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緊急事態宣言下での休業手当

2020年05月01日

わずか数カ月で世の中が大きく変わってしまうなんてことがあるんですね。コロナウィルスのために外出の自粛が続いていますが、自由に生活できないことがこんなにしんどいこととは思いませんでした。他人から自分にウィルスがうつってしまうというより、他人にうつさないための自粛だと思うので、今は頑張らないといけないですね。

歴史上の人物に北条早雲がいます。その北条早雲のエピソードです。伊豆国、相模国を一代で支配する勢力を築いた北条早雲ですが、早雲が伊豆に足を踏み入れた時、疫病が蔓延し死者が続出するという悲惨な状況がありました。当時、疫病への対処といえば、祈祷を行い事態の収束を見守ることが多かった中で、早雲はすぐに京都から良薬を取り寄せ、率いていた兵士五百名に命じて薬や食べ物を配り、村人を看病させました。その結果、十七日間で疫病を鎮静化できたというのです。早雲は、この素早い対応によって農民や土豪の信頼を得ることができたのでした。今の政府も、早雲の非常事態への迅速果敢な行動に学ぶべきではないでしょうか。(2020.5致知「特集 先達に学ぶ」より)

歴史を通じて、これからの未来を考えていくことはとても大事なことだと思います。今の日本の状況をみると、あくまでも社労士が関与する助成金についての話ですが、企業が生き残るためには、不十分なように思います。もっとスピード感があってもいいのではないか、もっと拡充すべきではないかと感じられるところです。

現在、政府が発令した緊急事態宣言を受けて休業している会社から従業員への休業手当をどうしたらいいのかという相談が増えています。労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由」の場合、会社は従業員に対し、休業手当として平均賃金の6割以上を支払う義務があると定めています。しかし、使用者に責任がなく、やむを得ないものとなるとその休業手当を支払う義務はなくなることになります。今回の休業をどう考えるかですが、法律家である学者や弁護士の間で意見が分かれます。ある弁護士は「都道府県知事による休業要請の対象となった場合は、支払い義務は免じられる」と言います。法的根拠のない自粛要請と違い、法令に基づくものであるため、休業は企業の自主的な行動とはいえなくなるそうです。一方で、ある労働側の弁護士は「企業には休業手当を支払う義務はある」という立場をとります。天災による工場の倒壊などと異なり、企業は経営努力によりテレワークをしたり、販売方法をネットで行うよう変更したりするなど休業を免れることができるため、休業をすることは使用者に責任があるのだといいます。また、そもそも「緊急事態宣言自体、強制力がなく。これだけをもって休業はやむを得ないとはいえないだろう」いう意見の弁護士もいます。

このことについて厚労省の見解は現時点ではっきりしていません。2011年の東日本大震災時に作成したQ&A集は、天災などの不可抗力の場合は使用者に手当の支払い義務はないとしているので、今回の緊急事態宣言による休業はこれに沿うという解釈もあるようですが、加藤厚労大臣は「(休業要請で)一律に休業手当の支払い義務がなくなるものではない。総合的に判断する必要がある。」と話しました。

IMFは日本の2020年の経済成長率をマイナス5.2%となる予測を出しています。リーマンショック翌年の2009年がマイナス5.4%だったことを考えると事の重大さはほぼ匹敵していることになります。第一生命研究所の試算では、「失業率は最悪2021年第1四半期までに4%程度まで上昇する可能性がある」とされています。コロナの直前3月の失業率は約2.5%となっていてまだ落ち着いてはいますが、これから大幅に悪化することが予想されています。

休業手当の支払いが義務なのか免除されるのか法律の議論はおいといて、たとえ法的な支払い義務がなかったとしても、こんなときだからこそ企業は休業手当を支払うことで、雇用を守り、従業員の生活を守ることが必要だと思います。そうできるように国は、中小企業をしっかり守ってもらいたいものです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

労基・雇保法等の改正法成立 4月1日から一部施行スタート

令和元年度末に「労基法等の一部を改正する法律」「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立・公布され、令和2年4月1日から施行(後者の一部は段階施行)されています。

労基法関連では、賃金等の消滅時効期間が5年(当分の間の経過措置で3年)に延長されました。

雇用保険法関連では、令和2年度から2年間、雇用保険率引下げの暫定措置を延長しています(令和2年度は一般の企業で1000分の9)。

労災法の改正は「公布から6カ月以内」の施行で、ダブルワーカーに対する補償内容を充実させます(2事業場分の賃金をベースとして給付基礎日額を算定など)。

次年度以降については、70歳までの就業確保の努力義務化(令和3年4月)、高年齢雇用継続給付の縮小(令和7年4月1日)等が予定されています。

従業員による「逆求償」認める 業務上事故の賠償

業務中に起きた事故に関する賠償金に関し、最高裁判所は、会社に対する労働者の「逆求償」を認める判決を下しました。

原告労働者は、トラック運転者として運送業務に従事中に、死亡事故を起こしました。遺族に対して1500万円の賠償金を支払った後、会社に対してその返還を求める訴訟を提起しました。

民法715条では、被用者が第三者に損害を与えた場合、使用者が賠償の責任を負うと定めています(使用者責任)。この場合も、使用者から被用者への求償権の行使は認められると解されていますが、逆パターン(賠償をした被用者から使用者への求償)が可能か否かは、判例上明らかでありませんでした。

今回の最高裁判決は、この問題に対して初めての判断を示すもので、「会社と労働者のどちらが先に賠償したかによって、使用者の負担額が異なるのは本条の趣旨に反する」として、「逆求償権」を認容したものです。

◆監督指導動向

休業・助成金関係で相談急増 新型コロナの対応を調査 兵庫労働局

兵庫労働局は、「新型コロナ感染症の影響による特別労働相談窓口」の相談状況をとりまとめました。休業や助成金関係の相談がめだっています。

窓口は令和元年2月14日に開設され、集計データは同月末までのものです。相談者は110人で、事業主(74人)のほか、社労士・労働者も窓口を訪れています。

相談内容のトップは、いうまでもなく休業関係です。厚労省発表のQ&Aでも、感染が疑われる場合等の取扱いについて細かく対応を示していますが、休業時に労基法に基づく休業手当の支払いを要するか否かなどは、事業主にとって悩ましい問題です。

そのほか、2月中旬に特例措置が講じられ、その後、漸次、拡充されている雇用調整助成金等の助成措置、安全衛生、休暇、解雇・雇止め等に関する質問も寄せられています。


カテゴリー:所長コラム

受動喫煙防止

2020年04月02日

先日、あるお客様から、「会社の敷地内を禁煙にしたい」という相談があり、就業規則を変更することになりました。禁煙の取り組みは、これまでは病院などで先駆けて行われてきたことですが、一般企業での受動喫煙防止対策の強化が求められることになるようです。

令和2年4月1日に改正健康増進法が全面施行されました。事務所、工場等の屋内の職場は、改正健康増進法の第二種施設「多数の者が利用する施設」(厚生労働省Q&Aによると「2人以上」)として、1.屋内禁煙、2.喫煙専用室設置、3.加熱式タバコ用喫煙室設置のいずれかしか認められなくなります。これまで許されてきた、紙巻タバコを喫煙しながらの就業やエリア分煙・時間帯分煙は許されなくなり、それに違反すると、50万円以下の過料の罰則もあるそうです。

最近では、「場所」での禁煙に加えて、勤務「時間」中の禁煙を導入する企業も増えてきています。新聞報道によると、コカ・コーラボトラーズジャパン㈱は、今年の1月から休憩時間を除く就業時間中の喫煙を全面的に禁止しています。「屋内禁煙」とするため屋外に喫煙場所を移し、また、社有車内は、休憩時間を含めて喫煙を認めないこととしたそうです。その他の企業でも、「喫煙した職員にその後45分間のエレベータ利用禁止」「職員のみならず来訪者にも喫煙後45分間の敷地内への立入禁止」「通勤路の歩きタバコや会社周辺のコンビニ前での喫煙禁止」といったルールを設けるケースがあります。

このように今回の法規制を上回る措置を実施する企業も増えてきていますが、そもそも使用者は、従業員の喫煙を制限することなんてできるのかなと、ぼくは疑問に思いました。なんですが、従業員(労働者)は、労働するにあたり使用者の指揮命令に従って労働を誠実に遂行する義務(誠実労働義務)があって、また、労働時間中は職務に専念し、他の私的活動を差し控える義務(職務専念義務)も負っています。これを根拠に、使用者は労働時間中の喫煙を禁止できると考えることができるようです。また、最高裁の判決でも、「「喫煙の自由」は保障されなければならないものではない。」と示されていて、喫煙の自由は制限できるものと考えられます。ここで問題となっているのは受動喫煙の「他者危害性」です。喫煙労働者の仕事中に離席して喫煙することによる非喫煙者である労働者の負担増や不公平感などは、以前より言われていることであり、また、最近では喫煙して帰ってきた者の衣服や呼気に残留しているタバコ煙が非喫煙労働者に苦痛を与えているも問題になっています。喫煙後も呼気から有害な成分が出続け、他者に迷惑や苦痛を及ぼすことを踏まえれば、休憩時間中に「他の労働者の休息を妨げてはならないこと」また、休憩後の勤務時間に「他の職員の職務集中に妨げとなるおそれがあること」を理由に休憩時間中の喫煙についても禁止することが正当とされる場合もあると考えることができるそうです。

2020年1月からハローワークの求人票に、「就業場所における受動喫煙防止のための取組」を明示することが必要になっています。求職者に対して、受動喫煙防止の取り組みを示さなければならないことになったわけです。もう少し踏み込んで、非喫煙者に限定した求人・採用は可能なのでしょうか。使用者は原則として「採用の自由」を有しています。いろいろな法律によって採用の自由が制限される場合があり、求職者の個人情報についても収集が禁止されてものもあります。しかし、喫煙については、職業安定法による個人情報収集の制限の対象外と考えられていて、収集が可能となっています。そして、実際に多くの企業が、様々な理由から「喫煙者不採用」の方針を公表しているケースもあり、使用者側が応募者の喫煙の有無を理由に雇入れを拒むことは、合理的な理由に基づくものであれば可能ということになるようです。

ビジネスガイド(日本法令)「企業がどこまでできる!?仕事中・私生活上の喫煙制限」より

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆身近な労働法の解説 ―労働者名簿―

会社(事業場)においては、労働基準法に定める帳簿を備えなければなりません。 その一つである「労働者名簿」について、解説します。

1.労働者名簿の調製

使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければなりません(労基法107条1項)。事業場の規模・法人・個人事業に関わらず、パート・アルバイト等雇用形態を問わず、全ての労働者について作成・整備します。ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。 また、記入すべき事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません(同条2項)。

2.労働者名簿に記入する事項(労基法107条、労基則53条1項)

氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入の年月日、退職の年月日およびその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)、死亡の年月日およびその原因

3.調製のポイント

・様式第19号(厚労省HPからダウンロード可能)が用意されていますが、調製に当たっては法定の項目が記入されていれば異なる様式を用いることもできます(労基則59条の2)。

・常時30人未満の労働者を使用する事業においては、上記2の「従事する業務の種類」は記入することを要しません(労基則53条2項)。

・労働者名簿と賃金台帳をあわせて調製することができます(労基則55条の2)。

・以下の要件を満たす場合は、電子データによって作成・保存することも認められます(平7.3.10基収94号、平17.3.31基発0331014号)。

・電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調製された労働者名簿に法定必要記載事項を具備し、かつ、各事業場ごとにそれぞれ労働者名簿を画面に表示し、および印字するための装置を備えつける等の措置を講ずること。

・労働基準監督官の臨検時等労働者名簿の閲覧、提出等が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、かつ、写しを提出し得るシステムとなっていること。

4.保存期限

労働者名簿は、3年間※保存しなければなりません(労基法109条)。 ※民法改正に伴う改正労基法109条では「5年間」ですが、附則143条において当分の間「3年間」とされています。 保存期間の起算日は、労働者の死亡、退職または解雇の日です(労基則56条1号)。

5.罰則

労基法107条(労働者名簿)・109条(記録の保存)の規定に違反した者は、30万円以下の罰金とされています(労基法120条)。


カテゴリー:所長コラム

新型コロナウィルスへの会社の対応

2020年03月13日

ぼくの机の隣の書棚には、ボロボロになった本「菜根譚講話」があります。これは、亡くなった父が「おまえも人を使うようになったらこれを読みなさい。」と言って渡してくれた本です。結局、読んではいませんが(バカ息子ですね)、なんとなく大切にそばにおいています。月刊誌「致知」に、その菜根譚からの言葉が紹介されていました。「天は無心のところについてその衷をひらく」天は一つの目標に向けて意思を固め、無心に努力する者に、その真心をひらいて導いてくれる、ということだそうです。二宮尊徳は「世間、心力を尽くして私なき者、必ず功を成す」と言いました。私心なく心力を尽くす者は必ず成功する。なぜなら、そういう人を天が応援してくれるからだそうです。また、松下幸之助氏も「“むずかしいことだけれどやろうじゃないか”ということを言い続け、そして実際にやる努力を続けていけば、必ず事は成る。“もうできないだろう”とさじを投げたら、永遠にできない」と言っています。「私心なく」ということが一番難しいといつも思っていますが、「意志あるところ道はひらく」好きな言葉です。

新型コロナウィルスの流行がとまらないですね。「流行期」「蔓延期」のフェーズに入ったと言われますが、今後、流行期が2~3か月は続くと考えられるなかで、企業はどのような対応を求められるのか、厚生労働省が「新型コロナウィルスに関する事業者・職場のQ&A」を出しているのでその内容を見てみます。

2月1日付けで、新型コロナウィルス感染症が指定感染症として定められました。そのため都道府県知事が就業制限や入院の勧告を行うことができるようになっています。会社の就業規則には、「病者の就業禁止」が定められており「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者」などの就業を制限することが可能になっていますが、新型コロナウィルス感染症が指定感染症となったため感染症法の対象となり、就業規則による就業制限の措置をうけないことになりました。これによって何がおきるのかということですが、会社は就業規則に基づき就業を禁止することはできず、従業員の自主的な判断に基づき自宅待機などの対策を検討しなければなりません。そして、Q&Aでは、新型コロナウィルスに関連して従業員を休業させる場合の欠勤中の賃金の取扱いですが、「労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。」とされています。賃金の支払いが必要かどうかを、個別事案ごとに判断してくださいということみたいですが、注意が必要なのは、その休業が「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するかどうかということになります。例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、従業員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。また、この場合に使用者から一方的に年休を取得させることはできません。年次有給休暇の請求は、原則として労働者の希望する時季に与えなければならないとなっているためです。

では、従業員が自主的に、または会社の勧めにしたがって病院に行き、医師の診断や判断を尊重して自ら休業を選択するとした場合、従業員は会社に年次有給休暇の申請をして療養します。そして、会社は病気欠勤ではなく、年休として100%の賃金支払いをします。つまり、会社と従業員は、話し合ってお互いに納得したうえで、従業員は、年次有給休暇を取得し、療養に必要な期間を休んでもらうということが実務上求められることになりますね。

また、不要不急の外出を控えるよう言われているなかで、出張命令ができるのかということも気になります。ぼく自身、3月に東京出張がありましたが、万が一のことを考えて取り止めてしまいました。仮にウィルスに感染した場合ですが、「安全配慮義務を尽くさなかった」として会社が責任を追及される可能性もあるようです。ただ、安全配慮義務は、「結果債務ではなく、安全と健康そのものを請け負う債務とまではいえない」(菅野和夫「労働法」)とされているので、やはり、会社は、必要十分な安全衛生対策をとっておくことが求められることになります。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

心理的負荷要因にパワハラを追加 労災の認定基準見直し

厚生労働省は、精神障害に対する労災認定基準の見直しに着手しました。令和2年6月から、パワーハラスメント防止の措置義務が課されるのを踏まえた措置です。

業務によるメンタルヘルス不調については、現在、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(平23・12・26基発1226第1号)に沿って労災認定が行われていますが、労災請求件数は6年連続で過去最多を更新している状況にあります。

現行基準では、発症前6カ月間に業務による強い心理的負荷があったこと等が認定要件とされ、パワハラに近い事由として「嫌がらせ、いじめ、暴行」や「上司とのトラブル」等が挙げられています。

しかし、パワハラは「嫌がらせ、いじめ」とは異質な面があるとの見方から、独立した事由としてパワハラを分離し、その定義や強度を検討するとしています。

同省では、令和2年度中に調査を実施し、翌3年度以降に基準の改定を図る方針です。

トイレ使用制限で賠償命令 性同一性障害の公務員

性同一性障害の国家公務員が女性用トイレの利用制限を不服とした裁判で、東京地方裁判所は国に損害賠償を命じました。

原告は性同一性障害の診断を受けましたが、性別適合手術は受けておらず、戸籍上も男性のままでした。障害を理由として、女性の身なりでの勤務や女性用トイレの使用許可を求めましたが、トイレについては所属フロアから2階以上離れた階のものに限る等の条件を課されました。

地裁は、性自認に対応したトイレの使用を制限されることは、重要な法的利益の制約に当たる一方で、トラブルの可能性は抽象的なものにとどまると判示しました。上司による「手術を受けないのだったら、もう男に戻ってはどうか」等の発言も踏まえ、慰謝料など132万円の支払いを命じています。

裁判所は、性別に関係なく誰でも入れるトイレを設置した資生堂やLGBT(性的少数者)の社員が使用可能なトイレを整備したJXエネルギーの取組などを参考に、「国民の意識には相応の変化が生じている」とも指摘しました。

最大52時間分を還元 働き方改革で減少の残業代

東急建設㈱は、働き方改革により減少した残業代を、一時金として還元する新施策を講じました。対象者は、若手・中堅社員を中心とした「キャリア職」の総合職・一般職で全社員の4割に相当します。

同社では、18年7月にフレックスタイム、テレワーク、勤務間インターバル、時間単位年休など、労働時間制度の全面見直しを実施しました。

その前年度を基準として、残業時間の変化を計算したところ、総合技術職は年平均52時間、総合事務職は5時間の減少という結果が出ました。

同社広報では、「来年度以降も、年2回実施している従業員サーベイの結果をみて、取組の継続を判断する」としています。


カテゴリー:所長コラム

熱意を持つ

2020年02月05日

昨年末、生まれて初めての入院と全身麻酔での手術を経験しました。昨年は社労士事務所開業15周年にあたり、その年の最後に入院となったわけですが、手術自体はたいした問題もなく、1週間という短い期間でしたが、何もできない時間を、何も考えないで毎日がゆっくりと過ぎていく、ホントにご褒美をいただいたような気持ちでした。これまでにたまっていた本をたくさん持ち込んで読書をして過ごしていましたが、ベッドの上で天井を眺めながらお客様や事務所の職員にいつも助けられていることを実感することができました。 入院中、松下幸之助さんの「経営心得帖」を読んでいると、従業員教育について書かれていました。従業員教育において何よりも大切なのは、その教育にいわゆる魂を入れることだと話されていて、それが会社であれば経営者の人格の反映というものがなければならないということだそうです。といっても、経営者がとても立派な人格者で、何でも模範的でなければならないということではなく、普通の人間であって人間的欠点をもっていてもよく、またそれをさらけ出してもいいと。そのときに大事なのは経営者は熱心でなければならない。そして、「頭が動けば尾も動く」というように、経営者が熱心であれば、自然と従業員にも反映して、従業員に模範的な働きが生まれ、人が育ってくるのだそうです。

以前、お客様に会社の経営について意見を求められたときに、これまでのぼくの経験として、社労士事務所の売り上げを伸ばすためには、法律知識を身に付けたり、より良いサービスを提供することも必要だけれども、どちらかというとぼく自身の人間力を高める努力をすることのほうが大事だったのではないかと話したことがあります。そのお客様は、「では従業員の人間力を高めるのにはどうしたらいいと思いますか?」とおっしゃいましたが、そのときはなんと答えてよいかわかりませんでした。先ほど、松下幸之助さんは「人材の育成を願うならば、まず経営者自身、店主自身が経営、商売に熱意をもつとともに、部下の意見を十分にくみあげることがきわめて大切だと思うのです。」と答えてくれています。そして、「部下の意見をくみ取ることは、その人に自信をもたせ、成長させることにもなると思います。その意見に耳を傾けることをしなければ、部下の人もいつしか意見を出さなくなり、成長も止まってしまうのではないでしょうか。ですから、人材の育成を願うならば、まず経営者自身、店主自身が経営、商売に熱意をもつとともに、部下の意見を十分にくみあげることがきわめて大切だと思うのです。」と教えてくれています。ようするに他人のことをどうこう言う前に、自分が頑張れということなんでしょうね。

また、商売をしていると自分の力だけではなし得ない不思議な経験をすることがあります。月刊誌「致知」の特集記事からですが、ある人の言葉で「天才とは天の力を借りられる人」という言葉がありました。では、どういう人が天から力を借りられるのかということですが、その第一条件は、その人が自らの職業にどれだけの情熱を注いでいるか、この一点にあると書かれていました。稲盛和夫氏は「誰にも負けない努力をする」と説きましたが、この誰にも負けない努力とは、言い換えれば天が応援したくなるほどの努力、ということになるようです。一代で偉業を成した二宮尊徳、松下幸之助、稲盛和夫など皆が情熱を持って生きることの大事さを説いています。ぼくのこれまでの努力なんて全くそのかたたちの足元にも及ばないのは当然ですが、情熱を持って自分が出来る最高の努力をする姿勢を持ち続けることだけはこれからも続けたいものです。

キャノン電子社長の酒巻久氏は、「40代になったら、2、30代の時の二倍勉強しろ。50代になったら三倍勉強しろ。そうすれば60代、70代は楽に過ごすことができるよ」とおっしゃったそうです。ぼくもこれからまだまだ勉強がんばらないと!と入院中に考えさせられました。今年は子年ですね。「子」は、新しい生命がきざし始める状態をいうそうです。今年からまた生まれ変わったつもりで新たな年をスタートさせたいと思います。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

第1段階は100人超規模が対象 社会保険の適用拡大

年金関連についても、通常国会に公的年金と企業・個人年金の双方について改正法案が提出される見通しです。

「本丸」の公的年金ですが、社会保障審議会では年末に議論の整理を行いました。

被用者保険の拡大に関しては、令和4年10月に100人超規模、令和6年10月に50人超規模まで適用することを基本とします。短時間労働者(4分の3未満)への適用要件に関しては、1年以上雇用見込みの勤務期間要件を撤廃するとしています。

年金の支給開始時時期については、選択の幅を60~75歳に広げます。60歳代前半の在職老齢も調整基準を引上げ(47万円)、就労を支援します。

企業年金関連では、確定拠出年金の中小企業向け制度の拡大(簡易型DCの対象範囲を300人以下に拡大など)等の改正を予定しています。

産業医の協議会設立へ 役割の拡大期待へ対応

日本医師会は、来年6月にも「全国医師会産業医部会連絡協議会(仮称)」を設立します。5年前にスタートしたストレスチェック制度や、昨年施行の働き方改革法に基づく安衛法改正により、産業医に求められる役割・業務が拡大しているのに対応するためです。

産業医のスキルアップを目標として、ストレスチェック研修会を実施するほか、仕事と治療の両立支援研究会等を立ち上げる等の案が検討されています。このほか、情報提供、相談対応、事業場あっせん、活動支援等も行っていく方針です。

◆監督指導動向

技能伝承で安全力アップ 機械の挟まれ防止を確認 茨城労働局

茨城労働局は管内での災害増加を受けて緊急点検を要請していましたが、年末・年始労災防止強化運動の一環として製鉄現場のパトロールを実施しました。

工場内の歩車分離や機械設備の挟まれ・巻き込まれ防止対策を確認するとともに、団塊世代技術者の退職に伴って作られた技能伝承のための施設では、工具・保護具の安全な使用方法も視察しています。

福元俊成局長は、「仮に機械が制御どおり動いても、人間によるうっかりや勘違い、確認不足で災害に至るケースがある。作業する全員が、存在する危険に注意を払い、回避する姿勢が重要」などと訓示しました。


カテゴリー:所長コラム

パワハラ防止対策の義務化

2020年01月07日

ある調査のために県内の大きな企業に訪問したときのことです。広い事務所スペースの一角で担当者のかたにお話を聞かせていただいていたところ、衝立の向こうから「バカかおまえ!」「こんなことやっているからバカなんだよ!」とバカを5回くらい連発して部下を指導する上司の声が聞こえてきました。あまりにストレートなパワハラだったので、ぼくは、今どきこんな上司がいるんだと気をそちらにもっていかれていたところ、その担当者のかたに「気にしないでください。」と言われて、いつものことなんだなぁと思いましたが、いまどきこんなにわかりやすいパワハラ上司をほっておく会社もどうかと思いますが、こんなにわかりやすいパワハラをしている自分に気づかない上司というのも不思議に思いました。

先日、三菱電機の新入社員だった20代の男性が昨年8月に自殺し、兵庫県警三田署が教育主任だった30代の男性社員を自殺教唆容疑で書類送検していたと報じられました。新入社員の男性は、上司である教育主任から日常的に暴言を受けていたとのことで、神戸地検は刑事責任の有無を慎重に判断するとみられているそうです。同社によると、亡くなった社員は技術職として4月に入社し、配属先で教育主任の指導を受けており、その後8月に自殺しました。その教育主任は社内調査で「死ねとは言っていないが、似たような言葉を言ったかもしれない」と言っているそうです。このケースでは、入社からたった4ヶ月で自殺にいたっています。ぼくが相談を受けたことのあるケースでも、入社して3ヶ月程度の社員が上司のパワハラで精神疾患を患うようになったということがありました。こういう場合、会社は「そんなわずかな期間で精神疾患になるわけない。他に原因があるはず!」といいますが、今回のケースにみるように会社に対して刑事責任を問われるまでになるということがはっきりしました。

そんな中、企業に初めてパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法の今年6月の施行(中小企業は2022年4月1日から)に向けてパワハラの定義や防止策の具体的内容を盛り込んだ指針がまとめられたと発表されています。職場におけるパワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者に身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境が害されること、をすべて満たしているものとされています。また、今回の法改正によって、パワハラだけでなくセクハラやマタハラなど職場におけるハラスメント対策全体が強化されているので注意が必要です。パワハラ対策を今後、企業は導入していく必要がありますが、経営者が、まずはパワハラとは何か、パワハラが起こったらどのような影響があるのかを理解しておく必要があります。経験上、パワハラの結果として起こるのは社員の離職です。やはり、ひとりの社員のパワハラ行為がきっかけで他の社員が次々と退社していくというのは、一番の罪だと思いますし、会社にとっても大きな損失になります。

そこでパワハラへの基本的な対策です。まずは、企業として、職場のハラスメントをなくすという明確な方針を社員に対して打ち出す必要があります。そして、就業規則等を整備することで、起こった場合の対処方針を定めます。実態調査や、ハラスメント研修の実施により全社員への周知や啓発を行うことが必要です。そして、実際にハラスメントが起こったときのための解決方法ですが、相談窓口を設置しておくことが必要です。これまでのぼくのケースでも相談窓口を設置した途端にハラスメントの相談が窓口に入ることが多くありました。ハラスメントで悩んでいる社員はどこの会社にもいるということなのでしょう。相談担当者を誰にするのかや相談があった場合の対応フローなども事前に決めておいたほうがよさそうです。

ハラスメントはこれまでも問題視されることが多かったので、対策をとっている会社は多いと思いますが、今回のパワハラ防止対策の義務化を契機にもういちど社内を見直すことがよいのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

時間単位の取得も可能に 介護・子の看護休暇

育介休業法施行規則・指針の改正により、介護休暇と子の看護休暇について1時間単位の取得を可能とします。  事業主に十分な準備期間を確保させるため、改正施行規則などの施行は令和3年1月1日を予定しています。  介護休暇は要介護状態にある家族の介護のため、子の看護休暇はケガ・病気等子の世話をするため、1年度5日(対象者が複数のときは10日)を限度に付与されます。現行の仕組みでは、全日のほか、「半日」単位の取得も認められています。  今回の改正では、取得単位をさらに柔軟化し、原則として始業または終業と連続する「1時間単位」とします。ただし、個々の労働者の事情も考慮し、始業・終業と連続しない時間単位取得も可能とするよう指針に明記し、事業主に配慮を求めます。  このほか、現在(改正前)は「半日単位」での休暇取得の対象から除外されている「1日の所定労働時間が4時間以下の労働者」に関しても、時間単位の休暇利用を可能とする方針です。

全学歴で過去最高を更新 経団連・2019年初任給調査

経団連と東京経営者協会は、2019年3月卒業者を対象とした「初任給調査」をまとめました。すべての学歴で過去最高額を更新し、大卒21万7981円(対前年比0.76%増)、高卒17万932円(同1.05%増)となっています。  決定に当たって考慮した要因は「世間相場」(27.9%)が最も多く、「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」(21.1%)が続いています。  2019年の卒業者が入社した時点で、東京の最賃は985円でした。17万円は172時間分に相当し、月の所定労働時間と変わりません。「最賃の影響から、2~3年前の初任給額では通用しない現状にある」(賃金システム研究所赤津雅彦所長)という指摘もあります。

申請3年以内に希望地へ 地域限定社員制度を拡充

オタフクソース㈱は、令和2年4月から「地域限定制度」を見直し、同制度を選択した社員は3年以内に希望地域へ異動できるようにするとしています。  改正前は、「育児・介護に従事」「配偶者との別離が困難」等の理由がある場合、「現在、勤務している地域」に限定して勤務できる仕組みでした。  改正後は、対象を全社員に広げるとともに、たとえば広島勤務者が関西勤務等を選択することも可能となります。条件は、本人・家族の居住地があり、会社の事業所があることです。ただし、全国転勤型と比べると、賃金水準を一般職5%、管理職10%相当、減額調整するとしています。  同社では、令和元年10月にも、時差通勤制度・テレワーク制度を導入するなど、仕事と家庭の両立をサポートする体制整備を進めています。


カテゴリー:所長コラム



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