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こころの持ち方

2022年01月05日

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

平成14年12月15日に社会保険労務士登録をして、今年の12月で20年を迎えることになります。社労士試験は、4回受験しての合格で決して出来の良い受験生ではありませんでした。当時の社労士講座の講師を務めていらした社労士の先生から「末正さんなら絶対に大丈夫だから」と何度も励まされての資格取得でした。その先生には、今もお世話になっていますが、当時から勝手に自分の師匠と決めて、いつかこの人に追いつきたいと頑張ってきました。

先日、ぼくには経験のない仕事の案件の依頼があり、師匠に久しぶりにご意見を聞かせてくださいと連絡をとり、お会いしてきました。ぼくは一人前の社労士になったつもりで師匠を訪ねたつもりでしたが、師匠と少し話をしただけで、ぼくは社労士として、師匠の足元にも及ばないことに気付かされました。息子が「簡単には負けないぞ!」と父親に腕相撲を挑んで簡単に捻られるようなものです。その時、師匠というのは大きく、有難い存在だと思いましたし、そんな方に社労士の仕事へと導かれて本当によかったと感謝しました。

今回は、1年の始まりなので、幸運を呼び込むことができる気持ちの持ち方(ぼくが信じている)の話をいくつかご紹介させていただきます。まずは、「こぶで有難い」。『昔、有難屋吉兵衛という男がいた。この男、すこぶる楽天家であり、かつて不平不満を言ったことがなかった。その吉兵衛がある日、急いで外出しようとしたところ鴨井に頭をぶつけ、饅頭のようなこぶをつくった。しかし、痛いとも言わず、両手でこぶをおさえながら「有難い、有難い」と感謝するばかりだった。これを見ていた隣人は怪しんで尋ねた。「吉兵衛さん、あんたはこぶができるほどの怪我をしながら何が有難いのじゃ」吉兵衛さんは答えた。「有難いですよ。頭が割れても仕方がないのに、こぶくらいで済んだんですもの。実に有難いと思います。』痛くて仕方がないにもかかわらず、吉兵衛さんはこぶでよかったと言い、自身に起きた小さな「不運」にいつまでもとらわれないで、その程度のことで済んだと自分の「幸運」を喜んだわけです。「ユダヤ人は足を折っても、片足で良かったと思い、両足を折っても、首でなくて良かったと思う。首を折れば、もう何も心配することはない。」というユダヤ人のジョークがあるそうです。「生きているからこそ心配できるのであって、もしも首を折って死んでしまえば心配することさえできない。だから、首が折れなかったことに感謝しよう。一方で首が折れて死んでしまえば永遠に心配から解放されるわけだから、それもまためでたいことなのである。」「失ったことを気に病むではなく、残ったものに感謝をする。そして、その残ったものを最大限に活かすことを考える。」なかなかこのように気持ちを保つことは難しいことだと思いますが、このような状態に自分の気持ちを保つことが、必ず良い運を招き入れることができる秘訣なのではないでしょうか。

次は、「人間万事塞翁が馬」です。『昔、中国北方の国境近くに住む老人(塞翁)の馬がいなくなった。人々が気の毒がると、老人は「なに今に良いことがあるよ」と平気だった。やがて、その馬は駿馬を連れて戻って来た。人々が「よかった、よかった」と祝うと、「今度はこれが不幸の元になり、何か悪いことが起きるかもしれない」と喜ばなかった。案の定。その馬に乗った老人の息子が落馬して足の骨を折ってっしまった。人々が見舞いに行くと、老人は「これが幸福の元になるだろう」と平気だった。一年後、胡軍が大挙して攻め込んできて戦争となり、健常な若者たちはほとんどが連れていかれて戦死した。しかし、足を折った老人の息子は、兵役を免れたため、戦死しなくて済んだ。』この話は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸也氏が好きな寓話であるとして知られているそうです。山中氏は高校生向けの講演会で、「人生の四八年間、特に後半の二十年間くらいを振り返ってみると、本当にこの『万事塞翁が馬』だなと。本当に大変なこともあるし、うれしいこともある。でも、大変だと思ったことが実はうれしいことの始まりだったり、ものすごくいいと思ったことがとんでもないことの始まりだったり。ということですから一喜一憂せずに淡々と頑張るということを…わかってもらえたらなと思います。」と話されたそうです。よく現在と未来は変えられるけど、過去は変えられないといいますが、実は過去に起こったことを自分がどう考えるかによって意味が変わる、ようするに現在も未来も過去も変えられるということだとこの寓話は教えてくれています。

(参照:「ものの見方が変わる 座右の寓話」戸田智弘著 ディスカバートゥエンティワン)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

働き方改革関連法(改正労基法)が施行されて2年半余りが経過しましたが、厚生労働省では、猶予措置終了(令和6年3月末)後の取扱いに関する法整備を加速させています。

改正労基法では時間外上限(単月100時間未満、年720時間以内等)を定めましたが、自動車運転・医師の業務、建設の事業等については猶予措置の対象となっています。

このうち、「自動車運転の業務」に関しては、「改善基準」を改正します。労働政策審議会が示した案では、タクシーの場合で、1カ月の拘束時間を288時間、休息期間を1回11時間(週3回まで9時間)等に修正するとしています。

「医業に従事する医師」については、改正医療法により5区分に分けた規制が実施されますが、一般的な医業で年間上限を960時間等と定める省令が公布される予定です。

◆ニュース

連合・2022春闘の方針案決定 目標ターゲットは35歳28.9万円

連合は、中央委員会で2022年の春闘方針を決定しました。芳野友子新会長が主唱する格差是正へ向け、「底上げ・底支え・格差是正」の要求指標パッケージを明らかにしています。

賃上げ要求については7年連続で、定期昇給2%の確保に加え、2%程度のベースアップを求めます。

「底支え」の取組としては、企業内のすべての労働者を対象として、時給1150円以上の企業内最低賃金協定の締結を目指します。基準を昨年より、50円引き上げました。

格差是正に向けた要求指標に関しては、目標水準を35歳28万9000円、30歳25万9000円としました。2021春闘より、それぞれ2000円、3000円アップさせています。

◆送検

複数月平均で上限規制超え 虚偽の残業時間を記載 上田労基署

長野・上田労基署は、複数月平均の時間外・休日労働数が上限を超えた等の理由で、鋼材・鉄筋加工販売業者を長野地検上田支部に書類送検しました。

 働き方改革に伴う改正労基法では、時間外・休日労働の上限を1カ月100時間未満、2~6カ月平均で80時間以下等と定めています(中小は令和2年度から適用)。

しかし、同社の製造部門で働く労働者のうち8人は、半年の時間外・休日労働が毎月100時間を超え、当然のことながら2~6カ月の平均も規制の枠を超えていました。同労基署では、「平均80時間超え」違反に対する送検は、全国でも初めてとしています。

同社は臨検を受けた後、是正報告を出していましたが、二重帳簿の疑いが生じ、再度臨検を実施し、事前情報等に基づき、虚偽記載の事実が発覚しました。


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2021年12月22日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月29日(水)~1月4日(火)まで年末年始休業とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしますが、宜しくお願いいたします。

2022年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。


カテゴリー:お知らせ

選べないもの

2021年12月01日

「親ガチャ」という言葉が、ネットで注目を集めています。生まれてくる子供は親を選ぶことができないことを指して、コインを入れてレバーを回すとオモチャが出てくるガチャガチャにたとえた言葉だそうです。つまり、自分ではオモチャを選べないことから、どのような親のもとに生まれてくるかによって人生が決まってしまうという意味で使われていて、「親ガチャ失敗」と言うときは、「親のせいで自分の人生が希望通りにならない」ということになるそうです。「自分がまさにそうだ」という人もいれば、「自立できていない若者の甘えだ」という批判もあったりして、賛否両論が分かれているとのことであるが、親からすればとんでもない話であることにはちがいないです。

他にも自分では選べないものがあります。会社の「上司」です。「企業組織で働くことを、ごく個人的なレベルで言い換えれば、自分では選べない上司に指揮命令を受けながら配置された業務をこなすということ。これは年齢や立場を問わずサラリーマン全体に共通している。ここで問題となるのは、上司の部下に対する理解が不十分な場合、部下のやりがいや仕事の質に顕著な影響が出ることだ。」と日経新聞(10月4日「働き方innovation」より)が取り上げていました。良い上司に恵まれることは、会社員にとってはとても重要なことだと思います。2018年末に実施した調査によると、上司から理解されていないと感じる従業員が「職場に満足」と答えた割合はわずかに6%で、対照的に、上司に理解されていると感じている従業員は68%が満足していたという結果になったそうです。では、実際には、どの程度の上司が部下のことを理解できているのかが問題となるところです。同調査では、部下に「上司は自分を理解しているか」を質問しています。「理解している」と答えた部下は、約42%で、「理解していない」が約25%、「どちらでもない」が約33%という結果になったそうです。部下が上司に理解して欲しい点についてですが、1番目は、「これまでの業務」、2番目に「業務への希望、不満」、そして3番目に「性格」となりました。

今、職場の人間関係が働きがいを左右すると考える企業が増えてきているそうです。歯みがきでおなじみのライオンという会社があります。その会社の人材開発センターの担当者は、「上司というOSをアップデートしないまま、新しい働き方を入れても効果は出ない」と言います。同社では、社員が企業人、家庭人として充実した生活を送り、自ら成長していくということが「働きがい」であると考えているからだそうです。そのために上下の関係性を改善して認め合い「部下が本音で話す心理的な安心感が必要だ」とも言っていて、会社では「信頼感のあるリーダーシップ」を打ち立てること、異なる職場でも部下への接し方に差がないようにするということを始めたそうです。社員への不満を言う前に、経営者が変われということと同じですね。

もう一つの選べないものが「性別」です。人は自分で男女を選んで生まれてくるわけではありません。明治大学の野川忍教授は、労働新聞で「日本社会の性差別は広く深くまん延しており、男女平等の度合いは世界で100位を超えることもない状態が続いている。」といいます。興味深いのは、日本の高度成長期において男女役割分担が定着し、それが企業における成功体験につながったという話です。「青壮年男性は私生活を顧みずに会社にすべてをささげ、家庭では自分のパンツのありかも分からないことが、むしろ賞賛された。女性は専業主婦として家事・育児に専念し、会社に酷使されてボロボロになった夫を家庭で優しく癒すことが期待された」「さらに深刻なのは、このような役割分担こそが奇跡とされる日本の経済的成功を導いたのだ、という認識がいまだに払しょくできずにいるとことである。」「男が身を粉にして働き、女が家庭を守る、それで大成功したのに何で変えなきゃいけないんですかというわけだ。」と書いています。野川氏は、国際社会における致命的な遅れだといい、日本の、とくに雇用社会の性差別の病根は根深いとしています。一方で、セクハラの問題もなくなりません。ハラスメントが起こる職場では、信頼関係や協力関係が築けず、チームとしての一体感やまとまりを欠く結果、会社全体の利益が低い傾向がみられるとの報告もあります。しかし、今も日本は先進国で唯一セクハラ行為自体を禁止する法律がない国です。そして、最近ではLGBTなど性的少数者への配慮や理解ということが、職場においても求められ始めています。

本来、変わるはずのないものへの変化を認め、そのうえでお互いを尊重することが大切な時代になってきたのかもしれませんね。 

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

割増賃金の計算で要望 算定基礎から在勤手当除外を

経団連は、2021年度規制改革要望のなかで、割増賃金の算定基礎賃金から在宅勤務手当を除外できるように法整備することを提言しました。

新型コロナの蔓延を契機としてテレワークが急増しましたが、仕事と家庭の両立という観点から、「新しい働き方」として同制度の定着が望まれます。

 現行の労基法では、割増賃金を計算する際、算定基礎から除外できる賃金項目は、家族手当・通勤手当等の7項目に限定されています。

しかし、テレワークの導入に際しては、在宅勤務に必要な備品の購入や、通信・交通費等の補填のために、在宅勤務手当等を整備するのが通例です。

これは「家族手当などと同様に、個人的な事情に基づいて支払われる」ものであるため、支給日数に応じた定額支給等の場合には、その趣旨からいって算定基礎から除外するのが適切という見解を示しました。

組合員の出向命令解除に合理性 支配介入に当たらず

中央労働委員会は、バス子会社に出向中の組合員に対して本社復職を命じた事案で、不当労働行為に当たるとした初審命令を取り消しました。

親会社はバス事業を子会社に移管し、従業員も在籍出向の形で子会社に異動させました。賃金差額等は親会社が負担していましたが、支出削減策として、①子会社への転籍、②特別退職、③親会社への復職を本人に選択させるプランを労組側に提案しました。

その後、労組の同意を得られないまま選択申出書を提出しなかった組合員に対し復職命令を発令して紛争となり、初審の神奈川県労働委員会は救済命令を発していました。

しかし、中労委は、神奈川労委の一時停止勧告に反し復職に踏み切った点について「やや拙速」と指摘したものの、出向費削減の必要性を認め、合意達成に向けた交渉努力も踏まえ、組合の弱体化を図る支配介入には当たらないという判断を下しています。その後、労組の同意を得られないまま選択申出書を提出しなかった組合員に対し復職命令を発令して紛争となり、初審の神奈川県労働委員会は救済命令を発していました。

中小のデジタル化へトライアル事業 商議所が診断ツール活用

長野商工会議所連合会は、デジタル技術を活用して経営革新を図りたいという中小企業を支援するため、トライアル事業を開始しました。

中小・零細企業では、デジタル化を進めようにも、専門知識を持つ人材が乏しい点が悩みのタネです。トライアル事業では、約100項目の質問により企業ごとの課題を洗い出す自己診断ツールの活用により、業務改善に向けた解決策の発見をサポートします。

ツールはスマホ等から利用できるほか、相談会等も開催し、診断を受ける機会の提供に努めます。診断後は、中小企業の希望に応じ、無料で専門家の助言も受けられます。

同事業には、県下の18の商工会議所のほか、協力団体として同県ITコーディネータ協議会やプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会等も参加し、IT系の有資格者やフリーランス人材を紹介するとしています。


カテゴリー:所長コラム

日々のこころがけ

2021年11月01日

王貞治氏の話です。『僕の現役時代には、一球一球が文字通りの真剣勝負で、絶対にミスは許されない、と思いながら打席に立っていました。よく「人間だからミスはするもんだよ」という人がいますが、初めからそう思ってやる人は必ずミスをするんです。基本的にプロというのは、ミスをしてはいけないんですよ。プロは自分のことを、人間だなんて思っちゃいけないんです。百回やっても、千回やっても絶対俺はちゃんとできる、という強い気持ちを持って臨んで、初めてプロと言えるんです。相手もこちらを打ち取ろうとしているわけですから、最終的に悪い結果が出ることはあります。でも、やる前からそれを受け入れちゃダメだということですよね。』(「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」致知出版社)これは頭で理解はできるのですが、なかなか王さんのように思いこんで実践することは難しいものです。自分を信じ切って、全力を出し切ることができる人はそうそういません。

リンゲルマンというフランスの農学者がやった「綱引き実験」のお話です。『一対一で全力を出して綱引きをしたときの力の単位を100としたとき、各々がもう一人ずつ連れてきて二人対二人で綱引きをやると、一人当たりの発揮できるパワーは100から上がるか下がるか。三人一組で綱引きをやるとどうなのか。もう少し人数を増やして八対八だとどうなるかということを実験したのです。リンゲルマンの実験では、二人一組のときにそれぞれが発揮する力は一対一のときの93%になりました。つまり、7%の手抜きをしていることがわかりました。これが三人一組になると15%の手抜き、八人一組の場合はなんと51%の手抜きが見られるという結果が出ました。このデータにしたがえば、全力を出す四人と手抜きをする八人で綱引きをすると、全力を出す四人のほうが勝つことになります。これは「社会的手抜きの実験」と呼ばれるものです。』「ワンチーム」という言葉を使う人がいます。日本語でいうところの「一体」ということを表わしているわけですが、一丸となって事に当たるということは確かに勇ましいけれども、実は手抜きを誘発しているということだそうです。(「経営者を育てるアドラーの教え」岩井俊憲著 致知出版社)

雇用調整助成金の特例措置が11月30日まで延長されることになりました。雇用調整助成金とは、事業主の命令で休業した従業員に休業手当を支払った場合に、休業手当の額に応じて支払われる助成金です。コロナウィルスの蔓延が続く中で、雇用者総数が2021年4月に13か月ぶりに増加に転じていて、その後もプラスを続けているそうです。完全失業率はコロナ禍で最も悪かったときで3.1%。直近の7月は2.8%となっていて、現在の日本の雇用状況は「完全雇用」に近いといえます。

先日、コロナが蔓延して以来、助成金を使って長期にわたり従業員を休業させてきた経営者のかたが「久しぶりに従業員を出社させて仕事してもらったけど、ぜんぜん仕事がすすまないんだよ。」と話していました。その社長がいうには、久しぶりの仕事で身体がなまってしまっていたということだそうです。休業前には、当たり前に出来ていたことが出来なくなってしまっていたそうでコロナが終息して本格的に稼働する前に出社させてよかったと言っていました。やはり、助成金を使って休みにしてしまうと、働かなくても給与が入ってくるので、働くことがバカらしくなるようです。スポーツでは「練習を1日休んだら取り戻すのに3日かかる」といわれますが、仕事も同じようです。できることなら、もうそろそろ会社を元に戻していくことも必要なようです。

「知識も大事。しかし、それがなければ、ほんとうに仕事ができないというものでもない。たとえ知識が乏しく、才能が劣っていても、なんとかしてこの仕事をやりとげたい、そういう誠実な熱意にあふれていたならば、そこから必ずよい仕事が生まれてくる。」(「おろそかにしない」「道をひらく」より)

「商売も同じこと、経営も同じこと。けじめをつけない経営は、いつかはどこかで破綻する。景気のよいときはまだよいが、不景気になればたちまちくずれる。立派な土手も蟻の穴からくずれるように、大きな商売も、ちょっとしたけじめのゆるみからくずれる。だからつねひごろから、小さいことにもけじめをつけて、キチンとした心がけを持ちたいもの。そのためには何と言っても躾が大事。平生から、しっかりした躾を身につけておかなければならない。」(「けじめが大事」)松下幸之助さんの言葉でした。どのような社会になっても日々のこころがけの大切さは昔から変わらないようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

公取委が「最賃引上げ対応」 中小相手の取引公正化へ

今年10月の地域別最低賃金引上げは、過去最高の28円の上げ幅となりました。公正取引委員会は、中小企業に不当なしわ寄せが及ばないように、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」をまとめました。

関係省庁連絡会議のワーキンググループが、今年8月に「9月を『価格交渉促進月間』とする」決定を行いましたが、アクションプランはその取組みの一環です。

最賃引上げに伴う「買いたたき」、「下請代金の減額」、「支払遅延」等を防止するため、下請法の執行強化や相談対応の整備等を図ります。

全国9カ所に相談窓口を設置するほか、オンラインによる相談会も実施します。「下請事業者が、最賃引上げ対応のため単価アップを求めた際、親事業者が一方的に単価を据え置くのは、『買いたたき』に該当」等のQ&Aも作成し、周知を図ります。

雇保「二事業」の資金底つく 雇調金等支出が急増

厚生労働省の公表では、雇用保険制度の収支状況が急激に悪化しています。失業給付関係の積立金残額が大きく減少したほか、雇用保険二事業の資金残高はゼロとなっています。

失業給付関係積立金は、その名のとおり、離職時の基本手当等の原資となるもので、労使折半の保険料が主財源です。

令和元年には4兆4871億円あったのが、3年度(予算)には4039億円まで減少する見通しです。

雇用保険二事業は助成金の原資となるもので、保険料はすべて事業主負担です。雇用調整助成金をはじめとする支出増により、資金残高ゼロと底をついています。

一般会計や失業給付関係積立金残高から借り入れをして、増大する支出をまかなっている状況です。

未払残業400万円支払え コロナ解雇後に争い

健康美容メーカー勤務の従業員が、新型コロナの影響で解雇された後に未払い残業代の支払いなどを求めた事件で、東京地方裁判所はメーカー側に400万円の支払いを命じました。

病気で9日間休んだ後に出勤したところ、会社から「コロナによる事業縮小」を理由とする解雇通知書を交付されました。

同社店舗では、「営業開始時刻の45分前には朝礼があり、遅刻者は店舗に連絡を入れる」とされていた点等を考慮し、裁判所は「少なくとも出社を黙示には指示・命令していた」と指摘し、2年間の未払い残業代の請求を認めました。

さらに解雇予告手当も支払われておらず、割増賃金と予告手当の不払いに正当な理由もないとして、労基法114条で定める付加金を合わせ、約400万円の支払いを命じたものです。


カテゴリー:所長コラム

働く意味

2021年10月01日

父「おい!そんなところでゴロゴロ寝てないで!勉強しなさい!」子「どうして勉強しなきゃいけないの?」父「勉強しないといい学校に入れないだろ!」子「どうしていい学校に入らなきゃいけないの?」 父「いい学校に入らなきゃ、いい会社に入れないだろ!」子「どうしていい会社に入らないといけないの?」父「いい会社に入らなきゃ、いい暮らしができないだろ!」子「いい暮らしって何さ?」 父「……そうだな……寝て暮らせるってことだ…」子「ぼく、もう寝て暮らしてるよ!」

親なら一度はこんなような会話をしたことがあるのではないでしょうか。子どもの質問に答えるうちに「いい暮らし=寝て暮らすこと=幸福」となりましたが、父親が本当に言いたかったことではないですよね。

中国でインターネット上から削除された歌があるそうです。ある若者がソファに寝転んでギターを弾きながら「寝そべっているのはいいことだ、寝そべっているのは素晴らしい、寝そべるのは正しい。寝そべっていれば倒れることもない」と歌う様子がアップされていたとのこと。最近、中国の若者の間では。ストレスに耐えながら必死に働かなければならない仕事はごめんだとする「寝そべり族」が増えているそうです。中国政府はこれに強い危機感を募らせていて、中国国防相の報道官は「この激動の時代に寝そべりながら成功を待つことなどあり得ない。必死の努力にこそ栄光がある。若者たちよ、奮起せよ」とハッパをかけます。しかし、この原因は中間層の生活が、どんなに頑張ってもよくならず、苦労は増える一方なのに、見返りは少なくなり、多くの人が閉塞感に陥っていることにあるそうです。(2021.8.6 日本経済新聞から)

日本国憲法には「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」(第二七条)と書いてあります。働くことは、権利でもあり、義務でもあるということですが、働くのは「生活費を稼ぐため」という人や、「体が動くうちは何らかの形で働きたい」と考える高齢者や、食うには困らない資産を持っていても働き続ける人もいます。「お金のため」「義務だから」というように、自分の外側にある目的のために仕事をするのではなく、「私が私らしくあるためにその仕事をしている」「私の心がその仕事をすることを欲している」といった内発的な働く理由があることを忘れてはならないということです。そして、稲盛和夫氏は、「仕事において新しいことを成し遂げられる人は、自分の可能性を信じることのできる人です。現在の能力をもって「できる、できない」を判断してしまっては、新しいことや困難なことなどできるはずはありません。人間の能力は、努力し続けることによって無限に拡がるのです。」と話されました。

毎年、10月上旬に地域別最低賃金が引き上げられます。昨年はコロナ禍で政府が「雇用を守ることが最優先」と表明し、全国平均の引き上げ幅は1円にとどまりました。しかし今年は2002年度以降、過去最大となる全国一律28円増の引き上げが行われます。北陸三県はそろって28円引き上げることになり、石川県861円、富山県877円、福井県858円となります。労使ともに新型コロナウィルスによる会社経営への打撃や最低賃金増額の重要性については理解を示しましたが、最終的には歩み寄ることになったようです。

しかし、今春の賃上げ結果が前年を割り込んでいることや、内閣府の月例経済報告が日本の経済について厳しい状況にあると毎月繰り返していることを考えると、大幅な引き上げを行える状況にはないという意見も多くあります。一方で、連合は「誰もが時給1000円」実現を掲げていますが、英仏独の最賃は1300円前後の水準にあるように、日本の最賃の水準が先進国の中で遅れをとっていることも事実のようです。

ただ、最低賃金は、労働者は何もしなくても毎年、上昇するので事業者の負担はとても大きいです。しかし、最低賃金の上昇でしか昇給の恩恵を受けることができない労働者も多くいます。石川労働局によると、時給861円未満で働き、今回の引き上げの影響を受けるのは県内の労働者の約12%に当たる約5万6千人もいるそうです。 「喜働」という言葉があります。「働きが喜びになるのは、人間が創造的になったとき。人間は創造して意欲に満ちているときが一番幸せで、それが喜びになる。」という意味だそうです。そして、最後にロシアの作家ゴーリキーの言葉です。「働きが喜びになったらこれ以上の幸せはない。そのかわり、働きが苦痛になったら地獄だ」 (「座右の寓話」戸田智弘著( ㈱ディスカバートゥエンティワンー)より)

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

「雇用仲介サービス」は、スマートフォンの普及やデータ分析技術の拡大により、その形態を大きく変えつつあります。厚労省は、サービスの適正化や法的位置付けの明確化に取り組む方針です。

同省では、学識経験者による研究会報告書を踏まえ、議論をスタートしました。新形態のサービスは、採用コストを圧縮する効果を持つ一方、トラブルも多発・多様化しています。

ルール作りに当たっては、①正確な情報の流通、➁個人情報の保護、③事業内容区分の明確化等を柱とし、優良事業者の認定制度等の整備も検討します。

有益なイノベーションを阻害しないという前提の下、サービス従事者が業務に必要な知識を有しているかチェックするなど規制の強化も課題となります。

◆ニュース

雇調金特例が切り札に 失業率2.6ポイント押下げ

厚労省が公表した「労働経済白書」によると、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金が完全失業率抑制に果たした効果は2.6ポイント程度だったことが明らかになりました。同白書には、「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」という副題が付されています。

 分析対象は2020年4~10月の7カ月間です。2020年10月時点、実際の失業率は単月で3.1%、月平均2.9%に達していました

雇用調整助成金の対象労働者が支給を受けなければ全て失業したと想定して試算すると、雇調金の抑制効果は2.1ポイント、緊急雇用安定助成金が0.5ポイント程度と見込まれます。こうした特例措置がなければ、失業率は5%を大きく超えていた可能性があります。

一方、新型コロナの影響でテレワークが急速に普及しましたが、白書では、オフィスワークに比べて生産・効率性などでやや劣ると評価しています。

テレワークを中止した企業については、テレワーク中の連絡調整や就業環境に問題があったケースが多く、労務管理上の工夫が必要と指摘しています。

労働条件低下を拒否 雇止めもやむなし

受験予備校の講師が雇止めを不服とした裁判で、東京地方裁判所は、契約の不成立に合理性があるとして、請求を棄却しました。

講師は23年間にわたって契約更新を続けていましたが、「次年度の授業数を減らし、賃金も引き下げる」という条件提示を受けました。従来と同じ内容での更新を求めたところ、拒否されたため、最終的に新契約は成立しませんでした。

判決文では「低下した契約条件提示に労働者が合意しないことを理由に更新拒絶する場合、新条件の客観的合理性・社会的相当性を検討すべき」と判示しました。

「予備校教師という性質上、授業アンケート結果によりコマ数減となる可能性は認識していたはず」と指摘したうえで、アンケート結果は毎年最下位近辺で、無断の文書配布で懲戒を受けた点も踏まえ、条件引下げには合理性があり、雇止めは有効と結論付けました。


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