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2020年の法改正 総まとめ

2021年01月05日

新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 新しい年がスタートしました。今月はいつもと趣を変えて、昨年に改正された労働に関する法律をまとめてみます。

〇 労働基準法関連

1. 賃金請求権の消滅時効期間の延長等

(1)賃金請求権の消滅時効を改正民法と同様に5年に延長(経過措置付)

(2)起算点が客観的起算日(賃金支払日)であることを明確化

2. 記録の保存期間等の延長

(1)賃金台帳当の記録の保存期間を賃金請求権と同様に5年に延長(経過措置付)

(2)割増賃金等の付加金の請求期間を上記と同様に5年に延長(経過措置付)

3. 経過措置・検討規定

(1)賃金請求権の消滅時効、記録の保存期間、付加金の請求期間は当分の間は3年に

(2)施行後5年経過後の状況を勘案して検討、必要に応じて措置

平成29年の民法改正(令和2年4月1日施行)で消滅時効の規定が大幅に書き換えられました。 その改正民法の施行後、賃金の消滅時効は現在の2年から、基本的には5年(当分は3年)に伸びます。 最近は、監督官からも「これからは残業代の請求が3年間の遡りが可能になるので、残業時間の管理は しっかりしてください。」と指導されるようにもなりました。退職者からの未払残業代請求のブームが起 こるかもしれませんので対策は今のうちですね。 ちなみにタイムカードの保管期間は、現在3年間となっていますが、こちらも5年間になるようです。

〇 雇用保険法等関連

1. 高齢者の就業機会の確保および就業の促進

(1)70歳までの高年齢就業確保措置(定年の引上げ、創業支援措置等)を講ずることを努力義務化 (高年齢者雇用安定法)

2)高年齢雇用継続給付の縮小(雇用保険法)

高年齢雇用継続給付の給付率が、令和7年4月1日から引き下げられます。基本は60歳以後 の各月の賃金に10%(現在は15%)を乗じた額となり、賃金の低下率によって給付率も逓減し ます。これまで60歳定年以降は、年金と雇用保険からの給付があるからと給与を一律に下げ てきたわけですが、これからは同一労働同一賃金の影響も受けるでしょうし、60歳以降の賃金の 考え方の見直しが必要になりますね。

(3)雇用安定事業による高年齢就業確保措置の導入等に対する支援(雇用保険法)

国は65歳~69歳までの雇用を「令和2年までに就業率を40%とする」ことを目標にしてきました。 そして政府は「成長戦略実行計画」で、「70歳までの就業機会の確保」を挙げています。 ポイントは65歳までは「雇用の確保」、70歳までは「就業の確保」です。就業の確保とは、委託契約 やボランティアに従事する機会を設けることなどが含まれており、従業員として雇用する義務まではあり ません。ぼくは70歳まで働けたならいいなとは思いますが、70歳まで現役世代並みに働きたいとは 思いません…そういったことなのでしょうね。

2. 複数就業者等に対するセーフティーネットの整備等

(1)複数就業者の労災給付について、複数事業場の賃金に基づき給付日数を算定することおよび対象範囲を拡充 (労災保険法)

昨年、経団連がこれまで「慎重な検討が必要」としていた社員の「副業・兼業」について、推進する 方針に転じました。今後、これまでと異なる新たな働き方が登場することが予想されますが、一方で 労働者保護の観点から労災保険給付のあり方が問われていて、今回、補償内容を充実させることにな りました。基本的には、労災保険の給付は災害が発生した事業場での賃金をもとに行われます。 ただ、複数の事業場に就業している労働者が、片方の事業場で被災するともう一方の事業場でも働けなく なるので、労働者保護に欠けるといえます。そこで、給付額を決定するにあたって複数の事業場の賃金を 合算することになりました。一般的に労災保険からの給付を受けた場合、保険料率のアップを伴うことが ありますが、この上乗せ分については事故とは関係のない事業場の賃金であるため保険料率への反映はし ないことになりました。

(2)複数の事業主に雇用される65歳以上の高齢者に対する雇用保険の適用(雇用保険法)

これまで65歳以上の方は雇用保険に加入できませんでしたが、要件に該当したうえで本人が申出を行っ た場合に高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険被保険者)となることができるようになりました。2以上 の適用事業所に雇用され、週の労働時間の合計が20時間以上であることが必要で、失業したときは高年齢 求職者給付金が一時金で支給されます。

(3)勤務日数が少ない被保険者を対象として、日数だけでなく労働時間により被保険者期間を算定 (雇用保険法)

(4)雇用保険の失業給付の給付制限期間の短縮(雇用保険法)

失業給付(基本手当)については自己都合退職の場合、原則3カ月間の給付制限が行われてきました。 「安易な離職の防止」がその趣旨ですが、法改正により「転職を試みる労働者が安心して再就職活動を 行うことができるよう支援するため」、2カ月(5年間のうち2回までに限る)に短縮されました。 退職者は1カ月早く給付を受けられることになります。この「1カ月」の差は大きいのではないでしょ うか。

(5)大企業に対し、中途採用比率の公表を義務付け(労働施策総合推進法)

従業員300人超の企業を対象に中途採用に関する情報の公表が義務付けられました。 中途採用者数の割合を公表することにより中途採用を促進します。公表は企業のホームページなどで 定期的に行う必要があります。経団連による「就活ルール」廃止などの影響で、これまでの新卒一括 採用から近年増加している「通年採用」へ移行する流れを後押しすることになりそうですね。

3. 失業者、育児休業者等への給付等を安定的に行うための基盤整備

(1)育児休業給付を失業等給付から独立した給付と位置付け(雇用保険法)    育児休業給付は、平成6年に作られた制度ですが、給付総額が増加して、今では失業給付に匹敵する額 になっているそうです。法律は給付金の額を賃金の40%相当と定めていますが、暫定措置として、 当分の間、給付率を「50%(休業を開始した日から180日までは67%)」としていました。今回、 雇用保険給付の体系を見直し、育児休業給付を安定的に行えるようにしたうえで暫定措置である給付率 「50%(休業を開始した日から180日までは67%)」を恒久化することとなりました。

(2)雇用保険料率の弾力条項の見直し(労働保険徴収法)

(3)雇用保険の保険料率および国庫負担引下げの時限的措置を2年間(令和2~3年度)に限り実施     (労働保険徴収法)

(4)雇用保険二事業に係る弾力条項の範囲拡大(労働保険徴収法)

(労働新聞社編「まる分かり2020年改正 労働基準法・雇用保険法・労災保険法・高年齢者雇用安定法」より)

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム

年末年始休業のお知らせ

2020年12月22日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら12月29日(火)~1月4日(月)まで年末年始休業とさせて頂きます。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。

2021年も皆様にとって良い1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。

どうぞ良いお年をお迎えください。


カテゴリー:お知らせ

令和2年版 厚生労働白書

2020年12月01日

令和2年版の厚生労働白書が10月23日に公表されました。白書では、平成30年間の社会の変化とこれから2040年にかけて、これからの日本社会がどう変化していくかという見通しが書かれています。2040年は、このまま推移すると、高齢者となった男性の約4割が90歳まで、女性の約2割が100歳まで生存するといわれている年です。さらに、海外の研究では、2007年(平成19年)に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きるとも推計されているそうです。まさに「人生100年時代」が、現実化する一方で、20~64歳人口が人口全体のちょうど半分くらいに減少すると推計されています。

こういった寿命が伸びる中で、人々が「高齢者」ととらえているのは何歳以降かという意識の変化が起きています。2014年において「高齢者とは何歳以上か」という質問に対して「65歳以上」とする人は1割に満たず、「70歳以上」と「75歳以上」がそれぞれ約3割、「80歳以上」が約2割といった状況にあります。過去の調査では「60歳以上」「65歳以上」とする回答が多かったことからすると、人々の意識における高齢者像は変化してきていることがわかりますし、 最近では「年齢では判断できない」とする割合がかなり増えてきているそうです。また、高齢化が進んではいますが、それとともに健康寿命が延伸しているため、高齢であっても労働力として社会に貢献できる人も増えています。そのため、日本の人口は減少しているにもかかわらず、労働力人口や就業者数は、1990年代後半の水準を維持しています。この数字には、高齢者だけでなく、女性も大きく貢献しています。1989(平成元)年と2019(令和元)年を比較した労働力調査では、25~39歳の男性が大きく減少していますが、同じ年齢層の女性は約1割増加し、65歳以上の男女についても大きく増加しています。その結果として、その間、15~64歳の人口は8500万人から7500万人と1000万人減となっていますが、就業者数は6100万人から6500万人に拡大しました。人口が減少していく中で、この点については、厚労省のこれまでの法改正等の苦肉の策が功を奏したといえるのではないでしょうか。

少子化対策の一つに、男性の育児休業の取得促進があります。男性の育休取得率を2025年までに30%に引き上げるという目標を掲げるとともに、その目標達成のために男性の育休取得を義務付けるという検討がされていました。ぼくも労働局の方からは、「来年は男性の育休の義務化の法改正がありますよ」と聞いていたので義務化されるものだと思っていましたが、やはり経済界からの反発はかなり強かったようです。日本商工会議所の杉崎友則氏は「中小企業の7割が義務化に反対だとする調査結果を報告していて「深刻な人材不足が続く中、コロナ禍で企業に影響が出ている。残業時間の上限規制や有給休暇の義務化など度重なる労働規制の強化、負担増もあり、強制力を持った施策には反対する」と話していて、男性の育休取得の義務化は立ち消えになったようです。

その代わりなのでしょうか、厚生労働省は、男性の育児休業取得促進制度についての方向性を打ち出しました。経済界からの取得義務化に対して反発があってすぐに修正を行ったようです。検討案の内容は、男性がより育児休業を取得しやすいようにするため、とくに子の出産にあわせて取得しやすいような仕組みになるそうです。新制度の方向性としては、取得できる期間を子の出生後8週間とし、取得できる日数を4週間程度に限定するとしているそうです。現在、育児休業を取得している男性の半数近くが、子の出生後8週間以内に取得していることを考慮していて、現行の育児休業制度と同じく「義務」ではなく労働者からの「申出」により取得することができるとするそうです。また、2回程度に分けて分割取得できるようにもなるようです。また、新制度では、あらかじめ予定した曜日や時間に出勤することができるようにすることも検討されているそうです。この新制度は、来年の通常国会に育児・介護休業法改正案として提出される予定です。

今年はコロナ禍でこれまでの自分や社会を見つめ直す年になったように思います。最後に高名な教育者である東井義雄氏の言葉で1年を終わりたいと思います。

「根を養えば樹は自ら育つ」

「高く伸びようとするには、まずしっかり根を張らねばならない。基礎となる努力をしないと、強い風や雪の重みに負けてたおれてしまう」

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

中小企業7割が反対 男性育休の「義務化」

日本商工会議所の「多様な人材の活用に関する調査」によると、中小企業の7割が男性育休の「義務化」に反対しています。

イクメンということばが流行しましたが、男性の育休取得率は今も8%というレベルにとどまっています。休業の取得促進のため、厚労省では、休業の取得要件緩和や分割取得の導入等の検討をスタートさせています。

日商の調査では、中小企業2939社から回答を得ましたが、全体の70.9%が「反対」「どちらかというと反対」と回答しました。

「運輸業」(81.5%)、「建設業」(74.6%)、介護・看護業(74.5%)など、人手不足が深刻な業界で、とくに「反対」とする割合が高くなっています。

会社が経費負担を テレワーク時の通信費等

連合は、「テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」を策定しました。新型コロナウイルス禍への緊急対策として、テレワーク導入が急速に進められましたが、十分な環境対策が行われていないのが実態です。

6月に実施した調査結果等を踏まえ、労組サイドとして、使用者に対し提案・要求すべき事項を示したものです。モデルとなるテレワーク就業規則(在宅勤務規定)も作成しました。

導入時のパソコン・ソフト・照明・事務機器等の費用について、使用者が上限付きで補償するほか、勤務時のランニングコストとしての通信費・水道費などについても月払いの手当を付加するのが望ましいとしています。

生活時間の確保のため、「つながらない権利」に対する配慮も重要と指摘し、時間外・休日・深夜のメール送付、即時に対応できなかった際の不利益取扱い等の禁止も求めました。

届出の押印・署名を廃止 行政手続き簡素化へ

政府の規制改革実施計画(令和2年7月閣議決定)で行政手続きに関する押印見直しが明記されたこと等を受け、厚労省は、労基法関連の省令様式から、押印欄を削除します。

対象となるのは労基則、年少則、最賃則、事業附属寄宿舎規程などで、省令改正により、使用者・労働者双方の押印・署名を求めない規定に改めます。これを受け、電子申請時の電子署名の添付も不要となります(令和3年4月1日施行予定)。

協定の当事者である過半数労組(ないときは過半数代表)の適格性については、新たにチェックボックスを設けて確認します。

このほか、労働委員会規則に基づく不当労働行為審査の申立て、あっせん・調停申請などの手続きに関しても、押印不要とする方針です(令和3年12月施行予定)。

◆監督指導動向

「介護労働」の現場を査察 残業・割増等の違反めだつ 北海道労働局

北海道労働局は、介護労働者を使用する事業場を対象とする監督指導結果(令和元年)を公表しました。

介護労働者の人材確保のためには「魅力的な職場づくり」が求められますが、実際の労働環境をみると改善すべき点が少なくないようです。

監督指導が実施された203事業場のうち、68.0%(138事業場)で労基関連違反が指摘されました。主な違反項目は、「労働時間」97件、「割増賃金」74件、「安全衛生管理体制」49件などです。  労働時間関係では「36協定を超える時間外労働」、割増賃金関係では「割増賃金の算定単価の誤り」等の事案が報告されています。

監督指導が実施された203事業場のうち、68.0%(138事業場)で労基関連違反が指摘されました。主な違反項目は、「労働時間」97件、「割増賃金」74件、「安全衛生管理体制」49件などです。

労働時間関係では「36協定を超える時間外労働」、割増賃金関係では「割増賃金の算定単価の誤り」等の事案が報告されています。


カテゴリー:所長コラム

同一労働同一賃金がついに決着

2020年11月04日

今年、2020年4月1日にパートタイム・有期契約労働法が施行されており、同一労働同一賃金への対応が企業に求められています(中小企業における同法の適用は2021年4月1日)。同一労働同一賃金とは、同じ仕事をする正社員と非正規社員(パート、期間契約社員や派遣労働者)との待遇差や賃金格差をなくすという考え方です。これまでの日本では、長期雇用を前提とした終身雇用制度のもとで正社員は非正規社員よりも給与面はもちろん、福利厚生面でもより良い安定した待遇を保障し、そして会社は正社員に対する社員教育を充実させることにより生産性を向上させ企業は業績を伸ばしてきました。

弁護士の丸尾拓養氏は、旧安部政権のもとで行われてきた「1億総活躍」や「働き方改革」は正社員制度を否定するものであると話します。その背景にあるのが、「正社員ではない女性や高齢者の活躍が企図されると同時に、正社員にも変革を迫る。これまでの男性中心の正社員は強い雇用保障の下で高い賃金水準を享受してきた。この改革の背景には、高成長・安定成長の終焉という経済的要因とともに、非婚・離婚者の増加という社会的要因もあろう。父親(家庭)に対し賃金を安定的に支払う仕組みが社会で機能しなくなっている。」ことといいます。また、「正社員制度がなくなれば『非正規雇用』という言葉は不要となる。『多様な正社員』論は、実は『多様な社員』論である。」とも。

今、同一労働同一賃金の取り組み状況について労働局が県内の企業に実施状況の調査に入っています。調査に立ち会って感じたのは同一労働であればもちろんのこと、国は正社員だろうとパートであろうと全社員を基本的には同じ扱いに近づけたいのだろうということです。

そんな中で、この10月に同一労働同一賃金の考え方に重大な影響を与える最高裁判決が出されました。大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便(東京、大阪、佐賀)事件の5件についての最高裁での上告審判決です。これまで基本給については性質や目的を判断するに当たっては、いくつかの要素を総合的に検討することが必要となるためその金額の差については使用者の裁量が認められる傾向にあったようです。今回、大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件で争われたのは、非正規労働者であることを理由に賞与や退職金を支払しないことの是非です。これまでは、高裁での判決を理由に、非正規社員にも支給すべきといった流れに傾いていましたが、判決では、「各企業などにおける賞与、退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべきだ」とした上で、支給していなかったことについて「不合理な格差」には当たらないと結論付けました。

また、もうひとつの日本郵便(東京)の契約社員らが正社員と同様に各種手当や休暇を与えるよう求めた3件の訴訟では各種手当など「不合理な格差で違法だ」として、契約社員にも認める判断をしました。今回、認められたのは、扶養手当、病気休暇、年末年始勤務手当、夏期・冬期休暇、祝日休の5つとなっています。手当について正社員だけとする合理的な理由はないと結論づけていて、こちらのほうは非正規労働者の待遇改善につながりそうです。

今回、賞与と退職金についての格差是正が認められなかったことで、賃金について正社員と非正規社員の格差是正がわずかながらも進み始めようとしていた空気が一変することになると思います。結果として使用者側の裁量が広く認められましたが、「不合理な格差と認められる場合はあり得る」との考え方も示されていて、企業は賞与、退職金の支給目的を明確にしておく必要がありそうです。

最高裁は、配置転換や転勤を受け入れて、業務においても重責を担う日本型の長期雇用を前提とした正社員という存在を認めざるを得なかったのでしょうか。企業の側に立てば正社員に対して功労報償的な意味合いで賞与を支給したり、継続的な勤務に対する退職金を支払ったりすることで、正社員として職務を遂行できる人材をいかにして確保し、そして定着させるかということが大きな課題となっています。

労働局の調査で、「なぜパートには賞与を支給していないんですか?」と問われた企業の担当者は、「正社員はやる気を出して生産性を上げるなど担当の業務をしっかりがんばって欲しい。だけど、パートは言われたことを確実にこなしてもらえたらそれでいい。」と言います。本来は、丸尾拓養弁護士が言われるように、正社員制度そのものがなくなることが一番の解決方法かもしれないです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

10年ぶりに前年割れ 令和3年3月の高卒求人

新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う景気停滞により、令和3年3月の新卒者の就職活動は、大きな影響を受けています。

厚生労働省は、令和2年7月末現在で、ハローワークにより受け付けた高校・中学卒業者の求人・求職状況をとりまとめました。

高卒の集計データをみると、企業等による求人数は33万5757人で、前年同期に比べ、10万7589人少なくなっています。率換算で、24.3ポイントの大幅減です。

産業別では、「宿泊業、飲食サービス業」(49.6ポイント減)の落ち込みが目立ちます。その他、「製造業」で28.8ポイント減、建設業で4.4ポイント減といった状況です。

生徒からの求職者数も、率換算で8.0ポイント低下しました。結果として、求人数を求職数で除した求人倍率は2.08倍で、前年比0.44ポイントのダウンです。求人倍率が前年を割り込むのは10年ぶりのことです。

事務所衛生基準を改正へ トイレや更衣設備の充実めざす

働き方改革関連法は平成30年に成立しましたが、その附帯決議では事務所等の清潔・休養に関する関連法令の見直しを求めていました。

これを受け、厚生労働省では、検討会を設け、事務所衛生基準規則および関係指針等の改正に向けた論議をスタートさせています。

事務所則は事務作業に用いるオフィス等に適用されますが、その中では環境管理(第2章)、清潔(第3章)、休養(第4章)等について基準を設定しています。

検討会では、事務作業面の照度(現行は精密作業で300ルクス以上等)、二酸化炭素の管理(含有率100万分の5000以下等)などについて見直しを行います。

トイレ(男女別に一定数を設置)に関しても、小規模事業所で男女別の設置が遅れている現状等を改善する方針です。

監督指導動向

新型コロナで内定取消急増 悪質事案の企業名も公表 厚生労働省

厚生労働省の発表によると、今年4月に就職予定だった大学生・高校生等のうち、内定を取り消された人の数は、令和2年8月末時点で174人(76事業所)となっています。新型コロナの影響で、前年度・同時期(35人)の5倍に急増しました。

内定取消には至らないまでも、入社時期繰下げの対象となった学生・生徒数は1,210人(87事業所)の多数に上っています(前年度はゼロ人)。

併せて、大学生28人の内定を取り消したとして、神奈川県横浜市の生活関連サービス業者(旅行業)が企業名公表の対象となっています。

職安則では、告示で定める基準(取消者10人以上など)に合致する場合、学生の適切な職業選択に役立てるため、企業名を公表できる旨の根拠規定を置いています(17条の4)。


カテゴリー:所長コラム

人についての悩み

2020年10月01日

ある小学校の先生が子供たちに「雪がとけたら何になると聞いた時に、ほとんどの子どもが「水になる」と答えた中、たった一人だけ「春になる」と答えた子どもがいた(『朝日新聞』深代惇郎氏の天声人語より)

この先生は、「水になる」を〇にして、「春になる」を✕にしたそうです。理科の授業だったのでしょうか、国語の授業なら正解のように思いますが、これこそ日本人ならではの感性だと思いました。「春になる」とこたえた子どもの発想は、四季という感性を持つ日本人ならではですね。最近は、四季という感覚がなくなってきていますが、こういった情緒のある生活が懐かしいようにも感じます。

先日、ある方が話をしてくれました。「70、80歳代以上のおじいちゃん、おばあちゃんに『身体でなにか悪いところありますか?』と聞くとほとんどの人は「はい」というでしょ。会社の経営者に『経営する会社でなにか人事労務の問題ありますか?』って聞くとほとんどの経営者は「はい」ってこたえるよ。今はそういう時代になったんだね。」。人のことでこれほど頭を痛める世の中になるなんて以前には考えられなかったのではないでしょうか。

松下幸之助さんについての話で好きなものがあります。上甲晃氏という長年にわたり松下幸之助の薫陶を受けてきた方が、月刊誌「致知」でその話をされているのでご紹介します。

「松下幸之助は1918年、23歳で松下電気器具製作所を興して以来、奥さんや社員と共に真面目に熱心に商売に明け暮れ、創業12年で社員数500人の規模になります。経営は順調に進んでいるけれども、何か物足りない。

ある時、非常に熱心なお得意先に、『それはあんたに宗教心がないからだ』と言われて、ある宗教団体の本部に連れて行かれるわけですね。そこであまりにも熱心に働いている人たちの姿に驚く。一体どれだけの給料を、もらっているかと聞いてみたら、一銭ももらっていない。聞くところによると電車賃も自分で払っている。にも拘らず、給料をもらっているうちの社員よりも、なおこれだけ熱心に働いているのはなぜかと。」とても衝撃を受けたそうです。「帰ってきてからもずっと考え続けるわけですよね。そしてある日、突然稲妻のごとく走るものがあった。あの人たちは信者として仕事の意義、使命というものを感じているからあれだけの力を発揮できるんだと気づくんです。そういう観点でうちの社員を見たら、真面目に働けとか、お客さん第一とか、常識的なことは教えてきたけれども、この事業が持っている本当の使命を教えてこなかったということに目覚める。これ、私の好きな場面でしてね。それですぐ翌日に社員を集めて、我われの事業の真の使命をついに感じ取ったということで、社員に発表して創業記念日をつくり替えるんです。」

松下幸之助さんが、人の問題を抱えていたということと、このことがあるまでは松下幸之助さんが人は金のために働いていると考えていたんだと思うと驚きます。またこの時に、「産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには、物資の生産に次ぐ生産をもって、富を増大しなければならない。水道の水は価あるものであるが、通行人がこれを飲んでもとがめられない。それは量が多く、価格があまりにも安いからである。産業人の使命も、水道水の水のごとく、物資を無尽蔵たらしめ、無代に等しい価格で提供することにある。それによって、人生に幸福をもたらし、この世に楽土を建設することができるのである。松下電器の真使命もまたその点にある」と自社の真の使命を語ったそうです。

この時から、松下電器は松下幸之助さん自身が、想像もできないくらいに伸び始めたそうです。それで、当時、一番苦労したのは何かというと、あまりにも社員が一生懸命働くので「早く帰れ」と言わなければならないことだったそうで、それくらい社員は使命に燃えて猛烈に働くようになったということです。

「会社」という言葉は、「社会」を逆にしたものです。社会のためにならない会社は、社会が受け入れてくれないと聞きました。今、コロナ禍で多くの企業は苦しんでいますが、日本はきっと良くなると信じて社会のためにお役に立とうとする会社こそが、この厳しい時代を生き残れるのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

技術・技能系で月額19万円台 令和3年高卒初任給

労働新聞社の調査によると、高卒初任給は月額ベースで底上げ傾向が続いています。来春(令和3年4月)に卒業を予定する高校生に対して企業が提示した求人票を、高校の就職窓口に出向いて調査したものです。

今年1月から求人票の様式が変更されたことから、固定残業代などの諸手当を含む初任給額を集計しています。

職種系統別にみると、技術・技能系で19万2115円(うち基本給17万5753円)、販売・営業系19万6403円(同16万6403円)、事務系17万9122円(同16万1497円)という結果でした。

基本給ベースでみれば、概ね16万円~17万円にとどまる一方、固定残業代や地域手当で初任給を底上げする傾向が改めて明らかになった形です。

賃上げ率が0.18~0.31ポイント低下 令和2年春季交渉

大手企業を対象とする賃上げ集計が、2種類公表されました。いずれも「新型コロナ禍」の下で行われた交渉の厳しさを示しています。

厚生労働省の「令和2年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」は、資本金10億円以上かつ従業員1000人以上で労働組合のある企業321社を対象とするものです。

平均妥結額は6286円(前年比504円減)、賃上げ率は2.00%(同0.18ポイント減)でした。賃上げ率は、平成25年の1.80%以来の低さです。

一方、経団連も会員大手企業の妥結結果を公表しました。対象は、一部上場の従業員500人以上企業187社です。加重平均によるアップ率は2.12%(7096円)で、前年を0.31ポイント下回っています。

派遣先にも配慮求める 「同一賃金」で自主点検表 厚生労働省

厚生労働省は、派遣労働者の「同一労働同一賃金」の実現に向け、派遣先・元を対象とする自主点検表を作成し、周知を図っています。

人材ビジネス業者(派遣元)は派遣法のプロですが、派遣社員を受入れる側の企業(派遣先)は細かな規制内容を熟知していないのが実情です。

派遣先に対しては、派遣先管理台帳などに「派遣労働者の従事する業務に伴う責任の程度」、「派遣労働者が協定方式の対象か否か」等に関する記載を行っているかなどについて、チェックを促します。

派遣料金に関する配慮(派遣元が同一賃金を実現するために必要な派遣料金引上げ)に関しては、派遣先が派遣元の要請に一切応じないとき等は、指導の対象になると注意喚起しています。


カテゴリー:所長コラム



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