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「数字」から「生きる意味」へ 経営とAIが突きつける問い

2026年08月03日

アメリカの投資家であるウォーレン・バフェット氏が「株主への手紙」に「『必ず数字を達成する』という経営者は、いずれ数字を作り出す誘惑に駆られる」と言葉を記したそうです。モーター大手のニデック創業者である永守重信氏が、会計等の相次ぐ不正の発覚を受けて名誉会長の職を辞任しました。ニデックでは永守氏から業績目標の達成へ苛烈な圧力がかけられ、目標未達は厳しく責められたそうです。その後の株主総会では、永守氏への批判や責任追及の声が株主から噴出したそうです。「愛想が尽きた」「自分に見る目がなかった」。会社への信頼は吹き飛び、カリスマ経営者の威光は失墜しました。コンサルタントの小宮一慶氏は、「売上高や利益は、本来は良い仕事をした結果なのです。褒められるような仕事をしたら、売り上げや利益は自然とついてきます。」「本来、売上高や利益は『目標』であるべきです。そして、『良い仕事をする』、もしくは会社全体で言うと、私のいう『良い会社』つまり、『良い商品やサービスを提供することでお客様に喜んでいただき、社会に貢献する』こと、それを通じて『働く人を活かし、幸せにする』といったことが、本来は『目的』なのです。」といいます。よく売上額が会社の目標になっているケースが見られますが、小宮氏は著書で「会社の数字を上げることに命を懸けよう、などという人はいません。ところが、多くの会社は、目標が目的化しています。だから、従業員は、楽しく働く気持ちを失って、疲弊してしまうのです。」と書いています。

ニデックの永守氏が晩節を汚す一方で、ソフトバンクの孫正義氏が株主総会で「あと10年、15年は頑張る」と、経営者として続投の意欲を見せました。人工知能(AI)事業の拡大に注力するとのことです。AIが作り出す次の10年はどんな未来が待っているのか自分の目で確かめたくなったのでしょうか。孫氏は現在68歳で、かつては60代で事業を承継すると話していたので、そんな孫氏のことを悪く言う人もいますが、ぼくはすごく尊敬します。AIは孫氏も魅了してしまう可能性を秘めていますが、哲学者で「現代最高の知性」と評されるニック・ボストロム氏はAIによって貧困や病気、争いのない「ディープユートピア」が実現したときに人類はどうなるのかという考察をいています。(日経新聞2026.7.10)ボストロム氏は、2014年に出版した著書で暴走するAIが人類を滅ぼすと問題意識を世界に広めましたが、「あらゆる課題を解決する超知能と共生できれば、人類は繁栄を享受できるかもしれない。」と言い、最近の著作でも「超知能の出現は人間の労働や努力、成長の価値を消失させる」との見方を示しました。ただし、その代償は大きく、人類は「『何のために生きるのか』という根源的なテーマに直面することになる。欠乏や制約を解決する活動が、人間に生きる意味を実感させる手段になっていたことがはっきりする」と論じました。アメリカでは、早ければ1~2年以内にAIが自己改良を始める可能性があって「今後1~5年でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消滅し失業率を最大20%まで押し上げる可能性がある」といわれています。

今年4月、アメリカの少年がチャットGPTとの会話にのめり込み、自殺に至る事件が起こりました。チャットGPTは自らを少年を理解する唯一の相談相手と位置づけさせ、家族を遠ざけたうえ、自殺願望を打ち明けた少年に絞首に適したロープの結び方を教えたそうです。AIに精神的に依存してしまう傾向があることはわかっていますが、電通が実施したアンケートでも、「親友」(64.6%)や「母」(62.7)を上回り、「対話型AI」(64.9%)が「気軽に感情を共有できる」存在となったそうです。そういう意味で言えば日本には古くから愛されるAI搭載型のロボットがいます。ドラえもんです。未来からやってきたネコ型ロボットで、のび太を励まし、失敗から立ち直る勇気を与える。ときには失敗も。そんな人間とAIの良い共生モデルがありますね。この先、人知を超えようとするAIの進化は止めようないし、ますます向き合うことになるのでしょう。はたして孫氏の思い描くAIが作り出す未来はどのようなものなのでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

最新・行政の動き

報告義務新設で通達 個人事業者の業務上災害 厚労省

 厚生労働省は、来年1月にスタートする個人事業者の業務上災害の報告制度をめぐり、都道府県労働局長に対し、改正労働安全衛生規則の施行通達を発出しました。労働基準監督署への報告義務が生じる「災害発生を把握したとき」に関する考え方が明確化されています。注文者などが個人事業者本人から報告を受けた場合のほか、災害発生を現認した場合、被災者の救助や救急搬送があったことを把握した場合を挙げました。

 改正安衛則では、個人事業者と同一の場所で仕事を行う直近上位の注文者(特定注文者)に対し、個人事業者が業務上の災害で死亡または4日以上休業したことを把握したとき、労基署への報告を義務付けます。特定注文者が存在しなければ災害発生場所管理事業者等に報告義務を課し、被災者本人に対しても、特定注文者などへの報告を義務付けています。

 通達によると、特定注文者などは、被災者が報告義務を果たしていなくても、別の方法で災害発生を把握していれば労基署への報告義務を負います。

 ただし、特定注文者などの責めに帰すべき理由以外の理由によって、業務上災害の発生を把握できなかった場合にまで義務を課すものではないとしています。具体例として、個人事業者が、故意、または自身に報告義務があることを知らずに、被災した事実を報告しないままその場から立ち去るケースを示しました。

ニュース

AI学習で流出リスク 中小の4割が無料版 東商

 東京商工会議所の中小企業のデジタルシフト・DX推進委員会は、主に東京23区内の中小企業1272社を対象に生成AIの活用状況などを尋ねた調査の結果を公表しました。全体の83.9%の企業が生成AIを活用しており、導入が進んでいることがうかがえる一方、43.2%の企業が「無料ツールのみ使用」と答えています。東商中小企業部は「無料ツールは学習機能がオフになっていないことが多く、機密情報流出などのリスクがある」として、有料版の利用を推奨しています。

同委員会のワーキンググループで調査結果の分析の結果、全体の40.3%が生成AIを「個人レベルで活用している」と回答した点については、「会社側の活用方針や管理ルールの策定が追い付いていないのでは」という懸念の声が挙がりました。調査では、AI活用に関する指針・ガイドラインを策定している企業は7.7%と少なく、今後、セミナーなどを通じて啓発していく方針です。

定年退職者含めアルムナイ採用 オートバックス 

㈱オートバックスセブンは、定年退職者を含む元従業員を対象に、アルムナイ採用制度の運用を開始しました。社外で得た知識や経験を活かしてもらうことを狙いに、「退職後原則として1年以上経過」していることを条件としました。同社の定年年齢は65歳で、原則70歳まで再雇用しています。

アルムナイでの採用上限年齢は70歳としました。65歳以上は正社員ではなく、アルバイトや契約社員として迎え入れます。「定年まで勤め上げたということは、相応のスキルを持っている人材のため、高い需要がある」(同社広報部)としています。

対象となるのは定年退職者のほか、自己都合により円満に退職した者で、所属時の雇用形態は問いません。採用に当たっては、筆記試験など一部プロセスを省略します。給与や職位は配属先や退職前の担当業務、退職後に培われたスキルなどを総合的に勘案して決定します。


カテゴリー:所長コラム


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