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4月から大きく変わる社会保障制度と私たちの暮らし

2015年04月10日

3月23日の北國新聞の1面に「年金目減り時代に突入」「高齢者 厳しい春」という見出しで、この4月以降の社会保障制度についての記事が載せられていました。注目すべきは、「マクロ経済スライド」の初実施です。マクロ経済スライドというのは、平成16年の年金制度改正にて導入されたもので、「賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組み」と言われています。

本来、年金額というのは、完全自動物価スライド制といい、物価の変動により年金額を改定していました。しかし、平成12年度から14年度の間、物価が下落していたのに政策的に年金額を引き下げず、年金額を据え置いてしまったことにより、平成25年9月までの年金額は、本来の年金額より高い水準で支払われていました。社会保障費の急激な増大といったことも影響があったのだと思いますが、平成16年の年金制度改正においてマクロ経済スライドが導入され長期的に給付と負担の均衡を図る仕組みができたということになります。

ようするに、物価の変動ではなく、保険料負担者(現役世代)より、年金受給者(高齢者)の数が多くなったら年金額を減らす、平均寿命が伸びたらその分年金額を減らす、という制度が採用されたわけです。マクロ経済スライドによる調整は、先ほどの少し高く支払われていた年金額の問題が解消され次第、実施することになっていたので、この4月が初めての実施となったわけです。

日本の社会保障制度は、社会保険料を支払う現役世代全体で、高齢者を支えるという世代間扶養の考えにもとづき作られています。その「現役世代」の減少が3月30日の日経新聞「年金負担 思い日本の現役」に取り上げられていました。65歳以上の年金世代1人を何人の現役世代(20~64歳)で支えているのかという経済協力開発機構(OECD)の調査結果によると、2012時点において日本は加盟34ヵ国で最も少ない2.4人でした。また、2050年には1.3人にまで低下すると予想されています。年金給付の水準も、現役世代の平均収入の35.6%となっており、その他の国と比べて低い水準になっています。しかし、年金の支給開始年齢をみると、欧米では67~68歳が多くなっていますが、状況の悪い日本は65歳です。

厚生労働省は2月12日に「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」を設置し、65歳以上の高年齢者の雇用・就業継続に向けて、必要となる制度・施策の方向性を検討開始しています。人口に占める65歳以上の就業する高齢者の比率は、20.1%になっていますが、この数字を高めていくようです。ついに出たかという感じですね。そうです。70歳支給開始ですね。

団塊の世代の頃の出生数は260万人を超えていましたが、2014年に誕生した赤ちゃんの数は、100万1000人となっておりここ数年減少が続いており、このままの傾向であれば、来年にでも100万人の大台割れは確実です。そんな中で、数少ない現役世代が、圧倒的に多い高齢者を支えるという構図は今後も変わりようはありません。国にばかり責任を押し付けるような問題ではないように思いますが、それにしても目の前に、悪い数字ばかりが並んでいますね。


カテゴリー:所長コラム


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