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夏季休業のお知らせ

2020年08月12日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら8月13日(木)~8月16日(日)まで夏季休業(お盆休み)とさせて頂きます。

8月17日(月)より通常営業となります。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。


カテゴリー:お知らせ

荀子の言葉

2020年08月05日

大学生の息子は、コロナのため今は、自宅でのオンライン授業となっています。夏休み明けからは大学キャンパスでの授業が再開されるようですが、それまではずーっと引きこもり状態のゲーム三昧で、毎日を過ごすつもりのようです。もともと、活動的ではない彼ですが、その息子いわく「やっと時代が俺に追い付いてきた」と。そんな息子が、「お父さんには口では勝てないから」と、ぼくに珍しく腕相撲を挑んできました。そんな息子を頼もしく感じながらも、瞬殺での返り討ちにしてやりました。ぼくよりも身体が大きくなっているので、勝てると思ったのでしょうが、父親の威厳を示すことができました。

厚生労働省が発表した5月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、実質賃金が前年同月比2.1%減でした。新型コロナウィルスの感染拡大を受けた休業などの影響で残業時間などの所定労働時間が29.7%減少したことが響いたようです。また、現金給与総額を就業形態別に見ると、パートタイム労働者への影響が大きく、一般労働者は基本給などの所定内給与が前年同月と同水準となっていますが、パートは3.9%の減少となり、残業代などの所定外給与も一般労働者を上回る33.1%の落ち込みとなってしまっていて、給与への影響は今後ますます大きくなり、景気の悪化と相まって私たちの生活は苦しくなりそうです。

コロナの不況は、観光業と飲食業から始まりましたが、今は製造業にもおよび始めているようです。多くの中小企業では、4月の後半から残業がほとんどなくなり、やむを得ず雇用調整のために休業もしているという話を聞きました。また、7月に入り、新型コロナウィルス感染拡大に関する解雇や雇い止めが見込みを含めて3万2348人になっておりこちらも今後、拡大が続きそうです。

以上のようなコロナウィルスがもたらした雇用への悪影響が働く人に不安を与え、職場の環境も悪くなっているようです。そのためかわかりませんが、関与先のお客様から、これまでなら信じられないような労働相談が入ってくるようになっています。例えば、これまでと変わらずに出勤してくる社員が、会社の経営方針や労働条件について警察や労働基準監督署に訴えるといった書面を上司に出してきたり、会社の人事異動に対して堂々と文句を言い、自分の思うようにならないなら訴えると言ってみたり。やはり、コロナが、人間の本性を晒した結果なのだろうなぁと感じています。

JFEホールディングス名誉顧問の數土文夫さんが「荀子」について話されていました。(月刊誌致知より)荀子は『人は生まれつき私利私欲に走りがちになるもので、必ずしも「性善」ではなくて、むしろ「性悪」であって、これを善に正すべく努力する。これが人の道であり、従って人間にとって重要なのは天賦の才ではない。後天的な努力や勤勉さ、善行の積み重ねであると繰り返し説いています。』と語っているそうです。荀子が言っているのは「善行を為すのであれば、ずっと続けるべきだ。積み上げていけば必ず世に知られていく。そして世に良い影響をもたらす」ということだそうです。そして「こういう先達の言葉を読むにつけ、人間の本質は二千年経っても全く変わらないとつくづく思う。一所懸命に努力する。真面目に誠実に生きる、苦労している人がいたら手を差し伸べる。そのような善行を積んでいくことが大事であるという倫理観を若いうちに持たなければ、すぐに誘惑に負ける私利私欲にまみれた人間になってしまうでしょう。」また、「近年、人生百年時代といわれるようになりましたが、戦後間もない頃まで日本人平均寿命は約五十歳でした。その時代に比べて、我われは二倍学び、二倍善行を施す時間を持てるようになったわけです。何と素晴らしい時代でしょうか。先達の生き方を模範とし、ぜひ前向きに希望を持って、学びの道を歩み続けたいものです。」と。

平時であれば、多くの人はまわりに気を配り、できればよい人と思われるように行動をすることが普通にしているものだと思いますが、今のコロナ禍においては、そんな余裕がなくなっている人もいるだろうと思います。荀子は、「人間にとって重要なのは天賦の才ではない。後天的な努力や勤勉さ、善行の積み重ねである。」と説きました。コンサルタントの小宮一慶さんがよく言います。「人は皆、努力をしていると言います。それは、自分が考えるレベルの努力であってそんなものは努力ではない。それくらいみんなしている。どうせ努力するのであれば、神様が認めてくれるくらいの努力をしなくてはいけない。」と。どんな状況であっても自分を見失しなわず、周囲への感謝の気持ちを持ち続けることが大事なんだなぁと思わせてくれることが続きました。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

新型コロナで「休業支援金」創設 雇調金の拡充措置も延長

令和2年度第2次補正予算が通常国会で成立し、厚生労働省では、雇用・生活支援等に総額5兆円を追加投入します。

雇用保険の臨時特例法により創設する「新型コロナ対応休業支援金」は、感染防止により休業させられ、休業手当を受けられなかった労働者を対象とします。

給付額は休業前賃金の80%相当で、月額33万円を上限とします。中小企業の勤務者が直接申請する形で(事業主を通じて申請も可)、被保険者以外も利用可能です。

併せて、求職活動の長期化が懸念されるため、基本手当の所定給付日数を60日(一部30日)延長する措置を講じます。

雇用調整助成金についても、9月末までの緊急対応期間中は、日額上限を原則の8330円から1万5000円に引き上げます。解雇などを行わない中小企業に対する助成率も、一律10分の10に拡充するとしています。

発症前でも安全配慮違反 月30~50時間残業で

保険営業社員が長期の過重労働は違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所は、安全配慮義務違反に当たるとして慰謝料の支払いを命じる判決を下しました。

育成部長に昇格した後、支社で10人以上の育成社員の指導に当たっていましたが、1年以上にわたり、月平均30~50時間等の時間外労働が発生していました。

厚労省の過労死認定基準(平13・12・12基発1063号)では、月平均80時間超を重要な指標としていますが、45時間を超えると「業務と発症との関連性が徐々に強まる」としています。

うつ病等の具体的な疾患は発症していませんでしたが、裁判所は「心身の不調を来す可能性があるような労働に1年以上従事させた」と評価しました。

そのうえで、営業社員が上司に時間外労働の改善を求めた以降も対策を講じていなかったことから、会社側の安全配慮義務違反を認定しました。労基署から賃金不払い残業に関する是正勧告を受けていた点も、違法性を裏付けると指摘しています。

全事業所でフレックス制 コロナの経験生かす

テルモ㈱は、7月から国内全事業所を対象にフレックスタイム制を適用しています。3カ月以上にわたって続けてきた新型コロナウイルス対応の経験を踏まえ、研究開発拠点で先行導入していた取組を全社レベルに拡大するものです。

約5000人を擁するテルモ単体の取組で、みなし労働時間制の対象となる営業職や交代勤務で働く生産職などは適用外となっています。

併せて、社内規定で月4回までと定めていた在宅勤務制度の回数制限も撤廃しました。両制度の併用が可能になったことを受け、「新しい生活様式」につながる制度運用を目指します。


カテゴリー:所長コラム

コロナ下での労務管理

2020年07月09日

コロナウィルスの感染拡大に伴い、人との接触を避けるためにマスクの着用やZoomを使った会議や打ち合わせが一般的に行われるようになりました。これからウィルスが収束してもこの習慣は続くのだろうと思います。これまで当たり前だと思っていたことに、代わりが効くことを気がついたり、その代わりになることですごく時間が短縮されたり、便利であったり。ぼくは自粛期間中、たまには運動しようと家の周りを歩き始めてみましたが、これが時間もかからず、外を歩くという爽快感から今ではウオーキングが習慣となりました。運動のためジムに行く必要もなくなりそうです。他にもこれまで東京に行かないと受講できなかったセミナーが、東京に行かなくてもZoomで受講できるので交通費が不要となりすごく便利になりました。ただ、その一方でマスクやZoom会議というのは、他人の表情が読めないし、空気感も感じることができないので、コミュニケーションの質という意味ではかなり低下してしまうようです。得られる情報量が少ない分、相手の感情を察することは難しく、そのためZoom会議では、自分の考えていることを率直に発言できてしまう。これはいいのか悪いのかわかりませんが。

厚労省は、コロナについての労働分野での対応を発表しています。まず、新型コロナウィルスの感染予防を理由とした離職者について特定受給資格者とすると省令が改正されました。特定受給資格者とは、倒産や解雇などにより離職した者で失業保険の給付日数が延長されたり、また一般的な離職者と違い、支給制限期間がないため給付もすぐに行われます。5月1日以降に、本人か同居の親族が感染した場合に重症化する危険性の高い疾患を持っていて、感染予防のためにやむを得ず離職した者が対象となるそうです。

次に労災保険についてですが、すでに医師、看護師、介護従事者が新型コロナウィルスに感染した場合に、原則として労災保険の適用対象となるとなっています。あらたに厚労省は、新型コロナウィルスの労災認定について4月末に認定基準を公表していて、医療従事者以外の労働者で、感染経路が特定されていなくても、リスクが相対的に高い業務(顧客との近接・接触の機会が多い業務、小売業、バス・タクシーの運転、育児サービスなど)等の場合は、個別に調査して、業務起因性を判断して労災保険が適用されることとしました。また、通勤途中であっても、個別調査などで感染したと認められれば給付するとされました。2020年6月3日現在で、業務上の理由で新型コロナウィルスに感染したとする労災の支給決定件数は、医療従事者などが4件(請求件数64件)、医療従事者以外では3件(請求件数26件)となっているそうです。

では、新型コロナウィルスに感染した場合にどれくらいの入院費や治療費がかかるのでしょうか。私たちが病気になった場合には、公的な医療保険が適用され、医療費の3割が自己負担となります。しかし、新型コロナウィルスは厚生労働省が「指定感染症」に指定しているので、入院した人の医療費は公費での負担となります。税金で入院・治療が行われるということなので、本人の負担はありません。なので、労災保険から行われる給付というのは休業補償(休業(補償)給付)ということになります。

労災保険の休業補償は、業務上の怪我や病気で会社に出勤できなくなり、休業せざるを得ない状況になってしまった場合、休業中の所得を補償するためのものです。被災して休業する労働者には、休業期間の4日目から、賃金の80%が支給されます。労働者にとって休業中に給与が支払われないことになると大きな不安になりますが、労災保険から賃金の80%が支給されるため、安心して治療に専念できます。また、休業中に会社が20%相当の賃金を支払った場合であってもその給付額が減額されることはないので、会社が、本人に労災保険を受給させたうえで上乗せ補償として不足分を補填すれば賃金を100%補償することもできます。

あまり知られていませんが、生活費の安定した確保のために、社員が労災にあった場合には「受任者払い制度」という制度があります。これは、休業補償給付分をいったん会社が立て替えてから本人に支払うという制度です。通常、休業補償給付を労基署に請求しても労働者にお金が振り込まれるのに1ヵ月程度の時間がかかります。社員に1ヵ月収入が無くなることは、会社として避けたいところです。受任者払い制度は例外的に認められているものですが、この制度を活用することによってそういった不安は解消されるので、積極的に活用したいところです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

総合職21.8万円に 令和3年大卒初任給

労働新聞社が実施した大卒初任給調査によると、集計した4系統ともに前年結果を上回り、総合職では比較可能な企業の4割が増額しています。来年(令和3年)3月に卒業を見込む学生を対象として、インターネット上に提示されている初任給を集計したものです。

系統別の平均は、技術系21万6035円、事務・営業系の総合職21万7811円、一般職18万9057円、営業系23万3236円となっています。

新型コロナによる経済停滞が懸念されるなか、少なくとも来春の就職組に関しては1%超の伸びが確保された形です。

技術職の増加幅をみると、技術者不足に悩む「建設・不動産」で4304円増がトップで、メーカーは2071円増という状況です。

総合職では、とくにリース業が好調だった「金融・保険」で8182円増、商社で4905円増と改善が目立ちます。

製造補助バイトへ範囲給 「同一労働同一賃金」に対応

大日本印刷㈱は、今年4月施行のパート・有期雇用労働法に対応するため、製造現場のサポートスタッフに時給昇給の仕組みを導入します。

「同一労働同一賃金ガイドライン」(平30・12・28厚労省告示430号)では、非正規社員に対しても「勤続による能力の向上に応じた部分につき、通常の労働者と同様の昇給を行う」よう求めています(賃金体系に相違があるときは、合理的な理由が必要)。

同社のサポートスタッフは多くが製造現場で補助業務に従事し、一部が事務作業を担当しています。賃金は、時間給となっています。

新たに整備する仕組みは、作業の難易度に応じて職務レベルを定め、レベル別に上・下限を定める範囲給方式です。正社員の昇給の考え方を反映し、年1回の人事考課に基づいて昇給を実施します。

夏季賞与は大幅減を予想 業績悪化に拍車

みずほ総合研究所の試算では、民間企業の今夏ボーナスは34万6480円で、前年比9.2%減となる見込みです。マイナス幅は、リーマン・ショック後の2009年以来の水準です。

支給月数は前年の1.04カ月から0.1カ月減少し、0.94カ月になると予想しました。

春季賃上げ率が3年ぶりに2%を下回り、ベアゼロ回答の企業が増加するなど、賃金指標は弱含みで推移しています。4月施行の同一労働同一賃金の影響で非正規への支給が広まる可能性はありますが、新型コロナによるネガティブな影響が上回るとしています。

一方、中小企業基盤整備機構は、新型コロナが中小・小規模企業に与えた影響に関する調査結果を公表しました。

4月の業績は、前年同期に比べ「大幅なマイナス」が41.1%、「一部のマイナス」が16.8%などとなっています。

将来的な見込みも含めると、79.2%の企業でマイナス業績が発生するとしています。


カテゴリー:所長コラム

これからの労働法制と労務管理

2020年06月01日

コロナウィルスの感染拡大の影響で働き方改革がかすんでしまっていますが、そんな中でも新しい法律の施行は続いています。最近では労働基準法が改正(2020年4月施行)され、賃金請求権の消滅時効が5年(当面は3年)になりました。また、パワーハラスメント防止措置義務化は2020年6月施行です(中小事業主については2022年3月31日までは努力義務)。2つともコロナ下でなければ大きく取り上げられてもおかしくない改正です。

最近、関与先で未払い残業代を請求されることがありました。特徴的なのは、会社はキチンと残業代を支払っていたと思っていたのに、突然、退社した従業員から数百万円の未払い残業代の支払いを求められたということです。その背景にはいったいどのような問題があるのでしょうか。今、会社が行っておきたい未払い残業代の発生しない労働時間管理を考えます。

突然、退社した従業員の代理人だという弁護士から内容証明が送られてきたので、私に相談にのって欲しいと連絡がありました。話を聞くとその内容証明には、未払い残業代として300万円、そしてその他の慰謝料等を含めると500万円を超える金額を支払えと書いてあるとのことです。その会社では、たしかに一部、残業代を支払っていない労働時間もあるが、それ以外は全て支払っているから、そんな大きな金額を請求されても納得がいかないということでした。その後、弁護士とのわずか数回の書面のやりとりの後、裁判となります。その結果、会社は納得のいかないまま裁判所から和解を提示され、数百万円を支払う結果で終わることとなりました。その会社の社長は、もっと労働時間管理をしっかり行うべきだったと後悔する結果となったようです。

今、このようなトラブルが増えていると聞きます。残業代トラブルが増えている要因は2つあるといわれていて、まず一つ目にあげられるのは働き方改革が始まり労働基準監督署の長時間労働に対する取り締まりが厳しくなっていることがあります。労基署の是正勧告を受けて未払残業代を支払った企業数は2018年度で1768社となっており、5年前に比べて25%増えているそうです。

二つ目の要因といわれているのが、人手不足を一因とする転職者数の増加だといわれています。未払い賃金の請求は、圧倒的に退職後に行われます。会社に勤めている間は、その後の人間関係や会社からの評価を心配する人が多く、そんな心配をする必要がなくなる退職後に請求に動く人が増えるのです。

また、退社後に未払い残業代を請求する場合、労働者側が実際に何時間働いたかを証明する必要がありますが、会社を辞めた後にその本人の手元にタイムカード等がなくても請求することが可能です。会社には、タイムカードと賃金台帳を3年間(今後は5年)保存する義務が課せられているため、会社に対し、法的手段により請求すればそれらの資料を開示させることができます。それ以外にも、手帳などに労働時間をメモ書きしているとか、帰宅時間を家族にラインで毎日送っていたなどそういったものでも十分に労働時間の記録として扱われることになります。

未払い残業代の請求を受ける側の企業にも労働時間について多くの認識不足があります。職務手当や営業手当といった手当に、毎月一定額の固定残業代を含ませて支払い済と主張したとしても、そのことが労働条件通知書や就業規則などに明記されていなければ認められません。また、本来、残業代の単価計算に入れる必要のない通勤手当や家族手当などを従業員一律の金額で支払っていたりすると基本給と同じとみなされて単価計算に含めなければならなくなることもあります。最近では、36協定や変形労働時間制の協定当事者である従業員の過半数代表者の選任の手続きを怠っていた場合、協定そのものが無効とされ変形労働時間制が適用されなくなることにより残業時間の計算がやり直しになり、残業代が大幅に膨らんでしまうこともあります。

そういったことに対する中小企業経営者の認識は不足していて、従業員から訴えられて初めて気づくことがほとんどです。「何年も前からこのやり方でやってきたのに」と事が起きてから驚くことが多いのです。今後、時効が延長されることにより、未払いとなる残業時間数が大幅に増えるため、未払い残業代トラブルが激増することは容易に想像できます。働き方改革が始まり、労働時間管理についてはどの企業も神経質にならざるをえません。会社も働く社員も一緒に労働時間を管理するという意識がこれからは大切になってくるようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

新型コロナで手当を支給 出勤・業務負荷の増加に対応

新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が発せられましたが、休業や在宅勤務が難しい業種や職種も存在します。やむを得ない出勤等に対し、手当等を上乗せし、従業員のモチベーション維持を図る企業も増えています。

大手小売業の㈱ライフでは、全従業員4万人に対し、3億円の原資を拠出して「緊急特別感謝金」を支給しました。正社員、契約社員のほか、パート・アルバイトも対象で、出勤日数や時間による差は設けません。

ソフトウエアの品質保証等を行う㈱SHIFTでは、取引先オフィスへ常駐する従業員や、社内のテストセンターで業務を行う従業員等を対象に、「危険手当(1日当たり最大4000円)」を支給します。

保育・人材・介護事業を展開するライク㈱では、本社・支社オフィス勤務の社員に1勤務当たり3000円の特別手当を新設しました。

5%の賞与減額は有効 「安全喚呼」をなおざりに

新幹線の運転士が「喚呼ミス」等を理由とする賞与減額を不服とした裁判で、東京高等裁判所は会社側勝訴とする一審判決を維持しました。

会社と労組の間では、勤務成績不良の場合、賞与を5%減額する等の協約を結んでいます。原告の運転士は、「運転士の基本動作集」に定める指差し手順等のルールを正確に履行していませんでした。

たとえば、「道具箱鎖錠よし」とすべきところを、「よし」とだけ確認していました。運転士は、「手順・用語が少しでも異なれば直ちに非違行為とするのはあまりに形式的・硬直的」と主張していました。これは、どこの職場でも起こりそうなトラブルです。

高裁は、「乗客の安全な輸送という事業の重要性と新幹線運転士という職務の重大性を理解していない」と指摘。安全・安定・快適な輸送サービスのため、規則違反を非違行為とするのは当然として、賞与減額を有効と判断しました。

記録の保存にも留意を 改正労基法で通達・Q&A

改正労基法・労基則は令和2年3月31日に公布され、同4月1日から施行されています。厚労省では、これに合わせ施行通達(令2・4・1基発0401第27号)とQ&Aも公表しました。

賃金請求権の消滅時効が2年から5年(当面の間は、経過措置により3年)に延長されたほか、記録の保存義務・付加金の請求期間についても同様の措置が講じられました。

新しい時効規定が適用されるのは、「施行日(4月1日)以後に支払期日が到来する賃金請求権」に限られます。

記録の保存に関しては、労基則の改正により、起算日の明確化が実施されました。原則は「記録の完結の日」(56条1項)ですが、「賃金の支払期日が記録の完結より遅いときは、支払期日が起算日」(追加された56条2・3項)となります。


カテゴリー:所長コラム

緊急事態宣言下での休業手当

2020年05月01日

わずか数カ月で世の中が大きく変わってしまうなんてことがあるんですね。コロナウィルスのために外出の自粛が続いていますが、自由に生活できないことがこんなにしんどいこととは思いませんでした。他人から自分にウィルスがうつってしまうというより、他人にうつさないための自粛だと思うので、今は頑張らないといけないですね。

歴史上の人物に北条早雲がいます。その北条早雲のエピソードです。伊豆国、相模国を一代で支配する勢力を築いた北条早雲ですが、早雲が伊豆に足を踏み入れた時、疫病が蔓延し死者が続出するという悲惨な状況がありました。当時、疫病への対処といえば、祈祷を行い事態の収束を見守ることが多かった中で、早雲はすぐに京都から良薬を取り寄せ、率いていた兵士五百名に命じて薬や食べ物を配り、村人を看病させました。その結果、十七日間で疫病を鎮静化できたというのです。早雲は、この素早い対応によって農民や土豪の信頼を得ることができたのでした。今の政府も、早雲の非常事態への迅速果敢な行動に学ぶべきではないでしょうか。(2020.5致知「特集 先達に学ぶ」より)

歴史を通じて、これからの未来を考えていくことはとても大事なことだと思います。今の日本の状況をみると、あくまでも社労士が関与する助成金についての話ですが、企業が生き残るためには、不十分なように思います。もっとスピード感があってもいいのではないか、もっと拡充すべきではないかと感じられるところです。

現在、政府が発令した緊急事態宣言を受けて休業している会社から従業員への休業手当をどうしたらいいのかという相談が増えています。労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由」の場合、会社は従業員に対し、休業手当として平均賃金の6割以上を支払う義務があると定めています。しかし、使用者に責任がなく、やむを得ないものとなるとその休業手当を支払う義務はなくなることになります。今回の休業をどう考えるかですが、法律家である学者や弁護士の間で意見が分かれます。ある弁護士は「都道府県知事による休業要請の対象となった場合は、支払い義務は免じられる」と言います。法的根拠のない自粛要請と違い、法令に基づくものであるため、休業は企業の自主的な行動とはいえなくなるそうです。一方で、ある労働側の弁護士は「企業には休業手当を支払う義務はある」という立場をとります。天災による工場の倒壊などと異なり、企業は経営努力によりテレワークをしたり、販売方法をネットで行うよう変更したりするなど休業を免れることができるため、休業をすることは使用者に責任があるのだといいます。また、そもそも「緊急事態宣言自体、強制力がなく。これだけをもって休業はやむを得ないとはいえないだろう」いう意見の弁護士もいます。

このことについて厚労省の見解は現時点ではっきりしていません。2011年の東日本大震災時に作成したQ&A集は、天災などの不可抗力の場合は使用者に手当の支払い義務はないとしているので、今回の緊急事態宣言による休業はこれに沿うという解釈もあるようですが、加藤厚労大臣は「(休業要請で)一律に休業手当の支払い義務がなくなるものではない。総合的に判断する必要がある。」と話しました。

IMFは日本の2020年の経済成長率をマイナス5.2%となる予測を出しています。リーマンショック翌年の2009年がマイナス5.4%だったことを考えると事の重大さはほぼ匹敵していることになります。第一生命研究所の試算では、「失業率は最悪2021年第1四半期までに4%程度まで上昇する可能性がある」とされています。コロナの直前3月の失業率は約2.5%となっていてまだ落ち着いてはいますが、これから大幅に悪化することが予想されています。

休業手当の支払いが義務なのか免除されるのか法律の議論はおいといて、たとえ法的な支払い義務がなかったとしても、こんなときだからこそ企業は休業手当を支払うことで、雇用を守り、従業員の生活を守ることが必要だと思います。そうできるように国は、中小企業をしっかり守ってもらいたいものです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

労基・雇保法等の改正法成立 4月1日から一部施行スタート

令和元年度末に「労基法等の一部を改正する法律」「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立・公布され、令和2年4月1日から施行(後者の一部は段階施行)されています。

労基法関連では、賃金等の消滅時効期間が5年(当分の間の経過措置で3年)に延長されました。

雇用保険法関連では、令和2年度から2年間、雇用保険率引下げの暫定措置を延長しています(令和2年度は一般の企業で1000分の9)。

労災法の改正は「公布から6カ月以内」の施行で、ダブルワーカーに対する補償内容を充実させます(2事業場分の賃金をベースとして給付基礎日額を算定など)。

次年度以降については、70歳までの就業確保の努力義務化(令和3年4月)、高年齢雇用継続給付の縮小(令和7年4月1日)等が予定されています。

従業員による「逆求償」認める 業務上事故の賠償

業務中に起きた事故に関する賠償金に関し、最高裁判所は、会社に対する労働者の「逆求償」を認める判決を下しました。

原告労働者は、トラック運転者として運送業務に従事中に、死亡事故を起こしました。遺族に対して1500万円の賠償金を支払った後、会社に対してその返還を求める訴訟を提起しました。

民法715条では、被用者が第三者に損害を与えた場合、使用者が賠償の責任を負うと定めています(使用者責任)。この場合も、使用者から被用者への求償権の行使は認められると解されていますが、逆パターン(賠償をした被用者から使用者への求償)が可能か否かは、判例上明らかでありませんでした。

今回の最高裁判決は、この問題に対して初めての判断を示すもので、「会社と労働者のどちらが先に賠償したかによって、使用者の負担額が異なるのは本条の趣旨に反する」として、「逆求償権」を認容したものです。

◆監督指導動向

休業・助成金関係で相談急増 新型コロナの対応を調査 兵庫労働局

兵庫労働局は、「新型コロナ感染症の影響による特別労働相談窓口」の相談状況をとりまとめました。休業や助成金関係の相談がめだっています。

窓口は令和元年2月14日に開設され、集計データは同月末までのものです。相談者は110人で、事業主(74人)のほか、社労士・労働者も窓口を訪れています。

相談内容のトップは、いうまでもなく休業関係です。厚労省発表のQ&Aでも、感染が疑われる場合等の取扱いについて細かく対応を示していますが、休業時に労基法に基づく休業手当の支払いを要するか否かなどは、事業主にとって悩ましい問題です。

そのほか、2月中旬に特例措置が講じられ、その後、漸次、拡充されている雇用調整助成金等の助成措置、安全衛生、休暇、解雇・雇止め等に関する質問も寄せられています。


カテゴリー:所長コラム



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