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「不当解雇 解決金の相場は?」

2016年08月09日

労働基準法の改正が遅れ遅れになっていましたが、今年中にはなんとか改正法案が成立できそうですね。企業としては、「中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を50%以上」となることが目前となっており、長時間労働に対する考え方を変えていく必要があります。また、年次有給休暇を5日については会社が毎年、時季を指定して与えなければならなくなるなど、こちらのほうの対応も必要です。

以上の法改正と時期を合わせるように不当解雇の金銭解決について厚生労働省で検討が行われていることはご存じでしょうか。昨年の秋頃から有識者検討会で、解雇が不当と認められた場合の金銭解決する仕組みについて議論がなされてきました。

私も経験がありますが、企業に解雇された労働者が不服の場合に、労働審判制度に持ち込むことがあります。その労働審判で、労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関する専門的な知識・経験を持つ労働審判員2人が、その解雇が有効か無効かの判決が出すことになりますが、多くの場合は、心情的に職場復帰は難しいため金銭解決による和解となっているようです。

 

日経新聞によると、厚生労働省の検討会は不当解雇の金銭解決の分析結果を発表したと伝えています。不当解雇の金銭解決についての具体的な水準や基準などの「相場観」ともいえる内容が示されたのは初めてですね。先ほどの労働審判で企業による解雇が無効と想定される場合、企業が支払った解決金は月収の0.84倍に勤続年数を掛け合わせた金額になっていて、10年勤続した社員であれば、月収の10倍強になっているそうです。また、企業による解雇が有効と想定される場合でも解決金が必要となり、こちらのほうの解決金は、勤続年数は関係なく、月収の2.3か月分程度になっているそうです。

私のほうにも解雇の相談は相変わらず多いです。ただ、お話を聞かせていただくと多くの場合は、争われると会社側が負けるように思われるケースがほとんどです。ですから、大概は年収の1年分を覚悟したうえで解雇しましょうねというお答えをすることになります。そうした話をしても、解雇したいという場合が多いわけで、そこからは、いかに解雇対象の労働者と話をしていくかが問題になります。

最近の傾向とすると、感情的になった対応をしたり、相手に対する配慮を欠くと負けです。会社が感情的になり、労働者を怒らせてしまうと間違いなく訴えてきますし、そういったケースでは会社がかなりな金額での解決を求められてしまいますので注意が必要です。

また、解雇の理由に挙げられるのが能力不足や職場の人間関係ということが一番多いわけですが、そういう理由の場合は、労働者自身が悩んでいることもよくあるわけです。経営者も社員も人間なので、経営者がこの人はいらないなぁと思っていると、その社員にも伝わるものなんです。あるケースの場合、私が解雇通告の場に同席して、社員さんとお話しをさせてもらったところ、実は人間関係がうまくいかず会社を辞めたかったがどういうふうにしたら良いのかわからなくてとても悩んでいたと涙ながらに打ち明けられたこともありました。

上記のような事例は、会社にとっても社員さんにとっても不幸なことですね。ややこしい話ですが、感情的にならず、相手の感情を理解することが大事なのかもしれません。

 

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


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