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「働き方改革関連法」

2018年08月10日

セミナーに参加するため東京へ。夜の新橋で一人飲みするため、ぶらぶらと適当なお店を探して歩いていたところ、愛媛の郷土料理のお店になんとなく入りました。カウンターに座り、板前さんの仕事ぶりを眺めながら鯛のお刺身でお酒をいただきました。当日は大きな宴会が入っていたらしく、愛媛の郷土料理が次々と宴席に運ばれていて、〆の料理には、鯛めしのおむすびが。あまりに美味しそうだったので、女将さんに「少しちょうだい」と甘えてみたところ「ダメ」。ならばと、鯛茶づけを注文すると今日はないと言われ、残念がるぼくに、「明日のランチに来ませんか」とお誘いが。お話を聞いてみると、これまで20年以上、お昼の営業を続けてきたけれど、人手不足で、私たちも疲れたからもうやめるので明日のランチが最終日だということでした。翌日はセミナーの合間に、そのお店に訪れましたが、ランチでいただいた鯛めしは絶品でした。どうも新橋でも有名なお店だったらしく、その日は常連さんらしき人たちであふれていました。偶然ではありましたが、良い時間となりました。

いつもお世話になっている税理士の先生のお話ですが、今年に入ってM&Aの取り扱い件数が、ものすごく伸びているとお話しされていました。その多くは事業の跡継ぎがいないため会社を売却するという案件だそうです。これからは、ますますいろいろな場面で人手不足を実感することになりそうですが、これからのビジネスのポイントになるのではないかとも考えています。

働き方改革関連法が、やっと成立しました。「働く方がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する」という趣旨の法案で、働き方改革実行計画(2017年3月28日)と労働基準法改正(2015年4月国会提出)の2つで構成されているものです。これまでの日本では、正社員は会社からの雇用保障によって一生同じ会社に勤めることができるということがある反面、長時間労働などの過重労働によって家庭生活がないがしろにされるといったマイナス面が対になっていました。そのマイナス面の解消が、働き方改革です。

労働基準法改正は、ずいぶんと長い間ほったらかされていたのでどうなったのか確認が必要ですね。まずは、「罰則付き時間外労働の上限規制」(2019年4月1日施行、中小事業主は2020年4月1日)です。時間外労働が制限され、原則「月45時間、年360時間以下」となり、特別条項により、年720時間以内において月45時間を年6回まで上回ることができ、休日労働を含んだ上限として①2~6か月平均で80時間以下②単月で100時間未満とすることも必要です。従来は告示であり法的な拘束力はありませんでしたが、今後は法律で定められた上限時間を超えた場合には、罰則が付くことになります。

次に、「同一労働同一賃金」です。政府が進める「同一労働同一賃金」の議論の中身は、非正規労働者の待遇改善に向けた法規制の強化となります。

あとは、高度プロフェッショナル、3か月単位のフレックスタイム制と続きますが、これらは中小企業の経営にはあまり影響はなさそうです。対策が必要なのは、「年次有給休暇の年5日」取得です。年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者を対象として、企業に年5日の時季を指定した有給休暇の付与が義務化されます。2019年4月1日施行となっているので、早速の対応が求められており、今から来年のカレンダーをどうするのか検討しなければなりません。また、月60時間を超える時間外労働の割増率が中小企業でも5割になります。

働き方改革には、生産性の向上がくっついています。これからは、2日働いて1日休むという計算になりますが、そうなると経営者は、社員を休ませる工夫が必要になりますし、休みが増える一方で社員は会社に出てきたらこれまで以上に一生懸命に働くということが求められるようになるということです。いいような、悪いような…のんびり働くサラリーマンなんて認められない世の中になりそうです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

 

◆今月の実務チェックポイント

 

社会保険の算定基礎届の提出

 

算定基礎届提出の時期になりました。健康保険・厚生年金保険の被保険者および70歳以上被用者の賃金について、7月1日現在使用している全ての被保険者および70歳以上被用者の方が対象です。

 

ただし、以下1~3のいずれかに該当する方は対象外です。

 

1.6月1日以降に資格取得した方

(資格取得時決定により、翌年8月までの標準報酬月額が決定されているため)

 

2.6月30日以前に退職した方

(7月1日現在在籍していないため)

 

3.7月改定で月額変更届を提出する方

(7月~9月に月額変更届を提出する場合は月額変更届が優先されるため)

 

※算定基礎届提出後に8月および9月に月額変更が生じた場合には、月額変更届が優先されるため、別途「月額変更届」の提出が必要となります。

 

  • 9月改定

 

9月分の社会保険料から改定されます。

 

実際に控除するのはいつから?

 

決定された新しい標準報酬月額による9月分の保険料は、「翌月控除」の場合は10月の支払給与から、「当月控除」の場合は9月の支払給与から、控除します。(9月分の保険料を何月の支払給与から控除するかで変わります。)

 

ご相談は、末正社会保険労務士事務所(076-213-6771)までご連絡ください。

 

 

定年再雇用後の賃下げ容認 最高裁が労契法20条で初判断

 

最高裁は、「期間雇用であることを理由とする差別」(労契法20条)に関して、2つの注目すべき判決を下しました。「個々の賃金項目の相違の不合理性を判断する際、その趣旨を個別にみる必要がある」という枠組みが示されています。

 

長澤運輸事件は、運転者が定年後再雇用により有期の嘱託社員となり、年収が20~24%低下したのを不服として提訴したものです。

 

1審は労働者側勝訴、2審は会社側勝訴でしたが、最高裁は再雇用による賃金ダウンを容認(精勤手当等除く)する立場を採りました。有期・無期間の労働条件の相違の不合理性を判断するポイントは、「職務の内容」「人材活用の仕組み」に限定されず、定年後再雇用は「その他の事情」として考慮すべきとしています。

 

ハマキョウレックス事件は、有期・無期間の手当の差異が論点ですが、最高裁は2審が認めた手当に加え、皆勤手当の不支給も不合理と認めました。

 


カテゴリー:所長コラム

「無条件の肯定」

2018年08月10日

今年、うちの息子は高校3年生になります。いっちょ前に大学生になりたいそうです。勉強が嫌いなくせに大学に入ってどうするのかと親は思っていますが。もしかしたら親がそう望んでいるから期待に応えたいのかもしれません。子供というのはいくつになってもかわいい存在です。

今回は、D・カーネギーの「人を動かす2」に、リヴィングストン・ラーネッドという人物の「父は忘れる」と題した一文があるので、ご紹介したいと思います。

『息子よ、聴いてほしい。いま目の前できみが眠っている。小さい片手がほっぺの下敷きになり、カールした金髪が汗ばんだおでこに張りついているね。お父さんはここへこっそり入ってきた。いままで書斎で書類を読んでいたのだけれど、後悔が押し寄せてきて、じっとしていられなくなったのだ。自責の念でいっぱいになって、いまきみのベッドのわきにいる。

息子よ、お父さんは気がついた。きみに腹を立ててばかりいたね。きみが学校へ行く支度をしているときに、顔をタオルでちょっと濡らしただけだといって叱ったし、靴をみがいておかなかったといってとがめた。自分のものを床に散らかしておいたといってどなりつけた。

朝ごはんのときも、だめなところばかり目についた。こぼしちゃいけないとか、もっとよく噛みなさいとか、テーブルにひじをつくんじゃないとか、パンにバターをつけすぎだとか言いどおしだったね。きみは遊びに行くときも、駅へ急ぐ私を振り返って手を振り、「いってらっしゃい。お父さん」と大きな声で言ってくれた。私は顔をしかめて、こう返事をした。「もっと背筋を伸ばしなさい!」 ~~ 中略 ~~

そうなんだ、息子よ。手から書類がすべり落ちたのはそのすぐあとだ。吐き気がするほどの恐怖心に襲われた。なんという習慣に私は取りつかれていたんだろう。あら探しをする習慣に、叱ってばかりいる習慣。お父さんは幼いきみに無理な期待をしていた。大人のものさしで、きみを測っていたんだね。

だがきみという人は、とてつもなく善良で、気高くて、純粋だった。この小さな胸は、広い丘の夜明けのように大きかった。私に思わず飛びついて、お休みのキスを力いっぱいしてくれたときに、それがわかった。今夜は他のことなんかどうでもいい。お父さんはいまベッドのわきへきて、こうして暗がりのなかでひざまずいている。恥ずかしさでいっぱいになって。

きみにせめてもの償いがしたい。昼間こんなことを言っても、わかってはもらえないだろうが。だが明日から、お父さんは本当のお父さんになろう!もっと一緒に過ごして、きみが悲しいときには一緒に悲しみ、笑うときには一緒に笑おう。つい何か言いそうになったら口をつぐんで我慢する。おまじないみたいにいつもこう言っているよ。「この子はまだほんの子供じゃないか。ほんのおチビさんさ!」

私はきみを一人前の男のように見ていたようだ。だがいまこうして、くたくたになって小さなベッドのなかで眠りこけているきみを見れば、まだほんの赤ん坊だ。つい昨日までお母さんに抱っこされて肩にもたれていたんだから。お父さんはそんなきみに、無理な注文をしていたね。』

父親なら誰でもこのような経験があるのではないでしょうか。自分の思いを息子に押し付けてしまったこと。そして自分の思い通りにならなくてつい感情的になってしまったこと。

これは職場の人間関係も同じではないでしょうか。全員が全員、違うけれども、全員が本質のところでは同じ。遺伝子研究で有名な筑波大学の名誉教授の村上和雄先生は、人間の遺伝子はいろいろな人がいて違うけれども一人ひとりの違いは、全人類で0.5%だといいます。99.5%は、みんな同じ遺伝子で生まれてくる。たった0.5%しか人は違わないそうです。先ほどの話にある「息子の無条件の肯定の精神」のように他人を大事に思うこと、これは大人にとってはなかなか出来ることではないですが、そんな気持ちを周りの人に対して持てるようになれたら、きっと素敵な生き方ができるのでしょうね。

特定社会保険労務士 末正哲朗

 

◆今月の実務チェックポイント

 

健康保険・厚生年金の標準報酬月額「随時改定」に保険者算定追加

 

 (平成30年10月1日施行)

 

平成23年4月1日より、既に「算定基礎届」においては、年間報酬の平均による標準報酬月額の算定が可能となっていますが、平成30年10月1日より、「随時改定」にも保険者算定できるケースが追加される予定です。

 

<算定方法>

 

① 3ヵ月間の報酬の平均から算出した標準報酬月額

 

② 昇給(降給)月以後の継続した3ヵ月間に受けた固定的賃金の月平均額+昇給(降給)月前の継続した9ヵ月間および昇給(降給)月以後の継続した3ヵ月間に受けた非固定的賃金の月平均額から算出した標準報酬月額

 

上記①②を比べて2等級以上の差があり、かつその差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合であり、現在(従前)の標準報酬月額と②の方法で算出した標準報酬月額との間に1等級以上の差がある場合に保険者算定に該当する

 

つまり・・・

 

これまで随時改定は、従前の等級との差が2等級以上になった場合に改定が行われますが、今回の改定では、①と②の差が2等級以上あれば、②の算定方法で算出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額との差が1等級しかなくても改定できることになります。

 

この方法により保険者算定をする場合には、事業主が被保険者の同意書を添付の上、申立書を日本年金機構へ提出しなければなりません。

 

なぜ被保険者の同意書が必要なのでしょうか?

 

保険料は下がりますが、健康保険の傷病手当金や将来の老齢厚生年金の給付額にも影響が出ます。給付額を決定する際に標準報酬月額を基準として算定されることになるため保険料負担が軽減されるというメリットと引換えに、給付を受ける際のデメリットがあることを被保険者自身にご理解いただく必要があります。

 

業務の性質上例年発生することが見込まれる場合とは

 

今回の改定により新たに保険者算定の対象となる業種等は以下が想定されています。

 

1.特定の時期が繁忙期となる業種(収穫期を迎える農産物の加工の業種、取り扱う魚種の漁期により加工作業が生じる水産加工業等の業種、夏・冬季に繁忙期を迎えるホテル等の業種)

 

2.特定の時期が繁忙期となる部署(業種を問わず、人事異動や決算等特定の時期が繁忙期となり残業代が増加する人事・総務・経理等の部署)

 

3.特定の時期の報酬平均が年間の報酬平均よりも低くなる業種(夏・冬季に閑散期を迎えるホテル等の業種)

 

※年間報酬の月平均額を計算する対象に含める月は、支払基礎日数が17日以上の月

短時間被保険者については支払基礎日数が11日以上の月

 

 

ご相談は、末正社会保険労務士事務所(076-213-6771)までご連絡ください。

 


カテゴリー:所長コラム

「人を育てる基本」

2018年05月02日

先日、研修会参加のため富山に出かけたときのことです。宿泊先であるホテルにチェックインするためフロントに向かいました。するとスポーツウェア姿の5、6人の若い人たちがむこうの方から、ぼくの姿を見かけるなり立ち止まり、みんなで背筋を伸ばしてから、「こんにちは!!」と大きな声で挨拶をしてきたんです。突然のことで「なんだ!?」とビックリしてしまいましたが、なぜ「いらっしゃいませ」じゃないのだろうか?と不思議に思ったので、フロントのかたに「こちらの新入社員の方たちですか?」と聞いてみたところ「いえ、ある会社の方々です。新入社員研修でこちらにお泊りになられていて。なにぶん新入社員の方たちの研修ですので、ご迷惑をおかけしますがご協力してあげてください。」とのことでした。謎は解けましたが、うーん、ものすごい違和感が残りました。

日本能率協会が4月12日に、2018年入社の新入社員に対する意識調査の結果を発表しています。

理想の上司・先輩は、「部下の意見・要望を傾聴する」が33.5%でトップ。第2位は「仕事について丁寧な指導をする」33.2%、第3位が「部下の意見・要望に対し動いてくれる」29.0%となり、第4位は「仕事を任せて見守る」となっていて新入社員のほうから自主性や意見の尊重を求める傾向が強く出ています。

ぼくなんて、ある人から「他人に対して、『違うよ』『そうじゃない』なんていう言葉を使うことはやめなさい。あなたにはまだ人の道筋の是非などを決める資格なんてないのだから」とついこの前、きつく叱られたことを思い出しました。ぼくは、結構、いい年齢だと思っていますが、まだまだ一人前になるには、勉強が足りないと反省させられたところだったので、とてもじゃないですが、ぼくを尊重しろなんて恐ろしくて他人には言えないです(笑)

新入社員は、幼い子供みたいなものですね。なんでも自分でやりたいとダダをこねるけれども、人の助けがないと何もできない。まず、人の中で何かを行うときには、基本的に「他人のせいにしているか」、「自分のせいにしているか」のどちらの考え方を持っているかはとても大切で、その後の人間的な成長にも大きな影響をあたえることになります。

経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「新入社員に贈る言葉」として、自分の本当に志望した会社に入れなかった人や、志望した会社に入っても自分の希望する部署に配属されなかった人であっても、くさることなく、与えられた場所で精一杯努力することを考えなさいと言っています。つまり、今の自分のことだけを考えるのではなく、相手の気持ちから見たらどちらが望ましいかということを考えるべきで、このことは将来の自分から考えても同じことだと。

小宮さんは、「幸せと成功の違い」についても話されています。「幸せ」というのは、自分で決めることであって、どんなにしんどい状況でも、自分を幸せと思える人は幸せです。一方、「成功」は他人が決めることです。自分で成功していると思っていても、周りの人や世間が評価していなければ成功ではないのです。私たちは、成功を目指すべきです。なぜなら成功は他人の評価なので、周りの人や社会が「すごい」と思うほどに良い影響を与えているということになります。つまり、周りの人や社会に貢献出来ているということになるのです。(一番良いのは、当たり前ですが、成功して幸せになるということですが。)

親は子をどうして我慢強く育てられるのか?子が愛しいからです。それでも子は親の望みどおりには育ちません。親は子が、思い通りにはならないということを理解する必要があります。そして我が子であれば他人に迷惑をかけるほど歪ませてしまえば親は責任をとらなければなりません。

でも、会社となると少し違ってきます。それは、入れ替えが出来ること、やり直しが出来るということです。だからこそまずは、育てる前に相手を理解しようと努力することが必要です。あと相手の能力を信じることも。このふたつが、人材育成の基本のようです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

 

◆今月の実務チェックポイント

 

厚生年金被保険者の個人番号の変更

 

厚生年金保険の被保険者の個人番号の変更の申出等について、「厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令」の施行(平成30年3月5日)により、『厚生年金保険の被保険者(高齢任意加入被保険者及び第四種被保険者等を除く。)は、その個人番号を変更したときは、速やかに、変更後の個人番号及び変更の年月日を事業主に申し出なければならないこととすること。事業主は、当該申出を受けたときは、速やかに、変更前及び変更後の個人番号等を記載した届書を機構に提出しなければならないこととすること。』とされ、個人番号変更の事務手続きが事業主にも求められることになりました。

 

個人番号(マイナンバー)や基礎年金番号は、原則として生涯同じ番号で、自由に変更することはできません。ただし、マイナンバーや基礎年金番号が漏洩して不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り、変更することができます。また、配偶者からのDV被害者等、一定の保護が必要と認められる方についても、マイナンバーや基礎年金番号の変更を申し出ることができます。DV被害者等であることの確認には、裁判所が発行する保護命令に関する書類や警察、保護施設、婦人相談所などが発行する証明書が必要になります。なお、この証明書等については、配偶者からの暴力を理由として保護したことの証明であり、配偶者からの暴力があった事実を証明されたものではありません。

 

 

 

 平成30年3月から協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率の変更

 

平成30年度の協会けんぽの健康保険料率および介護保険料率は、本年3月分(4月納付分)からの適用となります。

 

任意継続被保険者および日雇特例被保険者の方は4月分(4月納付分)から変更となります。

 

※40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、これに全国一律の介護保険料率(1.57%)が加わります。

 

※東京都近県では、平成29年度と同率または下がったということがわかります。

 

 

 

雇用保険の適用拡大について

 

平成29年1月1日より65歳以上の方も雇用保険の適用対象となっていますが、雇用保険の保険料については、平成31年度まで事業主および労働者ともに免除となっています。そのため、労働保険の年度更新の際に、保険料算定基礎額(納付すべき保険料を計算する基礎となる賃金)には、高年齢労働者に支払われた賃金は含みませんのでご注意ください。実際には、全ての被保険者に支払われた賃金から高年齢労働者分を差し引いた形で集計することになりますので、これまでの賃金集計表と大きく変更することはありません。

 


カテゴリー:所長コラム

「心の断捨離」

2018年03月26日

「ポジティブなつぶやきで、脳の片づけをする」これはマザー・テレサさんの言葉だそうです。断捨離が、言われて久しいですが、今も流行っています。ぼくも、いらないモノ、使わないモノを捨てて気の流れの良くなった部屋で過ごすことは大好きです。モノを捨てることは、誰もが思いついて、やってみようと一度は、行動を起こしてみるものだと思いますが、「心の断捨離」はいかがでしょうか。モノにあふれてクシャクシャな部屋に入ると、ストレスが溜まるのと同じで、頭の中もすっきり整理してストレスを溜めないことが大事だそうです。

では、どのようにしたら頭の中もすっきり整理させることができるのでしょうか。その方法をマザー・テレサさんが教えてくれています。頭つまり心(脳)の片づけは、次のようにするそうです。

「毎日のつぶやきを、ネガティブからポジティブにします。

思考に気をつけなさい。それはいつか言葉になるから。

言葉に気をつけなさい。それはいつか行動になるから。

行動に気をつけなさい。それはいつか習慣になるから。

習慣に気をつけなさい。それはいつか性格になるから。

性格に気をつけなさい。それはいつか運命になるから。」

マザー・テレサさんは、人は自分の運命さえも変えていくことができると言っています。そして、毎日のつぶやきをネガティブからポジティブに変えることが、その始まりになるということです。

また、マザー・テレサさんは、苦しみの連続で、思う通りにいかないことばっかりで、死んでゆく人の苦しみを朝から晩まで眺め続けたという人でもあります。人が生きていくうえで、誰でも辛さはあります。しかし、本当の人間の辛さは「誰からも自分は愛されていない」「自分は充分に大切にされていない」「自分は充分に報われていない」「認められていない」など、そういうことにあると言われます。

これは職場でも同じですね。人間の根底には、「自分が認められたい」という欲求がものすごく強くあります。人が与えられる報酬のなかで、もっとも価値があると感じることができることは、ほめられることや感謝されることだそうです。他人からほめられることは自分の存在意義を強く認識できる瞬間です。ほめられたり感謝されたりした人間は、次からもそのほめられた行動(職場にとって良い行動)を繰り返すようになるそうです。

ぼくが会社員だったころ上司に「お前の仕事はなってない!」と5時間続けて怒鳴られたことがあります。20年前の日本は「叱って育てる」ことこそ部下を伸ばすのだと信じて疑わない時代でした。とくに年代が上がるほど、この傾向は強くなり「怒られて成長したからこそ出世できた」と言う人も多くいます。確かにそういう人は、怒られて成長し会社員として勝ち残ったのでしょう。しかし、その何倍もの人が、怒鳴られる過程でこぼれていったはずです。かくいうぼくもそのうちの一人です。

行動科学マネジメントの第一人者である石田淳氏は「叱られたほうが人は伸びるというのはとんでもない間違いで、ほめられるから人は伸びるのである。これは最近に限ったことではなく、昔から変わることないマネジメントの基本なのだ。」と言いきります。

「そこまでやらなければいけないんですか?そんなことまでしてあげなくたって自分で学ぶのが社会人でしょう」と言いたいですよね?でも、そこまでしてあげるからこそ人は育つのだという基本は、昔も今も変わっていないみたいですよ。

特定社会保険労務士 末正哲朗

参考文献:平成29年度鈴木秀子先生講話会「『いま、ここにこそ』神様の恵み、慈しみのとき」

「組織が大きく変わる「最高の報酬」」石田淳/日本能率協会マネジメントセンター

 

◆今月の実務チェックポイント

 

厚生年金の届書等の記載事項への個人番号追加等(平成30年3月5日施行)

 

・基礎年金番号を記載しなければならないとされている書類について、基礎年金番号を「個人番号又は基礎年金番号」とし、いずれかの記載が求められます。

 

・生年月日確認書類等の添付を求める場合の限定…個人番号があれば添付省略可能に

 

・氏名変更届等の提出の省略…地方公共団体による住民基本台帳システムにより確認できない場合を除く

 

・遺族厚生年金の受給権者に係る氏名変更届の記載事項に「氏名変更の理由」を追加

 

 社会保険手続きご担当者の方へお願い

 

〇証明日と事業主印または社印の御確認を

 

退職や勤務形態の変更により、社会保険の資格を喪失する際に「社会保険(健康保険・厚生年金保険)資格喪失連絡票」を発行されると思いますが、今一度、喪失日と証明日の確認をお願い致します。

 

資格喪失日:退職日の翌日

証明日:退職日以降の日付でお願いします。同日付でもかまいません。

 

退職日以降の日付の証明でない場合、被保険者の方が国民健康保険や国民年金の加入のために、喪失連絡票を持参し、各市区町村の窓口へ行かれても受付されない場合があります。また、事業主印等の押印漏れがあると、同様に手続きがされない場合もあるようです。

 

会社は「退職しました。」という喪失届までしかできないこと、国民年金への切替はご本人が手続きをすることを、併せて案内すると親切かもしれませんね。

 

〇平成31年4月から、国民年金第1号被保険者にも産前産後期間中の保険料免除が!

 

健康保険・厚生年金については、産前産後休業期間中の保険料が免除されますが、平成31年4月から、次世代育成支援のため、国民年金においても産前産後期間中の保険料が免除されます。免除される期間は、出産予定日の前月から4か月間です。

 

健康保険・厚生年金に加入している方は、事業主が手続きしますが、国民年金については本人の申出が必要です。

 

「産前産後期間中の免除制度」は、世帯の所得にかかわらず受けられます。免除された期間は、保険料を支払った場合と同様の保障がされます。


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「裁量労働制の議論をとおして」

2018年03月26日

先月、働き方法案が、国会で議論が始まり、「脱時間給制度」の導入や裁量労働制の拡大が含まれており野党から問題視されているけれども、やっと今回で決着がつきそうですね~~なんてことをお伝えしましたが、法案提出前の予算審議で裁量労働制にかんする不適切なデータが出てきてしまい、これを機に野党は裁量労働制に対する攻勢を強めており先行きが不透明になっています。

そもそも長時間労働をさせることや残業代の支払いをしないことを合法とすることを目的にした裁量労働制の導入は、制度の悪用としか言いようがありませんが、本来は時間にとらわれない働き方のほうが生産性は上がるという仕事もあるはずです。雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は著書「マネジメントの基礎理論」で、仕事そのものを楽しいと感じている人は、自ら頑張るようになり、長時間労働もいとわず、そのうえ会社を辞めないものだと言っています。経営者、社員に限らずですが、同じ考えを持つ方も多いように感じています。当然、職種や仕事の内容にもよりますが(裁量労働制が導入できる職種は限定されている。)、好きなだけ頑張ることができる機会までを会社から強制された長時間労働といっしょに考えて議論するのは何か違うような気がします。

裁量労働制の拡大は、良くも悪くもこれからの労務管理においてとても影響が大きいことなので今後が注目されるところなのですが、最近、感じるのは先ほどのように一方だけから物事を見て判断してしまうと本当の現実から目を背けさせてしまうことになるのではないかということです。

最近、読んだ本ですが、近藤明美氏、藤田久子氏、石田周平氏編著の「がん治療と就労の両立支援」(日本法令)に、興味深いことが書いてありました。がん治療後の職場復帰にあたっては、その社員自身にも、一定程度の努力が求められるというのです。つまり、がん治療からの職場復帰には、それなりに職場に負担をかけているということを、社員自身が踏まえて行動することが求められており、具体的には、①治療をきちんと受け、体調を整える、②「がん」だということですべて配慮されるべき、と誤解しない、③配慮に関しては感謝する、④いつかは自分が配慮する側になることを目標にする-などが挙げられています。

ようするに、「配慮」というのは、通常では行わないことだと自覚することが必要だということです。人は、障害や制約をもつ人に対して出来るだけの支援を行うべきであることは当然のことですね。その一方で、支援を受ける側が感謝の気持ちを持つことも大事なことです。一定の配慮が必要となる事情や時期は人により違えども、誰にでも生じる可能性のあることです。双方の気持ちが通じなければ良好な関係は成り立ちません。だからこそ、日頃から職場において「お互い様」の気持ちを持つ必要があるということが書かれていました。

この話は、がん治療からの職場復帰に限らず、育児や介護など全てに通じることなのではないでしょうか。お互いの立場を尊重できなければ、いろいろな考え方や価値観の人が集まる職場は居心地の悪い場所になってしまいます。

今の日本が、「働き方改革」を推し進めている背景は、高齢者、若者、育児・介護をしながら仕事をする方たちがさまざまな制約を持ちながら働くことを支援していくことで、労働者一人ひとりが納得できる働き方、人間らしい働き方を実現することにあります。

なにひとつ制約を受けないで一生働き続けられる人などいるわけもなく、家族や職場の同僚など周囲の人の協力によって成り立っているのだということを忘れたくはないものです。

特定社会保険労務士 末正哲朗

参考文献:「マネジメントの基礎理論」海老原嗣生著 プレジデント社

「がん治療と就労の両立支援」近藤明美、藤田久子、石田周平編著 日本法令


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