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変化するこれからの労務管理

2023年12月01日

今年を振り返るとだんだんと労働問題の様子が変わってきているようなことがいくつかありました。驚いたのは、社員が会社在職中に弁護士を立てて会社を訴えたり、要求を突き付けてきたりしたことです。これまでは、退社することになった社員が、退職する理由は上司のパワハラだったとか、在職中の未払いになっている残業代を請求してくることはありましたが、さすがに在職中に労働条件について弁護士を通じて改善を求めてきたり、上司からのハラスメントに対して損害賠償を請求したりということは経験がないです。

一方で、人材不足も深刻化しているようです。名古屋のほうでは、トヨタのグループ会社が工場で働く期間工を採用するために、1人につき100万円の入社祝金を支給していると聞きました。そして業界によっては、ハローワークの求人票に入社祝金制度があることを記載してアピールを行うようになっていますし、企業が学生時代の奨学金を代理返済する制度も整備されました。また、人材確保が難しいといわれる薬剤師は、薬学部の大学生に対して企業が学費の貸し付けを行ったり、給付金を支給したりするなど、獲得競争が激化しているようです。

では、来年以降に社会がどのように変わっていくのか。日経新聞の記事をもとに現在、議論されていることを取り上げてみます。まずは、国民年金です。国民年金保険料の65歳までの納付が社会保障審議会で議論されています。国民年金の保険料納付期間を現行の20歳以上60歳未満の40年間から、65歳までの45年間に延長するという案です。審議会委員からは、「このままだと基礎年金だけでは生活が成り立たなくなる可能性があり、延長したほうがいい」「平均寿命が延び、働ける高齢者は保険料を支払うべきだ」といった賛成の意見が多くある一方で、根本的な原因である給付の抑制が進まない現状を改める機運は乏しいといわれています。そんな中、年金改革はもう間に合わないのではないかという記事も載っています。ヨーロッパでは年金の支給開始年齢の引き上げを進めていて、フランスは国民の大反対を受けながら62歳から64歳に引き上げたことは記憶に新しいし、イギリスも現在の66歳から67歳への引き上げが予定されているそうです。日本は、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりますが、本来はこの団塊の世代への支給が開始される前に取り組むべきだった支給開始年齢の引き上げが見送られていて、もし今から支給開始年齢を遅らせるということになると、経済情勢から非正規雇用で働いてこざるをえなかった人が多い就職氷河期世代を直撃することになり世代間格差を広げかねず、もはや着手できなくなっているということだそうです。

次は雇用保険についてです。国は子育て支援のため、育児休業給付を賃金の手取りの実質8割から10割へ拡充することとして、2025年度から制度が開始されます。さらに2歳未満の子供を養育している労働者が育休明けに短時間勤務をした場合には労働時間や日数の制限を設けずに賃金の一定割合を上乗せして支給することになっています。また政府は男性の育休取得率の目標を「25年に50%、30年に85%」とすると表明しています。昨年の取得率は17.3%で、目標に向けて取得率が高まれば給付はさらに伸びることになります。この状況に財務省は育児休業給付の保険料率と国庫負担割合の見直しを、早急に図るべきとする方針を明らかにしていると11月20日の労働新聞が報じています。雇用保険料率は昨年10月に失業等給付にかかる料率が0.2%から0.6%に引き上げられたばかりなので、再度の引き上げとなると労使双方からの反発が予想されるということです。また、雇用保険の加入条件の一つとして週の労働時間について現行の「20時間以上」から「10時間以上」に緩和する方向で検討されているとのことで、新たに500万人が加入となる見込みだそうです。労働時間の規定の緩和でアルバイトやパート従業員が広く雇用保険の給付を受けられるようになることは良いことですが、企業や個人の保険料負担が増える面もあるということになります。

インドの名目国内総生産(GDP)が2026年に日本を抜くといわれています。その後、27年にはドイツも抜いて米中に次ぐ世界第3位の経済大国になるということです。今年は中国が人口減少に入ったといわれており、これまで日本、中国、韓国を中心に発展してきた極東アジアの時代が終わるのではないかという人もいます。これからますます日本社会の変化は続くのでしょう。社会が変わってきたことを実感した1年でした。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

介護直面前に情報提供も 支援制度活用を促進 離職防止策で論点示す

厚生労働省はこのほど、仕事と介護の両立支援制度の見直しに向けた論点を整理し、労働政策審議会の分科会に示しました。

介護離職を防止する観点からは、労働者への周知に関する新たな仕組みの導入を挙げています。具体的には、①介護の必要性に直面した労働者を対象に、両立支援制度に関する情報を個別に周知し、労働者の意向を確認すること、②介護に直面するよりも早期に支援制度の情報を一律に提供すること、③研修の開催や相談窓口設置などの雇用環境の整備――の3点を検討課題としました。

使用者委員からは、②の情報提供の時期として、介護保険被保険者となる40歳到達時のほか、育児期の労働者に実施する定期的な面談の活用なども検討すべきとの発言がありました。また、③の研修開催などについて別の使用者委員は、「中小企業での対応は難しい」と訴えました。

介護期の働き方としてテレワークの導入を事業主の努力義務にすべきかどうかも論点に盛り込みました。分科会では「テレワークは両立支援の手段として望ましい一方、実施が困難な業種・業態がある中では、努力義務化には慎重であるべき」、「選択的措置義務の選択肢の一つに追加すべき」などの声が挙がっています。

◆ニュース

4段階で手順示す 配偶者手当見直しへ 厚労省

 厚生労働省は、企業に対して配偶者手当の見直しを促すリーフレットを作成しました。9月に決定した年収の壁・支援強化パッケージの取組みの一環。配偶者の勤務先から配偶者手当をもらうために就業を調整している短時間労働者がいることから、廃止など見直しの手順を4ステップのフローチャートで示しました。

 取組みの第一歩として、賃金制度・人事制度の見直しの検討に着手した後、従業員アンケートなどを通じて、ニーズを踏まえて自社に合った案に絞り込みます。

 絞り込んだ案を基に、労使での話合いや、必要な経過措置の検討などを経て、見直し案を決定します。その後は、見直しの影響を受ける従業員に対して新制度に関する丁寧な説明を行っていくとしました。

 見直しの具体例として、①配偶者手当の廃止・縮小+基本給の増額、②手当廃止・縮小+子ども手当の増額、③手当廃止・縮小+資格手当の創設などを示しています。

死後の加入認めず 団交拒否は正当と判断 群馬県労働委員会

群馬県労働委員会は、鉄道車両メンテナンス業者が業務中に死亡した従業員の勤務状況に関する団体交渉に応じなかったとして、労働組合が救済を申し立てた紛争で、同社の対応は不当労働行為に該当しないと判断し、申立てを棄却しました。従業員が生前に同労組に加入した事実はなく、労組は「事後加入」と扱っていました。

従業員は昨年、業務中に心不全で死亡しました。労組は同社に対し、従業員の勤務状況などを交渉事項とする団交を申し入れました。同社は、従業員が生前に組合員だったことの確認を求めましたが、労組は応じず、団交は行われませんでした。労組は、団交拒否が不当労働行為に当たるとし、同労委に救済を申し立てました。

同労委の審査過程で、従業員が生前に同労組に加入したことはなく、相続人の意向で死後に「事後加入」となっていたことが判明しました。同労委は、死後、労働組合に加入することができないことは明らかであると指摘。他の従業員の中に同労組の組合員が存在しないことからも、同労組が「使用者が雇用する労働者の代表者」には該当しないとしました。


カテゴリー:所長コラム

年収の壁対策

2023年11月01日

「年収の壁」解消に向けた対策が決定されています。年収の壁とは年収が一定額に達した場合、税金や社会保険料の支払い義務が生じる収入の水準を指します。住民税の課税対象となる「100万円の壁」、所得税の課税対象となる「103万円」の壁、要件を満たした場合に社会保険の加入が必要になる「106万円」の壁、社会保険の扶養から外れる「130万円」の壁、配偶者特別控除が受けられなくなる「150万円」の壁、などがあります。そのうち、特に影響が大きいとされるのが、手取りが急に減ってしまう「106万円」と「130万円」の壁です。今回は、その2つの壁に対策がとられました。まず、「106万円の壁」対策として、従業員の手取り減少対策に取り組んだ企業に対し、従業員一人当たり最大50万円の助成金を支給されます。次に、「130万円の壁」には、連続2回までは130万円を超えても扶養にとどまれるようにするとされました。これらの支援策は、2025年の年金制度改正までの措置として10月から開始となっています。

「年収の壁」があるために、パート労働者は勤務時間を減らすなど就労調整を行うために人手不足となるといわれます。特にこれからの年末に向けては、社会保険の扶養から外れないように勤務時間を減らすパートが増えるといわれます。「本当はもっと働きたい。でも損はしたくない。」と考えて働く時間を短くすることがないように、企業に助成金を出してパートの賃上げや労働時間増を促したり、一時的な「壁超え」については柔軟な対応を認めたりすることでパートの年収が減らないようにするというのがねらいです。ですから、企業はパートを社会保険に加入させると助成金がもらえるとかパートはたくさん働いてたくさん給与をもらっても扶養から外されないという意味ではないことに注意ですね。

こういった対策は、これまでパートに就労調整を迫られてローテーションが組めずに人手不足に陥ってきた企業にとっては朗報ですし、パートにとっても収入増となります。ですが、ここでいう106万円と130万円には、計算方法に大きな違いがあるので注意しなければなりません。106万円の計算方法は、毎月の給与の基本給と手当を足した額となりますが、そこに通勤手当や残業代、賞与などは含まれないことになっています。ですから、パートやアルバイトが、これからの年末に向けての繁忙期にいくら残業しても壁超えを心配する必要はありません。もう一方の130万円の計算には、毎月の決まった給与に加えて残業代や賞与はもちろんその他の不動産収入や配当収入なども合算することになっていますので、年末にむけてしっかり計算する必要があります。

この「年収の壁」の問題には、社会保障制度の公平性の問題が隠れているといわれています。現在、専業主婦など会社員に扶養される配偶者は、「第3号被保険者」といわれ働きに出ても社会保険料を支払う必要はないのに、支払った人と同じだけの国民年金の老齢基礎年金を受け取ることができます。この優遇制度がそもそも現在の社会情勢に合っていないのに、今回の対策では、そういった人の収入が一定額を超えても、国が実質的に保険料を肩代わりして手取りが減らないようにすることになるので、これでは優遇に優遇を重ねることになるのではないかという意見があります。ただ、今回の対策は3年程度の時限措置で2025年の年金制度改革に合わせた「つなぎ措置」にすぎないということです。すでに来年10月から従業員数51人までの事業者に対して厚生年金への加入義務を拡大することが決まっていますが、今後は50人以下の事業者にも拡大することが検討されています。

これからは、多くのパートの人たちは年収を減らす選択をしない限り、社会保険に加入して保険料を負担することになるようです。そうなると、当然、企業の負担する保険料も増加します。岸田首相は、最低賃金(時給)の全国平均について「2030年代半ばまでに1500円となることを目指す」と言っているわけですから、人件費は、社会保険料の企業負担分である15%を加えると1725円となります。小売業や飲食業、宿泊業などパート依存度が高い業界はかなり厳しい状況となりそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆最新・行政の動き

手当支給企業に助成金 3年間で1人50万円 厚労省・「年収の壁」支援パッケージ

厚生労働省は、短時間労働者がいわゆる「年収の壁」を意識せずに働けるようにするための「支援強化パッケージ」を発表しました。

社会保険に関する「年収の壁」には、従業員100人超企業で週20時間以上勤務した場合に厚生年金・健康保険に加入して保険料負担が生じる「106万円の壁」と、配偶者の被扶養者から外れる「130万円の壁」の2種類があります。

「106万円の壁」対策として、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」を設置します。賃上げや、労働者負担分の保険料に相当する手当支給などを行う企業に対して、労働者1人当たり最大50万円を助成します。令和7年度までの時限措置で、1事業所当たりの申請人数に上限は設けません。企業が手当により肩代わりした本人負担分の保険料相当額については、保険料算定の基礎に含めません。

「130万円の壁」対策では、一時的な増収によって130万円を超える際、事業主の証明を添付することで、連続2年まで被扶養者に留まれるようにします。

10月中に改正雇用保険法施行規則を公布し、同月1日に遡って適用する方針です。

◆調査

総争議件数は減少傾向 令和4年「労働争議統計調査」の結果

 厚労省は令和4年「労働争議統計調査」の結果を公表しました。令和4年における総争議は270件(前年比27件減)で、元年に次いで2番目に低く、減少傾向にあります。このうち、ストライキなどの争議行為を伴う争議は65件(同10件減)で、伴わない争議は205件(37件減)でした。

争議の主な要求事項は、「賃金」に関するものが139件で、総争議件数の51.5%と最も多く、次いで「組合保障及び労働協約」が103件、「経営・雇用・人事」が98件となっています。

4年中に解決した労働争議は206件で、総争議件数の76.3%を占めています。解決方法は、「第三者関与による解決」が68件に上り、「労使直接交渉による解決」が54件でした。

争議行為を伴う争議を産業別にみると、件数は「医療、福祉」が22件で最も多く、「情報通信業」が13件、「製造業」が11件で続きます。


カテゴリー:所長コラム

30年の意味

2023年10月02日

2023年は「最も暑い夏」となりました。気象庁によると、6~8月の全国の平均気温が1898年の統計開始以来最高だったと発表しています。日中、外回りでエアコンの効いた車内にいても日差しは厳しいし、車を降りて外に出ると一気に体温が40度になるような感覚を受けたのは初めてのように思います。「十八史略」に「四時の序、功を成す者は去る」という言葉あるそうです。四時の序とは春夏秋冬の順序をいうそうで、春は春の役割を精いっぱい果たして夏にその立場を譲っていく。夏は夏の役割を精いっぱい果たして秋に譲っていく。秋は秋の、冬は冬の役割を果たして次の季節に譲っていく。このように四季が巡るように、人もまたそれぞれの役割を果たして次の人にその立場を譲っていかねばならない、ということだそうです。人も同じです。いろいろな人が功を成して去っていき、その積み重ねの上に自分たちがいる、ということですね。また、同時に、自分たちが今ここにいるのは、自分の役割を果たすためであることを肝に銘じなければならないと思います。今年の「夏」は、というより、今年の「夏」も、頑張りすぎていましたね。

哲学者の森信三氏は、「人生は正味三十年」と言いました。「この人生に対して、多少とも信念らしいものを持ち出したのは、大体三十五歳辺からのことでありまして、それが多少はっきりしてきたのは、やはり四十を一つ二つ越してからのことであります。ですから、もし多少とも人生に対する自覚が兆し出してから、三十年生きられるということになると、どうしても六十五、六から七十前後にはなるわけです。」「このように考えて来ますと、人間も真に充実した三十年が生きられたら、実に無上の幸福と言ってもよいでしょう。」加えて、森氏は「ずいぶんぜいたくな望みとさえ思われる」と言っています。この30年というのは、言い得て妙ではないでしょうか。人生100歳といわれるようになりましたが、「人が真に活動する正味ということになるとまず三十年そこそこのものと思わねばならぬでしょう。」「人生もその正味は三十年として、人生に対する一つの秘訣と言ってよいかなと思うのです。」とも森氏は言っています。(致知出版社「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」より)中国には、「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年にして歴史なる」という格言があるそうです。これは企業にもあてはまることだと思いますが、経済産業省のデータによると、1年以内で廃業する会社の割合は、27.2%、2年以内では39.1%、3年以内では47.2%、5年以内で58.2%となって、起業から10年後に残っている企業は約26%にまでなるそうです。企業を30年存続させてこそ、役回りを果たしたといえるのかもしれません。ぼくは36歳の時に社労士事務所を開業して20年になりますが、まだまだ10年は頑張って社会のお役に立てるようにしないといけないですね。

家具売り大手の「イケア・ジャパン」が制服への着替え時間について「従業員に賃金を支払っていなかったこと判明した」と報じられました。イケア・ジャパンはテレビの取材に対して、「着替え時間に関しては、関係法令に明文の規定もなく、判例上の基準も曖昧な部分があることから、実務上見解の分かれる点について不明確性をなくし、従業員有利の方向で明確な取扱いを設定するものとしました」とコメントしています。その上で、今後は着替え時間を1律5分とし、1日10分間を労働時間に含めるとしたそうです。メディアは、2000年3月に最高裁が「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間とし、着替えを義務づけられた制服などへの着替えも労働時間に当たるとの判断を示していると報じていますが、一方で「入門後職場までの歩行や着替え履替えは、それが作業開始に不可欠なものであるとしても、労働力の提供のための準備行為であって、労働力の提供そのものではないのみならず、特段の事情のない限り使用者の直接の支配下においてなされるわけではないから、これを一律に労働時間に含めることは使用者に不当の犠牲を強いることになって相当とはいい難く、結局これをも労働時間に含めるか否かは、就業規則にその定めがあればこれに従い、その定めがない場合には職場慣行によってこれを決するのが最も妥当である。」(昭56.7.16最高裁第一小法廷判決)として労働時間としなくてもよいとするものもあります。まるでイケアが賃金未払の違法行為を行っていたかのような報道の仕方には疑問を感じますが、最近は疑わしきは労働時間とする傾向があるように思いますし、以前と違って余計なトラブルにならないように事業主はとても気を遣っているようにも感じています。良くも悪くも、これが世の中の流れなので、合わせていかないといけませんね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

◆ニュース

43円引上げ1000円超に 24県が「目安額」上回る 最賃答申

 厚生労働省は8月18日、全国すべての地方最低賃金審議会で令和5年度の地域別最低賃金の改定額を答申したと発表しました。47都道府県の引上げ額は39~47円で、改定後の全国加重平均額は43円(4.47%)上昇して1004円になります。上昇額は「目安」制度の創設以降で最も高く、24県で中央最低賃金審議会が示した「目安」を上回りました。

改定後の最高額は東京の1113円で、愛知、京都など5府県が新たに1000円を突破します。最低額は岩手の893円で、最高額に対する比率は80.2%。改定額は10月上~中旬に発効します。

◆調査

副業者が60万人増加に 就業構造基本調査

総務省は5年ごとに就業状況を調査しており、今回は昨年10月1日現在で実施しました。

有業者は6706万人で、前回調査の2017年に比べ85万人増加しました。無業者は4313万人となり、163万人減少しました。非農林業従事者のうち、副業がある者の割合は4.8%の305万人となり、17年と比べて60万人増加しました。現在就いている仕事を続けながら、他の仕事もしたいと思っている追加就業希望者は7.8%の493万人で、17年から93万人増加しました。

追加就業希望者比率を都道府県別でみると、東京都と沖縄県が10.2%で最も高く、次いで神奈川県と京都府が8.8%で続いています。育児中の者のうち有業者の占める割合は85.2%(17年比5.9ポイント増)でした。介護中は58.0%(同2.8ポイント増)で、どちらも増加傾向にあります。


カテゴリー:所長コラム

名前をつける

2023年09月01日

今年の夏の甲子園大会も注目するところがたくさんありましたが、興味を引かれたのは「仮面ライダー兄弟」です。佐賀県代表の鳥栖工の兄弟バッテリーのことですが、その兄弟の名前は、兄がアギト(晶音)で弟はヒビキ(響)。「平成仮面ライダー」シリーズの主人公で、「仮面ライダーアギト」(2001年)と「仮面ライダー響鬼(ヒビキ)」(2005年)と名前が同じなんですね。他の選手もすっかり読めない名前ばかりで、時代を感じます。ちなみに、「絶対読めないキラキラネームランキング」というのがあって、1位「男」、2位「心姫」、3位「紅葉」となっています。順番に「あだむ」「はあと」「めいぷる」だそうです。読めませんね。子供の名前を決めるのは、人生の一大イベントといってもいいくらいだと思います。あるアンケート調査によると、1位は「こう育って欲しいという願いを込めた漢字や言葉を入れる」、2位「対面した印象で決める」、3位「季節や植物、自然からのイメージで決める」となっています。ぼくは自分の息子の名前には「拓」の文字を入れました。一人息子なので、なんとか自分で人生を切り開いていけるようにと願ってのことです。

もっと話を大きくします。本来、「拓」という文字にはもっと広い意味があるようです。月刊誌「致知」(2023.9)の特集「時代を拓く」には、「時代を拓くとは自分を拓くこと、自分の運命を拓くことである。一つの時代に対し、自分の運命を拓いていける人にして、初めて時代を拓くことができるのである。」と書かれていました。森信三氏の「修身教授録」にある言葉ですが、「実は真実の道というものは、自分がこれを興そうとか、あるいは「自分がこれを開くんだ」というような考えでは、真に開けるものではないようです。(中略)では真実の道は一体いかにして興るものでしょうか。それには「自分が道を開くのだ」というような一切の野心やはからいが消え去って、この身わが心の一切を、現在自分が当面しているつとめに向かって捧げ切る「誠」によってのみ、開かれるのであります。」とあって、「自分が開くんだ」と思って開けるものではなく、無我夢中に打ち込んできた結果だということだそうです。「時代を拓くとは自分を拓くこと、自分の運命を拓くことである。一つの時代に対し、自分の運命を拓いていける人にして、初めて時代を拓くことができるのである。では、時代を拓くリーダーの条件は何か。一は時代の流れを読み、方向を示すこと。二は必死で働くこと。三は自分を磨き続ける。四は集団を幸福に導く。五は犠牲的精神(自分の都合より組織のことを優先する。)。六は宇宙の大法を信じ、畏敬し、その大法に則り行動する。この条件を徹底、反復、実行する人のみが天から力を授かり、時代を拓くのである。歴史がそれを実証している。」と特集記事は結んでいます。

果たせなかった夢をわが子に託す子育てを「リベンジ型子育て」というそうです。進学や経歴など自分が果たせなかったことを子どもに果たしてもらおうと考える親のことをいうそうですが、そこには親の熱心な思いはあっても、子供の意志がないということになります。「わが子にいい人生を送ってほしい」という願いは親なら誰しも持っているし、その思いを子どもの名前に託すことはよくあることです。しかし、その思いはどうも裏返しになりがちなようにも思います。ぼくが子どもにつけた「拓」という字ですが、たぶん自分自身に向けてのものだったのではないだろうかと思えました。

今年度の石川県の最低賃金は933円になります。過去最大の42円増となり、全国平均でも41円引上げて、初の千円超となる1002円を目安とした水準に達するようです。経営者側は原材料価格の高騰などで中小零細事業者の経営環境が厳しいとして難色を示したとのことですが、日本の将来を考えると良いことなのではないかと思っています。日本経済は「失われた30年」といわれる長期停滞に陥っていますが、そろそろその潮目が大きく変わるではないかといわれるようになってきました。その理由は、まず賃金の上昇です。次に企業の設備投資が上向いていること。企業の設備投資が、2023年度の名目設備投資は前年度比4.5%増の101兆円強、2024年度は105兆円弱に上る見通しで、100兆円超えは32年ぶりになり、2年連続の100兆円超えとなると史上初めてとなるそうです。あとは、将来に向けて日本企業の多くがGX、DXなどの技術革新をリードする力があることだといわれています。これからの日本経済の将来が楽しみです。

 特定社会保険労務士 末正哲朗

最新行政の動き

パワハラ防止法関連 2000社超を是正指導 相談は5万件に倍増 厚労省

厚生労働省は、事業主にパワーハラスメント防止措置の実施を義務付けた労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)の施行状況を明らかにしました。

義務化の対象を中小企業まで広げた令和4年度において、全国に設置されている総合労働相談コーナーなどに寄せられた同法関連の相談件数は5万840件となり、2万3000件程度だった前年度から117.6%増加しました。相談内容は、パワハラ防止措置関連が4万458件(87.7%)を占めました。パワハラに関する相談を行ったことを理由とする不利益取扱い関連も1581件(3.1%)ありました。

相談などを受けて雇用管理の実態把握を行ったのは4899事業所。このうち2258事業所で同法違反がみつかり、是正指導しました。是正指導件数は計2546件で、589件だった前年度の4.3倍に達しています。

指導内容は、「パワハラ防止措置」が1655件で最も多く、以下、「事業主の責務(労働者への研修実施など)」が475件、事業主に対して自らの言動に注意を払うよう努めることを求める「事業主の責務(自らの言動)」404件、「パワハラ相談を理由とした不利益取扱い」12件と続きました。

◆ニュース

勤続期間の要件削除 退職金規定例を見直し 厚労省

 厚生労働省は、企業の参考となる「モデル就業規則」(令和5年7月版)を公表しました。

 従来のモデル就業規則では、「勤続〇年以上の労働者が退職しまたは解雇されたときに、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続〇年未満の者には退職金を支給しない」と記載。勤続年数による制限や、自己都合退職者に対する会社都合退職者と異なる取扱いを例示していました。7月版においては、これらの取扱いを改め、「労働者が退職しまたは解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する」としました。

 モデル就業規則では退職金の支給に関する留意事項として、「退職金制度は必ず設けなければならないものではないが、設けたときは、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算および支払いの方法、支払いの時期などを就業規則に記載しなければならない」と指摘しています。

性同一性障害 女性用トイレ使用制限は違法 トラブル想定し難い 最高裁

経済産業省で働く性同一性障害の職員が、女性用トイレの使用を制限されているのを不服とした裁判で、最高裁判所第三小法廷は国による使用制限を違法と判断しました。

職員は、生物学的な性別は男性ですが、平成11年に性同一性障害の診断を受け、20年からは私生活を女性として過ごすようになりました。21年7月には職場の上司に性同一性障害について伝え、女性の服装での勤務や女性用トイレの使用などを申し出ました。性別適合手術は健康上の問題から受けていません。

経産省は職員の了承のもと、同僚らを対象とした説明会を開き、終了後、職員による女性用トイレ使用について意見を求めたところ、数人の女性職員が違和感を抱いているように見受けられました。経産省は説明会を踏まえ、職員の勤務する階とその上下階の女性用トイレの使用を認めず、その他の階の使用を認める決定をしました。

職員は25年12月27日付で、女性用トイレの使用を含め、女性職員と同等の処遇をするよう人事院に求めました。人事院はいずれの要求も認めない判定を下しました。判定を不服とした職員が取消しを求める裁判を提起し、一審の東京地裁は人事院の判定を違法、二審の東京高裁は適法と判断しました。

最高裁は人事院の判定は裁量権の逸脱・濫用に当たるとして、違法と評価しました。2階以上離れた階の女性用トイレを使用するようになったことを理由とするトラブルは生じておらず、説明会でも明確な異論は出なかったと指摘。職員の置かれた具体的な事情を踏まえずに、他の職員に対する配慮を過度に重視し、職員の不利益を不当に軽視した対応と強調しています。


カテゴリー:所長コラム

夏季休業のお知らせ

2023年08月04日

いつもお世話になりありがとうございます。

誠に勝手ながら8月11日(金)~8月16日(水)まで夏季休業(お盆休み)とさせて頂きます。

8月17日(木)より通常営業となります。

ご迷惑をお掛けいたしますが宜しくお願いいたします。


カテゴリー:お知らせ



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