような感じもあります。

上記の対償となった1万59事業場のうち、労働基準法等の法令違反があって、監督指導の実施事業場となったのは6659事業場(全体の66.2%)でこのうち、違法な時間外・休日労働があったとして是正勧告書を交付し、改善に向けた指導を行ったのは4416事業場(同43.9%)だそうです。この中には、1か月200時間を超える事業場も116事業場含まれていたようです。

立入調査があると是正勧告を受けることになる企業がほとんどです。笑いごとではありませんが、どんな会社でも何かしら大なり小なりの労基法違反はあるものなので。ただ、是正勧告を受けた企業は真摯に改善に取り組むべきだと考えます。最近の監督官の長時間労働に対する取り締まりは、かなり厳しく行われています。軽く考えると痛い目にあいそうです。

また、平成29年度の協会けんぽの保険料率が3月分(4月納付分)から改定されます。石川県の保険料率は、平成28年度の9.99%から10.02%にアップします。一方で、厚生年金保険料率は平成16年の法律改正によりこれまで段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月分以降は保険料が固定化されて、18.30%となります。やっと厚生年金保険料の引き上げが止まることになりますが、先日、受講したセミナーでは、国からすると厚生年金の対策はもう済んでいて、今後は医療と介護の給付が大きく伸びるためこれからの課題となるという話をされていました。実際に、介護保険制度が始まったとき65歳以上の被保険者は、毎月の保険料は3000円程度でしたが、現在は5000円を超えています。今後は8000円になることが確実視されているそうです。

そして、2月10日に財務省が平成29年度の国民負担率を公表していて、平成29年度(見通し)の国民負担率は45.2%で平成28年度と同水準だそうです。その国民負担率45.2%の内訳は、租税負担率(国税・地方税)25.1%、社会保険料等の社会保険料負担等の社会保障負担率17.4%となっています。昭和45年度は24.3%、55年度には30.5%となり平成25年度に初めて40.0%となり、27年度には42.8%と過去最高となっています。

ただ国民負担率を欧米主要国と比較すると、日本の42.5%の水準は、アメリカの32.7%よりも高くはなっていますが、イギリスの45.9%、ドイツの52.5%、スウェーデンの56.0%、フランスの68.2%に比べるとずっと低くなっています。少子高齢社会に向けての財政健全化の取組みは今後の大きな課題ですが、実は、GDPの2倍もの借金を背負っている日本が破たんしない理由の一つがこれなんです。日本は、消費税を含めまだまだ負担率を上げる余地があるからということですね。

 

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


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