人事・労務のエキスパート、石川県金沢市の社会保険労務士法人 末正事務所。人事・労務管理相談、社会保険労働保険手続き、紛争解決、組織活性、給与計算、人材適正検査まで、フルサポートします。

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上がりつづける最低賃金

2025年10月01日

最近は、悩みのある小中学生はAIに相談するそうですね。カウンセラー会社(ZIAI東京都渋谷区)の調査によると、人間のカウンセラーよりも、AIカウンセラーのほうに人気があって、AIカウンセラーを利用した子どもの相談件数は人間のカウンセラーよりも10倍以上も多く、さらに満足度についても9割を超えたそうです。「先生や家族に言えないことも、AIになら簡単に言える」「相談しても、誰にもばらされないから」「人相手よりも自分の気持ちを素直に伝えられた」「どんなお話でも、お悩みでも、最後までしっかりと聞いてくれて、親しみやすくて、時には解決してくれるから!」と感想が寄せられたそうです。驚くことに自殺防止の相談電話もAIが受けているという話を聞きましたが、感情をもたない相手への相談なんて、ぼくにはとてもじゃないですが理解できることではないです。

 2025年の最低賃金が出そろいました。今回の改定で初めて47都道府県の全てで1000円を超え、東京の1226円が最も高くなり、高知、宮崎、沖縄の1023円が最も低くなりました。国が示した引き上げの目安に上乗せして最低賃金額を決定するケースも多く、最大の引き上げ幅となったのは国の目安の64円に18円を上乗せして82円とした熊本です。これまでは東北、北陸、四国、九州はすべての県が1000円に達しておらず、最も低い秋田県は951円で、1000円以上になるには大幅な引上げが必要なので注目されていましたが、秋田が決定した額は、なんと1031円で、県内世論の後押しで国が示した目安を16円も上回る引き上げとしました。その結果、鳥取を1円上回り、最下位から抜け出したということです。そして、その3日後には後を追うように隣の952円の岩手が同じ1031円にすると決めています。ただし、最低賃金の発効日は来年3月31日としてできるだけ影響が小さくなるよう遅らせる配慮もみせています。2010年代は全国で見ても最低賃金は国の目安に上乗せしても数円程度で、5円を超えることはほぼなく、発効日も10月1日が多かったわけですが、この秋田の年度末とした発効日は半世紀ぶりとなるそうです。昨年はワースト2位の徳島県で現状に危機感をもった知事が「全国で下から2番目の最低賃金では人材の県外流出が止まらない」として関係先に働きかけを行い、84円もの過去最大の引き上げで980円として全国27位に躍進したことが話題となりましたが、まるで全国での「脱・最下位」競争のような様相を呈しています。最低賃金の大幅な引き上げは地域間の賃金格差を是正して人口流出に歯止めをかける狙いがありますが、当然に会社経営に与えるダメージは大きいわけで、岩手県の審議会では使用者側の委員5人全員が退席した中で答申が決まるという事態になりました。この30年間に賃上げをしてこなかったツケがまわってきたということなのでしょうけれど、これまでの人件費の低さのため、本来なら機械化すべき場合でも人手に頼るなど、企業は生産性を上げる努力を怠ってきたともいえるわけです。そのため日本の失業率が海外に比べて極めて低いという意見もあるくらいです。

従業員の退職が影響した「従業員退職型」の倒産が、2024年に過去最多の87件に達したそうです。労働力人口の減少による人手不足の影響が広がっていますが、これからは「賃上げ難倒産」が増えるのではないかと言われています。政府は「最低賃金時給1500円を2020年代中に実現する。」と発表しています。インターネットでの買い物ができる時代において、地方が都市部よりも物価が安く、生活費も安く済むなんていうことは昔の考えなので、地方での賃上げが今よりも過熱することになってもおかしくないことになります。賃上げしたくても収益力が乏しい中小零細企業は数多くありますが、「待遇改善しないことのリスク」がそういった企業を中心に急速に広まっているといわれます。ただ、先ほどの岩手での審議会で途中退席した使用者側委員のひとりは最低賃金の大幅アップについて「納得以前に理解できない」と言葉を残したそうです。時代の変化なのか、どうもよく理解できないことが世の中にあふれ始めているようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

最賃平均1121円に 過去最大の66円引上げ 答申結果

 厚生労働省は、全国すべての地方最低賃金審議会で令和7年度の地域別最低賃金の改定額を答申したと発表しました。47都道府県の引上げ額は63~82円で、改定後の全国加重平均額は66円(6.3%)上昇して1121円になります。上昇額は5年連続で過去最大となり、39県で中央最低賃金審議会が示した「目安」を上回りました。

改定後の最高額は東京の1226円で、最低額は高知、宮崎、沖縄の1023円となります。最高・最低額の差は現在の212円から203円に縮まり、最高額に対する最低額の比率も81.8%だったものが83.4%に高まるなど、地域間格差が縮小します。

ストレスチェックの義務拡大で 手引き作成に着手 厚労省

労働安全衛生法の改正によりストレスチェックの実施義務が労働者50人未満の事業場まで拡大することを受け、厚生労働省が小規模事業場向けのマニュアルの作成に乗り出しました。

メンタルヘルス対策に関する有識者検討会の下に設置するワーキンググループで、今年11月ごろまで50人未満の事業場に適したストレスチェックの実施方法について検討します。その後、有識者検討会や労働政策審議会安全衛生分科会での議論を経て、今年度末~来年度初めをめどにマニュアルを公表し、周知を進める方針です。

ワーキンググループでは、ストレスチェックの実施を外部委託する際の事業者のかかわり方や委託先の選定方法のほか、労働者が安心して面接指導の申出をできる環境整備のあり方などを論点とします。労働者のプライバシー保護の観点に留意した集団分析・職場環境改善の取組みについても検討します。

ストレスチェックに関する改正は、令和10年5月までに施行されます。

求人票の書き方助言 外国人材活用を積極化 東京労働局

 東京労働局は、人手不足に悩む企業に対し、外国人活用を積極的に働き掛けていきます。求人に応募が来ない事業所に対し、ハローワークから「〇〇国籍の方が活躍中」といった、外国人求職者の目を惹くような求人票の書き方を指南します。

 同労働局管内では、在留資格「留学」の外国人が就労ビザに移行するほか、資格外活動を行うケースを中心に、外国人の求職申込みが増えています。今年6月に開いた留学生対象の合同就職面接会には、例年の3倍近い2700人が集まりました。

 同労働局職業対策課は、「日本で働きたい外国人と、人手不足の企業とが、うまくマッチしてほしい」と話します。応募が集まらない企業や外国人受入れに興味がある企業に対し、外国人の応募が増えるよう支援します。具体的には、事業所の状況やニーズを拾いながら、「〇〇国籍の方が〇人勤務しています」、「海外で活躍できる人材を募集します」などの文言を求人票に盛り込むようアドバイスします。

 外国人雇用に障壁を感じる企業には、「外国人雇用管理アドバイザー」の活用を勧めます。アドバイザーは、都道府県労働局ごとに設置されており、同労働局では、社会保険労務士や出入国管理機関の出身者など3人が担当しています。外国人から需要の高い一時帰国への対応、文化への配慮など、専門的な助言を行っていきます。


カテゴリー:所長コラム

ビジネスと人権

2025年09月10日

平成27年から石川県中小企業団体中央会より外国人技能実習制度適正化事業の専門家として、石川県内の技能実習生を受入れている協同組合や企業の訪問を始めて今年で10年目になりました。この外国人技能実習制度は、1993年に創設されており、その制度の目的は、日本で培われた技術などを開発途上国へ移転して、その地域の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという国際協力が基本であって「労働力」ではないとされてきました。しかし、実習生を受け入れている企業の経営者から聞こえてくるのは、「実習生がいないと会社は立ちいかない」という切実な声です。

制度創設の頃は、中国からの受入れが中心でしたが、中国の経済発展とともにその数は減少し、受入国はベトナムにうつり、昨年あたりからはインドネシアやミャンマーからが増え始めているようです。これはその国の経済力の大きさを表しているようです。当初の日本のGDPは、1国でアジア全体の国を合わせても約2倍の規模を誇っていましたが、現在は約10分の1程度に縮小してしまっています。それだけ、日本に比べて、他のアジア諸国の経済力が強くなっています。つまり日本に来なくても、自国で働いて十分な収入が得られるのであれば日本で働く必要がないのです。いまや日本の経済を支えている技能実習制度ですが、失踪や過酷な労働条件によるトラブルが頻発したこと、また実習生は転職ができないため、日本は外国人労働者を低賃金で強制労働に就かせていると諸外国からは人権保護の観点から非人道的と批判されてきました。

「カカオ2050年問題」をご存じでしょうか。気候変動が原因で、2050年にチョコレートが食べられなくなるかもしれないといわれています。国連機関の報告書によると平均気温が上昇するとカカオが生育しなくなり、生産量が大幅に減少してしまう可能性が高いといわれています。また、カカオ産業での「児童労働」は特に深刻な状況にあるといわれます。児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことをいいます。カカオの生産現場は過酷な状況にあるといわれていますが、そこでは多くの子どもたちが働いています。

最近は日本企業でも「ビジネスと人権」への関心が高まっています。企業活動が社会、経済、環境に与える影響は無視できなくなっていて、「製品に責任を持つ」から「生産の在り方に責任を持つ」へと深化しています。人権を無視して大きな損害を生じさせたあるアメリカのアパレル企業があります。2013年にバングラデシュで8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落して少なくとも1132人が死亡する事故が起こりました。この事故がきっかけで自分たちのファッションが劣悪で安全基準が欠如した労働環境から生み出されていたことを知ることになり、ヨーロッパで大規模な不買運動が起こりました。その事故により失われた売上高は約1兆4000億円といわれています。このようにビジネスにおける人権侵害が企業の経済活動に与える影響は無視できなくなっていますが日本での取り組みは世界に遅れているといわれます。

こういった中で今、日本の繊維業界の取り組みが注目されています。繊維業はこれまで対象外だった外国人材受入れの特定技能制度をスタートさせました。繊維業界では技能実習生に対する労基法違反の事例が多くあったといわれています。しかし、特定技能制度の開始にあたり、業界独自の要件を設定しました。それは「国際的な人権基準を遵守し事業を行っていること」「勤怠管理を電子化していること」「パートナーシップ構築宣言の実施」「特定技能外国人の給与を月給制とすること」の4つです。この追加要件の設定は、単なる労働力確保にとどまらず、業界全体の労働環境と企業文化の改善を促す契機になるのではないかといわわれています。

20年前は、技能実習生が日本で3年働けば帰国後には家が3軒建つといわれ、日本で働きたい外国人はたくさんいました。その頃から比べると、日本を取り巻く状況は大きく変わりました。技能実習制度は、2027年に育成就労制度として生まれ変わります。今後は選ばれる日本となるための行動が求められそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

遺族補償年金 男女差解消を提言 厚労省労災研究会・中間報告

厚生労働省の「労災保険制度の在り方に関する研究会」は中間報告書をまとめ、遺族(補償)等年金における夫と妻の受給要件の差の解消などを提言しました。

現行の遺族(補償)等年金は、被災労働者の遺族である妻が年齢にかかわりなく受給できるのに対し、夫の場合は労働者である妻の死亡時に55歳以上か、一定の障害がある状態でなければ受給できません。中間報告書では、夫と妻の支給要件に差を設ける合理的理由を見出すことは困難と指摘し、要件の差を解消することが適当としました。差を解消する方法については、夫の要件を撤廃すべきとの意見が大半を占めたとしています。

労働災害が長期的に減少傾向にあるなかで存在意義が問われていたメリット制については、一定の災害防止効果があるうえ、事業主の負担の公平性の観点からも一定の意義が認められるとし、労災かくしを助長するといった懸念はあるものの、制度の意義を損なうほどの影響は確認できなったとして、「今後も存続させ、適切に運用することが適当」と結論付けました。

今後、提言内容について労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会で議論を進めます。

◆ニュース

男性の育休取得40% 前年度から大幅上昇 雇用均等基本調査

 厚生労働省がまとめた令和6年度雇用均等基本調査結果で、男性の育児休業取得率が初めて4割を超えたことが明らかになりました。4年10月1日~5年9月30日の1年間に子供が生まれた男性労働者の取得率を調べたもので、6年10月1日までに産後パパ育休を含め育休を開始した割合は前年度調査の30.1%から10ポイント以上増え、40.5%に達しました。

 育休を取得した男性のうち、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる産後パパ育休を取得した者は60.6%でした。有期契約で働く男性の育休取得率は33.2%で、前年度の26.9%より6.3ポイント上昇しました。

 業種別に男性の取得率をみると、鉱業・採石業・砂利採取業(67.7%)や、金融業・保険業(63.6%)、学術研究・専門・技術サービス業(60.7%)で6割を超えました。一方、生活関連サービス・娯楽業(15.8%)や不動産業・物品賃貸業(19.9%)は2割未満と、業種間の差が大きい状態です。

運転者の採用倍増 完全週休2日制導入へ 名正運輸

愛知県を中心に関東・東海・関西エリアに拠点を持つ名正運輸㈱は、トラック運転者の完全週休2日制を実現し、各種手当による給与増を図ったことで、昨年度の採用人数が50人に上ったと明らかにしました。例年の20~30人から大幅に伸び、運転者の総数が300人を超えています。

新制度の適用は今年4月ですが、昨年から募集要項で予告し、採用人数の増加につなげたといいます。完全週休2日制の導入により、年間休日を96日から104日まで増やしています。

給与に関しては、全従業員の平均で10~15%アップしました。子育て世代への生活支援として、「家族手当」を新設。20歳以下の子どもを扶養する社員に対して、1人当たり月1万円を支給します。中堅・ベテラン層向けには「プロドライバー手当」を導入しました。勤続2年目から月1000円を支給。勤続年数に応じて上がっていき、10年目に上限の1万円まで高める仕組みとしています。

無事故だった場合に支給する「安全手当」や、非喫煙者と禁煙中の者に支給する「健康手当」なども増額しています。

同社は日給月給制で一部に歩合給を導入していますが、その割合を下げ、基本給を3000円から6000円に増額しました。同社の広報担当者によると、トラック運転者に完全週休2日制を導入する企業はまだ少なく、「しっかり休めて、安定した給与がもらえる」ことを魅力にしていく考えです。


カテゴリー:所長コラム

夏季休業のお知らせ

2025年08月04日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら8月14日(木)~8月15日(金)まで夏季休業(お盆休み)とさせて頂きます。

8月18日(月)より通常営業となります。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。


カテゴリー:お知らせ

睡眠時間と通勤手当

2025年08月01日

高齢者は寝すぎると、死亡リスクが1.57倍にもなるようです。厚生労働省が公表した「健康つくりのための睡眠ガイド2023」では、成人、こども、高齢者ごとに睡眠・休養についての推奨事項や参考となる情報がまとめられていて、睡眠時間や眠り方などの生活習慣が、寿命に大きな影響を与えるとされています。どれくらいの時間を寝るのが適当なのかということは誰しも気になりますね。ぼくは、高齢者というにはまだ少し早いですが、最近は5時間ほど寝れば十分になってきました。さきほどの睡眠ガイドでは、世代ごとに推奨される睡眠時間が示されています。小学生なら9~12時間、中学・高校生は8~10時間、成人は6時間以上ですが、高齢者は「床上時間が8時間以上にならないこと」とされていて、「寝すぎない」ことが推奨されています。人は加齢とともにエネルギー消費量が落ちて、睡眠は短く、浅くなっていきます。高齢者の寝すぎは死亡リスクを高めるともいわれていて、その理由は、睡眠時間が長いと睡眠の質が低下してしまい、身体を休めることにならないということだそうです。身体が休まらないので、意欲が減退し、動くのがおっくうになり、「運動不足」や「認知機能の低下」をまねき、やがて肥満や高血圧、糖尿病、心筋梗塞、ガン、うつなどの病気のリスクを高めてしまうということになるようです。

「睡眠時間」は労災認定においても重要視されていることはご存じでしょうか。脳・心臓疾患の労災認定の可能性は、「発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合」に高まります。「100時間」「80時間」の意味は、「1日6時間程度の睡眠が確保できない状態が1か月継続した場合に、おおむね80時間を超える時間外労働が想定され、1日5時間程度の睡眠が確保できない状態が1か月継続した場合としては、おおむね100時間を超える時間外労働が想定される」ということです。このように労災認定と睡眠時間は、強く結びついているわけですが、都市部の場合には、理屈上、ここに通勤時間が加算されることになります。

ぼくが初めて東京に出て驚いたのは、通勤時間帯の満員電車でした。もう乗れないだろうという状態の車両に無理やり身体をねじこみ、そのまま都心まで1時間以上も揺られて毎日通勤します。この背景には、都心と郊外の「家賃の格差」と勤務先からの「通勤定期券」の支給があります。会社員は郊外の家賃の安い物件から、通勤定期券を使って都心の会社に通うわけです。しかも、この通勤定期券を購入するための通勤手当は、非課税なので社員の給与所得とはなりません。この「無料」の通勤定期券を使って遠くに住むことのデメリットが通勤時間です。往復3時間だとすると労働時間に対して約4割にも相当するので「健康的な生活」という点においては、とても大きな負担になっていることは間違いありません。最近では、パワーカップルといわれる高収入の若い夫婦世帯が通勤定期券には目もくれず、都心のタワーマンションに住み時間を大切にするケースもでてきていますが、通勤定期券の支給は「昭和型の日本」を支えてきた要因のひとつといえるでしょう。

今年の秋に、ガソリン価格の上昇を反映してマイカー通勤手当の非課税額が11年ぶりに引き上げられるといわれています。前回は、平成28年度の税制改正により1か月あたりの非課税限度額が10万円から15万円に引き上げられましたが、今回も11年ぶりにこの非課税枠が増額される予定になっています。ただ一方で、通勤手当の非課税枠が廃止されて、全額課税対象になるという話もききます。これは2023年の税制調査会の答申で「通勤手当の課税が検討されている」という内容が報じられたためです。先日、税〇署関係の友人と飲んだとき、その友達が「通勤手当って今度、課税になるんだよね」とポロリ。参議院議員選挙の結果もあってどちらになるのかわかりませんがとても気になるところです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

SNSの対応加える 職場情報提供手引を改訂 厚労省

 厚生労働省は、企業が求職者に対して働き方などの職場情報を提供する際の留意点をまとめた「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」を改訂しました。インターネットやSNSで募集する際の開示・提供事項に関する記述を追加。いわゆる闇バイトなど犯罪実行者の募集との誤解を生じさせないよう、募集者の氏名(名称)、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を記載する必要があるとしています。

手引では、求職者に正確な情報を提供する観点から、定義があいまいな情報のほか、長期間更新されていない情報や、利用実績が明らかでない制度の情報を見直す必要があると指摘しています。

改訂版ではさらに、職業安定法において、労働者を募集する際に求人情報や自社に関する情報の的確な表示が義務付けられ、虚偽の表示または誤解を生じさせるような記載が禁止されている点を明記しました。

◆調査

職場における熱中症による死傷災害の発生状況 厚労省

 厚労省は2024年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況を公表しました。熱中症による休業4日以上の業務上疾病者数は1257人で、統計を取り始めた2005年以降最多となりました。うち死亡者数は31人となり、死亡災害の統計を開始した1989年以降、2番目に多くなりました。

 時間帯別にみると、午前中が430人、17時台が99人、18時台以降が115人でした。全体に占める割合は、順に34.2%、7.9%、9.1%。午前中や、気温が下がった17時台以降でも発生している状況がうかがえます。17時台や18時台以降での死亡者は計6人となり、「日中には重篤な症状はみられなかったにもかかわらず、作業終了後や帰宅後に体調が悪化した事案が含まれる」と分析しています。


カテゴリー:所長コラム

『いつの間にか』富裕層

2025年07月01日

年金制度改革法が6月13日に参院本会議で可決、成立しました。この改革法の最大のポイントは厚生年金の積立金を使っての「基礎年金の底上げ」です。改革法には、4年後の財政検証で将来的に基礎年金の水準が下がりそうな場合には、厚生年金の積立金と税金を使って底上げすることが盛り込まれています。この底上げが行われると、実際の受給額は、男性が62歳、女性は66歳まではプラスになる一方で、現在63歳以上の男性や67歳以上の女性は、今よりマイナスになってしまうようです。国民全員が受ける基礎年金は、現状のままだと約30年後に3割下がるといわれています。この改革法では氷河期世代をはじめとする現役世代の年金額を底上げして救済することが狙いのように言われていますが、将来的に基礎年金が減ることに対しての底上げなので、現在の給付水準よりも増額されるというわけではないようです。

バブル経済崩壊後の1993年から2004年まで続いた就職難の時期は就職氷河期とよばれます。その時期に就職活動をした「就職氷河期世代」は、大卒であれば大体43歳~54歳の人たちが該当して、全国で1700万人以上いるとされます。この世代は、非正規雇用や低賃金で働く期間が長く十分な資産形成のないまま将来、低年金に陥るのではと懸念されています。現役時代の低賃金と少子高齢化に伴う年金の減額調整の影響で、この氷河期世代が老後に貧困化するリスクが高まっているといわれている一方で、新しい富裕層が拡大しているようです。

野村総合研究所(NRI)の推計によると、日本において2023年時点で純金融資産を1億円以上保有する「富裕層」(純金融資産1億円以上5億円未満)と「超富裕層」(純金融資産5億円以上)は合わせて165万世帯になっていて、準富裕層(純金融資産5000万円以上1億円未満)といわれる世帯数も含めて2013年以降増加傾向にあるそうです。これまでの富裕層といえば企業のオーナーで、いわゆる資産家のことを指していたのではないかと思いますが、最近の社会経済環境の変化に伴って、新たなタイプの富裕層が現れ始めたといわれます。会社員など一般的な給与所得者であっても、近年の株価上昇を受けて資産価値が増加し、結果として富裕層入りした世帯が増えていて、NRIはこの世帯を「いつの間にか富裕層」と呼んでいます。この人たちに共通する特徴は企業オーナーや地主といった従来型の富裕層ではなく、一般の給与所得者でいわゆる「普通の人」、富裕層となった後でも、今まで通りの生活を変えることなく、お金があっても「数十万のゴルフセット」「家族との海外旅行」「車を少しよいものに買い替える」などちょっと上の贅沢を楽しむ人たちです。

また、女性の社会進出に伴って現れたのが「パワーファミリー(世帯年収1500万円以上の共働き世帯)」です。夫婦ともに大企業に勤めており、20~30代は子育て・教育の支出や住宅ローンで苦労するそうですが、その後は昇格・昇進により夫婦を合わせた世帯年収が大幅に伸びて、特に都市部においては最終的に世帯年収3000万円に達し、50歳頃には富裕層となるポテンシャルがあるといわれます。また、地方においても世帯年収1000万円以上で60歳前後に富裕層となる人たちがいるということです。テレビでは、普通に売られているお米よりも安い備蓄米を数時間もならんで買ったというニュースが溢れていますが、この差はなんなのでしょうね。

就職活動を行う時期に求人がほとんどなく、多くが非正規雇用にとどまったことで、安定した収入を得ることが難しく、社会的な不安定さが長期にわたって続いた氷河期世代ですが、現在でも大多数が不安定な雇用状況に苦しんでいるといわれています。そもそも氷河期世代(1970年~1982年生)には、日本の第二次ベビーブーム世代(1971年~1974年生)の人たちが含まれていて、人口のボリュームが多い世代です。政治的にもこうした世代への支援が重みをもってきたということなのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

協議ない決定違法に 下請法の改正法案が成立

 協議を適切に行わない代金額決定の違法化などを盛り込んだ、改正下請法が通常国会で可決・成立しました。一部の規定を除き令和8年1月1日に施行します。政府は改正法により、適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図るとしています。

 改正法では、下請事業者から価格協議の申出があったにもかかわらず、親事業者が協議に応じなかったり、必要な説明をせずに一方的に代金を決めたりする行為が新たに禁止されます。労務費などのコストが急上昇するなかで、協議を経ない価格の据え置きやコスト上昇に見合わない一方的な代金決定を防ぐのが狙いです。

 衆議院の附帯決議は、改正法施行に当たり、違反があった場合は迅速・的確に対処し、どのような行為が違反となるのか具体的な基準を示すよう求めました。併せて、協議が形骸化しないための必要な措置も検討すべきとしています。

 改正法はそのほか、手形払いの禁止、下請法適用の線引きに従業員数基準を追加、運送委託を対象取引に追加、用語について「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」に改める――などを内容としています。従業員数基準の新設について、同附帯決議は今後も見直しを検討し、新たな手段による適用逃れが起きないよう中小事業者との連携強化に努め、発生した場合には速やかに対策を講じるよう要請しました。

◆調査

半数超が管理職志向あり 2025年度新入社員意識調査

 東京商工会議所は、2025年度の新入社員857人を対象に、仕事に対する意識を調査しました。入社後、管理職をめざしたいかどうかについては、「めざしたい」が59.0%となりました。理由を単一回答で尋ねたところ、「仕事を通じて、自分自身を成長させたい」が44.9%で最も高く、次いで「やりがい・達成感を感じたい」が17.2%となっています。

めざしたくない理由については、「自分には適性がなさそうだから」が最も高く、42.2%でした。「仕事よりもプライベートを大切にしたい」が19.1%、「仕事の責任が重く大変そうだから」が13.1%となっています。


カテゴリー:所長コラム



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