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「喫煙者の採用」

2017年08月08日

3月の受験シーズンも終わり、今年も春を迎えています。昨年、受験をすませた高校生の息子は、いつも夜になると自分の部屋で、スマホ片手になんだかわからない曲を熱唱しています(笑)息子の部屋は隣なので、あまりにウルサイときは、ウルサイから止めてくれとお願いに息子の部屋に行くわけですが、もうすぐこいつも社会に出て行くんだなぁ…と思うと大丈夫なのか心配になる反面、さみしいものです。

最近、労働基準監督署の長時間労働の調査が多く入っていますが、ある関与先の社長が、「末正さんの話を聞いていると、会社のほうから長時間労働になっている社員を見つけて、その長時間労働している社員に対して長時間労働になっているぞ!と会社が注意をして、長時間労働になっている社員におまえ具合悪くないか!?具合悪いなら病院に行けよ!と会社が病院の手配をし、その結果、体調が優れないようなら仕事の内容等を変更するからな!遠慮するなよ!みたいになってない?」と質問されました。そのとおりです(笑)

思い起こすと、息子が受験のときには、塾や家庭教師などいろいろな会社がいろいろなサービスを提供していて、「個別に子どもに合った指導を行います!成績アップも保証します!やる気にならなければヤル気スイッチも押しますよ!」みたいなことがあって、なんだか同じだなぁと思ってしまいました。2つの事を比べることではないことと理解していますけど、そんな時代なんでしょうね。

先日、雑誌に面白い記事が載っていました。弁護士の藤原宇基先生が書いた「募集・採用にかかわる法的留意点」(労務事情2.15)というもので、私たちが採用にあたっての法的に注意しなければならないことが取り上げられていました。労働局が出している「公正な採用選考ハンドブック」によると、採用にあたっては、「職務遂行のための応募者の適正・能力の判定に必要な事柄以外のこと」や「本来、自由であるべきもの」についての質問は避けるようにすることとなっていますが、喫煙者であることを理由に採用を断ることが出来るのでしょうか。

今、社会では、東京五輪に向けて受動喫煙防止策が公表され、全ての飲食店などの建物内を原則禁煙とするかどうかが大きな議論となっています。では、採用面接時に求職者に対し、喫煙者か非喫煙者なのかを質問してもよいと思いますか?答えは、「YES」です。健康経営の観点から、喫煙者の応募は不可とすることが出来るようです。

企業には採用の事由が認められており、採用の事由の一環として、どのような資質の労働者を採用するかについての選択の事由があります。しかし、その選択の自由はいろいろな制約を受けることになっています。ですが、この点において、非喫煙者と喫煙者を募集・採用について差別してはならないと定める法律等はなく、制約を受けることはありません。

そして、喫煙者には喫煙の自由を認めた判例があるものの、その判例において「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」とも判示されています(最高裁大法廷昭45.9.16判決)。他方で、企業には労働者の受動喫煙に関する一定の安全配慮義務があるとする裁判例もあります(受動喫煙損害賠償事件・東京地裁平16.7.12判決)。

「日本再興戦略2016」では、健康経営優良法人認定制度があり、地域の健康課題に則した取組みや日本健康会議が進める健康増進の取組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している企業を顕彰しています。その健康経営の観点から喫煙者の応募を不可とすることは公序良俗に反しないと考えられるとされており、そのため、健康経営の観点から喫煙者の応募を不可とすることは、可能であると考えてよいことになるそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム

「長時間労働の摘発実態」

2017年08月08日

先月は長時間労働の摘発の話題を取り上げてみましたが、石川県内の労働基準監督署でも監督官による過重労働の取り締まりを目的とした事業所への立入調査が頻繁に行われているようです。監督署で少し話を聞いてみたところ、今年に入っての1月と2月の2か月間にかなりの数の調査を一人の監督官がこなしているようで、詳しくは書けませんが普段の業務に加えてしんどそうな様子です。

厚生労働省から平成28年4月~9月まで、長時間労働が疑われる1万59事業場に対して労働基準監督官が実施した監督指導の実施結果を公表しています。ご存知の通り、監督指導は、28年度から1か月当たり80時間を超える残業が行われた疑いのある事業場や、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場を対象としているそうです。ただ、私からすると調査に入られた会社は過去に監督署の立入調査があり、労働時間に関する是正勧告を受けた会社も多く対象になっているような感じもあります。

上記の対償となった1万59事業場のうち、労働基準法等の法令違反があって、監督指導の実施事業場となったのは6659事業場(全体の66.2%)でこのうち、違法な時間外・休日労働があったとして是正勧告書を交付し、改善に向けた指導を行ったのは4416事業場(同43.9%)だそうです。この中には、1か月200時間を超える事業場も116事業場含まれていたようです。

立入調査があると是正勧告を受けることになる企業がほとんどです。笑いごとではありませんが、どんな会社でも何かしら大なり小なりの労基法違反はあるものなので。ただ、是正勧告を受けた企業は真摯に改善に取り組むべきだと考えます。最近の監督官の長時間労働に対する取り締まりは、かなり厳しく行われています。軽く考えると痛い目にあいそうです。

また、平成29年度の協会けんぽの保険料率が3月分(4月納付分)から改定されます。石川県の保険料率は、平成28年度の9.99%から10.02%にアップします。一方で、厚生年金保険料率は平成16年の法律改正によりこれまで段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月分以降は保険料が固定化されて、18.30%となります。やっと厚生年金保険料の引き上げが止まることになりますが、先日、受講したセミナーでは、国からすると厚生年金の対策はもう済んでいて、今後は医療と介護の給付が大きく伸びるためこれからの課題となるという話をされていました。実際に、介護保険制度が始まったとき65歳以上の被保険者は、毎月の保険料は3000円程度でしたが、現在は5000円を超えています。今後は8000円になることが確実視されているそうです。

そして、2月10日に財務省が平成29年度の国民負担率を公表していて、平成29年度(見通し)の国民負担率は45.2%で平成28年度と同水準だそうです。その国民負担率45.2%の内訳は、租税負担率(国税・地方税)25.1%、社会保険料等の社会保険料負担等の社会保障負担率17.4%となっています。昭和45年度は24.3%、55年度には30.5%となり平成25年度に初めて40.0%となり、27年度には42.8%と過去最高となっています。

ただ国民負担率を欧米主要国と比較すると、日本の42.5%の水準は、アメリカの32.7%よりも高くはなっていますが、イギリスの45.9%、ドイツの52.5%、スウェーデンの56.0%、フランスの68.2%に比べるとずっと低くなっています。少子高齢社会に向けての財政健全化の取組みは今後の大きな課題ですが、実は、GDPの2倍もの借金を背負っている日本が破たんしない理由の一つがこれなんです。日本は、消費税を含めまだまだ負担率を上げる余地があるからということですね。

 

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム

「今年もよろしくお願いします。」

2017年08月08日

2016年12月31日の大晦日にのんびりこの原稿を書いています。今年を振り返ると、本当にたくさんのお仕事をいただいて、充実した1年を過ごさせていただきました。本当に感謝です!この原稿をお届けできるのは、2017年の新年になってからですが、新しい年もお役に立てるよう頑張ります。

2016年は、労務管理の考え方が大きく変わった年ではなかったでしょうか。今日の新聞にも、また過労死の記事が載っています。「ファミマ、過労死巡り和解」ファミリーマートのFC加盟店の男性従業員が、勤務中に事故死したのは、月200時間を超える時間外労働の過労が原因だとして、遺族が計約5800万円の損害賠償を求めた訴訟で和解が成立したとのことです。電通の女性新入社員が過労自殺した事件は社会に大きな衝撃を与えましたが、この事件以降、誰が何と言おうと、長時間労働は「悪」という考えが社会に根付きました。

2016年中には、長時間労働で労働基準監督署から是正勧告を受けた会社の対応を何度もさせていただきましたが、多くの場合、人手不足が原因となっていました。代わりの人がいないから、遅くまで働かざるをえないとか休めないとなっていて、ホントに長時間労働を解消しようとするならその仕事自体を止めてしまうくらいのことをしないといけないと言っていた会社もありました。これからの労働力人口の減少の問題は、ますます深刻になっていきそうです。

長時間労働の問題というのは、企業が絶対に取り組まざるを得ない優先事項であることは理解出来ますが、本当は企業の取組みだけでは解決しないことのように思えてしまいます。安倍政権はアベノミクスにより「有効求人倍率が24年ぶりの高水準」と成果を主張していますが、日本のGDPは相変わらずほとんど増えていません。給与の元であるGDPが増えていないということは、給与の低い仕事、いわゆる非正規の仕事が増えたというだけのことです。このことを批判するつもりはありませんが、私たちはそろそろ現実を受け入れる準備が必要なのではないかと思い始めています。日本は資本主義経済のもとで、経済成長を長い間達成し続けてきました。バブルを経験している年齢層は「モノ」に価値をおきますが、今の子供たちに「何が欲しい?」と聞けば、「特にない。」と返事が返ってきます。明らかに世の中の価値が、これから大きく変わっていくことの予兆なのではないかと。自分にとっての「幸せ」とは何かを考え直さないといけないかもしれません。

また、社会は感情や魂の時代に入ったとも言われます。2016年は、「ブラック企業」と「モンスター社員」という言葉も多く取り上げられました。私は、ブラック企業から社員を見ると「モンスター社員」になり、モンスター社員から企業を見ると「ブラック企業」になるということが多々あるということを感じることがあります。

会社と社員の関係においてお互いに感謝の気持ちが無くなってしまうと不満しか残らなくなります。社長が知らないうちにブラック企業になっていたり、本人の自覚がなくモンスター社員になっていたりとかいろんなケースがありそうです。

先日も社長にとんでもない態度(酷かったです)をとる従業員の解雇通告に立ち会ってきました。その社長は、これまでにどんな思いでいたかをその従業員に訴えていました。最初は、従業員も反抗的な態度をとっていましたが、そのうち社長の思いを知るにつれて、「こんな関係になるのなら、もっと早くに社長と本音で話しておくべきだった。」と私に気持ちを漏らしていました。労使関係というのは、人間関係と同じだと思います。お互いの気持ちや感情を尊重して働いやすい職場作りができたらいいですね。

 

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2016年12月27日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月28日(水)~1月4日(水)まで年末年始休業とさせて頂きます。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。

2017年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。


カテゴリー:お知らせ

「改正育児介護休業法の実務対応」

2016年12月27日

改正育児介護休業法と改正男女雇用機会均等法が、平成29年1月1日から施行されます。介護休業が対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで分割取得することができるようになり、またマタハラ防止が会社に義務付けされて、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚による就業環境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置をとることも必要になります。会社は、就業規則の改正を年内には行わなければなりません。

最近は、介護休業に関して、なんとなく世の中の潮目が変わってきたという感覚があったので、第一芙蓉法律事務所の木下潮音弁護士のセミナーに参加してきました。そもそも介護休業ってそんな意味だったの!?というお話が聞けたのでご紹介させていただきます。

まず、「なぜ介護休業は93日(3ヵ月)なのか。育児休業は1年間なのに…」という疑問です。

従来の介護関連制度は、短期集中での制度利用が原則でしたが、今回の改正では、長期分割で制度を利用することができるようにすることへの変更が大きなポイントです。まず、93日の数字の意味ですが、育児休業は、子供1人で1年間です。介護が必要になる親は、通常であれば夫婦で4人いますね。ということは、親4人×3ヵ月=1年間となり、育児休業と同じになるんです。また、介護休業というのは要介護状態となった親を従業員本人が介護するためのものでもありません。介護休業が3回分割での取得を可能とした理由は、要介護状態の開始(病院での治療)、途中(介護施設への入所)、最終の看取り(死亡)の3つの場面で使えるようになったということのようです。

育児は先の予想がつきますが、介護は親が亡くなるまで続くので終わりが見えません。介護をしている人は、介護は始まってから“いつまで”という限度がないからシンドイと言います。介護休業は対象家族1人につきそれぞれに93日取得することが可能なので、これからは会社が、その日数を管理することが必要になります。

また、育児休業と介護休業ではその意味に大きな違いがあることに気づかされることになります。これまで「育児休業をとる従業員が多くいて大変だ」という経営者の悩みを多く聞いてきました。しかし、介護の場合は会社にとってもっと大きな問題になる可能性があります。介護が必要になる家族を抱える従業員は中高年(特に50代)が必然的に多くなります。ということは、管理職を含めて会社内でも責任が重く、事業に重要な役割をもつ従業員が介護の問題を抱える可能性が高いということです。そんな従業員には、会社を辞めてもらっても困るし、休まれても困るんじゃないでしょうか。これから会社が考えておかないといけないことは、管理監督者が介護対応を要する状態となった時、時短や残業ができなくなった管理監督者をどう処遇するのか。また、例えば数年にわたって、管理監督者が時短勤務となったときに、そのときに役職や賃金を変更することができるのかといったことが、経営者を悩ませそうです。

改正男女雇用機会均等法の施行により、妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備が義務付けられたため、規則に定められた制度を利用することを抑制するような言動はマタハラに該当することとなりました。弁護士の木下先生は、「これからは非財務的な情報で会社の価値が決まる時代となり、労働力確保のためにも制度利用の促進が重要」とおっしゃっていました。しかし、それと同時に育児介護にかかわらない従業員の納得感も経営者としては配慮することが必要になります。

最後に、これからは男性の上司が、男性の部下に向かって「お前は男らしくないぞ!」って言うとセクハラになるそうですよ。

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム



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