給料は上がるのに、手取りが増えないのはなぜ?
2026年09月01日
今年の石川県の最低賃金が前年から59円アップの1113円に決まりました。上げ幅は過去最大だった昨年の70円に次いで2番目です。改定額は最短で10月3日に発行します。国の中央最低賃金審議会が今年の改定額は全国加重平均で1121円から1176円とする目安を示していて、石川の指標は1110円でしたが、3円の上積みとなりました。これで北陸3県は、福井が同じ59円増で1112円、富山が57円増で1119円となっています。
最低賃金はいったいどこまで上がるのか。政府の「日本成長戦略」には「遅くとも30年代前半できる限り早期に達成」と明記されているので、今後5年間くらいは毎年50円程度のアップがあってもおかしくはありません。また、現役で働いている人たちの賃金ですが、賃上げ環境整備として29年度までの間で「年1%程度の実質賃金の上昇」を定着させることが目標に掲げられています。政府の「持続的・安定的な物価上昇の下で、それを年1%程度上回る賃金上昇」を実現することになると、日本の物価上昇率は3%程度となっているので、今後は毎年4%の賃金上昇が求められます。乱暴にいえば、毎年、1万円を超える昇給が必要だということです。
厚労省の調査によるときまって支給する現金給与額(2025年7月)は、男性は29万551円、女性は16万2690円で、過去最高額となっています。結果として、日本の国の税収は、2025年度で84兆2226円となり過去最高となりました。なんと前年度比約12%増で、6年連続の過去最高更新となり、バブル期(1990年度)の約60兆円を大きく上回っています。税収が過去最高になった背景には、物価上昇による売上・所得が増加したこと、企業収益の改善で法人税収が増加したこと、雇用・賃金の持ち直しで所得税・消費税が増加したことがあります。そして、全国健康保険協会(協会けんぽ)も2025年度決算が6795億円の黒字になる見込みで、前年度から209億円伸びて設立以来過去最大の黒字額だそうです。これも賃上げや加入者の増加で保険料収入が増えたことが要因といわれています。所得税などの租税負担率と社会保険料の社会保障負担率を合わせたものが国民負担率ですが、2024年度の国民負担率は46.7%(うち租税負担率28.2%、社会保障負担率18.5%)にもなっています。政府は、「骨太方針2026」において、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」という方針のもとで、2027年度の社会保障負担率を2025年度比で上昇させないとしました。2025年度の17.8%が今後の社会保障負担率の天井になるということですが、それでも国民負担率は46%で給与の半分近くが消えることに変わりはありません。現在の問題は、賃金が上がったのに、手取りが増えたという実感がもてないことです。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、日本の所得税の仕組みに問題があるといいます。小宮氏は「日本の所得税の設計は、増税をしなくても、国民の所得が上がるとどんどん税収が上がる仕組みになっています。いわばこれは、国民に対して事実上の増税をしていることと同義。賃上げをして一番得をしているのは政府という見方もある」といいます。
先日、日本銀行の前副総裁で雨宮正佳氏の講演を聞く機会がありました。雨宮氏は長く黒田総裁のもとで大規模異次元緩和を実務トップとして主導してきた人です。雨宮氏は「実質成長率はまだ低いが、現在の名目成長率は5%になっている。これからは5%成長が平均と考えること」と話されました。物価上昇がなく、名目GDP525兆円が20年間変わらなかった日本経済ですが、それが今では670兆円に拡大しています。「これまでは全企業の成長の平均が0%なのではなく、すべての企業が全く成長しなかったのがこの20年だった」「これからは違う。成長する企業もあれば、成長しない企業もある時代になる」という雨宮氏の言葉がとても印象に残りました。やっとめぐってきたチャンスなのかもしれませんね。企業の継続的な成長を実現して、私たちの賃金が上昇するという好循環を生み出していきたいものです。 特定社会保険労務士 末正哲朗
◆最新・行政の動き
政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針)を閣議決定しました。「強い経済」を実現するため、17の戦略分野や医療・福祉・介護などエッセンシャル分野をはじめとした幅広い人材の育成・確保に向けた国や地域における取組みを推進するとしました。リスキング機会を拡充するほか、デジタル技術を活用して現在よりも高い賃金を得る「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」の育成に取り組みます。スキルアップに向けた機運を醸成するための「全世代型リスキリング国民運動」も展開します。
人材育成に関しては、教育政策、産業政策、雇用政策などの関係政策を連携させ、一気通貫で推進すると指摘しました。産学官の連携の下、必要なスキル・処遇の明確化やプログラム開発、費用負担の軽減、社会人による奨学金の活用促進などに向けた検討を行い、リスキリング機会の拡充を図るとしました。
強い経済を実現する観点から、賃上げ環境整備にも重点的に取り組みます。2029年度までの間に、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として定着させると明記しました。中堅・中小企業が地域経済をけん引できるよう、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」に基づき、変革に挑む企業に対して積極的かつ幅広い支援を行うとしました。
◆ニュース
厚生労働省は8月1日から、出生時育児休業給付金や出生後休業支援給付金など一部の育児休業等給付に関する申請手続きを変更しました。雇用保険被保険者や人事労務担当者などが申請手続きを行いやすくするのが狙いです。出生時育休給付金については、申請を早期化するため、申請時に申告する賃金を従来の「出生時育休期間を対象として支払われた賃金」から、「出生時育休期間中に支払日のある賃金」に見直しました。
「出生時育休期間中に支払日のある賃金」は、同期間(育休期間を含む)を対象とした賃金に限定します。出生時育休を分割取得する場合は、その間の就労期間に支払日がある賃金も含めます。
出生時育休給付金などを受ける者が要件を満たした際に上乗せして支給する出生後休業支援給付金に関しては、配偶者の確認書類を見直しました。具体的には、母親が申請する際の確認書類として、母子健康手帳(出生済み証明のページ)の写しの提出を認めます。ただし、配偶者の氏名と生年月日が記載されている必要があります。
リチウムイオン電池 昨年の火災件数が過去最多
業務中なら労災にも 東京消防庁
東京消防庁は、モバイルバッテリーやスマートフォンなどリチウムイオン電池を搭載した製品の火災件数が、昨年は過去最多となる382件発生したと発表しました。今年は昨年を上回るペースで発生しており注意を呼び掛けています。
令和7年に出火した製品で最も多いのはモバイルバッテリーで、全体の34.0%(130件)を占めました。携帯電話機(スマートフォン)が11.3%(43件)で続いています。そのほか、電動アシスト付自転車、電動工具やノートパソコンからも出火しています。
火災は職場内でも発生しています。事務室でデスク下のリュックに入れていたモバイルバッテリーが出火した事例があり、出火箇所にいた従業員50人が屋外に避難する事態となりました。ほかにも、事務所の給湯室で充電中の掃除機のバッテリーから発火し、火災となった事例も発生しています。
同消防庁は火災の急増を受け、対策を呼び掛けています。車内やカバンの中など、熱のこもりやすい場所での使用を控え、衝撃を与えないよう適切に取り扱うことを促しています。 リチウムイオン電池関連の火災に関して、東京労働局安全課は、業務中に出火して負傷した場合、労災に該当し得ると指摘しています。「出火の原因が溶接火花であれ、モバイルバッテリー、携帯電話であれ、火災が発生すると重大事故につながるので、まず火元となるものをしっかり管理することが大事」と管理の重要性を強調しました。
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