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「改正育児介護休業法の実務対応」

2016年12月27日

改正育児介護休業法と改正男女雇用機会均等法が、平成29年1月1日から施行されます。介護休業が対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで分割取得することができるようになり、またマタハラ防止が会社に義務付けされて、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚による就業環境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置をとることも必要になります。会社は、就業規則の改正を年内には行わなければなりません。

最近は、介護休業に関して、なんとなく世の中の潮目が変わってきたという感覚があったので、第一芙蓉法律事務所の木下潮音弁護士のセミナーに参加してきました。そもそも介護休業ってそんな意味だったの!?というお話が聞けたのでご紹介させていただきます。

まず、「なぜ介護休業は93日(3ヵ月)なのか。育児休業は1年間なのに…」という疑問です。

従来の介護関連制度は、短期集中での制度利用が原則でしたが、今回の改正では、長期分割で制度を利用することができるようにすることへの変更が大きなポイントです。まず、93日の数字の意味ですが、育児休業は、子供1人で1年間です。介護が必要になる親は、通常であれば夫婦で4人いますね。ということは、親4人×3ヵ月=1年間となり、育児休業と同じになるんです。また、介護休業というのは要介護状態となった親を従業員本人が介護するためのものでもありません。介護休業が3回分割での取得を可能とした理由は、要介護状態の開始(病院での治療)、途中(介護施設への入所)、最終の看取り(死亡)の3つの場面で使えるようになったということのようです。

育児は先の予想がつきますが、介護は親が亡くなるまで続くので終わりが見えません。介護をしている人は、介護は始まってから“いつまで”という限度がないからシンドイと言います。介護休業は対象家族1人につきそれぞれに93日取得することが可能なので、これからは会社が、その日数を管理することが必要になります。

また、育児休業と介護休業ではその意味に大きな違いがあることに気づかされることになります。これまで「育児休業をとる従業員が多くいて大変だ」という経営者の悩みを多く聞いてきました。しかし、介護の場合は会社にとってもっと大きな問題になる可能性があります。介護が必要になる家族を抱える従業員は中高年(特に50代)が必然的に多くなります。ということは、管理職を含めて会社内でも責任が重く、事業に重要な役割をもつ従業員が介護の問題を抱える可能性が高いということです。そんな従業員には、会社を辞めてもらっても困るし、休まれても困るんじゃないでしょうか。これから会社が考えておかないといけないことは、管理監督者が介護対応を要する状態となった時、時短や残業ができなくなった管理監督者をどう処遇するのか。また、例えば数年にわたって、管理監督者が時短勤務となったときに、そのときに役職や賃金を変更することができるのかといったことが、経営者を悩ませそうです。

改正男女雇用機会均等法の施行により、妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備が義務付けられたため、規則に定められた制度を利用することを抑制するような言動はマタハラに該当することとなりました。弁護士の木下先生は、「これからは非財務的な情報で会社の価値が決まる時代となり、労働力確保のためにも制度利用の促進が重要」とおっしゃっていました。しかし、それと同時に育児介護にかかわらない従業員の納得感も経営者としては配慮することが必要になります。

最後に、これからは男性の上司が、男性の部下に向かって「お前は男らしくないぞ!」って言うとセクハラになるそうですよ。

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


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