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「有給休暇の考え方」

2016年05月16日

お客様と有給休暇の話になりました。欧米では、有給休暇がほぼ100%とれているなんて言われているけれど、ホントのところは意味が違うと言うんです。

ある旅行会社のサイトによると、有給休暇の消化率について24カ国を対象に調査したところ、日本人は6年連続で世界ワースト1位となっているそうです。日本は有給休暇の取得率は39%にとどまっていて、韓国、アメリカにおいての取得率は、70%程度になっています。どうも日本の消化率の低さは世界でダントツのようです。

その社長は、若い頃にドイツで労働者として会社で働いていたことがあって、ドイツでは、有給休暇は完全消化が当たり前で、日本のように有給休暇がとれないなんてことはなかったそうです。しかし、日本とは大きな違いがあっては、ドイツには夏季休暇や年末年始の休暇なんてものは無く休むときはすべて有給休暇を充てる。私の事務所の場合、今年の夏季休暇と年末年始休暇を合わせると、8日ありました。ようするに、その社長いわく、日本においては有給休暇の付与日数の半分は、すでに消化されているということになるそうです。なるほど、そんな見方もあるのかと思いました。

個人的には、週休2日に加え、これだけ祝日が多いと、病気や家庭の事情がある場合を除き、有給休暇をとることのほうが難しいのではないかと思っています。しかし、所定休日数が少ない会社も多くあることも理解しています。そういった会社では、従業員が休みたいという希望を多く持っているので、有給休暇を取得しやすい職場作りが必要ですし、採用においても有給休暇が取れる会社であることは大きなポイントになります。

先ほどの社長は、「学校でゆとり教育、企業でもゆとりを求められるなんて!」っておっしゃっていました。またまた、なるほどと思ってしまいました。

昨年、労働基準法の改正案の中に、一定日数の年次有給休暇の確実な取得が盛り込まれ、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないとなる予定でしたが、まだ法案は成立していません。

最近、新聞で多く報じられていますが、労働時間の規制が厳しくなってきています。厚生労働省が、全国の労働局に長時間労働の監督指導を専門に担当する「過重労働特別監督管理官」を配置し、改善を指導する態勢を強化するとか、80時間を超える残業をしている従業員が、1人でもいると疑われる事業所に立ち入り調査を実施するとか。厚労省によると年約2万の事業所が監視の対象になると言われていて、その数は、昨年の2倍になるそうです。

私のお客様の会社にも最近は監督署の調査がよく入っています。その時に指導されるのは、まずは、労働時間を把握しなさいということです。タイムカードを導入しなければいけないということではなくて、従業員がどれだけ働いているのかをはっきり把握しなさいということです。監督署の調査が入り、それをきっかけにして社内の労務管理を正すことはよくあることです。しかし、監督署の調査があって是正期限を決められて正すのではなく、平常から従業員が働きやすい職場作りを心がけたほうが絶対に良いと思います。

先ほどの新聞紙面に識者の見方として、「女性の活躍推進や少子化対策を考えれば、男性も早く帰宅して家事を分担すべきで、長時間労働を是正するのは、時代の要請として必要だ。ただ、日本の場合、欧米に比べ雇用の流動性が低いため、企業が雇用ではなく労働時間の調整で景気変動に対応している面が強い。」として一律の規制を否定しています。現在の日本の採用難を考えれば、これからは労働時間の問題は深刻化していくのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


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