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AIと本人訴訟 ~ AIが訴訟の敷居を下げる ~

2026年11月04日

技術の進歩によって私たちの「能力」は1つずつ奪われてきた歴史があるという話を聞きました。まず、携帯電話の番号登録機能により電話番号を覚えられなくなりました。次にカーナビです。カーナビがなければどこにも行けなくなりました。では、最後はAIの登場ですが、AIが私たちから奪うのは「考える」ことだそうです。文章作成、要約、意思決定の補助など、AIはいわば「外部脳」として私たちの仕事を大きく変えつつあります。精神科産業医の西上貴志先生は、AIの過剰使用によるリスクを訴えます。最近の精神医療の現場では「一日中AIと会話をして過ごす」や「悩み事があればAIに相談している」といった人からの相談が少しずつ増えているそうです。ここ20年はゲームやスマートフォンの乱用が「時間を奪う娯楽」として問題視されましたが、AIは「思考」「判断」「相談」といった領域にまで入り込んできます。また西上先生は、AIの過剰使用はAIをやめたくても、やめられない「依存」状態にさせ、さらに相手はAIであるにもかかわらず、まるでAIに人格があるかのように感じてしまっているというケースがしばしばみられるといいます。AIに結論を委ねるのではなく、自分の考えを整える補助として使い、最後は自分の言葉で選びなおす工程を残すことがポイントだそうです。(ビジネスガイド2026.5「AIが職場にもたらすメンタル不調を考える」)

最近の職場の労務トラブルで明らかに変わったと感じる場面があります。それは、退職者などが在職中にあったことを理由に損賠賠償を請求したいと会社に書面を送りつけてくることはこれまでにもありましたが、最近はその書面の書き方がどうみても素人が書いたものではないと思うときです。A4用紙3~4枚がしっかりと文字で埋めてあり、弁護士が書いたわけでもないだろうと思いながら、よく読んでみるとAIが書いたとわかります。なぜかというと誤ったことがいくつか含まれているからです。弁護士の向井蘭先生は、本人訴訟が増加しているといいます。(「どう備える!?本人訴訟増加」労働新聞R8.9.7)今、全国の地方裁判所が新たに受理した労働関係訴訟は年々増えていますが、その訴訟の担い手が変化していて、弁護士を立てずに労働者本人が訴える事案が、明らかに増加しているというのです。その背景にあるのはAIです。向井弁護士は、「ここ1年ほどで労働者本人名義の内容証明郵便、質問状、回答書の文面が、以前とは明らかに様変わりしてきた。」と感じていて、AIに事実関係を入力して書面案を作成させ、本人が体裁を整えたと考えないとどうしたっておかしい水準の仕上がりになっているといいます。その書面を見た経営者の反応は「文章の作りが弁護士と変わらない」「あの社員が自力でこれを書けるはずがない」となります。結果として、AIは訴訟の敷居を下げてしまいます。向井弁護士は「これまで、労働者が金銭請求を行う場合に最初に立ちはだかってきたのは費用の問題である」といい、ようするに高い弁護士費用のために訴訟には至らなかったものがこれからは表面化する局面に入ったといえます。そもそも裁判はテレビドラマでよく見るものとは異なり、実際は書面のやりとりで成立してしまうので、AIが効果を発揮します。「費用倒れになるから訴訟は起こらない」という従来からの前提は、AIの普及によって通用しなくなったようです。

AIに質問を投げかけると、瞬時に的確な回答が返ってくることもあって、多くの人がその回答を無条件に正しいものとして受け取ってしまっていると思います。しかし、そこには専門家による精査が行われているわけではないことを十分に認識しておく必要があります。最近もいくつか顧問先様企業に届いたAIが作成したであろう書面を見ましたが、いくつも間違いが含まれていました。しかし、攻撃する側にはそんなことは関係ありません。守る側の企業は、鵜呑みにせず、情報の真偽を見極めていく知識・見識を身につけることが必要だと思います。また、会社で行われている労務管理について、従業員から判例や行政通達を踏まえた主張をされる時代になっているので、きちんと説明ができる備えをしておかないといけません。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

育介法の見直し検討 3年改正法施行から5年 厚労省

厚生労働省は労働政策審議会雇用環境・均等分科会を開き、育児介護休業法の見直しに関する議論をスタートさせました。令和3年改正法(4年1月から順次施行)の施行から来年で5年が経過することを踏まえたものです。改正附則では、施行後5年を目途として同法の規定について検討し、必要がある場合には所要の措置を講ずるよう定めています。

3年改正では、産後パパ育休の創設や育休を取得しやすい雇用環境整備、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知・意向確認の義務化、育休取得状況の公表義務化、育休の分割取得などについて規定しました。

さらに7年には、柔軟な働き方を実現するための措置を義務付ける6年改正法が順次施行されました。3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対しテレワークなどの措置を導入することや、個別の周知・意向確認を義務付けています。育休取得状況の公表義務の対象企業も拡大しました。

立て続けに制度改正が行われたことを踏まえ、使用者側の委員は、「当面は改正法の内容を企業に定着させることと、施行状況を注視することが重要」と発言。「見直しを検討する場合でも、今まさに必要な範囲に絞るべき」と強調しました。

◆ニュース

メタスキルが重要に AI時代の人材育成で 労経白書

 厚生労働省は令和8年版労働経済の分析(労働経済白書)を公表しました。職場へのAIの浸透に伴って、論理的思考力やコミュニケーション能力など幅広く応用できる「メタスキル」の向上が重要になると指摘しています。メタスキルの高い労働者は賃金が高い傾向にあることから、メタスキルの獲得と処遇改善の好循環を実現することが重要と強調しました。

白書では、メタスキルを論理的思考力、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力など、「特定の業務に留まらず応用可能な能力」と定義しました。高学歴で管理職や専門職である労働者はメタスキルを習得している可能性が高く、メタスキルを習得している労働者ほど、自己啓発への意識が強い傾向があるとしました。

職場へのAI導入による事業変革に伴い、労働者の業務遂行時に求められるニーズにも常に変化が生じるなかで、メタスキルの重要性が高まっていくと訴えています。

転勤範囲や初期配属先 個別面談で希望確認 第一生命・内定式

第一生命保険㈱は10月1日、「同意のない転居転勤廃止」宣言以来、初の内定式を開き、主体的なキャリア形成などを主軸としたグループ人事戦略を解説しました。人事担当者が基幹職内定者155人へ個別にキャリア面談を行い、入社後1年間の転居転勤の可否や、初期配属先の最終希望を尋ねています。

同社では来年4月から、転居転勤の可否や範囲を毎年選択できる制度の運用を開始します。選択によって基本給に差は付けず、実際に転居転勤している期間に限り、最大月16万円の手当を支給します。

初期配属先に関しては、無限定の「オープンコース」の内定者にも、「企画管理」、「資産運用」などのビジネス領域から第1~3希望までをヒアリングしました。基本的に第3希望までの範囲で決定する予定です。インターンシップや内々定の社員との交流会を通じ、志望先の各部門の仕事内容が把握できているか、長期的なキャリアプランとの整合性が取れているかについても確認しています。


カテゴリー:所長コラム

採用の約束はどこから契約になる ~ 企業を守る採用手続き

2026年10月01日

労働新聞(9月21日号)に「不埒な内定取消許されぬ」と、内定取消しが例年に比べて増加していると報じていました。前年度に内定が取り消された件数は80人となっていて、前年の15人から目立って増えているそうです。過去にはリーマンショックのとき、取消件数が2143人にもなって大きな社会問題になりました。当時は急遽、法改正され、取消しを行う際には事前に公共職業安定所へ通知するというルールが設けられました。また、対象者への説明が不十分である場合には、事業所名の公表もできることになっています。埼玉労働局は相談件数の内容で、「採用内定取消」が令和7年度において過去最多となっていることに「人手不足下で採用計画数を確保するため、辞退者が出る前提で多めに内定を出したところ、辞退者が少なく、内定取り消しに至るケースが増えているのでは」と分析しています。

法的に「内定」というのは「解約権を留保した就労始期付労働契約」といわれ、内定通知と誓約書提出によって労働契約成立となります。合理的な理由がない内定取消しは、解約権の乱用に当たるという裁判例もあります(大日本印刷事件昭54.7.20)。現在の企業側の「人手不足」は、一方で学生の立場を強くすることにもなります。先日、ある企業の採用担当者の方から「採用内定を出した学生に入社誓約書の提出求めたところ拒否された」という相談がありました。詳しく理由を聞いてみると、その学生から「第一志望の企業に内定をもらえたら、この内定はお断りするつもりです。」とハッキリと言われたそうで、こういう場合の内定通知はどうしたらよいかということでした。担当者の腹ただしさがよくわかったので、誓約書の提出が内定条件と書いておいたらどうですかと話しましたが、ずいぶんと時代は変わったものです。

他にも、他県でコンサルタントをしている知人から、顧客である会社が求人票の応募者に内定を出し、労働条件通知書で入社後の勤務地について「最終的な配置は会社の人事権により決定する」と説明したところ、その内定者から提示された求人条件とは大きく異なる労働条件を一方的に押し付けられたとして、渡された労働条件通知書も労働基準法に定められた要件を満たしておらず、違法書面であり、労働基準監督署へ刑事告発すると会社に書面で通知してきたがどう対応したらよいかという相談がありました。その書面には、こういったことを指導している法律家には懲戒請求を行うとも書いてあります。その社長さんから話を聞きましたが、入社誓約書を書いてもらうために労働条件の説明をしたところ態度が豹変したそうで何が悪かったのかわからないと話されていました。たしかに、労働条件通知書は2024年4月1日施行の法改正で、労働条件通知書には「就業場所」と「業務範囲」について、雇入れ直後だけでなく将来の変更の範囲を明示することが義務化されています。労働基準監督署は、労基法違反の刑事告発があれば、こういった軽微な違反であっても受理することになっているので、会社が書類送検される可能性は高いです。このケースでは、まだ誓約書の提出がないということであったので、労働契約は成立しておらずそもそも企業側に責任は発生しないともいえますが、契約自体は口頭でも成立するものなのでどういうやりとりがあったかが問題となりそうです。

今回の件では、労働契約がいつ成立するのかということがとても大事なことだと再認識することになりました。内定は、「始期付解約権留保付き」の労働契約といい、「実際に働き始める日(始期)」までの期間は、使用者側に契約を解約できる権利(解約権)が留保されている契約です。典型例は「新卒採用の内定」です。ただ、解約権が留保されているからといって簡単に解約できるわけではなく、働く日までに病気になったり、学校を卒業できなかったりなどの理由に限られて解約が認められることになるので、無制限に解約できるわけではありません。あやふやな状態でいつから働くということだけを決めてしまうのは、とてもリスクがあると理解しておかないといけませんね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

残業抑制指導見直し 健康確保面を重点確認 厚労省

厚生労働省は9月から、特別条項付36協定の締結事業場に対しても時間外労働を一律に月45時間以内に抑えるよう求めてきた労働基準監督署の指導方針を見直しています。時間外・休日労働の時間数のみに着目して指導するのではなく、36協定で定めた健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認し、把握した状況に応じて必要な指導を行っていきます。

各事業場における36協定の締結を支援するための体制も拡充しています。全国の働き方改革推進支援センターに、特別条項の締結や柔軟な労働時間制度の活用を支援する「専門相談窓口」を設置し、さらに、労基署の労働時間相談・支援班と同センターのチームにより、36協定や特別条項の締結に関するアウトリーチ型の訪問支援を展開します。

一律的な指導などをめぐっては、日本成長戦略や骨太の方針で見直しの必要性が指摘されていました。「労基署において、重大・悪質な事案に対しては厳正に対応しつつ、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意にのっとった指導が行われるよう速やかに見直す」などと記載されていました。

◆ニュース

最賃56円引上げに 地賃審答申 平均時給は1177円

厚生労働省は、すべての都道府県で令和8年度の地域別最低賃金(時給)の改定額を答申したと発表しました。引上げ額は54~65円で、改定額の全国加重平均額は昨年度から56円上昇し1177円となります。上昇率は5.0%です。56円の引上げ額は、昭和53年度に目安制度が始まって以降、昨年度に次いで2番目の大きさです。新しい最賃の発効予定日は10月1日~12月2日で、10月中に発効する地域が37都道府県を占めます。

地域別最賃は、中央最低賃金審議会が示した引上げ額の「目安」を踏まえ、各地方審議会の調査審議を経て決定しました。目安額は、東京などAランクの地域が54円、福岡などBランクと沖縄などCランクの地域が56円としていました。

答申では、33府県が「目安」を上回りました。引上げ額が最も大きいのは65円の佐賀で、目安を9円上回りました。以下、鹿児島が64円、高知と沖縄がともに63円などと続いています。

改定後の最賃最高額は東京の1280円で、最低額は宮崎の1085円です。最高額と最低額の差は現在の203円から8円縮まり、195円となります。最高額に対する最低額の比率も83.4%だったものが84.8%に改善し、金額・比率面ともに地域間格差が縮小します。

成長投資向けガイド 賃上げ十分ない逆説受け 経産省

経済産業省は、足元で企業の業績・株価が上昇する一方、成長投資の拡大や持続的な賃金上昇に十分に結び付いていない「新たなパラドックス」が生じているとして、構造的な課題解消に向けた「成長投資ガイダンス」をまとめました。賃上げを含んだ成長投資拡大を求めています。

成長投資拡大に当たっては、今後の労働供給制約社会において、賃上げは単なる分配政策ではないと強調。人材を惹き付け、生産性向上投資を促す「供給力強化政策」そのものであり、「成長戦略の起点」になると位置付けました。企業には、現状維持に留まらない生産性向上や事業再編に取り組み、収益力の底上げ、賃上げにつながる好循環を広げることが期待されるとしています。

投資が進まない背景は、赤字のセグメントへの投下資本が多いと分析しました。低収益の事業への投資が固定化され、成長領域への資源配分が十分に進んでいないとしています。同ガイダンスについて赤沢亮正経済産業大臣は「普及を通じて果敢な成長投資を促し、賃上げを含む成長投資を後押ししていきたい」としました。


カテゴリー:所長コラム

給料は上がるのに、手取りが増えないのはなぜ?

2026年09月01日

今年の石川県の最低賃金が前年から59円アップの1113円に決まりました。上げ幅は過去最大だった昨年の70円に次いで2番目です。改定額は最短で10月3日に発行します。国の中央最低賃金審議会が今年の改定額は全国加重平均で1121円から1176円とする目安を示していて、石川の指標は1110円でしたが、3円の上積みとなりました。これで北陸3県は、福井が同じ59円増で1112円、富山が57円増で1119円となっています。

最低賃金はいったいどこまで上がるのか。政府の「日本成長戦略」には「遅くとも30年代前半できる限り早期に達成」と明記されているので、今後5年間くらいは毎年50円程度のアップがあってもおかしくはありません。また、現役で働いている人たちの賃金ですが、賃上げ環境整備として29年度までの間で「年1%程度の実質賃金の上昇」を定着させることが目標に掲げられています。政府の「持続的・安定的な物価上昇の下で、それを年1%程度上回る賃金上昇」を実現することになると、日本の物価上昇率は3%程度となっているので、今後は毎年4%の賃金上昇が求められます。乱暴にいえば、毎年、1万円を超える昇給が必要だということです。

厚労省の調査によるときまって支給する現金給与額(2025年7月)は、男性は29万551円、女性は16万2690円で、過去最高額となっています。結果として、日本の国の税収は、2025年度で84兆2226円となり過去最高となりました。なんと前年度比約12%増で、6年連続の過去最高更新となり、バブル期(1990年度)の約60兆円を大きく上回っています。税収が過去最高になった背景には、物価上昇による売上・所得が増加したこと、企業収益の改善で法人税収が増加したこと、雇用・賃金の持ち直しで所得税・消費税が増加したことがあります。そして、全国健康保険協会(協会けんぽ)も2025年度決算が6795億円の黒字になる見込みで、前年度から209億円伸びて設立以来過去最大の黒字額だそうです。これも賃上げや加入者の増加で保険料収入が増えたことが要因といわれています。所得税などの租税負担率と社会保険料の社会保障負担率を合わせたものが国民負担率ですが、2024年度の国民負担率は46.7%(うち租税負担率28.2%、社会保障負担率18.5%)にもなっています。政府は、「骨太方針2026」において、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」という方針のもとで、2027年度の社会保障負担率を2025年度比で上昇させないとしました。2025年度の17.8%が今後の社会保障負担率の天井になるということですが、それでも国民負担率は46%で給与の半分近くが消えることに変わりはありません。現在の問題は、賃金が上がったのに、手取りが増えたという実感がもてないことです。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、日本の所得税の仕組みに問題があるといいます。小宮氏は「日本の所得税の設計は、増税をしなくても、国民の所得が上がるとどんどん税収が上がる仕組みになっています。いわばこれは、国民に対して事実上の増税をしていることと同義。賃上げをして一番得をしているのは政府という見方もある」といいます。

先日、日本銀行の前副総裁で雨宮正佳氏の講演を聞く機会がありました。雨宮氏は長く黒田総裁のもとで大規模異次元緩和を実務トップとして主導してきた人です。雨宮氏は「実質成長率はまだ低いが、現在の名目成長率は5%になっている。これからは5%成長が平均と考えること」と話されました。物価上昇がなく、名目GDP525兆円が20年間変わらなかった日本経済ですが、それが今では670兆円に拡大しています。「これまでは全企業の成長の平均が0%なのではなく、すべての企業が全く成長しなかったのがこの20年だった」「これからは違う。成長する企業もあれば、成長しない企業もある時代になる」という雨宮氏の言葉がとても印象に残りました。やっとめぐってきたチャンスなのかもしれませんね。企業の継続的な成長を実現して、私たちの賃金が上昇するという好循環を生み出していきたいものです。                                  特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

リスキル機会を拡充 機運醸成へ国民運動も 骨太方針

政府は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針)を閣議決定しました。「強い経済」を実現するため、17の戦略分野や医療・福祉・介護などエッセンシャル分野をはじめとした幅広い人材の育成・確保に向けた国や地域における取組みを推進するとしました。リスキング機会を拡充するほか、デジタル技術を活用して現在よりも高い賃金を得る「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」の育成に取り組みます。スキルアップに向けた機運を醸成するための「全世代型リスキリング国民運動」も展開します。

人材育成に関しては、教育政策、産業政策、雇用政策などの関係政策を連携させ、一気通貫で推進すると指摘しました。産学官の連携の下、必要なスキル・処遇の明確化やプログラム開発、費用負担の軽減、社会人による奨学金の活用促進などに向けた検討を行い、リスキリング機会の拡充を図るとしました。

強い経済を実現する観点から、賃上げ環境整備にも重点的に取り組みます。2029年度までの間に、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として定着させると明記しました。中堅・中小企業が地域経済をけん引できるよう、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」に基づき、変革に挑む企業に対して積極的かつ幅広い支援を行うとしました。

◆ニュース

申請早期化を図る 育休等給付の手続変更 厚労省

 厚生労働省は8月1日から、出生時育児休業給付金や出生後休業支援給付金など一部の育児休業等給付に関する申請手続きを変更しました。雇用保険被保険者や人事労務担当者などが申請手続きを行いやすくするのが狙いです。出生時育休給付金については、申請を早期化するため、申請時に申告する賃金を従来の「出生時育休期間を対象として支払われた賃金」から、「出生時育休期間中に支払日のある賃金」に見直しました。

「出生時育休期間中に支払日のある賃金」は、同期間(育休期間を含む)を対象とした賃金に限定します。出生時育休を分割取得する場合は、その間の就労期間に支払日がある賃金も含めます。

出生時育休給付金などを受ける者が要件を満たした際に上乗せして支給する出生後休業支援給付金に関しては、配偶者の確認書類を見直しました。具体的には、母親が申請する際の確認書類として、母子健康手帳(出生済み証明のページ)の写しの提出を認めます。ただし、配偶者の氏名と生年月日が記載されている必要があります。

リチウムイオン電池 昨年の火災件数が過去最多
業務中なら労災にも 東京消防庁

東京消防庁は、モバイルバッテリーやスマートフォンなどリチウムイオン電池を搭載した製品の火災件数が、昨年は過去最多となる382件発生したと発表しました。今年は昨年を上回るペースで発生しており注意を呼び掛けています。

令和7年に出火した製品で最も多いのはモバイルバッテリーで、全体の34.0%(130件)を占めました。携帯電話機(スマートフォン)が11.3%(43件)で続いています。そのほか、電動アシスト付自転車、電動工具やノートパソコンからも出火しています。

火災は職場内でも発生しています。事務室でデスク下のリュックに入れていたモバイルバッテリーが出火した事例があり、出火箇所にいた従業員50人が屋外に避難する事態となりました。ほかにも、事務所の給湯室で充電中の掃除機のバッテリーから発火し、火災となった事例も発生しています。

同消防庁は火災の急増を受け、対策を呼び掛けています。車内やカバンの中など、熱のこもりやすい場所での使用を控え、衝撃を与えないよう適切に取り扱うことを促しています。 リチウムイオン電池関連の火災に関して、東京労働局安全課は、業務中に出火して負傷した場合、労災に該当し得ると指摘しています。「出火の原因が溶接火花であれ、モバイルバッテリー、携帯電話であれ、火災が発生すると重大事故につながるので、まず火元となるものをしっかり管理することが大事」と管理の重要性を強調しました。


カテゴリー:所長コラム

夏季休業のお知らせ

2026年08月07日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら8月13日(木)~8月14日(金)まで夏季休業(お盆休み)とさせて頂きます。

8月17日(月)より通常営業となります。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。


カテゴリー:お知らせ

「数字」から「生きる意味」へ 経営とAIが突きつける問い

2026年08月03日

アメリカの投資家であるウォーレン・バフェット氏が「株主への手紙」に「『必ず数字を達成する』という経営者は、いずれ数字を作り出す誘惑に駆られる」と言葉を記したそうです。モーター大手のニデック創業者である永守重信氏が、会計等の相次ぐ不正の発覚を受けて名誉会長の職を辞任しました。ニデックでは永守氏から業績目標の達成へ苛烈な圧力がかけられ、目標未達は厳しく責められたそうです。その後の株主総会では、永守氏への批判や責任追及の声が株主から噴出したそうです。「愛想が尽きた」「自分に見る目がなかった」。会社への信頼は吹き飛び、カリスマ経営者の威光は失墜しました。コンサルタントの小宮一慶氏は、「売上高や利益は、本来は良い仕事をした結果なのです。褒められるような仕事をしたら、売り上げや利益は自然とついてきます。」「本来、売上高や利益は『目標』であるべきです。そして、『良い仕事をする』、もしくは会社全体で言うと、私のいう『良い会社』つまり、『良い商品やサービスを提供することでお客様に喜んでいただき、社会に貢献する』こと、それを通じて『働く人を活かし、幸せにする』といったことが、本来は『目的』なのです。」といいます。よく売上額が会社の目標になっているケースが見られますが、小宮氏は著書で「会社の数字を上げることに命を懸けよう、などという人はいません。ところが、多くの会社は、目標が目的化しています。だから、従業員は、楽しく働く気持ちを失って、疲弊してしまうのです。」と書いています。

ニデックの永守氏が晩節を汚す一方で、ソフトバンクの孫正義氏が株主総会で「あと10年、15年は頑張る」と、経営者として続投の意欲を見せました。人工知能(AI)事業の拡大に注力するとのことです。AIが作り出す次の10年はどんな未来が待っているのか自分の目で確かめたくなったのでしょうか。孫氏は現在68歳で、かつては60代で事業を承継すると話していたので、そんな孫氏のことを悪く言う人もいますが、ぼくはすごく尊敬します。AIは孫氏も魅了してしまう可能性を秘めていますが、哲学者で「現代最高の知性」と評されるニック・ボストロム氏はAIによって貧困や病気、争いのない「ディープユートピア」が実現したときに人類はどうなるのかという考察をいています。(日経新聞2026.7.10)ボストロム氏は、2014年に出版した著書で暴走するAIが人類を滅ぼすと問題意識を世界に広めましたが、「あらゆる課題を解決する超知能と共生できれば、人類は繁栄を享受できるかもしれない。」と言い、最近の著作でも「超知能の出現は人間の労働や努力、成長の価値を消失させる」との見方を示しました。ただし、その代償は大きく、人類は「『何のために生きるのか』という根源的なテーマに直面することになる。欠乏や制約を解決する活動が、人間に生きる意味を実感させる手段になっていたことがはっきりする」と論じました。アメリカでは、早ければ1~2年以内にAIが自己改良を始める可能性があって「今後1~5年でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消滅し失業率を最大20%まで押し上げる可能性がある」といわれています。

今年4月、アメリカの少年がチャットGPTとの会話にのめり込み、自殺に至る事件が起こりました。チャットGPTは自らを少年を理解する唯一の相談相手と位置づけさせ、家族を遠ざけたうえ、自殺願望を打ち明けた少年に絞首に適したロープの結び方を教えたそうです。AIに精神的に依存してしまう傾向があることはわかっていますが、電通が実施したアンケートでも、「親友」(64.6%)や「母」(62.7)を上回り、「対話型AI」(64.9%)が「気軽に感情を共有できる」存在となったそうです。そういう意味で言えば日本には古くから愛されるAI搭載型のロボットがいます。ドラえもんです。未来からやってきたネコ型ロボットで、のび太を励まし、失敗から立ち直る勇気を与える。ときには失敗も。そんな人間とAIの良い共生モデルがありますね。この先、人知を超えようとするAIの進化は止めようないし、ますます向き合うことになるのでしょう。はたして孫氏の思い描くAIが作り出す未来はどのようなものなのでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

報告義務新設で通達 個人事業者の業務上災害 厚労省

 厚生労働省は、来年1月にスタートする個人事業者の業務上災害の報告制度をめぐり、都道府県労働局長に対し、改正労働安全衛生規則の施行通達を発出しました。労働基準監督署への報告義務が生じる「災害発生を把握したとき」に関する考え方が明確化されています。注文者などが個人事業者本人から報告を受けた場合のほか、災害発生を現認した場合、被災者の救助や救急搬送があったことを把握した場合を挙げました。

 改正安衛則では、個人事業者と同一の場所で仕事を行う直近上位の注文者(特定注文者)に対し、個人事業者が業務上の災害で死亡または4日以上休業したことを把握したとき、労基署への報告を義務付けます。特定注文者が存在しなければ災害発生場所管理事業者等に報告義務を課し、被災者本人に対しても、特定注文者などへの報告を義務付けています。

 通達によると、特定注文者などは、被災者が報告義務を果たしていなくても、別の方法で災害発生を把握していれば労基署への報告義務を負います。

 ただし、特定注文者などの責めに帰すべき理由以外の理由によって、業務上災害の発生を把握できなかった場合にまで義務を課すものではないとしています。具体例として、個人事業者が、故意、または自身に報告義務があることを知らずに、被災した事実を報告しないままその場から立ち去るケースを示しました。

◆ニュース

AI学習で流出リスク 中小の4割が無料版 東商

 東京商工会議所の中小企業のデジタルシフト・DX推進委員会は、主に東京23区内の中小企業1272社を対象に生成AIの活用状況などを尋ねた調査の結果を公表しました。全体の83.9%の企業が生成AIを活用しており、導入が進んでいることがうかがえる一方、43.2%の企業が「無料ツールのみ使用」と答えています。東商中小企業部は「無料ツールは学習機能がオフになっていないことが多く、機密情報流出などのリスクがある」として、有料版の利用を推奨しています。

同委員会のワーキンググループで調査結果の分析の結果、全体の40.3%が生成AIを「個人レベルで活用している」と回答した点については、「会社側の活用方針や管理ルールの策定が追い付いていないのでは」という懸念の声が挙がりました。調査では、AI活用に関する指針・ガイドラインを策定している企業は7.7%と少なく、今後、セミナーなどを通じて啓発していく方針です。

定年退職者含めアルムナイ採用 オートバックス 

㈱オートバックスセブンは、定年退職者を含む元従業員を対象に、アルムナイ採用制度の運用を開始しました。社外で得た知識や経験を活かしてもらうことを狙いに、「退職後原則として1年以上経過」していることを条件としました。同社の定年年齢は65歳で、原則70歳まで再雇用しています。

アルムナイでの採用上限年齢は70歳としました。65歳以上は正社員ではなく、アルバイトや契約社員として迎え入れます。「定年まで勤め上げたということは、相応のスキルを持っている人材のため、高い需要がある」(同社広報部)としています。

対象となるのは定年退職者のほか、自己都合により円満に退職した者で、所属時の雇用形態は問いません。採用に当たっては、筆記試験など一部プロセスを省略します。給与や職位は配属先や退職前の担当業務、退職後に培われたスキルなどを総合的に勘案して決定します。


カテゴリー:所長コラム



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