人事・労務のエキスパート、石川県金沢市の社会保険労務士法人 末正事務所。人事・労務管理相談、社会保険労働保険手続き、紛争解決、組織活性、給与計算、人材適正検査まで、フルサポートします。

seminar

seminar

contact

ブログ

「労働時間を考える」

2015年12月07日

毎年、この時期になると1年がアッという間に過ぎたなぁ…と思いますね。時間の経過が、どんどん早くなるのは、どうにかならないものでしょうか。

先日の日経新聞では、「1日の時間配分が昔より過密になった」という調査結果(社会生活基本調査)が出ていましたが、1日10時間以上働く人の割合が、1976年で男性が17%、女性5%だったのが、2011年では、男性44%、女性19%にもなっているそうです。インターネットの発達で労働密度が濃くなっているのに、長時間労働も増えているということになるとお疲れのかたが増えるのも無理はないですね。

それに、監督署の調査が入って未払い残業代の支払いを命じられるケースも増えているような気がします。この原稿を書いている時点で、私は顧問先3社の監督署対応をしていることに気がつきました。監督署が入ると、多くの場合、残業代を遡って支払うよう命じられます。そうなると、これまでは3ヵ月遡ることが多かったんですが、最近は6ヵ月の遡りを命じられる傾向にあるようです。そうなると、企業にとっては重い負担になるので、どうしても長時間の残業をしないといけない職場で、残業代が十分に支払われていないという問題が生じているようであれば、監督署が入る前になんらかの対策を講じるべきだと思います。

今年4月に国が、「かとく」という組織を東京と大阪の労働局に設置したことはご存知ですか?

2014年11月に厚労省が「過重労働撲滅キャンペーン」で4,561の事業所を調査したところ、過半数の2,304事業所で違法な時間外労働が発覚しました。そして、長時間労働がまん延し過労死の原因となっているということから、「過重労働撲滅特別対策班」(通称かとく)という組織を作り、対策強化に乗り出しています。東京労働局の「かとく」には、長時間労働の問題を得意とする労働基準監督官が7名配属されているそうです。「かとく」の取締り対象となる企業は、簡単にいうと全国展開している大手企業です。新聞報道などを見ると、これまで司法処分される企業は、中小・零細が多かったように思いますが、「かとく」は大手企業の取締りを中心に行うようです。今年7月には、㈱エービーシー・マートの役員と店長が違法な長時間労働で、書類送検されましたし、現在は、ドン・キホーテの本社や店舗を、同じく違法な長時間労働による労基法違反容疑で家宅捜索しているようです。こちらも東京労働局は、同社の関係者を書類送検する方針と報じられています。

また、昨年6月に成立した過労死等防止対策推進法に基づいて、政府は今年の7月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定しています。この大綱では、将来的に過労死等をゼロにすることを目指し、2020年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下、年次有給休暇取得率を70%以上、平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする目標を早期に達成することを目指すなどの数値目標が規定されました。

今後は、中小企業が残業をした従業員に支払う割増賃金が変更され、月60時間以上を超えて残業をした場合は、5割の割増賃金を支払わなければならなくなります。厚労省は2019年4月の引き上げを目指しているということです。

また、2016年4月からは、有給休暇の取得促進が義務化されます。年10日以上の有給休暇が与えられる場合、そのうち5日は会社のほうから、取得する時期を指定して有給休暇を与えることが必要になります。これの違反には罰金も科せられることになっています。

これからは、従業員が早く帰ることができる職場作りをせざるをえなくなりそうです。

 

特定社会保険労務士 末正哲朗


カテゴリー:所長コラム


  • access
  • cubic
  • blog

pagetop